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「あ……ん」
そのままでは膝がぶつかってしまうので、亜里沙はあぐらを解き、
龍麻の腰を挟むように足を前方に投げ出す。
龍麻も一度足を崩すと、彼女の身体を囲うように足を組みなおした。
距離を近づけた二人は、もう一度キスをしようとする。
彼女が好んでつけている、濃い目の色の口紅も今は、生色に満ちた赤に彩られていて、
龍麻の心を捉えて離さない。
しかし、龍麻はその唇を味わおうとする寸前、顔を急停止させた。
「どうしたの?」
「その目の色」
「何よ、別に……いつも見てるでしょ?」
「いや、いつもよりなんか……透き通っている気がして」
一瞬の沈黙の後、亜里沙はいかにも可笑しそうに頬を膨らませた。
「馬鹿ね、それで褒めてるつもり?」
笑われているのだが、彼女の笑顔を見ていると腹の立てようもない。
せいぜい憮然としたふりをしていると、頬が擦りよってきた。
「でも……ありがと」
あまり無駄な肉のついていない頬は、けれど柔らかく、温かい。
龍麻は不意に、何か液体が伝うのを感じたような気がしたが、
亜里沙の抱擁はきつく、顔を動かすことは出来なかった。
「他のヤツなら見え透いてて腹が立つんだろうけど……
どうしてかな、あんたの言うことなら素直に聞けるわ」
亜里沙の声に強さはなく、それが龍麻には愛おしい。
腋から回した手で背中を撫でてやると、呼気が静かに抜けていった。
「あんたは……見てくれだけのヤツなんかとは違うわ。
強くて、優しくて、あたしを解ってくれる。スケベだけど」
冗談めかしてはいても、握っている手がきゅっと締まり、情愛を伝えてくる。
絡めた指をそっと滑らせていた龍麻だったが、亜里沙が身じろぎした拍子に、
まだ萎えていない屹立が彼女に触れた。
「……」
何か大事な場面を台無しにした気がして、龍麻は思いきり赤面する。
すると亜里沙が、熱くなった頬に優しくくちづけてきた。
「あんたのそういう初心うぶなところ、好きよ。……それに、スケベなところも」
龍麻が反論しようとすると、勢い良く唇を奪われた。
今度は最初から舌を伸ばしてくる亜里沙に、龍麻も応える。
顔だけを突き出してキスをしながら、手でお互いの陰部をまさぐりあう。
それはいつになく興奮するやり方で、すぐに二人の息は荒いものになった。
「はッ、ふッ……んふッ」
欲情した呼気を浴びせかけ、浴びせられる。
熱い吐息がかかる度、触れている陰部が湿り気を帯び、屹立が硬さを増していった。
姿勢に無理があるからか、亜里沙の手つきはひどくぎこちない。
だがそれも結局は新たな快感の糧となり、龍麻の興奮を沈めることはなかった。
彼女の指に脈動を伝えると、指を愛液が湿らせる。
貪る快楽は合わせ鏡のようで、腰に狂おしい衝動が溜まっていった。
亜里沙の舌は力強く蠢き、口腔を侵食してくる。
それはスケベだ、と評した龍麻よりも遥かに淫靡な動きで、快感をストレートに求めてきていた。
やや受け身の姿勢で龍麻はキスを続ける。
絡めとられる舌先に、熱い呼気が流れ込んできた。
その熱は喉を灼くだけに留まらず、思考をも灼ききろうとする。
一度は理性を保とうとした龍麻だったが、天使の囁きをかなぐり捨てると、
スケベの面目躍如をすべく攻めに転じることにした。

ほとんどいさかいのようなキスを、五分ほども続けているとさすがに疲れ、
一息ついた龍麻は口許を拭った。
亜里沙も疲れたのか、顎を肩に乗せてくる。
明るい茶色の髪の毛先をいじりながら、龍麻は苦笑いした。
「エロい……よな、俺達」
「嫌?」
「ぜんぜん」
真顔で答え、シャツに手をかける。
無造作に二つだけ止められていたボタンを外すと、白い布地は豊満な胸に押しやられるようにはだけた。
まず左の乳房に手を差しいれる。
上側から皮を剥くように丘の下へと掌を動かすと、簡単に肩からシャツが滑り落ちた。
「ん……」
片側だけを脱がせるのが、こんなにもエロティックだと初めて気付いた龍麻は、
屹立を大げさに感動させて胸の頂きに触れた。
乳暈の表面を細やかに、そっと撫でる。
気性の荒い彼女が好む、繊細な愛撫。
左手を耳朶に伸ばし、同じようにくすぐってやりながら、
乳首が勃つまで撫でてやると、心地良さげに肩に頭を乗せてきた。
指先で触れていた乳房が、掌に乗る。
肌が温かいのは、シャワーを浴びたばかりではない。
彼女の全身から、ゆるやかな期待がもやのように発散されていた。
その期待に応えるべく、龍麻は親指だけでなく、
残った四本の指もハープを弾くように乳房を撫でさせる。
「あっ……っ……」
長い喘ぎが首筋にかかる。
彼女らしくない掠れた声色は、劣情をそそるに充分なものだったが、龍麻は焦らない。
小指や薬指を使って、弱く押すだけだ。
あれほど激しいキスを求めた亜里沙もそれに不満を告げることはなく、目を閉じ、
微かに揺らされる乳房の感触を愉しんでいるようだった。
龍麻はシャンプーの──今は同じシャンプーを使っているはずなのに、
自分とは全く違う香りを吸いこみながら、肩に優しくくちづける。
「……ぁ……」
亜里沙が震える。
しっかりと首に回されている両の掌から、汗が伝わってくる。
更に意識してか否か、胴を挟みこんでいる膝にも力が篭ってきて、
彼女がこの微細な愛撫を悦んでいることは疑いなかった。
こんな弱い刺激でも、すっかり硬くなった尖りを、龍麻は親指で転がす。
特に爪の甲が触れると亜里沙は弱いようで、その度に乳房が重たげに震えた。
「……っ、……ぅ……」
感に堪えない、けれどどこか悔しそうな息漏れが、龍麻の首筋を甘く撫でる。
まだ乳首は丹念に刺激してやりながら、龍麻はもう片方の乳房に食指を伸ばすことにした。
彼女の上体をこころもち起こし、未開の丘を視界に捉える。
ヴェールに覆われた神秘の場所を、まずはヴェールを取らずに唇をあてがった。
「ん……ぁ……」
ぬらぬらと舌を蛇行させ、シャツ越しに乳房の上部を舐めていく。
よほどじれったいのか、亜里沙は胸を軽く突き出して誘ってくるが、龍麻はやり方を変えない。
そのまま頂まで舌を辿り着かせると、シャツの上から亜里沙の弱点をじんわりと責めたてた。
「ば……か……ッ……」
スケベの本領発揮といった龍麻の責めに、亜里沙は首を絞めてくる。
だがその力は弱く、いやらしい男を成仏させることは出来なかった。
唾液でくっきりと形を浮かび上がらせた魅惑の蕾に、
いよいよ直に触れたくなった龍麻は、唇で柔突起を摘まんだ。
「あ……ッ」
力を加えず引っ張り上げ、張力に耐えかねて乳首が離れたところでシャツをはだけさせ、
邪魔になったそれを、果実の皮を剥くように丁寧に脱がせた。
隠すものがなくなった亜里沙の裸身を、龍麻は見下ろす。
大きな双つの丘に阻まれて良くは見えないが、
成熟した身体つきに反して控えめに恥部を隠すに過ぎない蔭りは、
この角度から見るとまた新鮮な劣情をもよおさせた。



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