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もうそこは完全に準備を整えているのだろう、と思いつつ、
まだ責めたりない見事な膨らみに意識を戻す。
手で下から持ち上げると、わずかに形を崩して重みが加わった。
息吹いた蕾を愛でるように撫で、大きめに開けた口に含み、啜るようにしてすぼめていく。
ゆっくりと、力を加えずにこうしてやると、亜里沙は快感の源を襲う甘痒さに悶えた。
「あッ、そ、んな……吸い方……ッ」
鼓動よりも遅い間隔で、けれど決して途切れさせず、乳首に軽く歯を当て、赤ん坊のように弱く吸う。
声をあげるほどでもない快感は、逃げ場を得られずに溜まっていき、
亜里沙は一定の間を置いて与えられる切なさに小さく身悶えするしかない。
「……ッ……」
また一つ喘ぎがこぼれた。
後頭部に落ちかかる彼女の恍惚は、そこから脳に直接染みこんできて、龍麻をも欲情させる。
谷間に楽々顔が埋まりそうな巨乳は、小さい方が感度が良いという俗説を軽く覆し、
亜里沙をいとも簡単に追い詰めることの出来る部位だ。
右手で彼女の左の乳房をやんわりと揉みしだきながら、龍麻は吸う力を強くする。
「……ふ、ッ……ん」
また熱いもやが噴きこぼれ、頭に響く熱気に酔いしれた。
顔を上げて亜里沙を見れば、日本人にしては薄い黒目がぼんやりと潤んでいる。
目を合わせた途端、その顔は崩れ、亜里沙は一心にしがみついてきた。
「もう、いい……でしょ」
か細い声で訴えかけながら、下腹を屹立に押し付けてくる。
もう少し焦らしたかった龍麻も、しこりきった胸の先端で身体をくすぐられては断りようがなかった。
手探りでゴムを着けると、亜里沙が早くも腰を浮かせる。
腰だけは支えてやって、龍麻は装入は彼女に任せることにした。
膝立ちになった亜里沙は肉茎に手を添え、そろそろと腰を下ろしてくる。
この体位でするのは初めての二人は、ややぎこちなく繋がった。
「はぁッ……はぁッ……」
それでも、やはり興奮しているのか、亜里沙はしっかりと龍麻の頭を抱きかかえ、
常になく身体を密着させてくる。
豊かな胸に公認で顔を埋めながら、龍麻は彼女のわき腹の、少し背中寄りの部分をすっと指で掃いた。
「ひッ、ん……っ!!」
弱いところを責められ、力が抜ける。
その途端にすとん、と彼女の身体が沈み、屹立のほぼ根元までが温かなぬくもりに包まれた。
「……!!」
亜里沙は声も出ないらしく、龍麻の肩を半ば噛むようにして堪えている。
龍麻が心地良い痛みを受けとめていると、急に息が詰まるほど抱き締められた。
「……馬、鹿……っ……」
本気で怒っているような口調が、血流を与える。
己の器官が彼女の膣を押し広げていくのを、龍麻は確かに感じた。
それは亜里沙にも判ったらしく、微妙に抱擁が強まる。
「ホントに……スケベなんだから」
長めの沈黙の後にそう呟いた亜里沙に、龍麻は肯定のキスをした。
呼吸ほどには荒くないキスの最中に、屹立が感じる濡れた肉の味わいがうねりだす。
少しずつ、亜里沙の腰が動き始めていた。
複雑に形を変える媚道は、時折不規則に締まる。
いつもよりも狭い膣に心地良く屹立を弄ばれ、つい龍麻はキスをしたまま快楽を口走った。
すると亜里沙の口腔から、笑いの波動が流れこんでくる。
舌によって掻き回されたそれは、口の中の粘膜に溶けていって、快感と区別がつかなくなっていった。
「ふふッ」
動きを止めた龍麻に、亜里沙はこれまでのお返し、とばかりに腰を浮き沈みさせる。
その動きは小さなものだが、受動の快感に龍麻は打ち震えた。
充分過ぎるほどに潤った淫靡な洞は、絶えず形を変えて肉茎を苛んでくる。
肉欲の檻の中に完全に捕らえられた淫茎は肉の壁に優しくしごかれて内圧を高めていき、
一瞬の隙に主導権を奪われてしまった龍麻は、
あっさりと果ててしまわないように必死に堪えるしかなかった。
だが亜里沙の膣内はいよいよ潤いを増し、
一秒でも早く精を吐き出させようとしっとりとまとわりついてくる。
こみ上げてくる射精感に危険を感じた龍麻は、思いきって上体を乗り出した。
「きゃ……ッ」
虚を突かれ、バランスを崩した亜里沙の太腿から尻にかけてを抱きかかえ、身体を浮かせる。
「何、これ……あッ、ッん……!」
そのままの姿勢で、龍麻は亜里沙の肢体を揺らし始めた。
「ふッ……う……ン……」
彼女の体重を両腕で支えているために大きくは持ち上げられないが、
足が浮いているので快感は深いらしく、戸惑っていた亜里沙もすぐに順応する。
それでもやはり無意識に緊張しているのだろう、膣の締めつけはきつくなっていた。
吸いつく襞の感触を屹立の半ばほどまで愉しみ、また戻していく。
目の前で美しく張った乳房が激しく揺れると共に、ぞくぞくするような愉悦が背筋を疾り抜けた。
限界が近いと感じた龍麻は、浮かせた亜里沙の身体を荒っぽく離した。
ぶちゅっ、という水風船を地面に落とした時のような水音が、ぶつかった股間に弾ける。
「ひぁッ……!!」
沈んだ彼女の身体が、大きく仰け反った。
思いきり奥まで抉られた亜里沙は、悲鳴をほとばしらせていた。
「あ、ァッ……!!」
嗚咽が消え去る前に、再び。
その二回が防波堤を崩す波涛はとうとなったのか、
亜里沙は感極まった風に手足を縮こめて龍麻にすがりついてきた。
屹立の先端が彼女の奥深くに触れると、隘路が細やかな痙攣を始める。
一足先に絶頂を迎えた亜里沙に、いつにない高まりを覚えた龍麻も、抗うことなく本能に身を委ねた。
腰がすぼまる感覚がやってきたかと思うと、
屹立が爆ぜてしまったかというような射精感が襲ってくる。
確実に受胎させるよう数度に分けて吐き出される精液は、
避妊具を着けていなかったら大変なことになっていただろうという勢いで噴き出た。
「ッ……あ……」
体内で膨れた屹立に、波が引きかけていた亜里沙が再び震える。
だがそれはもう小さなもので、余韻を愉しむべく龍麻が抱いてやると、彼女の方から身を委ねてきた。
「波が……深い波がさらっていくみたいで……でも、あんたがいて……幸せで……」
亜里沙の口調は、凪のように穏やかなものだった。
それが今までにない快楽を得たためだったとしたら、思わぬ怪我の功名と言えるかも知れなかったが、
龍麻もそれについて考える力はもうなかった。
彼女の中で少しずつ力を失っていく屹立に言い知れぬ幸福を感じ、
龍麻は丸みを帯びた背中をいつまでも撫でてやっていた。

穏やかな時間から、渋々抜け出る。
取り戻した五感で龍麻が最初に認識したのは、とっくに止まっている洗濯機のことだった。
「そうだ、服……乾燥機入れないと」
力を失ってはいるものの、まだ繋がったままだというのにひどく日常的なことを言う龍麻に、
亜里沙は含み笑いをした。
「……ってことは、その間にもう一回は出来るわね」
そう言いながら、言葉とは裏腹に乾燥機にすら向かわせない、と手足を巻きつかせる。
さてどうしたものか、ちゃんと乾かさないとなぁ、とまた元気になりそうな屹立を敢えて無視した、
案外まめ・・な男は、ふと顔を上げた。
雨は激しさを増していて、当分は止みそうにない。
叩きつける雨音を鼓膜に通していた龍麻は、稲光のように閃いた想いを、
雨音に負けないようはっきりと口にした。
「雨……止まないみたいだからさ、いっそ泊まってかないか?」
初めての誘いに亜里沙も緊張したのが、触れている皮膚を通して伝わってくる。
だがそれはすぐに緩み、温かみが増したように龍麻には感じられた。
「それも悪くないわね」
髪をかきあげた亜里沙が、片手で顎を掴み、自分の方を向かせる。
焦って洗濯物を乾かす必要のなくなった龍麻は逆らわず、代わりに彼女の身体を押し倒した。
雨音は、いつか聞こえなくなっていた。



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