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終業を告げる鐘の音が、真神学園の校舎に高らかに響き渡る。
授業時間から放課後へ移ろう一瞬の静寂の隙間に、
龍麻はクラスメート達に見つからないように急いで教室を後にすると、一目散に外へと向かった。
これで担任のマリアとクラスメート達は躱した。
後は隣のクラスの杏子とミサに気付かれなければ脱出成功だ。
龍麻はこの、数分程度の脱出行に、自分でもあきれるほど全力であたっていた。
しかし、杏子の情報収集能力とミサのオカルト的な探知能力、
それに葵の凄まじいばかりの勘を考えると、用心しすぎてしすぎという事は何もない。
一度見咎められたら最後、もう未来永劫行動の自由は無くなってしまう事を考えれば、
この程度の苦労は何ほどの物でもなかった。
校門までやってきた所でようやく安心してやや歩幅を緩めると、
いきなり門の向こう側から自分を呼ぶ声がして龍麻は腰も抜かさんばかりに驚いた。
「きょ、京一……」
「へへへッ。そんなに急いでどこに行くんだよ」
そういえば、六時限目、京一の姿は既に教室に無かった。
いつもの通りサボっているだけだと思っていたのだが、
まさか自分を待つ為に予め抜け出していたとは、さすがの龍麻も予想できなかった。
「そ、それは……」
「聞いてるぜ。なんだか最近織部神社に通ってるそうじゃねェか。
青春まっただ中の高校生が、あんなしけた神社に用なんてあるのかねぇ?」
京一の言葉に龍麻の顔が青ざめる。
自分が織部神社に──正確には神社の若巫女に会う為に足繁く通っているのは
極秘中の秘だったはずだが、やはりどこか──恐らく杏子辺りに嗅ぎつけられたのだろう。
となると、この秘密の逢瀬もじきに出来なくなってしまうだろう。
ならばせめて、残り少ない機会を逃す訳にはいかない。
「……今ここにいるのは、お前だけか?」
「あァ。でも皆、特に葵がお前のコト探してたから、すぐにここに来ちまうかもなぁ」
「ぐッ……」
龍麻は喉まで出かけた声を呑み込むと、財布から千円札を取り出して叩き付けるように渡す。
「おッ、なんだ、悪ィな。あァそうそう、えーッと、龍麻はこっちには来ませんでした……っと。
さってと、今日もラーメンラーメン」
京一は木刀を肩にかつぐと、独り言めいた呟きを残して校舎へと戻っていく。
悠々と立ち去る京一の背中に龍麻は怨みの気を放っていたが、
我に返るとせっかく稼いだ貴重な時間を無駄にしない為に慌てて走り出した。
「お待ちしておりました、龍麻様」
龍麻が織部神社の中にある雛乃達の家に行くと、巫女装束を纏った雛乃が出迎えた。
当たり前と言えば当たり前なのだが、いかにも巫女という感じがして龍麻は妙に感動してしまう。
「あれ、これから神社の手伝い?」
「いいえ、龍麻さんが喜ぶと思いまして」
「……」
「お嫌いでした?」
「いや、嫌いじゃないけどさ」
どうも既に主導権どころか、全てを把握されてしまっている気がして龍麻は微妙に眉をくもらせたが、
持ち前の単純さで、差し出された手を握って玄関を上がり、
居間に通される頃にはもうすっかり忘れてしまっていた。
「あ、こたつ出したんだ」
「はい、もう寒いですものね」
さっそくこたつに潜りこんで背中を丸める龍麻に微笑を誘われながら、雛乃も向かいに座る。
置かれていたみかんに手を伸ばした龍麻の腕を掴むと、雛乃は妖艶な表情で切り出した。
「今日は、このような遊びはいかがでしょうか」
そう前置きして何やら小声で語りはじめた雛乃の言を聞くうち、
龍麻の顔が驚き、呆れ、そして好色そうな物に変わる。
「……すごいこと考えるね」
全く、彼女の外見のどこを見たら、内側にはこんな淫らな発想が詰まっているなどと想像できるだろう。
雛乃の清楚さは初めて会った時の印象から全く変わっていなかったが、
彼女の淫欲は身体を重ねる度に底の知れない深みへと龍麻を導いていき、
龍麻も今ではすっかり虜になってしまっていた。
「ふふっ、なんだかわたくし、もう胸が高鳴ってまいりました」
そう言って胸の膨らみに手を添えながら、龍麻がこちらを向くのを狙って一瞬だけ舌を覗かせる。
雛乃のそんな仕種に股間が早くも硬くなり始めた龍麻は、
突っ張ったズボンをこたつの中でさりげなく直した。
「ふふふ」
「な……何?」
「いえ、龍麻様もお好きなのですね」
「……」
どうしてこたつの中の動きが判ったのだろうかと、
真剣に考え込んだ龍麻の耳に威勢の良い声が聞こえてきた。
「たっだいまーっと。おッ、なんだ、またお前来てるのかよ」
龍麻に遅れる事十数分、もう一人の若巫女、雪乃が高校から帰ってきて姿を現す。
あきれ気味に言いながらも、顔ははっきりとほころんでいた。
龍麻が軽く手を上げて挨拶すると、少しはにかんだように微笑んで、鞄を置きに一旦奥に姿を消す。
木目の廊下を走っていく軽快な音が遠ざかり、やがて消えると、
雛乃は龍麻の耳元に口を寄せて小声で囁いた。
「それでは龍麻様、打ち合わせ通りに」
「う、うん……でも、今日はちょっとマズくない?」
「大丈夫ですわ。あ、姉様が戻って来ます。わたくしはお茶を淹れてきますね」
龍麻にはまだ何も聞こえなかったが、すぐに雛乃の言った通り、
にぎやかに木の音を響かせながら雪乃が戻ってくる。
双子の絆と言う物に改めて感銘を覚えながら、龍麻はいかにもくつろいでいる、
と言った風にせんべいに手を伸ばした。
雪乃は滑りこむようにこたつに足を入れると、みかんを掴んで手早く皮を剥く。
すじも取らず、半分程も一気に口に入れる豪快な食べっぷりに、龍麻は思わず見とれてしまう。
「なんだよ」
「いや、いい食べっぷりだと思って」
丁度そこにお茶を淹れた雛乃が戻ってきて、雪乃に見とれている龍麻に微妙に目を細めたが、
口に出しては何も言わずに龍麻の向かいに座った。
「フン。どうせオレは雛みたいにすじなんて取って食べねェよ」
もごもごと口を動かしながらじろりと龍麻を一瞥すると、
しかしさほど気にした様子も無く残りの半分も一気に食べる。
「それにしてもよ、お前の学校新宿だろ? わざわざこんなしけた所までよく家に遊びにくるよな。
もしかして雛のこと狙ってんのか? だったら諦めた方がいいぜ。
雛乃はまだ男なんかに興味ねぇみたいだし、第一オレが許しゃしねぇ」
京一と全く同じ事を言う雪乃の、冗談めかしつつも、
全く目は笑っていない台詞に苦笑いで答えながら、
龍麻は何食わぬ顔でこたつの中の足を正面に座っている雛乃の方へ伸ばし、
こんな季節なのに薄い生地の差袴を探り当てる。
雛乃は正座している足をわずかに開いて龍麻の指先を受け入れ、
雪乃に気取られないよう手をこたつの中に忍ばせた。
もちろん襦袢を着ている為に秘唇の形など判りはしなかったが、
柔らかな媚肉は触れているだけで悦楽をもたらし、
龍麻は雪乃に適当に相槌を打ちながら足先に全神経を集中させる。
いつからか始まった、この秘密の遊戯を持ちかけてきたのは雛乃の方だった。
必ず雪乃の居る時、この家の中でだけ行われるただれた遊び。
毎回呆れるほど様々なシチュエーションを思いつく雛乃に、
もちろん龍麻も乗り気ではあったが、最近は何も知らない雪乃が気の毒であり、
また見つかった時の彼女の苛烈な反応を思うと少し臆病にもなっていた。
それでも止める事が出来ないのは、やはり龍麻もいつ見つかるかも知れないスリルを愉しんでいたのと、
雛乃の肢体に抗う事が出来ないからに他ならなかった。
今も指先の向こうにある、もう濡れそぼっているはずの淫唇に思いを馳せながら
こたつの中で愛撫を続けていく。
爪の甲を割れ目とおぼしき場所に押し当て、そっと前後させる。
ごく薄いはずの衣が邪魔でたまらず、龍麻は袴を一生懸命にずらして指を押し付ける。
上半身は動かす事が出来ず、たどたどしい動きでしか責める事は出来なかったが、
それがかえってもどかしい心地良さを与えるのか、
雛乃の目は徐々にあらぬ方を見つめだし、唇を薄く開いて呼気に紛らせた吐息を漏らした。
目に見えて現れはじめた反応に少しまずいと思ったが、
それでも必死に快感を押し殺しているらしい雛乃がいとおしくて、
龍麻は少しだけ強い刺激を送りこむ。
「っ……!」
雛乃の肩が震え、慌てて唇を噛んで喘ぎを封じる。
龍麻も思いきり音を立ててせんべいをかじるが、後の祭だった。
雪乃はみかんの皮を剥く手を止め、妹の方をしげしげと見つめる。
重大な危機を感じた龍麻は足を引っ込めようとするが、雛乃の手がこたつの中でそれを押し留めた。
「なあ雛、顔赤いみたいだけど大丈夫か?」
「……そうですか? わたくしは別になんともないですけど」
「そっか、それならいいんだけどよ」
雪乃は少しだけ雛乃の顔を覗き込むように顔を傾けたが、
自分の目よりも妹の言葉の方を信用する事にしたのか、あっさりと引き下がった。
内心で胸を撫で下ろすと、再び足を引き戻そうとするが、
雛乃はこんな状況にあってもなお龍麻の足を使い、自慰をするように自分で動かす。
秘部にぴったりと足を押し付け、小刻みに揺すって刺激を続ける雛乃に、
龍麻はつい見とれてしまった。
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