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「ね……脱がせて」
赤面する龍麻に、喉の奥で小さく笑ったマリアは、剥き出しの白い足を龍麻の胸板に向けて伸ばした。
ほとんど魅入られたように美しいふくらはぎを持った龍麻は、
膝の横に恭しく口付けし、下着に手をかける。
小さく腰を浮かせてそれを手伝ったマリアは、龍麻が片方の足首から下着を抜き取ると、
彼の前髪をかき上げて額に口付けた。
そこから目蓋に、頬に、そして唇に。
「好きよ……龍麻」
「俺も……です、マリア先生」
先生、とついているのが減点対象ではあったが、マリアはおまけしてやることにした。
「フフ……龍麻」
軽く舌を絡めながら、彼の腰を、回した足で引き寄せる。
程なく、熱いたぎりが体内へと入ってきた。
「あ、あ……龍……麻……」
龍麻を迎え入れた膣内は、驚くほど濡れていた。
下腹から聞こえる卑猥な水音によってそれを知ったマリアは、
自分の方が彼よりもよほどこの状況に興奮していることに、小さく失笑してしまった。
「どうしたんですか」
「なんでもないわ」
不思議がる龍麻に腕を回して密着し、首の後ろにキスを放つ。
朝の騒動の原因にもなったキスマークは、今は流石に消えてしまっているが、
この時間ならもう誰に見られることもないと考えたマリアは、
もう一度同じ場所に強いしるしを残した。
「……っ」
一瞬だけ龍麻は呼吸を乱したが、すぐに立ち直り、わざと乱暴に腰を撃ちつけた。
「は、あっ、あぁっ」
「ダメですよ、あんまり大きい声だしたら」
力の抜けた媚声に、少しだけ立場を回復できたと思った龍麻はたしなめるように言う。
しかし、言われた通りに声を無理やりせき止め、訴えかけるように視線を投げるマリアに、
たちまちそんな優位も失い、自ら唇を塞ぎにいった。
「んッ、ふッ、はふッ、はッ」
自分で声を抑えるように言ったのも忘れ、だらしなく舌を絡めあう。
犬のような喘ぎが教室に木霊したが、もう気にならなかった。
マリアを押し倒し、埋めた屹立で力強く貫く。
彼女の両足を抱え、より腰を動かしやすい体勢をとった龍麻は、
しばらくの間ひたすらに動き続けた。
「ああッ、んっ、はッ、あうっ」
長大なペニスが身体を衝きあげる。
マリアは机の端を掴みながら、もう一方の手は額に当て、
もたらされる絶え間無い快楽にその身を任せていた。
背中は少し痛く、彼を感じるには万全の環境とは言い難かったが、
それでも普段よりはずっと深い快感が下腹を満たしていた。
早く終わらせようとでも言うのか、龍麻の腰の動きはいつもよりも激しかった。
動機はともかく、それ自体は歓迎すべきことだったから、マリアは何も言わず、
ただ龍麻の腰に足を巻きつかせ、彼のしたいようにさせるのだった。
「んんッ、ふッ、んむッ……」
鮮やかな金色の髪は、陽を浴びて真っ白に輝いていた。
抽送を繰り返しながら、今いる場所がどこで、今抱いている相手が誰か、龍麻は考えないようにしていた。
考えてしまうと、それだけで果ててしまいそうな背徳感が背中を震わせてしまうのだ。
長持ちしないと判断した龍麻は、ならばとピッチを上げ、なんとか先に彼女を満足させようと試みた。
しかしマリアは、そんな龍麻を闇に誘うようにしがみつき、甘い声で彼の名を呼ぶ。
「あぁ……ッ、龍麻……」
口紅を塗った唇から紡がれる自分の名の、なんと心地良いことか。
艶めかしい白い足を両肩に担いだ龍麻は、ほとんどくの字に彼女を折り曲げ、思い切り突きこんだ。
屹立に絡みついて果てさせようとする肉壷からすぐに引き抜き、また沈める。
どれほど激しく突き入れても、柔らかく受け止めてまとわりつくマリアの膣は、
到底抗いうるものではなかった。
限界を感じた龍麻はマリアの腰を抱きなおし、より深く彼女を貫く。
新たな肉を掻き分ける快感と共に、耐えていた感覚が噴き出した。
「う、あ……ッ」
これまでの中でも格段に強い射精感は、マリアの体内に精を放出した後も腰が止まらないほどだった。
粘り気のある液体で満たされた隘路を往復する熱い塊が、やや遅れてマリアも達しさせる。
彼女のそれは普段に較べてややゆるやかなものであったが、
もちろん彼女はそんなことを気にはしなかった。
どこか申し訳無さそうにしながら顔を寄せる龍麻に手をかざしてやり、情愛を込めたキスを与える。
忌むべき光の下で感じる彼は、案外悪いものではなかった。

脱げ落ちてしまっていた下着を拾い上げたマリアは、履こうとして悪戯心を芽生えさせる。
替えの下着は持ってきてあるし、授業は終わっているのだから最悪履かなくても特に問題は無い。
マリアは小悪魔の思考をまとめ、ただちにそれを実行に移すのだった。

まだ仕事が残っているというマリアと一度別れ、先に帰ることにした龍麻は、校門まで来て足を止めた。
オレンジ色の夕陽を背に、彼を待っていた男女二人組がいたのだ。
その二人、京一と小蒔は、眉の角度を微妙に変える龍麻に愛想良く手を上げる。
「久しぶりに学校来て怒られてやがる緋勇君を慰めてやろうと思ってよ」
「……」
愛を交わした後にまで怒っていられるほど龍麻は器用ではない──が、
たった今校舎内で不純異性交友を行ったそうしてきたから機嫌が直った、などと言えるわけもなく、
龍麻が不機嫌そうな顔をしたのはかなりの努力によるものだった。
その努力は報われたようで、マリアに怒られて落ちこんでいると二人は思ったらしく、
親しげに肩を抱いてくる。
「京一がさ、奢ってくれるんだって。一応反省してるみたいだしさ、許してあげたら」
「誰が反省するつった! 大体悪いのは」
「まッ、いいじゃない。早くラーメン食べに行こうよ。ずっと待ってたからお腹空いちゃってさ」
龍麻の脳裏に一瞬マリアの顔が浮かぶ。
しかし残り少ない学生生活で、彼らとラーメンを食べる機会があとどれだけあるのかと思うと、
断ることなど出来はしなかった。
「よし、行こうぜ」
頷き、京一と小蒔に左右を挟まれた龍麻は、これが友情か、などと大げさに考える。
「よッしゃッ! そう来なくちゃな」
「葵と醍醐クンもいれば楽しいのに」
「ま、たまにはイイんじゃねぇか、俺達三人だけってのも」
「……そうだねッ」
歩き出した龍麻は、単に寒いという理由でポケットに手を入れた。
何も入っていないはずのポケットには、何故か何かが手に触れた。
慎重に指先に神経を集中させ、何を触っているのか感じ取る。
何か紐のような、いや、一応布ではあるようだが、これは……刺繍だろうか。
そこまで手探りで正体を探った時、龍麻は思わず大声を上げていた。
「げッ!」
慌てて口を閉ざすが、それは両脇を固める二人には充分過ぎるほど届いてしまっていた。
「なんだ、どうしたッ!」
「いや、なんでもない、ホントなんでもないんだ」
思わぬ大ピンチを迎えた龍麻は必死の形相で否定する。
しかし、片手をポケットに入れたままでは、そこが怪しいとアピールしているようなものだった。
悪魔の連携で京一が龍麻の目を睨みつけて牽制し、
その隙に小蒔が電光石火の動きで手首から先を引っこ抜く。
龍麻の手に握られていたのは、誰がどう見ても間違いようのない、女性物の下着だった。
思わず顔を見合わせた三人は、次の瞬間、蜂の巣をひっくり返したように騒ぎ出した。
「龍麻……てめェって奴は……そこまで堕ちやがったかッ!!」
「ま、待て京一、これには訳が」
「ひーちゃん……」
「頼む小蒔、信じてくれって」
「ボク……ひーちゃんは絶対そんなコトしないって思ってたのに」
「違う、これはマ」
「マ!?」
「マ……まんでもない。そうだ悪い、俺腹の調子が悪いからやっぱ今日は帰るわ」
朝に引き続いて龍麻は逃げ出した。
あるいは龍麻が体力を消耗していたのも原因のひとつかもしれないが、
とにかく今回は京一の方が上手だった。
全力疾走に入ろうとした龍麻の首根っこを掴まえ、引き摺り倒す。
「待ちやがれッ!! てめえ龍麻、洗いざらい吐くまでは帰れると思うなよッ!!」
啖呵を切る京一の後ろでは、小蒔がすかさず醍醐や葵に連絡を取っている。
興奮を抑えようともしない小蒔の声を遠くに聞きながら、
龍麻は二月の風の冷たさを、骨の髄まで味わっていた。



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