<<話選択へ
<<前のページへ

(2/2ページ)

「龍麻……大丈夫?」
「……頭がぼーっとする」
「ふふっ……私も」
艶やかに同意した葵は腰を浮かせ、そこだけはバテる気配も無い熱い塊を下腹で捉えた。
身体を小さく揺すって臍の下で熱を感じていると、
もうじきそれが入ってくることを知った女の部分が潤みはじめる。
思考を奪う暑さのせいか、いつもより拙速に、そして乱暴に龍麻を感じたい、
と本能が促すままに身体を擦りつけた。
「ねぇ……もう……挿れてもいい?」
「いいよ……でも珍しいな」
「何が?」
葵が尋ね返したのは、自らの欲望を叶えてからだった。
龍麻が避妊具を着けるのを辛抱強く待ち、そそり立つ屹立を手ずから握って体内に収める。
一息に根元まで咥えこんだそれを、身体をずらすことにより、
更に奥まで導き入れ、満足の吐息をついてから、ようやく目を合わせた。
普段の理知的な美貌からは縁遠い、どこか壊れたような葵の媚びた笑顔に、
龍麻の下腹は自然と猛りを増す。
しかし、夏場に入ってからはとんとご無沙汰だったこともあって、
意志とは裏腹に、龍麻はあっという間に果てそうになってしまった。
「こんな……すぐにしたがるの……ッ、ちょ、ちょっと待った」
「何?」
「もうちょっと……動くの……早ぇ……っはッ!」
灼かれる感覚。
それが覚めやらぬうちに、頭が胸の谷間に押しつけられ、自由を奪われる。
寄り沿う二つの丘陵はしっとりと湿っていて、頬に葵の劣情を伝えてきた。
両側から押し寄せる極上の触感に顔を埋めると、葵が更に胸の中に押しこんでくる。
「ッ!!」
柔らかな肉に挟まれて何が起こっているか判らない中、急に屹立が悲鳴を上げた。
葵の膣内で孤軍奮闘している己が、もぎ取られるような感覚。
これまで味わったことのない快美感に、龍麻は思わず身体を強張らせていた。
「あッ、葵……今……何した?」
「なんにもしてないわよ」
葵が淫らに笑った直後、再び快感が襲う。
目の前が白くなるほどの快感に強く目を閉じると、汗が目蓋を掠めた。
染みる目をこする手が、掴まれて頭上に掲げられる。
「そのまま……目を閉じていて」
こういう時は素直に従った方が良いことを知っていたから、龍麻は何故、と尋ねなかった。
葵の体温が、遠ざかる。
しかしもちろん下半身は繋がったままで、何をする気なのかと戸惑う龍麻の胸に、突然刺激が走った。
「……ッ」
葵がシャツの上から乳首を含んだのだ。
引っ張られ、浮き上がった部分を舌先で転がされる。
そんなところを舐められるとは思ってもいなかった龍麻は、
そこが女性だけでなく、男性にも弱点であることを初めて知らされた。
舌が円を描いて胸先をくすぐる。
もちろん女性のものほどは大きくならないそれを、掘り起こすかのように舌で持ち上げられ、
たまらず龍麻は葵の肩を掴んだ。
「まだ……動いたら駄目よ」
「そうだけどさ」
「気持ちいいでしょう?」
「いい……けど、なんでこんなこと知ってんだよ」
「うふふ」
キスで答えた葵は汗を吸いきったシャツを脱がせ、
男の体臭がむせる身体を己が元に手繰り寄せる。
シャツが身体から離れる瞬間、素肌に触れた水分が龍麻に場違いな冷たさをもたらしたが、
すぐにそれ以上の、生温かい汗と人肌が肌に吸いついてきた。
気持ち悪く、そして気持ち良い。
熱気に息を詰まらせたまま、龍麻はしなやかな肢体を力強く抱いた。
密着している中、強引に顔を上に向けられ、唇が塞がれる。
荒い鼻息が顔にかかったが、それに顔をしかめる間もなく口がこじ開けられた。
「ふッ……っぷっ」
もちろん呼気も例外でなく、いくら葵のものと言えども到底耐えがたい熱い気体が
気道に流れこんできて、思考を根こそぎ奪っていく。
そして粘度の増した唾液のせいで干上がった口内を、
しっくいでも塗るかのようにまさぐられ、龍麻の快感中枢は、
不快の限界から快楽のただなかへと一気に反転した。
「うぷッ、あぁ……ふむっ」
舌を目一杯伸ばし、叩きつけるように絡める。
葵はそれを受け入れ、さらに叩きつけられた舌を巻きつかせることで応え、快楽を龍麻に返す。
理性が消し飛んだ二人は、呼吸も忘れてお互いを貪りあった。
「ふッ、んふぅっ、ふぅぅっ」
肉付きの良い尻を鷲掴んだ龍麻が腰を揺すると、
葵はそれに動きを合わせ、深々と挿さっている屹立をねっとりと絞り立てる。
次第にキスをしたままでは苦しくなってきたのか、
名残惜しげに顔を離した葵は、その代わりとばかりに龍麻の腹に手を置いて腰を使い始めた。
濡れた黒髪を振り乱し、たぷたぷと双乳を弾ませ、膣壁を抉るような動きで悦楽を求める。
「うッ、あ……あっ」
首にしっかりと腕を回し、足さえも巧みに使って屹立を締め上げ、
片時も離れずに精を貪る葵に、龍麻はただただ堪えるしかなかった。
肉と肉とがぶつかり合う、滑稽にも聞こえる音。
肉と蜜とが絡みあう卑猥な響き。
犬のような激しい呼気。
それらが頭の中で重なりあい、龍麻を追い詰めていく。
しかも、それをコントロールするすべは葵に奪われているのだ。
龍麻に許されるのは、一緒に絶頂を迎えようと頼むことだけだった。
「葵……も……う、ダメ……かも」
「いいわ……私っ、も……」
限界を告げた龍麻に、うわ言のように頷いた葵は、一際高く身体を持ち上げ、一気に落とした。
身体の、ほとんど中心にまで龍麻が入ってくるような感覚と共に、快楽が弾ける。
「んっ──あっ! あ……ふ……」
目も眩むような快感を浴びた葵は、
その寸前に射精していた龍麻の強張る筋肉に掴まりながら、
三度、身体を震わせ、力を失って倒れこんだ。
重なる肌に、汗が噴き出す。
それは葵の身体を滑らせ、勢い余って龍麻を押し倒してしまったが、
龍麻は押し退けようとしなかったし、葵も、離れようとは微塵も思わなかった。

湿った龍麻の手が、身体をまさぐる。
それを優しく押し留めた葵は、乾いた唇を舐め回してから囁いた。
「ねぇ」
「ん?」
「アイスクリーム食べたいわ」
「……判った、買ってくる」
はにかんだ笑みを浮かべた龍麻は、手早くシャワーを浴びて飛び出すように部屋を出て行く。
その後姿を穏やかな笑顔で見送った葵は、
アイスクリームを最高の状態で食べる為に自らも浴室へと向かうのだった。



<<話選択へ
<<前のページへ