<<話選択へ
次のページへ>>

(1/2ページ)

 雷光をも思わせる裂帛の突きが、龍麻を襲う。
雪乃の構える薙刀は練習用で刃こそないものの、喉を狙った一撃は、
まともに当たれば命の危険もあるものだった。
 対峙する龍麻は篭手を着けてはいても、その他は無防備だ。
前方に伸ばした左手は正中線を護るべく身体の中心からやや上に、
攻撃を行う右手は腰に溜めて構えていた龍麻は、殺意に漲る雪乃の突進にも動かなかった。
刹那を奪いあう武道において、この緩慢さは致命的だ。
あと一瞬にも満たない間に、雪乃の突きは龍麻の喉を捉えるに違いない。
そう、武を司る神さえ信じた時、龍麻が動いた。
目で捉えることも難しい突きを手の甲で弾いて軌道を逸らし、さらに、手首を返して薙刀の柄を掴む。
渾身の力で突いていた雪乃は、少し力の方向を変えられただけであっけなくバランスを崩してしまった。
前方につんのめり、倒れかかる。
そのままでは顔から床に落ちるところを、龍麻が下から支えてクッションとなった。
「……惜しかったな」
 床に倒れた雪乃は、予想外に近くから聞こえる龍麻の声に即答しなかった。
「もういいから離せよ」
 憤激に色濃く染まった顔を隠そうともせず、身体を起こそうとする。
だが、いつのまにか掴まれている右腕も、さらにいつのまにか腕を回されている腰も言うことを聞かなかった。
「離せって……ッ……!」
 本気でもがいてみても、機先を制された不利のため、脱出できない。
十数秒の抵抗の末、とうとう雪乃は諦めるしかなくなった。
すると、腰に回された腕に込められた力が強くなる。
右手を頭上に引っ張られる形になっている雪乃は、龍麻と密着させられてしまった。
「……」
 この姿勢で何を言っても戯れにしか聞こえないだろう。
そう判断した雪乃は黙っていたが、一分ほど我慢したところで忍耐の限界に達し、
自由な左手で龍麻の、この点だけは雪乃の好みではない、やや長めの頭髪を掴んで引っ張った。
「痛えな」
「ならいい加減離しやがれッ」
 迫力はあるが彼女の通う女子校の生徒が聞いたら胸をときめかすかもしれない、
少年めいた響きのある声での恫喝にも、龍麻は動じなかった。
「あと一時間くらいはこうしていたいんだけどな」
 平然とそんなことを言う男など、かつての、といってもそれほど昔ではない、
たかだか三ヶ月ほど前の雪乃なら、薙刀の錆にしてしまうか、
鳥居の向こうに投げ飛ばしていただろう。
だが今の雪乃は、緋勇龍麻という実力も包容力も備えた男と出会ってしまった今では、
薙刀を喉元に突きつけることも、したたかに地面に叩きつけることもできず、
代わりに龍麻の髪を掴む手に、わずかに力を込めるだけで意思を表明するしかできなかった。
 龍麻の右腕が静かに動く。
腰の真ん中に添えられていたのが、雪乃の右の肩甲骨を触りはじめる。
くすぐったさと、それ以上に男の意図を察した雪乃は、身をよじって抗議した。
「ま……待ったッ、運動したばっかじゃねェかッ」
「そんなこと言ってお前の家、シャワーないだろ? 風呂入るまではさすがに待てねえよ」
 五十年は優に超える年月を経ている神社に、雪乃はむしろ愛着を抱いていたが、
この時ばかりは古い作りの実家を心から恨んだ。
 男勝りであっても女性が当然有する羞恥と嫌悪に雪乃が囚われている間にも、
龍麻は欲望の手を止めたりはしない。
袴の脇から手を入れ、尻をいいように撫でまわす。
小ぶりで少し硬さを感じる尻肉が手の中でほぐれていくのは、中々味わえない愉悦だ。
そして、汗のように発散される雪乃の羞恥も、龍麻にとっては極上の美味だった。
「や、止めろ馬鹿っ、こんなところで誰か来たらどうすんだよッ」
「大丈夫だって」
 何の根拠もなく答えて龍麻は尻から内腿へと手を落とす。
無駄な肉のない、弾力に満ちた内腿は、雪乃の弱いところでもあった。
全身で感じている雪乃の反応が変わる。
「な、なあ……本当にここでするのかよ……」
 薙刀で喉を突こうとした勢いはどこへやら、怯えるウサギのようにか弱い声を吐く。
その声は板張りの床に反射することもなく、ことごとく龍麻に吸収された。
「雪乃と会える日まで、ずっと我慢してたからな。もう抑えられない」
「ずっとって、たかだか一週間じゃねぇか」
「声も聞けない一週間だったからな。永遠と一緒だよ」
「いちいち大げさなんだよ」
 龍麻の腕から逃れようともせず、逆に唯一自由な左手で髪を掴む。
その掴み方は先程とは違い、恋する少女のものだった。
「オレだって……さ、寂しかったんだからなッ」
 語尾をかき消すように二つの唇は重なった。
 何度か離れ、触れあった唇は、やがてもどかしげに密着して離れなくなる。
「ん……」
 少女から力が抜けていくのを感じた龍麻は、閉じた貝のように合わさった手を少しだけ強く握った。
返事は彼女が髪の中にくぐらせている反対側の手から返ってきて、
やや長めの龍麻の髪を、雪乃は根元からまとめて掴んだ。
右の側頭部に感じるくすぐったさと少しの痛みに心の中で笑みを浮かべながら、
龍麻は雪乃の口腔に舌を差し入れる。
「ん……ん」
 性急に貪ることはせず、雪乃が受け入れるだけの時間をかけて口づけを交わす。
愛欲ではなく、色恋の領域に留まるよう配慮したそれは、雪乃をさらにか弱くしたようで、
龍麻が唇を離しても、親愛の情も露わに頬を寄せてきた。
「な、なあ……本当に臭ったりしてないよな?」
「大丈夫、いい匂いしかしてない」
 龍麻にとってのいい匂いとは雪乃から発せられる匂い全てなのだが、そこまでは説明しない。
 真顔での浮いた台詞を疑いもせずに信じた雪乃は、不承不承といった風ではありながらも、
力を抜いて龍麻を受け入れた。
 抵抗が収まったと見るや、龍麻は雪乃を乗せたまま上体を垂直に起こす。
少女一人分の体重がかかっていても、鍛えた肉体は軽々と起きあがった。
「わ、わッ……!」
 慌てた雪乃がしがみつく。
指先に力を込めない女性らしい掴み方に、龍麻は笑みを浮かべる。
それは決して男勝りの雪乃に残る女らしさを笑ったのではなく、
むしろ雪乃の芯はちゃんと女性なのだという好意に満ちた笑みだったが、
落ち着いた雪乃が身体を離し、睨みつけるまでには消していた。
「急に動くなよ」
「これくらい平気だろ」
「そういう問題じゃねえよ」
 ではどういう問題なのかと眼で問う龍麻に、雪乃は眉間をわずかに狭めたが、
口で説明するのは諦めたのか、掴んでいる龍麻の肩に爪を食いこませた。
「痛えよ」
 顔をしかめた龍麻は、雪乃の手首を掴むと、力任せにではなく、古武術の技で手首を極め、
指に力を入らなくさせて爪を外し、そのまま雪乃の上体を引き寄せた。
「あッ……!」
 驚いた形の唇に、そのまま吸いつく。
乱暴なキスではなかったが、離れた雪乃の顔は再び不機嫌になっていた。
「どうした?」
「なんでもねえよ」
 答えずに唇を尖らせる雪乃を見ながら、龍麻は想像する。
おそらく爪を立てるのを止めさせられたことに腹が立っているのだろう。
自分より強い男でなければ対象外と言うくせに、
いざ対象内になってみると今度はその立場に納得しないという厄介な性格が、実は龍麻は嫌いではない。
むしろ従順に、言うことを何でも聞くようになってしまったら、かえって幻滅してしまうだろう。
とはいえ、今は機嫌を取らなければならない。
龍麻は掴んだままの雪乃の手首を掴む手をずらし、手を上から包みこんだ。
そのまま少し待っていると、握っていた拳がほぐれていく。
ひとたび形を失くした拳は、そのまま染みこむように龍麻の手とひとつになった。
薙刀を握るため、同年代の少女よりも少し固い――とはいっても充分に柔らかな手を握ったまま、
龍麻は自分の頬に当てる。
しばらくすると根負けしたように雪乃から力が抜け、龍麻にもたれかかってきた。
 薙刀の道着は雪乃には良く似合うものだが、こういった時には不粋なものだ。
鎧とまではいかないものの、厚手の生地は肌の実感に欠けるし、触っていて楽しくもない。
「ま、待てよ」
 早々に袴を解き、上衣も脱がせて本格的に愛撫を始めようとする龍麻を、雪乃が制した。
「き、今日は……オ、オレが……オレが、してやるよッ」
 言い終えただけで雪乃の顔は熟しすぎたトマトのように赤くなっていた。
頭頂からは湯気らしきものまで立ちのぼっている。
 この少女の形をしたヤカンを沸騰させず、冷まさせもしないよう、龍麻は言葉を選んだ。
「してやるって……まさか、舐めてくれるのか?」
 しまった、と龍麻が思ったのは、雪乃の顔が赤を超えて黒くなったからである。
しかし、直接的な表現に恥ずかしさは限界近くまで達したものの、
ぎりぎり爆発まではいかなかったようだ。
龍麻の肩に額を強く押しつけた雪乃は、一語ごとに息を吐いて言った。
「練習、したんだよッ。友達に聞いて……」
「……もしかして、バナナでか?」
「そうだよッ、悪いかよッ」
 恥ずかしさのあまりに斬りつけるような口調の雪乃の、龍麻は頭を撫でる。
この気の短い少女がどれほど怒ったとしても、これ一つで鎮められる魔法だが、それだけでは済まさない。
「嬉しいな、俺のために」
「う……は、初めてなんだからな、失敗しても文句言うなよ」
 「俺のため」という殺し文句にやられ、鬼神から女神へと変貌した雪乃は、
少しは落ち着いたらしいがまだ赤い顔を龍麻の下半身に移動させようとする。
しかしその前に龍麻が立ちあがり、雪乃の眼前に下着を突きつけた。
「なッ、何すんだよ急に」
 ポニーテールを軽く仰け反らせて雪乃が怒る。
「この方が無理なくできると思う」
 お互い寝るのが一番楽だが、見えない状態で初めてのフェラチオを受けるのはなかなかに勇気が要る。
龍麻が座った状態だと雪乃がかなり無理な姿勢になるので、力加減を間違える可能性がある。
という判断で龍麻は立ちあがったのだが、ペースを狂わされた雪乃はやや不機嫌になったようで、
眼の前にあるものに当たり散らした。
「それはともかく、なんでもうこんなになってんだッ」
「なんでって、雪乃と抱きあってキスしたらなるよ俺は」
 当然のように答える龍麻に、どう応じれば良いか混乱したらしく、雪乃は黙ってしまった。
「怖いなら無理にしなくてもいいんだぞ」
「こ、怖くはねぇよ……ちょっとびっくりしただけだ、こんなもん」
 明らかな強がりをそうではないと見せかけるつもりか、
雪乃は龍麻の下着を一気にめくり、屹立を露出させる。
解放された肉の柱は堂々たる威容を雪乃に示し、今にも襲いかかりそうに漲っていた。
 練習したバナナに匹敵するほどの大きな男性器に、雪乃は萎縮している。
龍麻の逸物をまともに、至近距離から見たのは初めてで、
気後れするなというほうが無理な話だ。
それでも自分からすると言った手前、後には引けないと思ったのか、
肉柱の根元のあたりを左手で押さえ、固く目を閉じると、
おそるおそるといった態ではあったが、柱の真ん中ほどを舐めあげた。
 雪乃の初めてのフェラチオは、快感というにはやや強い、痛みの二歩手前といったところだった。
「うっ……」
 発した声もうめき声に近く、不安そうに雪乃が見上げる。
三割ほど演技を混ぜて、龍麻は笑ってみせた。
「大丈夫、気持ち良かったからつい声が出ちまった」
「そ、そうかよ」
 雪乃はそっけないながらも少し嬉しそうだ。
龍麻が髪を軽く撫でて続きを促すと、素直に努力の成果を披露し始めた。
そびえ立つ肉の柱を、根元から先端へ舐めあげる。
蛇行するような技巧もなく、アイスを舐めるように同じ方向へと舌を動かす、
単調な、ただ熱心なだけの奉仕は、やはり快楽からは程遠い。
しかしその熱心さこそが龍麻が雪乃から受ける快感の重要な成分であり、
そのため雪乃が舐めている部分には充分過ぎるほどの血流が巡った。
「ふっ……ン……」
 慣れてきたのか、あるいは怒張が発する熱にあてられたのか、雪乃の舌技も少しずつ大胆になっている。
ほんの舌先だけで舐めていたのが舌腹も使うようになり、さらには食んだりもして牡を歓待する。
半ば見守るようにしていた龍麻も、次第に本気で気持ちよくなりはじめ、
自分の好みを伝えることにした。
「もう少しゆっくりがいいな」
 要求はすぐに叶えられ、舌の動きが遅くなる。
雪乃も楽になったようで、荒かった鼻息が穏やかになった。
「あぅ……ぁ、っうう……」
 まだ恥ずかしさがあるのか、奉仕には途切れる時間があり、技巧も稚拙なため、
龍麻の快感は腰の辺りで留まり、中々その先には進めない。
どうしたものかと龍麻が思案していると、雪乃の動きが止まった。
疲れたのかと龍麻が声をかけようとすると、雪乃はおもむろに口を開けて屹立を咥えた。
豪胆な龍麻も肝を冷やしたほどの勢いで、亀頭が口の中に消える。
口腔を満たす逸物の、想定以上の大きさに、雪乃はしばらく手こずっていたようだが、
どうにか息を詰まらせず、また龍麻にとっては幸いなことに噛みちぎらずに落ちつくことに成功したようで、
今度は明確な快感を龍麻は感じ始めた。
「んッ、んぐ、んんッ、んむッ」
 忙しい息遣いが響く。
いきなり奥まで、というわけにはいかず、先端から半ばほどまでを咥えるのがやっとだが、
熱心なのは充分に伝わってきて、龍麻はくすぐったさの混じった快感に酔う。
亀頭の辺りをさかんに這い回る、というよりは疾走するような勢いではあるが、
とにかく慣れない動きを懸命に行う雪乃に、龍麻は大いに昂った。
頭上から見下ろすポニーテールを優しく撫でると、雪乃が動きを止め、上目遣いで眼を合わせる。
「すっげえ気持ちいい」
 恐らくは嬉しさと恥ずかしさで、雪乃の表情が目まぐるしく変わる。
髪を撫でて続きを促すと、すぐに口淫奉仕を再開させた。
 今度は頭を動かしてより深くまで怒張を呑み込もうとする。
根元まで咥えるというわけにはいかず、動きもやはりぎこちなかったが、
初めての雪乃からの行為に、龍麻の基底から頭頂へ、快感が駆け上っていく。
それはまさに氣であり、龍麻は図らずも人体の深奥に触れたのだ。
性力という名で道があり、教えがあるそれは、正しく用いれば大いなる『力』を手に入れられるという。
しかし別の方法で『力』をすでに得ている龍麻は、それを極めるつもりもなく、
ただ快楽のみを追求するつもりだった。
 眼下に雪乃が顔を動かしている。
「んッ……ふッ……」
 かすかに漏れる息とも声ともつかぬ音が、彼女の健気さを伝えてくる。
友人にアドバイスを受けつつ練習したと思われる成果である、
彼女の口の中で滑らかとはいえないまでも動いている舌を想像すると、
叩きつけるような舌鋒ばかりだった数ヶ月前が思い起こされて龍麻は感無量になった。
 それは無論新たな快感となって龍麻の背筋を登り、限界が近づいていることを告げた。
没頭している雪乃の頭に合図して、肉茎を引き抜く。
「なッ、なんだよ」
「もう充分だよ……ありがとう」
 このまま射精してしまうのは、初フェラチオの雪乃には酷だと考えたのだ。
男性の仕組みについて良くは知らない雪乃は、分かったような分からないような微妙な顔をして、
龍麻は吹き出しそうになるのを堪えねばならなかった。
 座った龍麻は愛おしさを両手に込めて雪乃を抱きしめた。
「い、痛えよ」
 雪乃は抗議するが、声に嬉しさが滲んでいる。
フェラチオで龍麻を悦ばせたことは、男勝りな彼女にとって、
自分の中の女らしさを認識させるに充分だったのだ。
「気持ちよかったんなら、またしてやるよ」
 そんな諧謔まで口にする雪乃に、龍麻は頬を擦りつけて応じた。
「ああ、頼むよ……でも、先の話より今はこっちかな」
「……!」
 下腹部に熱い猛りを感じた雪乃は絶句し、頬で龍麻の顔を押してきた。
「お前がこんなにしてくれたんだぞ」
 龍麻が囁くと頬がひときわ熱くなる。
溶けてくっついてしまいそうな頬を離すと、雪乃はもう限界だというように眼を閉じた。
小さく震えるその顔に、龍麻は額、鼻、そして唇の順に自分のそれを押し当てた。
「……っ……」
 薄く開いた唇が小さく震える。
薄桜色のそれを甘く食むと、龍麻は雪乃の手を取って立たせた。
「なッ、なんだよ」
 抱きあっているのが心地良かったのか、やや不満顔の雪乃をなだめ、壁に手をつかせた。
「お、おい……ッ!」
 意図に気づき、怯えた声をあげる雪乃を無視し、
振り向こうとする彼女の手を押さえた龍麻は、そのまま後背から雪乃の腟内に挿入した。
「うあッ……!」
 深く貫かれた雪乃が掠れた悲鳴を漏らす。
誰に聞こえるはずもない、小さなそれが消え去るのを待ってから、龍麻は抽送を始めた。
「あッ、う、あぁッ」
 小ぶりな尻を両手で捕らえ、すでに彼女自身を溶かしてしまいそうなほどに熱い腟道の奥を擦りあげる。
華奢な背中に肩甲骨が浮きあがり、その間を掃くようにポニーテールが揺れた。
右手を伸ばし、下から支えるように乳房に掌を添え、今度は緩急をつけて数度、猛る肉槍を突きこんだ。
後背位――いわゆる立ちバックという体位は、雪乃は初めてのはずだ。
雪乃が初フェラチオをしてくれたのだから、こちらも何か初めてのことをしてやるべきではないかと龍麻は考えたのだ。
新鮮さが刺激になるだろうと思ったのだが、目論見は外れたようで、
雪乃が示したのは強い拒否反応だった。
「やだ……ッ、これやだ……ッ!」
 顔が見えないのが嫌なのか、それともよほど恥ずかしいのか、
雪乃は子供のように頭を振って駄々を捏ねる。
勝気な少女が見せた弱さに、一瞬、このまま続けようかという欲望が龍麻の背筋を走ったが、
自制すると屹立を引き抜いて雪乃を身体ごと振り向かせた。
「あ……」
 雪乃が少し泣きそうな顔をしているのは、怒らせたと思っているのか、
快楽が中断したからか、おそらく両方だろう。
龍麻は無論怒ってなどいなかったが、わざと乱暴に腰を抱き、口の中に舌をねじ込んだ。
「うッ、んむッ……!」
 荒々しく、その実巧みにコントロールされた舌遣いで雪乃を翻弄する。
初めて味わう苦しさと同居する快感に、為す術なく翻弄された雪乃は、
龍麻が口を離すと独りで立っていられないほど蕩けていた。
「あ……う……」
 呆ける雪乃の顎の先に、濁った唾液が伝う。
それを拭ってやることもせず、彼女の片足を抱えた龍麻は、
まだ生々しく口を開けたままの淫唇に自身を突き挿した。
「あうぅッ……!」
 沼と呼べるほどにぬかるんでいる洞を、一気に奥まで貫く。
たまらずしがみついた腕に爪を立てる雪乃に構わず、長いストロークで責めた。
「あッ、うッ、ああッ……!」
 喉を震わせて絞りだす掠れた喘ぎと、そこに混ざる粘液が撹拌される卑猥な音が、龍麻の鼓膜に快い。
彼女の双子の妹と比べて細い足を太腿から抱えあげ、龍麻はさらに雪乃の秘奥を突いた。
「ううッ、あぁ……ッ……!」
 何かを言いたそうな形をする唇は、結局意味のある言葉は紡ぎだせす、
龍麻の意のままに淫声を吐くだけだ。
しかし雪乃がそれに対して怒ることはもうなく、他人に――それも、男に心身を委ねることを、
むしろ望んでいるかのように龍麻の首に両腕を回してうつむき、留めきれない甘い喘ぎをこぼし続けた。
 首に触れる掌の熱に、龍麻はいよいよ攻勢を強める。
片足立ちの雪乃をしっかり支え、自身も軽く膝を落として雪乃の腟奥を穿つ。
ややきつめの洞を縦貫し、雪乃の反応が良いところを何度も抉った。
「うッ、あ、たつ、まッ……!」
 雪乃が名前を呼ぶのは、絶頂が近い時だ。
もう少し愉しんでいたいという気分もあったが、龍麻はひときわ力強く腰を打ちつけた。
「あっ……あッ……!!」 
 雪乃は二回、大きく身を震わせて頂へと登りつめた。
身体から一気に力が抜け、龍麻は慌てて支える。
照れたように小さく笑った雪乃は、龍麻の首に腕を回して体重を預けるのだった。

「次はいつ会える?」
 龍麻の腕の中で、雪乃はほんの少し身を硬くした。
「来週はさ、ちょっと忙しいんだ」
「そうか……」
 残念そうな顔をすることで、龍麻は雪乃を喜ばせた。
「オ、オレだってあ、会いたいけどよ……どうしてもってんなら……」
「いや」
 明快に否定することで、今度は雪乃をわずかに苛立たせる。
「大事な用事なんだろう? おろそかにしないほうがいい。それに」
 雪乃の肩を抱き寄せ、額に唇を寄せて龍麻は言った。
「そうやって無理やり会うと、今度は離したくなくなっちまう」
 かなり芝居がかった言い方にも、雪乃は感激し、強く抱きついてきた。
「そッ、そんなのオレだってそうなんだからなッ」
 二人はしばらく無言で抱きあっていたが、やがて雪乃のほうから名残惜しげに身体を離した。
「そろそろ戻んねえと」
 背中、腕、手と伝いながら、指先を最後まで離そうとしない雪乃に、
龍麻は中指の爪に最後の口づけをした。
「またな」
「お、おう……それじゃなッ」
 最後まで名残惜しそうにしながら、雪乃は道場を出ていった。



<<話選択へ
次のページへ>>