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「私も聞いていいか。……お前は何故闘う?」
突然押し黙ってしまったウルフを気味悪く感じたのか、ベネッサは口を開かせようと話題を振る。
「夢を見た」
「夢……?」
予想外の返答にベネッサは二度ほどまばたきをすると、堪えきれなくなったように笑い出した。
憮然とするウルフを尻目に、しばらく笑い続ける。
「……こんなに笑ったのは久しぶりだ」
「悪かったな」
ようやく笑いを収めたベネッサは、指先で涙を拭った。
逆光でウルフには良く見えなかったが、
その表情は涙と一緒に何かが流れ落ちたのかのように、晴れ晴れとしたものになっていた。
「なあ、私と……しないか?」
ウルフは決して馬鹿な男ではなかったが、あまりにも唐突な言葉に一瞬意味を把握しそこねる。
それでも「何故」と聞かなかったのはこの男にしては上出来だった。
「こ……ここでか?」
「明日死ぬかも知れない事を考えたら…場所なんか選んでいられないさ」
ベネッサは事態の進展にやや呆然としているウルフを押し倒すと、腹の上にまたがった。
「……本気か?」
「何度も言わせるな」
声に少し怒った調子を含ませると、頭を大きく振る。
無造作に束ねていた髪が解けて、銀糸が月光を受けて幾千の煌きをもたらした。
わずかに目を細めて、ウルフはそれをまぶしそうに見やる。
胸を押し付けるように身体を倒したベネッサは、
積極的にウルフのペニスをまさぐると、逆手に持ってすりあげた。
ズボンの中ですぐに熱と硬さを帯びはじめたそれは、
今のベネッサにとって生命そのものに等しかった。
母親の胸に吸いつく事で安心する赤子のように、何度も愛しむ。
「お、おい……」
「少し黙ってろ」
これ以上ウルフの迷う様子を聞かされたら、本気で腹を立ててしまう。
そう思ったベネッサは、軽く首筋に歯を立てて動きを封じにかかるが、
先手を取られっぱなしだったウルフも、ここに来て覚悟を決めたのか、ようやく逆襲に転じた。
ベネッサの背中に手を回すと、自分の身体に押し付けて身動きを封じてから、
尻に手を置いて撫でまわす。
ベネッサは反射的に身体を離そうとしたが、ウルフの体臭が鼻をかすめると、
そこに父親の匂いを感じ取ったのか、安心したように身を任せた。
ハーフパンツにウルフの手がかかると、待ちかねたように腰を浮かせて脱ぐのを手伝う。
ふとある事に心付いたウルフは、ベネッサの腰を捕らえた。
「どうした?」
「……なんだか」
ウルフは軽く腹に力を入れると、素早くポジションを入れ替える。
「マウントを取られているみたいで落ちつかなくてな」
冗談めかして言ったつもりだったが、ベネッサは眼に真剣な光を宿して問いかけた。
「……私が相手だと、やっぱりそう感じるのか?」
「……あ、いや、気を悪くしたならすまない。その…」
月明かりに照らされたベネッサの表情は随分幼げに見え、
思わずウルフはうろたえてしまい、
デュラルと対峙した時でさえ抱いた事の無い緊張感に囚われながら、必死で弁明する。
おそらくウルフはこの手の口説き文句をほとんど使った事が無いのだろう。
そう気が付いたベネッサは出かかった笑いを噛み殺すと、
少しこの無骨な男をからかってやりたくなった。
「私は結構お前の事気に入っているんだがな」
八割程の冗談に、一割程の真剣さを混ぜて言葉にする。
残りの一割に自分にも良く判らない心情が入っていたが、
万事を割切って考えようとするベネッサにとってもそれは不思議と嫌ではなかった。
「! ……そ、そうか。俺も……お前の、その、胸とか……嫌いじゃない」
言うに事欠いたウルフの台詞に、ベネッサは思わず失笑する。
「そうか。だったら、好きなだけ触るといい」
促されたウルフがやや乱暴にビスチェを引き上げると、窮屈そうにしていた乳房がこぼれ、
下から押し上げるように手をあてがうと、ベネッサの手がその上から掴んだ。
ウルフの手をもってしても余る大きさの乳房が、
それに相応しい質感を伴なってのしかかってきて、
大きく円を描くように揉みあげると、ベネッサは心地良さそうに身体を揺らして続きを促す。
二人はしばらく無言のまま、情欲に任せてお互いを求め続けていたが、
雲の中から姿を現した月光が愛撫すると、ふと動きを止めた。
一瞬の半分にも満たない時間、ベネッサは冷静さを取り戻すと、
月が再び雲間に隠れてしまうその瞬間、両足でウルフの身体を挟みこむ。
「Take that!」
再び上下を入れ替えると、ベネッサは今度は有無を言わさずウルフのペニスを掴み、
一気に自分の中に迎え入れた。
ベネッサの膣口はまだティーンの少女のように狭かったが、
柔肉は巧みに、搾り取るように蠢き、成熟した女性を感じさせる。
「この感じ……久しぶりだ……」
ベネッサは深く満足の吐息を漏らすと、奥深くまで味わうように腰を沈め、
上体を倒して角度を変えた。
「っ、ぁ…………」
わずかに顎を上向かせながら、ダンサーのように身体をしなやかにくねらせるベネッサの肢体を、
下からやや魅了されたように見上げていたウルフは、
己の雄が強烈に刺激されている事に気付くと、動きを妨げないようにしながら、抽送の速度を上げる。
「……………!」
限界を感じたウルフが一際強く突き上げると、声にならない叫びをあげて、
ベネッサの身体が大きく跳ね、白く輝く銀髪が背中に広がってこぼれた。
その頭を抱きかかえて良い物かどうか、ウルフは再び悩む羽目になったが、
いくばくかの逡巡の末、刺激を与えないよう慎重に腕を回す。
頭に手が触れた時、ベネッサは微かに身じろぎしたが、何も言わずウルフに身を任せた。
「なあ」
胸板に頭を埋めたまま、穏やかな調子で語りかける。
「……なんだ」
「さっき私が歌っていた歌……歌ってくれないか?」
ウルフは頷くと、軽く呼吸を整え、静かな、低い声で歌いだす。
それを子守唄にしながら、ベネッサは満ちたりた表情で眠りに落ちていった。
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