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30分後、ホテルの壁を呆然と眺めていた龍麻は、
これからはじめられる行為に思いを馳せて暗澹たる気持ちになっていた。
どういう成り行きで自分がここに居るのか、考えるのも馬鹿馬鹿しくなって、
二人に気づかれないよう小さくため息をつく。
龍麻は葵とも、紗夜ともセックスは初めてでは無かった。
もちろん二人同時にでは無かったが、
二回とも全く龍麻の意に反して行われた、と言う点は共通だった。
葵には旧校舎で力と権力を背景に巧みに脅され、紗夜には唄の力で心を操られて。
その時の事を思い出すと今でも涙が滲んでしまい、生きる意味を見失いそうになってしまう。
そんな龍麻の心情などどこ吹く風で、葵は紗夜と龍麻の目の前で何のためらいもなく服を脱ぎ捨てた。
負けじと紗夜も慌てて習うが、その肢体を見た葵が鼻で笑う。
「あら、随分と貧相なプロポーションなのね。そんなので龍麻と釣り合いが取れると思っているの?」
「たッ、龍麻さんは外見なんて気にしないんですッ! ねっ、龍麻さん」
「あッ、あァ……そう、かも知れない気がするなぁ」
どう答えてもロクな事にはならないのが解りきっていたので、適当にお茶を濁す。
紗夜は煮え切らない答えに不満気に頬を膨らませたが、
葵の、軽く見下した視線を感じてその子供っぽい仕種を止めた。
豊満な胸を見せびらかすようにして、葵は龍麻に近づく。
白い清楚な下着が、何故か酷く淫靡な物に見えるのは、龍麻のせいではなかった。
魅せ方を嫌というほど心得ている葵が、
下着会社の専属モデルでさえ出来ないような着こなしをしているからだ。
ひとつひとつの仕種に男を煽り、興奮させるスパイスがまぶされている。
彼女の本性を知りさえしなければ、
身の破滅と引き換えにしてでも手に入れたいと誰もが願うに違いない身体だった。
一方の紗夜の下着は淡い黄色の控えめな物で、こちらは年相応に似合っている。
まだ男を誘う色香を身に付けていない身体つきはしかし、
精一杯に背伸びをしている健気さが逆にある種の色気を醸し出していた。
下着姿になった二人は龍麻の両横に腰掛けると、
葵はその胸を存分に生かして龍麻の腕を巨大な谷間に挟みこみ、
紗夜は初々しさをアピールすべく控えめに手を重ね、それぞれの表情で龍麻を誘惑し始めた。
しかし、1ミクロンでもどちらかに顔を傾けたら、
死よりも悲惨な運命が待ちうけている事を知っている龍麻は、
ただもう2時間──延長が無かったとしての話だが──が
一秒でも早く過ぎてくれる事だけを祈りながら、
フランス人形のように無表情を保ったまま正面を向き続けた。
無論二人がそれを許すはずもなく、
それどころか全く反応を見せない龍麻にこれ幸いと調子に乗り始める。
先に動いたのは紗夜の方だった。
重ねた手を絡め、自分の身体へと導く。
ほの温かい彼女の太腿に指先が触れ、龍麻は思わず生唾を飲みこんでしまう。
紗夜はゆっくりと肉付きの薄い肢体をなぞらせながら、少しずつ大胆な所へ導いていく。
龍麻の指先に下着の布地の感触を確かめさせてから、
肌との境目を中心に向かって進ませ、熱を帯び始めた秘奥の上に連れて行った。
「あっ……」
自分で触らせておきながら、驚いたような声をあげる。
少し掠れたその喘ぎは、龍麻に罪悪感めいた困惑をさせるのに充分だった。
そうやって少しずつ誘っていき、手中に収める。
最初に龍麻と出会った時も、同じやり方で近づいていったのだ。
紗夜は葵と違ったアプローチで、自分の魅力を最大限に引き出す方法を十分に心得ていた。
闇の呪縛から解き放たれ、龍麻という光を見つけた今、
その光を我が物とする手段に何をためらう理由もなかった。
反対側から葵は、龍麻の胸板に手を滑らせてくすぐるような愛撫を始めた。
今の日本には失われて久しい白魚のような指を、男を誘惑する為に操る。
たくましく隆起した筋肉を愛しみ、ごつごつした肌触りさえ甘く撫で上げ、
並の男ならそれだけで勃起してしまいそうな手技で龍麻の身体をくまなく犯す。
乳房を触れるか触れないかの位置に保ちながら、あくまでもやんわりと龍麻を誘惑するその様は、
男を痺れさせる毒をたっぷりと含んでいた。
ようやく見つけた、自分に相応しい男。
時間をかければ必ず振り向かせる自信はあったし、その為にあらゆる努力は惜しんでいなかった。
着々と進んでいた計画が、龍麻の隣にいる小娘の登場で変更を余儀なくされ、
葵は焦りと怒りを同時に覚えていた。
といって実力で排除するにも彼女にも『力』があり、うかつに手を出せない。
ならば龍麻の方を先に手篭めにするしかなかった。
そして今日、訪れたこの機会を逃すつもりは全く無い。
ついに下腹へと辿りついた葵の手が、龍麻の龍を捕える。
二人の少女のこれだけ魅惑的な愛撫にも、それはまだ天を向いてはいなかった。
「あら龍麻、元気が無いじゃない」
どこかの娼婦のような台詞をサラっと言ってのける葵に、龍麻はひきつった笑いを浮かべるしかない。
しかしいくら肉体的にはそそられたとしても、心が萎縮してしまっていてはどうにもならなかった。
むしろ罵倒されたとしても、これで諦めてくれれば良い、と龍麻は願ったが、
紗夜はにっこり笑うと軽く何かのメロディーを口ずさんだ。
途端に力を取り戻し、いきり立つ己の一物を見て、龍麻は目の前の純朴そうな少女に恐怖すら覚える。
葵もこの時ばかりは紗夜と敵対しているのも忘れ、これから自分の中に収まるであろう屹立に
うっとりとした眼差しを向け、前哨戦とばかりに龍麻の首筋に舌を這わせた。
目の前で大きくなっていく龍麻の男性を余す所無く観察した紗夜が、
興奮でほんのりと赤みがかった顔を近づける。
まだ少しだけ硬さが残る唇や、ぎこちない舌の動きは確かに初々しく可憐で、
大抵の男は夢中になるだろう。
龍麻は唇が触れる瞬間、置かれている状況も忘れて目を閉じ、紗夜を受け入れた。
それを見た葵は表情を能楽のように一瞬で鬼のそれに変えると、
龍麻の下腹にある屹立に手を伸ばした。
「んッ……んぐッ!」
雁首の裏側をいきなり撫でられ、たまらず龍麻は顔を仰け反らせる。
その拍子にキスもほどけてしまい、じっくりと愉しもうと思っていた紗夜は不満そうな表情をするが
ここは負けを認めざるを得なかった。
背後に回った葵はその見事な乳房を押し付け、紅い舌を首筋に這わせた。
ぬらぬらとした舌の動きが嫌というほど伝わってきて、背筋に痺れが走る。
背中を反らせてくすぐったさから逃れようとすると、反動で葵に近づいた顔を掴まれ、唇を奪われた。
軽く唇を押し付け、やわやわと舌で愛撫して龍麻を誘い出すと、すぐに荒々しく絡める。
為す術なく葵に絡めとられてしまった龍麻は、なんとか体勢を立て直そうとするが、
その度に葵に先回りされて動きを封じ込められ、もはや一方的に翻弄されてしまうだけだった。
葵はいつしか龍麻の頭をしっかりと抱えて、押し倒さんばかりの勢いでキスを続ける。
二人のくぐもった喘ぎと唾液の絡む音に鼓膜を嬲られた紗夜は、
失点を取り戻すべく大胆な実力行使に出る事にした。
とても全てを収める事など無理そうに見える龍麻のそれを、一気に奥まで飲みこむ。
相当無理をしているのだろう、苦しそうな呻きが微かに漏れたが、
葵への意地なのか、すぐに声を抑えると口の中をほとんど産め尽くしている剛直をしゃぶり始めた。
心持ち顔を引くと、舌で全体を遠慮無く舐め回す。
紗夜の舌は短く、この手の事には明らかに不向きだったが、彼女は懸命さでそれを補おうとしていた。
横側の根元から舌を滑らせ、剥き出しの先端に唾液をまぶす。
「んっ……ふっ、ん……」
ときおり漏れる鼻息が耳を惑わし、剛直をいきり立たせ、
もう欲望を抑え続ける事を諦めた龍麻は紗夜の頭に手を添えて更に激しい口技を促す。
紗夜は龍麻を咥えたまま、ひどくいやらしい上目使いで龍麻を見ると顔の動きを速めた。
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