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「んっ……あっ……」
 より明確に身悶えした葵を、龍麻は強引に動きを抑えた。
そしてまた、落ちついたのを見計らって淫裂をなぞる。
「う、んっ」
 手を使えない葵が、快感をそのまま口にするのは淫らで、どこか可笑しくもあった。
だが、さかんに首を振りながらも、葵はまだ怒りをみせない。
怒らせるのが最終目的ではないにせよ、生の感情をぶつけられるのを龍麻は望んでもいる。
それはきっと、心の傷となりうるだろうから。
 淫らな穴のとば口を撫でられて、葵の反応が大きくなっていく。
押さえつける龍麻を弾きとばしそうなくらいに身体を震わせる。
「ちょっと感じすぎじゃないか?」
 耳の裏に囁くと、耳朶が鮮やかに変色した。
「だ……だって……」
「だって?」
「だって……龍麻が、いやらしい触り方をす、ん、する、かっ、らぁっ……!」
 がくがくと腰を落としながら、責任転嫁をする葵の、耳を咥えながら龍麻はさらに煽った。
「そうか? いつもと変わらない触り方だけどな。自分の裸見て興奮してるんじゃないのか?」
「そ、そんな……! ち、ちが、あっ、んっ、くっ……ぅ……!」
 多少は自覚があるからだろう、葵は激しく否定する。
その否定が欺瞞であると突きつけるように、龍麻は耳を甘噛みし、
乳首を転がし、淫裂をなぞった。
「あぁ……お願い、意地悪しないで……」
「意地悪なんてしてないだろ」
 意地悪く言い放ち、葵の上体を引き起こす。
火照りはじめた肌が女の芳香を立ちのぼらせ、甘い蠱惑的な香りが龍麻の鼻腔をくすぐった。
「それとも、前戯なんてやめてさっさとハメて欲しいってことか?
それなら確かに意地悪してるかもな」
「……」
 葵は眉根を寄せ、ほとんど泣きそうな顔をする。
彼女はまだ、この行為に愛があると信じているのだ。
――いや、確かに愛は存在する。
ただ、二人が求める愛には器があり、その形が異なるのだ。
龍麻はそれを知っていた。
葵は――知らないのか、知っていてなお重ねようとしているのか。
 淫裂に沿わせた指を増やした龍麻は、ひそやかな洞の入り口を開いていった。
「あっ……あぁ……」
 ごく浅く指を挿れ、愛蜜を掻きだす。
透明な粘液が幼子のように指にまとわりついた。
 女の官能を暴かれた葵が、長い睫毛を伏せる。
ひどく扇情的なその表情は、だが自分に酔っているようにも見えた。
たぶん、それは違う――だから、そうしなければならない。
 指を尺取り虫のように動かす。
重ねられた手から汗がじっとりと伝わってくる。
乳房を握る手にさりげなく力をこめながら、
龍麻は葵の尻の谷間に落とした勃起をゆるやかに動かした。
「は……ぁ……っ」
 挟み撃ちされた葵は、上へと逃れた。
龍麻の手を支点にして身体を伸ばし、前後それぞれの愛撫から均等に距離を置こうとする。
 龍麻はそれを許さない。
葵の背が伸びきったところで淫裂と尻、それに乳首と首筋を同時に責めた。
「あぁぁっ……!」
 突然の激しい快感に、たまらず葵が叫ぶ。
思わぬ大声に驚いたのは他ならぬ葵自身で、首から上を真っ赤にしながら慌てて口を押さえた。
うつむく葵に龍麻はあえて何も言わず、微弱な愛撫を再開する。
「ん……んっ、んぅっ」
 喘ぎをこらえようとした葵の身体が痙攣する。
漏れる鼻息と時折大きく落ちる膝が、龍麻の嗜虐心をそそってやまない。
とめどなく湧きでる淫水を掬った龍麻は、鏡にそれを塗りたくった。
もう一人の自分の、臍から下がてらてらと輝いていくさまを、葵にしっかりと見せつける。
「あ……ぁ、駄目……」
「何が駄目なんだ?」
「こんな……の……」
 実感がない、第三者的に汚れていく自分に龍麻の想像以上の衝撃を受けたらしく、
葵は酩酊したようなふわついた声で呟いた。
「駄目なんかじゃないだろ? これが葵の本性だろ?」
 さらに愛液を掬いとり、今度は乳房の位置に塗る。
龍麻の手に覆われていない、右の乳首が妖しく濡れ光った。
「違う、わ……私……」
 ふいに龍麻は葵の重みを感じる。
自制を失った葵が、後ろによろけたのだ。
「龍、麻……」
 形の良い唇から、諦めたような吐息が漏れる。
彼女なりに妥協したのであろう提案を、やや迷った末龍麻は受けいれた。
「……本当言うと、俺ももう我慢できない」
 くちづけを終え、下唇を触れさせたまま囁くと、
葵は左胸に置かれた龍麻の手に自分のそれを重ねた。
「鏡に手をついて」
「恥ずかしい、わ……」
 囁きながらも葵は言われたとおりの姿勢をとった。
鏡を抱くようにしているのは、自身を見てしまわないようにするためだろう。
薄い背中とその大部分を覆う艶のある髪、そしてそこから急速に膨らむ尻。
そそり立つ勃起をその谷間に沿わせながら、龍麻はまだ挿入しようとはしない。
手を使わず、腰の動きだけで肉柱を操り、葵の敏感な部分を刺激するに留める。
「うぅ……ん……」
 葵が尻を切なげに揺らす。
もう愛液は充分に滴り、官能もさらなる愛欲を求めていつでも牡を受けいれる準備が整っている。
それなのにペニスは挿入されず、葵の裡から肉の疼きが抑えがたく噴出しているのだ。
 龍麻は背中を優しく撫でつつ、葵の足の間に挟んだ男性器を前後させた。
鏡を掴む白い手に力がこもる。
背中から腋をたどって手首を掴み、さらに数度龍麻は血のたぎった器官を擦りつけた。
「や……ぁ、龍、麻ぁ……」
 溝の周縁だけを撫でられた葵が、たまらず頭を振る。
その動きが収まったところで、赤く熟れた耳に顔を近づけ、龍麻はささやいた。
「挿れて欲しい?」
 言わずもがなの問いに、長い時間をかけて葵はうなずいた。
「それじゃ、もう少し足を開いて、尻を突きだすようにして」
 葛藤を乗り越えたからか、要求にも素直に従う。
 生白い身体にあって、そこだけが複雑な彩りをみせている。
白と黒、それに褐色と薄赤色。
おびただしく濡れ光るそれらは、息を呑む美しさだった。
見たことなどないという葵に、いずれ見せてやらなければと思いつつ、
龍麻は赤黒い怒張をあてがった。
「あぅ……っ……」
 淫口に亀頭が挿っただけで、葵は感極まった声を漏らした。
そこから挿入を続けると、背中が小さく反っていく。
そして全てが収まると一転して鏡にもたれかかり、熱い呼気で鏡面を曇らせた。
 媚肉と愛液で半固体のようにすら感じられる葵の膣を、龍麻はまず奥まで堪能した。
上下左右、あらゆる方向から包みこんでくる極上の気持ちよさに、この時ばかりは浸ってしまう。
「ほら葵、わかるか? 俺のが奥まで挿ってるのが」
「え、ええ……わかる……わ……。あ、あぁ……大き、い……」
「葵がいつもより興奮してるからな、俺も興奮してる」
「わ、私、興奮なんて……」
「まだそんなこと言うのか? ほら、見てみろよ、こんなにスケベな顔して。
これで興奮してないって言うのか?」
 葵の顎を掴んで鏡を直視させる。
鏡に映った淫ら顔は劇的な効果を与え、葵は激しく取り乱した。
「嫌っ、見ないで、お願い……!」
 必死の哀願を、もちろん龍麻は聞きいれない。
大きく腰を突いて葵を黙らせ、じっくりと本人以上に淫猥な裸体を眺めた。
 鏡の向こうとこちらで、四つの乳房が揺れている。
荘厳な教会の鐘のように激しく、高らかに、抽送のリズムに合わせて揺れるそれを、
龍麻はひとつ掴んだ。
しっとりと汗につつまれた肉果は、手からこぼれ落ちそうなほどに大きく、
中央の頂も熟しきっている。
葵にも見えるよう指の間に乳首を挟み、龍麻は大きな動きで乳房を揉みあげた。
「あンッ……」
 高らかに鳴り響く淫声が、しかし、龍麻には不満で、握りつぶす寸前まで力をこめる。
「うッ……い、痛い、わ……」
 快感から苦痛へ、無理やり変えさせられた葵の声が少し濁りを帯びた。
それでいい、と内心で呟きながら、龍麻はさらに少し乳房を変形させた。
「ね、ねえ……龍麻……」
 濁りに怯えが加わる。
だが、まだ理想にはほど遠く、龍麻は抽送の速度を落とした。
屹立に洞の内部をゆっくりと、そよぐような優しさで往復させる。
「はぁ、あ、ん……」
 間延びした喘ぎは、物足りなさを示していた。
葵ですら――真神の聖女と呼ばれる女ですら、肉の悦びにはあらがえず、
卑しくも快楽を求めるのだ。
歪んだ満足を覚えながら、龍麻は気の抜けたサイダーの如き腰使いで、葵をさらに焦らす。



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