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「っ、あ……」
雛乃の肢体が期待に仰け反る。
可憐な蕾だった少女は、数限りない行為によって男を焦がれる妖花を咲かせるまでに至っていた。
しかもその花は地中から淫らな養分を吸い上げてさえ、澄んだ美しさをいささかも損なっていないのだ。
赤い縄のみを柔肌にまとい、小鼻をわずかに膨らませて朱に色づく雛乃を見ているだけで、
龍麻は果てそうになる。
危険を感じ、一呼吸置いた龍麻を、雛乃が切なげな瞳でちらりと見やった。
入り口で止まったままの龍麻に、視線だけでねだったのだ。
林檎のように上気させた頬と、そこにうっすらと滲む汗によって張りついた髪は、
息苦しくなるほどの気持ちを見る者に抱かせる。
と言っても、それを見ることが出来るのは世界でただ一人であり、
龍麻はこれからもその至福の権利を手放すつもりなど毛頭なかった。
視線のみでは動かない龍麻に、雛乃の色濡れた唇が開きかける。
しかしまだそこまで羞恥を捨てきれないのか、そこから甘い懇願が漂うことはなかった。
ならば、と、龍麻は身体を倒し、雛乃の顔を覗きこむようにしながら、屹立を埋めていく。
「あ……あっ」
雛乃が顔をそむけたのは、挿入される快感によるものなのか、
それともじっと見られているせいなのか。
いずれにしても腕を縛められている彼女は逃げ場もなく、龍麻にいいように見られるだけであった。
彼女のどんな些細な反応をも見逃すまいと、龍麻は呼吸を止めて己を挿入した。
「あぁっ……」
押し殺そうとして失敗したのか、掠れた喘ぎが彼女の口を衝く。
蕩けてしまいそうな声に、下腹に血がたぎっていくのを、龍麻ははっきりと感じていた。
「は、あ……っ」
雛乃もそれを感じたのか、肩が強張る。
優しい曲線を描く眉が苦しげにたわむが、それが痛みによるものではないと龍麻には無論判っていた。
だから屹立が温かな媚肉に包まれていくのに合わせて歪んでいく雛乃の顔を、瞬きすらせずに見つめる。
「あ……」
彼女の顔から緊張が消え、代わりに恍惚がゆらめく。
永遠に続いて欲しいとさえ願うことがある、愉悦に満ちた時が終わってしまったのを知った龍麻は、
失せてしまった愉悦を補うために口を開いた。
「全部……入ったよ、わかる?」
羞恥を煽りたてる下種な問い。
紅に染まっていた雛乃の頬が、一段と深く色づく。
その移り変わりを愛でるように、龍麻は爪の甲を触れさせた。
伝わる熱は、彼女の胎の熱。
既にひとつに溶け合ったかのような感覚をもたらしている雛乃の膣(で、
龍麻は腰を使わず、卑猥に屹立だけを動かす。
「あっ、あ……」
顔を横向けたままの顎が跳ねる。
声を上げてしまったことで観念したのか、雛乃は目を閉じてではあるものの、小さく頷いた。
微笑んだ龍麻は顔を近づけ、唇の端にくちづける。
わななく彼女の唇が、何を求めているか手に取るように龍麻には判るが、まだ応えない。
舌先で刹那だけ舐めてやると、途端に彼女の全身がうねる。
それは身体の内側も例外ではなく、しっかりと嵌まっている屹立に、
媚肉が絡みつく感触を、龍麻ははっきりと感じていた。
「こっち……向いて」
雛乃の唇が、一度閉じあわされる。
恥ずかしさと欲望がせめぎあっているようだったが、やがて観念したのか、唇は正面を向いた。
薄く開き、蹂躙されるのを待っている唇に、しかし龍麻は舌をねじこまず、
再び彼女の洞の中で己を跳ねさせた。
「あっ、はぁっ……!」
腹からの呼気が逃げ場を求めて雛乃の口を開かせる。
その呼気を全部吸った龍麻は、そのまま彼女の口を塞いだ。
「んむぅっっ、ぅぅ……」
床から離れている腰に手を差し入れて自分の下腹に押しつけながら、口腔をも貪る。
上下の孔を塞がれた雛乃は息苦しそうに小鼻から喘ぎを漏らすが、龍麻は構わず腰を突き上げた。
「んふぅぅっ」
哀れに醜い悲鳴を上げさせられた雛乃は、それでも龍麻が舌を求めると従順に差し出す。
乾いた舌はお互いに貼りつき、ざらざらした感触を伝えてくる。
唾を溜めて改めて絡めていくと、雛乃の舌はそれを待っていたかのように柔らかく包みこんで応えた。
乾いた舌は貼りついてお互いに離れず、思うようにねぶりあうことが出来ない。
そのままの状態で龍麻は下から突き、その感触を愉しんだが、
本格的に抽送を行いたくなって身体を起こした。
「……動くよ」
羞恥を煽ろうと囁くと、期待通り、雛乃は小さくいやいやをするように首を振った。
もう娼婦も顔色を喪うほど交わりを重ねているのに、
初めての時と変わらない初々しい反応に、屹立が膨れる。
雛乃の両足を抱きかかえた龍麻は、それでも始めの数度は自制して控えめに腰を動かした。
「うぅ……っ」
自由を奪った女性を、いいように嬲る──救いがたい性に囚われた龍麻は、
媚穴から抜けてしまう直前まで屹立を出し、また静かに埋めていく。
性器が受ける快感は、指先で感じるそれとは比較にならず、
脊髄から駆け上ってきた快楽が頭の中で坩堝と化した。
それは龍麻の救いがたい性を更に悪化させ、抽送が次第に乱暴なものへと変じていく。
「あっ、ひっ、んんっ、やっ……」
小さく刻まれた悲鳴が、叩きつける肉の音とずれ始める。
せわしなく口を開閉させる雛乃の息が掠れだしたが、龍麻は腰を止めない。
それどころか緩急や小さな左右への動きまで加え、雛乃の淫洞を隅々まで掘り抜いていった。
「はっ…………は……」
絶え絶えな吐息と対照的に、濡れた媚肉の蠢動は細やかになっていく。
絡めとり、締めつけ、引き離すまいとする動きを屹立全体で受けとめながら、龍麻は雛乃の膝を抱えた。
うねり、形を変えた膣が更に狭まり、新たな愉悦をもたらす。
欲望の赴くままに屹立を叩きつけようとした龍麻は、雛乃が肩で身体を支えていることに今更気付いた。
慌てて抱き起こそうとすると、雛乃が濡れた瞳を向ける。
「お願い……です……この、まま……」
「でも」
雛乃は小さく頭(を振った。
それは偽善ぶる龍麻を嗤うようであり、快楽に芯から浸かりたいと懇願しているようにも見えた。
結局龍麻は身体を倒し、抽送を再開させる。
早く終わらせた方が楽になる、と考えたからではあるが、
淫欲に負けたのだ、と言われても否定など出来なかった。
「あっ…………く……ぅ」
雛乃の嬌声は、そんな龍麻を誘うように響き渡る。
気遣っていた龍麻も、時に強く、時に弱く、儚く、淫らに紡がれる唄に抽送を強めていった。
「い、や……ぁ……」
雛乃の絶頂が近づいている。
屹立に伝わる、微痙攣を始めた彼女の秘肉によってそれを感じた龍麻は、
一緒に達するべく彼女の深奥を抉った。
「んぅっ…………た、つま……さ……っ!!」
急に痙攣が激しくなり、身体が揺れる。
屹立が搾りあげられるような感覚に囚われた龍麻は、勢い良く欲望の奔流を吐き出した。
「ひっっ……んっっ!!」
幾度かに分けて放たれた濃い粘液が、瞬く間に隘路を満たしていく。
腰が砕けそうな快感と共に果てた龍麻は、精を吐いた後もまだ痙攣を続ける己と雛乃の繋がりを、
しばらくの間飽くこともせず見ていた。
あまりの快楽にそのまま眠りに落ちかけた龍麻は、
雛乃を解かねばならないことを思いだし、急いで抱き起こした。
ずるりと抜け落ちた屹立に、二人の混じりあった体液がかかる。
彼女を膝の上に乗せたまま器用に縄を解くと、
罪も無く縛められていた雛乃はそれを咎めるでもなくしなだれかかってきた。
「……しばらく」
「え?」
「しばらく、このままでも構いませんか」
「うん……構わないけど」
もちろん龍麻は彼女の望みなら全て叶えてやろうと決めていたが、この時は返事をためらった。
そうすれば、とめどない欲望がまた滾(ってしまうからだ。
しかし雛乃は匂い立つ肌もそのままに身体を寄せてくる。
さすがにこれ以上は彼女に酷(いと、龍麻が地蔵のように硬直して心を抑えつけていると、
雛乃はますます乳房を押し当て、耳朶を軽く噛んできた。
「ひ……な……?」
それは喉がひりついてしまった為に最後まで言えなかったにすぎない。
しかし雛乃は龍麻がそう言うと動きを止め、細い指に意思を伝えた。
傾けられた顔に、雛乃の唇が近づく。
「……」
耳の奥に直接注ぎこまれた言霊に、龍麻が抗う術はなかった。
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