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雪かき(とそれ以外のこと)を終えた龍麻達は、雛乃の部屋に戻っていた。
東京二十三区にあってもともと静かなこの神社は、
この雪のおかげで耳鳴りがするような沈黙に包まれている。
その雰囲気に憚って無言のまま部屋に入った龍麻は、
上着を脱いで思わず身震いした。
「どうなされました?」
「ん、ちょっと寒かったから」
こたつに身を滑りこませて龍麻が笑うと、雛乃も小さく微笑む。
それはとても上品な笑い方で、もう幾度となくその笑顔を見ている龍麻も、思わず見とれるほどだった。
その笑顔を湛えたまま、雛乃が近づいてくる。
ふわりと、背中に柔らかい感触を感じた。
「本当、少し冷たいですね」
「う、うん」
答えながらも、龍麻の体温は急上昇を始めている。
丸めていた背中を反らし、雛乃にもたれかかろうとした龍麻の頬に、
いきなり冷たいものが触れた。
「そうかな、ほっぺはあったかいけどよ」
白い歯を大きく覗かせながら、けれどどことなく雛乃と似た表情で、雪乃が笑っていた。
双子の姉はそのまま龍麻の隣に座り、身体をすりよせてくる。
冷たく、そして柔らかい掌が、龍麻には心地良かった。
その掌を外側から押さえ、より強く雪乃を感じる。
「雪乃の手がちょっと冷たすぎるんだよ」
「そりゃ、外であんなことすりゃ冷たくもなるだろ。責任取れよな」
きつい台詞と対照的に、雪乃は親しげに上体を龍麻に預けてきた。
下から見上げる瞳は繊細な輝きを放っていて、龍麻はしばし見とれる。
姉と妹、見た目も性格も全く異なっていても、
やはり双子というのは本質的には同じだ、と感じる瞬間だった。
そしてそれは、雛乃に対しても言えることなのだ。
肩を抱き、雪乃の身体を引き寄せて、責任を取ろうとした龍麻は、
いきなり耳を舐められて肩をすくめてしまった。
頭を放り出されこそしなかったものの、責任を取ってもらえなかった雪乃が、
甲斐性の無い男の頬をつまむ。
「違う、今のは急に雛乃が……ん……っ」
弁解しようとした龍麻だったが、再び、
今度はより奥深くへと入りこんできた舌に、力が抜けてしまった。
「ちょ……雛、乃……っ」
「龍麻様は、ここがお好きなのですよね」
「ふーん」
腕を上げかけた、一言で言えば変な格好で固まっている龍麻を下から見上げた雪乃は、
勢いをつけて身体を起こした。
そのまま顔を寄せ、龍麻の、雛乃がいるのとは反対側の耳に軽く口付ける。
「なッ、止めろって」
「ホントだ。面白ぇな」
舌が触れた途端、亀のように首をすくめる龍麻に興味をそそられ、
雪乃は身を乗り出して雛乃と同じように舐めはじめた。
肩にかかる二人の重みは心地良いものの、それ以上にくすぐったくてたまらず、
龍麻はたまらず声を上げる。
「なんだよ、どうしたんだよ、二人とも」
「申し上げましたよね、今度はわたくしの番だと」
「オレも言ったよな、その次はまたオレだって」
左右から聞こえる双子の声は、見事な連携で龍麻の聴覚に滑り込んできた。
まず雛乃を、次いで雪乃を見た龍麻は、
そこに浮かぶ艶やかな笑顔に何も言い返すことが出来なくなってしまった。
静かになった龍麻に、双子が戯れかかる。
「う……っ、あっ」
蛇のように奥まで入ってくる雛乃の舌と、犬のように同じところを何度も舐める雪乃のそれとは、
耐えがたい快感を龍麻にもたらした。
逃げ場も無く、次第に力が抜けていくのを抑えることが出来ない。
せめて歯を食いしばって、情けない声が漏れないようにするのが精一杯の龍麻に、
双子の姉妹は身体を押しつけ、舌を這わせた。
龍麻の肩に添えられていた手はいつしか握り合わされ、大きな環となって龍麻を囲む。
左右対称の格好で龍麻を責める二人の姿は美しくもあり、どこか無垢な残酷さをも感じさせるものだった。
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