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熱い塊が肉棒を上下する度、龍麻の疼きは確実に昂ぶっていく。
まだ頬張られる事に慣れていない龍麻は、ほどなく爆ぜそうになってしまった。
「うっ……紗夜、ちゃん……もう、出そう……だ」
紗夜は声よりも先に、
口の中で暴れるペニスの脈動で龍麻の限界を感じとっていたが、動きを緩めようとはしなかった。
そのまま口の中で受け止めるつもりだったのだが、葵がそれを許さなかった。
龍麻の呻きを耳にした葵は紗夜の身体を押しのけ、上に跨る。
「うふふッ、龍麻……お願い、私を感じて」
葵は龍麻の剛直を握ると、ひと息に自分の膣に迎え入れた。
龍麻は憶えている限り葵とは一度しか身体を重ねていなかったが、
彼女の蜜壷は男を知り尽くした動きで男根を愛しむ。
己の腕の下で艶かしくくねる生白い肢体に本能をそそられ、龍麻は下から腰を突き上げる。
「あぁっ、龍麻……!」
葵は龍麻の手を掴むと、自らの胸に導いた。
手に余る大きさのそれは、持ち主の動きにあわせて淫らに揺れ、汗を弾けさせる。
未だ女性を喜ばせる術など知らない龍麻が、それでも思いつくままに乳房をこねあげ、
硬くしこった胸の頂きに触れると、葵が嬉しそうに喘いだ。
「龍麻の……大きくて……素敵……」
類稀な美少女が白皙の頬を深紅に染め、己の大きさに悶える。
男なら誰しも夢見る光景に、龍麻も腰を突き上げて応えた。
「ああ……龍麻……!」
葵は腕を龍麻の頭に巻きつけ、乳房をぐいぐいと押しつける。
文字通り呼吸も出来ない快楽の中、己を熱く包み込む葵の膣が一際強く締めつけた。
「うあっ……!!」
陽物が熱い蜜にしっとりと浸かり、肉のうねりが身体全体を包み込むような陶酔を味わい、
龍麻はたまらずそのまま精を解き放ってしまった。
「龍麻、私も……っ、ぁあっ!!」
体内を満たす龍麻の精に、少し遅れて葵も絶頂を迎える。
葵の肉壷は男の精を受けた悦びに震えながら、なお最後の一滴まで搾りとろうと幾度か締めつけた後、
ようやく満足して怒張が離れる事を許した。
「はぁッ……はぁッ……」
力を失った葵の身体をベッドに横たえた龍麻は、流石に快楽の余韻が身を縛っているのか、
だらしなく足を開いたままの彼女の肢体を見下ろす。
たった今まで自分と交わっていた身体に、男の根源的な征服感めいた物を抱いた龍麻だったが、
明らかに彼は征服される側だったのだから、
それが錯覚である事に気付かなかったのは幸福だったかもしれない。
気だるい疲労に身を委ねようとした龍麻に、息つく暇もなく、紗夜が近づいてきて挿入をせがんだ。
紗夜は自分が下になると、小指を口に当て、扇情的な表情で龍麻を誘う。
「紗夜ちゃん……」
「……お願いです、龍麻さん。わたしにも……ください……」
こうまでされて拒否できる男など冥府の向こうにも居ないだろう。
紗夜のかすれた声に、たった今まで欲望に身を委ねていた龍は萎えるどころか、
貪欲に新たな龍穴を求め、
少し休みたいと言う所有者の意思を無視してたちまちに力強さを取り戻していた。
頭の奥が灼熱の業火で焼き尽くされ、剥き出しになった本能に促されて、
龍麻はほとんど前戯もしないまま紗夜の龍穴に己の龍を沈めた。
「っ、く……ぁぁ……龍麻……さん……」
紗夜の手が下から伸びてきて龍麻の肩を掴み、軽く爪を食い込ませる。
この時ばかりは演技ではなく、好きな男に抱かれた喜びに全身を震わせた。
紗夜の中は葵とは較べるべくも無かったが、その狭さは何物にも替えがたく、
龍麻は再び快楽のるつぼに叩きこまれる。
精を放ったばかりで強引に勃たされ、激しい苦痛が襲っていたが、
やがてその痛みさえ快楽に呑みこまれていった。
紗夜は夢中になって打ち付ける龍麻の腰に、さりげなく足を絡める。
狭い膣が更にすぼまり、食いちぎらんばかりの勢いで龍麻を責め、迎え入れ、
共に快感を求めてせめぎあう。
「あん、龍麻さん……ぅぁ……っん、ぃぃ……いい、です……」
夢幻的なまでに淫らな声で、紗夜は恍惚を口にする。
その声が龍麻の腰の動きを早め、紗夜自身に新たな音色を奏でさせ、
二人はほとんど同時に絶頂を迎えようとしていた。
「紗夜ちゃん……もう、俺……」
「わたしも……龍麻さん、一緒……一緒に……やっ、だめ……いやぁぁ……!」
声にならない声が口を衝き、龍麻は二度目の精を二つ目の膣に解き放った。
体内に熱い迸りを感じた紗夜は、龍麻の背中に腕を回すとしっかりと抱き締める。
さっき出したばかりにも関わらず、変わらない濃さと量の精液が紗夜の膣内を満たしていった。
「あぁ……龍麻さんのが……わたしのなかに……いっぱい……」
龍麻のペニスから完全に精が出きった事を確かめた紗夜は満足気に呟くと、絡めていた足を解く。
それをきっかけに龍麻は紗夜の身体から己を引きぬくと、そのまま紗夜の横に寝転んでしまった。
葵と紗夜は、下腹部を拭こうともしないまま龍麻に詰寄る。
「はぁ、はぁ……さぁ、どっちが良かったのか、答えて、龍麻」
「龍麻さん……」
しかし、疲れ果てた龍麻が二人に応える事は無かった。
完全に寝入ってしまった龍麻に、二人はそれぞれの表情で舌打ちする。
「もう、たった二回で、龍麻ったらしょうがないわね。
比良坂さん、残念だけど決着は次回に持ち越しね」
「そうですね。でも、次こそははっきりさせますから!」
「うふふ、望む所よ。私の方が龍麻に相応しいって事を教えてあげるわ」
龍麻の知らない所で再戦の約束を交わした二人は、
さっさとシャワーを浴びると一人眠っている龍麻を置き去りにしてホテルを出て行った。

「ふふッ、いい写真が撮れたわ」
ホテルを後にする葵と紗夜の後姿にカメラを向けていた人物が、誰にともなく呟く。
全く場違いなコートを羽織り、深々と帽子を被っているその人物は、良く見れば女性だった。
不敵な笑みを浮かべ、自らの相棒とも呼べるカメラを愛おしげに撫でている。
眼鏡に沈みかけている夕陽を映しているその女性の名は、遠野杏子と言った。
葵と同じ真神学園の三年で、新聞部の部長を務めている。
「最中のがあれば完璧だったんだけど、さすがにそこまでは撮れないしね。
ま、入るところと出るところがあればネタとしては充分でしょ」
杏子は顔を隠す為に襟まで立てていたコートを流石に緩めながら、
頭の中ではもうこの写真を使った記事のことを考え始めていた。
「そうね……現役女子高生の淫らな性態! 生徒会長の大胆な個人指導!
これは真神始まって以来のスクープねッ! 友達のスキャンダルは気の毒な気もするけど、
大儀の前には個々の感情なんて挟んだらいけないわよね」
「あら、そんなスクープ写真って、一体何が映ってるの? アン子ちゃん」
もっともらしい言葉を並べ立ててしがみついてくる良心を振り落としつつ、
この写真が載った真神新聞が何部売れるか皮算用をしていた杏子の背後から、
いきなり清らかな、心癒されるような声がした。
「げッ! み、美里ちゃん……」
ドス黒い銭勘定にうつつを抜かしていた杏子を、心臓を直接掴まれたような恐怖が振り向かせる。
そこには、さっき姿を消したはずの葵と紗夜がいた。
静かな笑みの裏に深甚な感情を封じこめた葵の表情に、杏子の背中を一滴ニ滴ではない汗が伝いだす。
それに較べれば傍らにいる少女の方がずっとその感情をくみ取りやすかったが、
無論怒っていることに変わりはなく、
『力』持つ者の圧倒的なエネルギーに杏子は思わず一歩下がっていた。
「わたし達の写真でお金儲けしようとするなんて、ひどいですッ」
「あ、あたしは別に……」
「比良坂さんの言う通りよ、アン子ちゃん。わたしも本当はこんなことしたくないのだけれど」
悲しそうに首を振って一切の反論を封じた葵が、静かに集中する。
やや遅れて隣の少女も目を閉じ、何事か囁きはじめた。
逃げ出すなら今が最大にして唯一のチャンスのはずなのだが、
足は縫いつけられたようにその場から離れなかった。
恐怖に心臓が縮む杏子の耳に、全く違うことを言っているはずの二人の声が重なる。
「神の僕にしてその威光を知らしめる処罰の天使よ、その力持て哀れな咎人を救い給え」
「死者の国を護るヨモツシコメよ、あなた達の女王を汚す者に報いを与えなさい」
言葉は言霊となり、圧力となって杏子の心を押し潰す。
二つの旋律が重層な讃美歌のように溶け合い、
恐怖と恍惚、狂気と法悦が螺旋のように哀れな(にえを食いつくしていった。
時間にしたら数秒も経ってはいない。
しかしその数秒は杏子にとって、宇宙開闢かいびゃくから今までよりも長く、
その間に受けた苦痛は夢想家がどんな筆舌を尽しても到底表わすことの出来ないものだった。
瞳から焦点を失った杏子が、頼りない足取りで去っていく。
それを見送った葵と紗夜は、守護天使のような笑顔でお互いを褒め称えた。
「それじゃあね、比良坂さん」
「ええ、また今度、美里さん」
彼女達の神聖な聖戦を(けが)す者に報いを与えた二人は、
親友同士のような別れを交わしてそれぞれの帰路に就く。
次なる聖戦の日まで、力を高める為に。

「あれ? あ、たし……なんで?」
気が付けば、部室にいた。
辺りは既に暗く、何か大事なことをしていたような気もするが、どうしても思い出せない。
頭を振って巣くうものを追い出そうとした杏子は、ふと、自分が何かを握っていることに気が付いた。
爪が食いこむほどきつく閉じている自分の手に、瞬間的に本能が危険だと告げたが、
彼女の、他人よりも遥かに強いもう一つの本能──好奇心が無理やりに指を開かせる。
「ひッ……」
何気なくそれを見た杏子は、次の瞬間校舎中に響き渡る絶叫をあげ、そのまま気を失った。
次の日にはもう元通りになっていた杏子だったが、
自分が倒れた理由はどうしても思い出すことが出来ず、
万事に整合性を求める彼女はしばらくの間人知れず悩むこととなったのだった。
だから、杏子は知らない。
それが神の大いなる慈悲だということを。
もし、記憶に残してしまっていたら決して正気を保て無かった杏子が
手に握っていたのは、色の異なる二本の細い髪だった。



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