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 力の限り葵を抱きしめる。
肩を掴む左手は骨を触れあわせんばかりに激しく、
臀部を握る右手は肉をむしり取らんばかりに強く。
抱擁などではない、肉体による拘束を、龍麻は容赦なく葵に施した。
「……」
 葵はもがこうともしない。
できるはずがない、龍麻は腕ごと葵を、友人の醍醐雄矢には及ばないとしても
本気の力で締めつけているのだ。
おそらく葵は呼吸すら困難なほどだろう。
だが、課せられた宿命に抗するために鍛えた肉体の全てを、愛する女に注ぐ。
何がおかしいというのだろう?
 五分ほども拘束を続けてから、ようやく龍麻は腕の力を緩めた。
途端に両腕に葵の全ての重みが加わる。
この重みこそが龍麻にとって同じ重さの金などでは比較にならない、
世界で唯一価値のある重量だった。
 顔を胸板に押しつけられていた葵は、理知的な顔に似合わぬぼんやりとした瞳をしている。
龍麻が覗きこめば応じて見つめあうが、唇は薄く開いたままだ。
 くちづけを交わす前に龍麻は、鮮やかな紅を指でなぞる。
「……あ……」
 吐息が爪を濡らす。
指を挿れた龍麻は、歯に指腹を当てて口を開かせた。
「……」
 今度は恥ずかしいのか、葵は息を殺している。
それに構わず口を開けさせたままにしておき、さらに舌を撫でまわした。
「えぁ……」
 小さく葵の頭が揺れるが、龍麻は許さない。
湧いた唾液を指で掬って舌に塗りつけ、耐えがたい羞恥を葵に植えつけていく。
口の両端から唾液が垂れ、息ができない口の代わりに鼻がその役目を果たそうと膨らむ。
その顔はいくら聖女と称えられる葵ですら醜く、
なまじ眉目が整っているだけに醜さが強調されている有様だ。
「あ……ぅあ……」
 知性のかけらも感じさせない間の抜けた声が指に快い。
葵の顔を上向けさせた龍麻は、鼻の穴を覗きこむように顔を近づけた。
「ひ……は……」
 顔をそむけようとする葵に先んじて、唇を奪う。
たちまち葵は嫌がっていたのが嘘のように従順になり、再び身体の力を抜いた。
「う……うっ……」
 乱暴ではないが、深く長いキス。
口腔に大胆に舌を挿しいれた龍麻は、息が続く限りねぶり回した。
「ん……ん、んっ……」
 葵は健気に応じようとするが、男の肺活量に敵うはずもない。
力尽き、蹂躙されるに任せた舌を、龍麻は容赦なく犯した。
「うぅ……あ、っは、ん……う……」
 葵の舌先に付着した唾液を吸い、自分のと混ぜて葵に返す。
受けとった葵が嚥下するまで口を塞ぎ、小さく喉が鳴ると新たな唾液を飲ませた。
彼女の腹に体液が蓄積される――それはもちろん幻想で、
数時間後には消化されてあとかたもなくなっているだろう。
それでも、彼女を内側から、清めることもできない場所から汚していくという妄想は、
龍麻にとって悦びだった。
 尽きるまで唾液を飲ませてから、ようやく龍麻は葵を解放した。
唇には白く泡だった膜をまとい、深い黒の瞳が所在なげに揺れている顔は、
さっきにも増して醜い。
唾液をぬぐってやるふりをして下唇を吸った龍麻は、
葵が呆けている間に制服を脱がせてしまうことにした。
 制服の上下を葵自身よりも手慣れた手つきで脱がせる。
現れた見本のように清楚な純白の下着が、龍麻には気に入らない。
白い肌と流麗な肢体を飾りたてるという目的を完全に果たしているからだ。
引きちぎってしまいたい衝動をさすがに抑え、有無を言わさず取り去った。
「龍麻……」
 恥ずかしげな、しかし愛情に満ちた呼びかけが、呼ばれた男の心にささくれを作る。
その痛みをむしろ歓迎するかのように、龍麻は自分の服も脱ぎ去った。
 全裸になった龍麻は、同じく全裸の葵を全身鏡の前に立たせる。
客観的に自分の裸を見せられるのが恥ずかしいのか、
乳房と恥部を隠そうとする手を掴み、身体の横につけさせた。
「い、や……」
 女神像のように白く、均整の取れた裸身。
清楚と官能が完璧に溶けあった肢体は、世の全ての男達の羨望となるに違いない。
龍麻もすでにペニスが勃起していて、背後から葵の尻に押しつけていた。
むろんその劣情は葵に伝わっているはずで、両足を小さく動かしているのはその証だろう。
 崇拝の吐息を押し殺して、龍麻は手を滑らせる。
右手は胸へ、左手は恥部へ。
「あ……ぁ……」
 葵のかすかな喘ぎは拒絶か、それとも期待か――龍麻にはどちらでも良かった。
 右の乳房を手首に乗せ、左の乳房を掌で包みこむ。
ふくらみがいびつに崩れ、美しい曲線が乱れた。
鏡を見ながら龍麻は、手首から先を動かす。
乳首を指の間に挟み、しこり立っているのを見えるようにしながら、
指先だけをじわじわと操り、心臓をまさぐるように乳房を己のものとした。
「あ……」
 葵の頬が赤らんでいく。
愛ではない、ただ女であることを意識させられるだけの行為に、いつまで耐えられるだろうか。
赤く熟れた禁断の果実を人差し指と中指で交互に転がし、龍麻は悪魔となって聖者を誘惑する。
「乳首、少し大きくなったんじゃないか?」
「し、知らない……わ……」
「絶対大きくなってるって」
「お願い……そんなこと、言わないで」
 いくら毎日のように触っていたとしても、いや、だからこそ、
大きくなったかどうかなどわかるはずがない。
龍麻はただ、葵の意識をそこに向けるためだけに言葉で嬲ったのだ。
そして葵は思惑通り、刺激に敏感な場所を哀れなほどに反応させている。
「別にいいだろ? もう俺以外には見せないんだから」
「……でも……」
 めちゃくちゃな理屈に当然の反応を見せる葵の、乳首をいきなり抓った。
「んうっ……! い、痛いわ……」
 理不尽な暴力を受けて、鏡の中で葵が眉を曇らせる。
それに気づかぬふりをして、龍麻は今度は優しく乳首を撫でた。
ぶどうの皮を剥くよりも丁寧に、たっぷりの情感をこめる。
「ぁ……ん……」
 葵の身体から、怒りや怯えといった負の気配が消えていく。
ほんの少し愛撫しただけでこの変わりように、龍麻は失笑する思いだが、
鏡に映ってしまうのを用心して顔には出さない。
代わりに今のは恋人同士のちょっとした意地悪だったとばかりに、両腕に力を加えた。
「龍……麻……」
 葵の声に甘えが混じる。
心を蕩かすような甘い響きに、ペニスが過敏に反応した。
尻に当たっている熱い剛直の疼きを葵も感じとったらしく、
一秒ごとに牝の顔へと変わっていく。
 己一人を愛する、顔もスタイルも申し分ない女。
しかも淫らで、それでいて清楚さを失わない、男が求める女として、これ以上はない存在。
そんな葵を穢したいと思うのは、彼女の完璧さゆえか、
それとも龍麻の方に救いがたい嗜虐の性質があるのか。
わからないまま、龍麻は葵を抱く。
 茂みを指でかき分けていく。
三角の密林を横断し、縦になぞり、戻る。
他の場所ではなく、ヘアそのものを弄ぶ、淫靡で嫌らしい愛撫。
縮れ毛が踏み分けられたときの音が快い。
梳き、摘み、引っ張り、それらを複合させて龍麻は、キスよりも長い時間愛しんだ。
「……恥ずかしいわ……」
 たまりかねた葵が控えめに手をかぶせてくる。
それでも龍麻はしばらくの間、草むらの手入れを続けた。
そうすればもっと良く生い茂り、一層彼女を恥ずかしがらせるのだと信じて。
 ヘアを弄ぶのを止めた龍麻だが、そこから手を離したわけではない。
掌で恥毛に触れながら、指をそれが本来隠している場所へと滑らせた。
「あ、ぁ……」
 葵が左足を右に寄せる。
そんな動きをしても無駄なのに、龍麻は浮かびかけた笑みを隠して無防備な首筋に吸いつき、
ことさら音を立てて肌を舐め、同時に股間に這わせた中指を、柔らかな溝に這わせた。
「た、つま……」
 全ての動きは緩慢に。
快感の狂熱が醒め、剥きだしになった理性に燃えるような羞恥を与えるために。
溜めた唾液をそのまま葵に垂らし、背中を伝わせる。
滑らかな肌を、白濁液はどこまで伝っていくだろうか。
目視できないのを残念に思いながら、龍麻は指の腹で、秘裂の表面だけを撫でた。
「っ、ふ……!」
 葵の身体が小さく跳ねる。
だが愛撫というには刺激は微細すぎ、葵もそれ以上の反応は堪えたようだ。
首の別の場所に口を当て、もう一つ唾液の塊を落とした龍麻は、
葵の反応が収まるのを待ってから再び淫裂をなぞった。
滲む愛液に指を浸し、溝の端から端まで塗る。



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