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「あぁ……あぁ、龍麻……!」
龍麻の首を抱き、強くしがみついた葵は、荒い呼吸を耳に浴びせた。
「龍麻の……いつもよりも、大きいわ」
「葵だって、こんな濡れてるの初めてだろう」
顔が見えないのが効を奏しているのか、それとも、
よほど興奮しているのか、淫らを煽る言葉も自然に口を衝く。
龍麻が屹立を奥まで挿れようと腰を動かすと、葵も手足のしがみつく力を強めた。
「くっ、ふ……!」
やや高めの声は意図せず漏れてしまったもののようで、慌てて葵が手で口を押さえる。
それはかえって龍麻を焚きつけることとなって、葵の腰を抱いた龍麻は、
耳に顔を寄せると、こちらもうわずった声で囁いた。
「あまりゆっくりもしていられないことだし、動くぞ」
手で口を覆ったまま頷く葵を待たず、腰の動きだけで突きこむ。
「……っ!」
緩やかな動きとはいえ、深いところを小突かれて、葵が喉を反らせた。
それでも健気に口は押さえたままで、くぐもった喘ぎが指の間から漏れる。
龍麻は常ならみせる葵への気遣いも忘れ、彼女の腰をしっかり掴むと、
彼女の膣に撃ちこんだ熱杭を引き抜き、再び挿入した。
「っふっ、うぅ……っ……!」
口を押さえたまま、葵が鼻息を漏らす。
昼間ならたちまち消えてしまいそうな小さな声も、
四十人中二人しかいない教室ではいやに大きく聞こえた。
少なくとも発した本人にはそう感じられたようだった。
「くッ……、急に締まって……っ」
収縮する肉襞の心地よい圧迫感に呻いた龍麻は、葵の耳朶に触れる。
熱せられて赤く熟れた耳は快感の対象となったらしく、葵の肩がすくんだ。
豊かな黒髪が揺れて、嗅ぎ慣れた香りが龍麻の鼻腔を掠めた。
「バレたら二人とも、ただじゃ済まない……でも、今日は葵がしようって言ったんだからな」
言い放つと同時に腰を突きだす。
何か言おうと振り向きかけて不意を突かれた葵の、目に涙が浮かんだ。
あと三十分早かったなら、夕暮れの光が照らし、悪鬼だろうと慈悲を与えずにはいられないような、
悩ましげな表情だったろうが、陽は沈み、月明かりも届かないこの場所では、
唇さえ触れられる距離にいる龍麻でさえ、彼女の顔は見えない。
龍麻に伝わるのは、息遣いと媚肉のうねりだけだった。
余裕を失っているようすの葵に、龍麻は激しい抽送をはじめた。
肉路から雁首が抜けそうになるまで腰を引き、一気に根元まで挿れる。
粘液に満たされた膣穴は、屹立を拒むことなく受け入れ、
傘によって路を拡げられながらもすぐに径を縮め、侵入者に対するのだ。
「うっ、うッ……うふっ、んんっ……!」
肉壁を掻かれて葵の尻が跳ねる。
龍麻の緩急をつけた動きは葵にたやすく淫らの花を咲かせ、
なんとかこらえようとする喘ぎ声も、徐々に音がつきはじめていた。
押し殺した声は、龍麻の欲望を加速させる。
相手の姿さえ見えない闇の中で感じるのは、喘ぎと共に耳に注がれる淫熱と、
彼女の膣内に挿っている器官に伝わる同質の熱だ。
手足を巻きつける葵の、いつになく積極的な痴態を灯りの下で見たかったと思いながら、
龍麻は抽送を繰り返した。
「う……ッン、ああ……龍麻……っ……!」
葵が喘いだとき、机が揺れ、大きな音を立てた。
二人は繋がったまま、慌てて気配を殺す。
訪れた静寂は去ることがなく、二人を一安心させたが、
龍麻は、これ以上音を出さないようにする必要を感じた。
「なあ葵、ちょっと掴まってみろよ」
「えっ……?」
葵は意図を図りかねたようだが、指示には従い、龍麻に身体ごとしがみつく。
呼吸を整えた龍麻は、葵のスカートに手を入れ、尻を持ちあげると、一気に身体を持ちあげた。
「きゃッ……!」
暗闇の中で突然もたらされた浮揚感に、葵のしがみつく力が強くなる。
それを快く思いながら、龍麻は一度、腰を打ちつけた。
「ふッ、くッ……待ってっ、お、奥……まで……っ……!」
未知の領域にまで侵入され、葵が苦しげに呻く。
初めて聞くような葵の淫声に、龍麻は再度、鐘を鳴らすように肉茎を突いた。
「……っっ、だ、駄目っ……!」
切羽詰まった鋭い囁きが龍麻の耳を打つ。
激しい呼吸を彼女に気取られないよう声を殺して整えた龍麻は、赤く熟れた葵の耳を甘噛みして言った。
「こっちもあんまり余裕がないからな。激しくいくぞ……!」
言うなり抽送を再開した龍麻は、もっと快楽を堪能しようとする心に逆らうように腰を打ちつける。
汗ばむ手を一杯に開いて大きな尻を支え、他にすがるものもなく、龍麻のみを支えとする葵に、
渾身の力で淫路を貫いた。
「あう……ッ……!」
肉と肉がぶつかりあう音と、かき混ぜられる潤滑の体液はすでに、
押し殺された喘ぎ声よりも大きく響いている。
机の音を気にした龍麻も、淫欲を誘うそれらの音をもっと聞きたくなっていた。
左腕で背中を抱きかかえ、もう片方の腕で葵の片足を持ちあげる。
「……! い、や……恥ずか、しいわ……!」
暗闇とはいえ足を大きく開かされた葵は当然羞恥に身もだえたが、
それを圧する快楽に抵抗もあえなく潰えてしまう。
「あ、あ……ッ、たっ、龍、麻……、わ、私……っ、こんなの、ああ、駄目ぇっ」
「恥ずかしいなら止めようか?」
ことさら抽送の速度を龍麻が緩めると、葵は耐えかねたようにしがみついてきた。
恥じらいもなく熱い吐息を浴びせ、唇を重ねる。
「意地悪……しないで……お願い……」
「それじゃ、机に寝ろよ」
よほど切羽詰まっているのか、葵は恥ずかしがる素振りさえ見せずに促されるまま横になる。
頭から尻までを机に乗せ、軽く開いた両足をだらりと垂らした、
淫欲に全てを投げだした美少女の姿を見て、けだものと化さない男はいないだろう。
龍麻も例外ではなく、葵の両足を丸太のように抱えると、
腰の動きだけで屹立を淫口に添え、深く挿しいれた。
「んんッ……!」
充分にほぐされた膣内は、葵がのけぞるほどたやすく男根を受け入れ、歓待する。
蜜を満たし、蠕動で牡を奥へと導きいれると、収縮を強めて逃すまいとするのだ。
「ッ、あ、龍……麻……!」
口に押し当てていた手の甲の下から、掠れた喘ぎを漏らして葵が名を呼ぶ。
呼ばれた自分の名前を喜ぶように、あるいは不満であるかのように、龍麻は深く彼女を貫いた。
「――ッ!」
容赦のない抽送に、葵はびくりと身を震わせる。
固い机の感触があってさえ、ここが教室だということを忘れてしまうほどの悦楽だった。
両足を固定されて奔放な、激しいストロークで膣内を掻きまわされると、
龍麻の思い通りにされているのだという被虐めいた悦びが身体中を駆けめぐり、
すでに幾度か軽い絶頂を迎えている。
それでも抽送は留まる気配を見せず、葵は半ば無意識に、膝から下を彼の腰に巻きつけた。
「!」
腰を挟みこむ両足に、龍麻は驚く。
見た目から想像できるような貞淑な女性ではないにせよ、好色というわけでもない葵が、
このような行動に出たのは初めてだった。
一瞬、躊躇したものの、葵もこのシチュエーションに興奮しているのだと納得し、
すぐに激しい興奮が取って代わる。
葵の股を引き裂かんばかりに両足を抱えた龍麻は、全力で腰を叩きつけた。
媚肉がうねり、肉柱に蓄えられているものを搾り取るような収縮をはじめる。
そのまま果てたい快美な衝動に耐え、龍麻はさらに強く、彼女の深奥へと屹立を埋めこんだ。
「あッ……あ、ァ……ッ!!」
葵が胸を反らせ、手の甲を強く口に押しつける。
それは葵が絶頂に至るときの仕種だと知っている龍麻は、最後の情動を彼女の膣内に叩きつけた。
「う……っ、ん……ッッ……!!」
それが彼女の本質であるかのように、激しく媚肉が収縮する。
一瞬たりとも放すまいと男性器を絞めあげ、搾りとろうとする動きに、
龍麻は束の間耐えるのが精一杯だった。
圧着したかのように葵と接合したペニスが、限界を超え爆発する。
堪えに堪えた射精感を一気に解放し、脊髄を疾る、目もくらむような快感に酔いしれた。
「あぁ……あぁ、龍、麻……」
消えそうな声で自分を呼ぶ葵に龍麻は顔を寄せ、くちづける。
絶頂を迎えたばかりだというのに、しがみついてくる力の意外な強さに驚いたが、
引いていく興奮の快美な気怠さに、すぐに失念するのだった。
もうしばらく余韻に浸っていたいところだったが、場所も時間もそんな余裕はないことを
思いだし、二人はあわただしく服装を整えた。
「すっかり暗くなっちまったな。早く帰ろう」
「ええ」
龍麻の後をついて教室を出ようとした葵は、扉を閉めようとして最後に、教室の隅に視線を放った。
そこには一面の黒が広がっている。
数秒視線を停滞させた葵は、夜に入り、黒に覆われたはずの教室の片隅に紫を認めて、慌てて扉を閉めた。
すぱん、という大きな音に、龍麻が驚いて振り向く。
「おっ、おい、誰かに気づかれちまうぞ」
「ごめんなさい、行きましょう」
まだ何か言おうとする龍麻の手を軽く握り、葵は歩きだした。
葵は紫が嫌いだった。
昔からではない。
ほんの数ヶ月前、龍麻と葵が共に経験したあるできごと以後、紫が嫌いになったのだ。
それも、夕暮から夜に移ろう、ほんの少しの紫。
完全な漆黒ではない、どこか異界と繋がっていそうな魔の刻を、葵はほとんど怖れるようになっていた。
陰と陽を繋ぐ、逢魔が時と同じ色の制服を着ていた、
龍麻に鮮烈な記憶を植えつけて現世から去った、一人の少女。
直接乱暴しようとした男でさえ、哀れみはしても憎みはしなかった葵が、ただ一人嫌う女。
あの日、彼女は紅蓮の炎に呑まれ、龍麻の居る世界から消失した。
自失する龍麻を連れ、仲間と共に逃げだし、部屋を後にしようとした葵は、
不思議な衝動に駆られて燃えさかる部屋を振り返った。
炎はすでに部屋全体を包み、おぞましい実験施設も、それを用いていた彼女の兄も、
そして、彼女ももう見えない。
だが、葵は炎の中に、一本のリボンを見た。
少女の髪を束ねていた、制服と同じ深い紫色のリボンは、立ちすくむ葵の前で、
意志を持つように舞い、燃え尽きた。
その日から葵は紫を怖れるようになった。
誰にも、親友の小蒔にも話してはいない。
夕暮が深く伸びた日のわずかな刻、龍麻の傍にある紫を葵は忌む。
彼女が龍麻をさらってしまいそうな気がするから。
もうこの世界には存在しないはずの誰かが、永久の陰からわずかに覗いた陽を奪い去ろうと
手を伸ばしそうな気がするから、龍麻が気づいてしまわないように、そして、
龍麻は自分のものなのだと知らしめるために。
そのためになら、葵はどのようなことでもするつもりだった。
「夜の学校って怖いな」
「そうね」
歴戦の強者とも思えない台詞に、葵は小さく笑い、龍麻は鼻白んだように前を向いた。
照明の抑えられた薄暗い廊下は、龍麻の言う通り、異形の存在が現れそうなほど不気味だった。
しかしそこにもう紫はない。
全てを呑みこむ黒は、むしろ葵を安堵させる。
暗闇ならば、彼女は現れないのだから。
下駄箱まであと少しというところで、龍麻が遠慮がちに口を開いた。
「あー……あのさ」
「何?」
「その……俺の家に寄っていかないか?」
「もう……」
頬を赤く染めた葵は、しかしまんざらでもないというように指先を軽く触れさせた。
それだけで興奮し、小躍りした龍麻は、葵の手を掴んで早足で下駄箱へと向かう。
龍麻に手を引かれる葵の背後には、黄泉へと続く紫が広がっていた。
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