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翌日、何も無かったように振る舞う彼女を見ながら、
龍麻の頭の中には放課後、彼女をどう犯すかしかなかった。
授業など聞く気にもなれず、学校が終わった途端に彼女の手を引いて自分の家へと連れ帰った。
危うく昨日と同じたぎった欲望をそのままぶつけそうになって、
懸命に自制し、彼女を惑わせるための愛撫を行う。
葵は諦めたのか、それほど拒まずに行為を受け入れたが、屈しまいとする瞳が龍麻には印象的だった。
だが、彼女は精神こころはともかく、肉体の方は意外なほど脆かった。
わずか二日目にして、憎悪で凝り固まっているはずの彼女は快楽を享受し、絶頂を迎えたのだ。
自分の手管が優れていたとは自惚れない──
が、彼女がこのやり方で感じるのなら、利用するまでだった。
恐らく初めての絶頂だったのだろう、呆ける彼女の顔はたまらなく美しく、
龍麻は無闇に犯したくなる衝動を必死に堪えねばならなかった。
その日、龍麻が果てたのは一度だったが、葵には片手の指では足りないほど絶頂を迎えさせた。
一度達する度に、少しずつ、確実に大きくなっていく反応。
心では拒んでいても反応してしまう彼女を追い詰めていくのは、直截挿入するよりも愉しかった。
眉根を寄せ、懸命に快感を押し殺そうとしながら、その実打てば響くように愛撫に反応する身体。
幼い頃、泣き顔を見たくて少女を苛めていたことを思いだし、龍麻はより悪辣に葵を弄んだ。
その日最後のオーガズムを与えられた葵は、
もう指の一本すら動かせなくなったらしく、ぐったりと崩れ落ちた。
満足感と共にいくらかの理性が戻ってきた龍麻が背中を撫でてやると、
彼女は微かに背中を震わせ、そして──身を預けてきた。
彼女は気を失う寸前であり、それは無意識下の反応に過ぎなかったのかもしれない。
だが、それが──その取るに足りぬ反応が、龍麻の意思を決定付けたのだった。
あれから、まだ一週間。
葵の拒絶は既に形式的なものになっており、彼女はもう、
こうして自分に抱かれることを嫌がってはいない。
まだ理性の均衡は危ういところで彼女を護っているようだが、それも近いうちに崩れ去ることだろう。
一週間前の彼女を見せてやれたら、どんな反応を示すだろうか。
変わり果てた──否、自分の望み通りに変えた葵の背中に向けてほくそ笑みながら、
龍麻は彼女を挿し貫いた。
屹立が彼女の剥き出しの肉とこすれ合う。
全身でそれが行えないことを残念に思いつつ、勢いをつけて、
葵にも淫らな肉音が聞こえるように腰を撃ちつけた。
「やっ、あっ……!!」
身体が燃え、心が灼ける。
あれほど厭なはずだった男が、泣いてしまうほど快い。
胎を割る異物に、蹂躙じゅうりんされたいと願ってしまう。
屹立が入ってくる葵の頭の中は、悦びに支配されていた。
太い柱が細い道を裂き、かさの部分で壁を抉っていく。
一週間前に覚えさせられたばかりの刺激は、瞬く間に葵を支配するまでになっていた。
背後から獣のように貫かれて耐えがたいはずなのに、
まだ半ばほどを残している挿入を、腰を振ってねだってしまう。
身体の中のぬかるんだ隘路を肉塊が擦りあげていく悦びに、葵は尻を高々と持ち上げて酔った。
力強い手で腰を押さえられ、体液にまみれた肉塊が一気に入ってくる。
身体の奥深くにある隘路の終点にまで達した彼は、そこにある何かを突いて去っていく。
それが何かを葵は知らなかったが、そこが最も気持ち良い場所だということは解っていた。
乳首や淫核にも劣らない快感の源。
そこに触れられると、理性で包みこんでいた快感を裏返しにされるような、
凶暴なまでのふるえが全身を蝕むのだ。
「あっ、あっっ、うぅ……っ」
開きっぱなしの唇から涎が伝い、手の甲に落ちる。
だが、だらしないという意識は既に葵の中にはなかった。
それよりも腰を掲げ、尻を差し出してあの恍惚を得たい。
狂ってしまったとしても構わないから、もっと奥まで欲しいという淫欲が、葵の脳裏には瞬いていた。
「うんっ、ふっ……あぁっっ」
深々と熱杭を撃ち込まれ、力強い指先に乳房を握りつぶされると、
痛みよりも先に悦びが葵の中を駆けぬける。
胎に丁度収まる屹立や、掌に丁度覆われ、掴まれる乳房の大きさは、
彼の為に自分は生まれてきたのだ、とすら思わせるのだ。
そんなはずはない、そんなことがある訳がない、と、快楽の狭間で否定してみても、
求めていた甘すぎる愉悦が下腹を浸していくと我を忘れ、嬌声を弾けさせてしまう。
「わかる? 葵の……俺のこと、凄く締めつけて」
抽送を止めた龍麻が耳元で囁く。
卑猥な言葉は思考に溶け、彼が告げた自分の身体を葵に意識させた。
蜜を垂らし、彼の性器を咥えこんでいる、淫らな秘唇。
龍麻によって言葉を与えられたその部分は、彼の為に用いられる。
それで何がいけないのだろうか。
短い呼気を続けざまに吐きながら、葵は動きの止まった龍麻に催促した。
続けて。
もっと私を犯してください。
声にはなっていないその懇願は、しかし龍麻には届いたらしく、再び熱い塊が胎の中を動き始めた。
「あぅっ……くぅっ……ん」
背後から聞こえてくる水音が、自らの喘ぎにかき消される。
葵は絶頂が近いことを、肉体で知った。
反った背中を疾る、甘美なさざめき。
その最後のきざはしとなったのは、龍麻の絶頂だった。
荒い息遣いが水音に紛れて聞こえる。
彼も、達しそうになっている──遠いどこかで葵がそう思った直後、胎が膨れた。
「……っ!」
龍麻の体液が膣に満ちる。
熱いほとばしりはたちまち粘膜に染み入り、躯に吸収されていく。
それが意味するものを知っていても、葵は充足感しか抱かなかった。
もう子宮が、精液の味を憶えさせられてしまっていたのだ。
「あ、あ……っ!!」
快感を言葉に変えて吐き散らす。
それでも持ち上げた臀部、その中から爆ぜた快感は受け切れず、身体が痙攣した。
「あぁ、あぁぁ……」
気持ちいい。
わからない。
頭の中は、真っ白になったまま何も思い浮かばない。
それなのに、何かが満ちてくる。
温かい何かが。
だがその正体を追うことは出来なかった。
痺れ、動かす余裕もない手足。
龍麻に躾られた女の部分が、流しこまれた白濁をどろりとこぼす。
酷く生々しいその感触は、しかし、何故か頭の中に満ちる何かと相反するものではなかった。
太腿を伝う粘液を、葵はもやのかかった頭で、惜しいと思っていた。

自らの重みを支え切れず、身体が崩れ落ちる。
抜け落ちる肉柱。
愛おしいもの。
東京の空のような濁った思考の中で、微かに何かがまたたく。
さっき満ちかけたものと、同じようで違うもの。
その正体を、葵はもう知っていた。
「どうする? 少し休む?」
優しい声。
優しい愛撫。
優しい──男。
気だるげに龍麻を見やった葵は、何も言わず顔をそむけた。
龍麻が背後から被さってくる。
背中に触れる胸板。
尻に当たる昂ぶり。
そして──
初めてのくちづけに、涙は流れなかった。



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