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「決断が遅い子は長生き出来ないわよ」
なおもためらう葵に、ベネッサの一撃が加えられる。
「っ!」
葵は眼の端からこぼれようとする液体で視界を滲ませながら、
必死で唇を噛み締めて叫び声をあげないように耐えなければならなかった。
(こないな……こないな辱め……)
しかし、叩かれた場所の焼けるような痛みは、ほとんど直接脳に伝わってくるようだった。
二十回でさえ耐えられるかどうか判らない。
否、もう選択肢は闘いに負けた時から無かったのだ。
そう悟った時、ついに葵はベネッサの支配下に堕ちる事を自ら告げた。
「……数え、ます……」
羞恥と悔しさに全身を犯されながら、絞り出すように言う。
「ん? 何かしら?」
意地悪くベネッサは聞こえないふりをすると、尻をつねりあげた。
「ひっ……! 数え……ます、数えますから……」
自分の中で何かが崩れていくのを感じながら、痛みから逃れるように反射的に、必死に哀願する。
(ようやく言う事を聞いたわね。……でも、まだ完全にじゃない)
ベネッサは葵の芯の強さに感歎しながら、完全に屈服した時の事を考えると、
それだけでエクスタシーを迎えてしまいそうだった。
「そう。それじゃ、いくわよ」
喜びに声が上ずってしまうのも隠そうとしないで、
ベネッサは力を加えやすいように自分の膝を葵の腹の下に潜り込ませて支えると、
容赦の無い一撃を加える。
「ひっ……、ひと、つ……」
それは親から罰を受ける子の構図
にしては、子に卑猥さがありすぎた。
大きく破れた袴の中央には、
薄桃色に息づく秘所が姿を見せ、
その周りを柔らかそうな恥毛が覆う。
小ぶりな尻は片方が朱色に染まり、
残る尻の白さを際立たせている。
だらしなく開いた両足から覗くその光景は、
例え聖者であっても
欲情せずにはいられなかっただろう。
もちろんベネッサとてそれは例外ではなく、
尻を叩くごとに湧き上がってくる、
葵が快楽で蕩けて自分を求めてくる表情を
見たいという狂おしいまでの欲望を
必死で抑えねばならなかった。
その為にも、今が肝心だった。
暴れまわる欲望に
必死で手綱をかけながら、
ベネッサは手の力を徐々に加減しはじめる。
ほとんど数字を読み上げる事しか
考えられない葵だったが、
必死に自分の尻に加えられる殴打を
数えながら、奇妙な事に気が付く。
(力が……だんだん弱くなってはる)
五を越えた辺りから、確かに勢いが弱まっているのだ。
(これなら……我慢出来そうどす)
それが自分を篭絡する為の罠だとも気付かず、ベネッサのスパンキングを受け入れてしまう。
十を数えた時、最初の一撃からは、ほとんど半分位の力になっていた。
「これで、半分よ」
言いながら、ベネッサは腫れあがった尻を優しく撫でる。
「っ…………!」
突然加えられた優しい感触に、葵はもう少しで声を上げてしまう所だった。
熱くなっている所をさすられると、その熱さが快感となって下半身全体に広がっていき、
身体の奥から蜜が零れてしまいそうになる。
(なんで、こないな事をされて、感じて……)
痛撃を加えられて快感を覚えるという未知の体験に、葵は現状も忘れてとまどってしまい、
思わず下半身に力を込めたが、それはかえって逆効果だった。
掌に尻肉が締まるのが伝わってくると、葵が下腹部に力を込めた理由を瞬時に理解したベネッサは、
尻の割れ目から中指を滑り下ろす。
既に膣口はわすかに開いていて、指先を軽く押しこむだけで待ちかねたように中へと誘いこんできた。
「あら? 葵、これは何かしら?」
指を差し入れた事で花開いた秘所は、愛液を溢れさせ始めると、
それまで耐えていた反動か、あっという間に内腿まで濡らしはじめる。
「もしかして、叩かれて気持ち良くなってきたの?」
ベネッサが掬いとった愛液を尻に塗り広げるように指を動かすと、葵の腰がかすかに蠢いた。
「そ、そんなこと……ありま……へん……」
必死に否定する葵だが、ベネッサの指がほんの少し奥に入ってきただけで
頭の奥が痺れたようになってしまう。
「そう。でも、あと十回残っているわよ。ちゃんと数えなさい」
わざと突き放した言い方をすると、ベネッサは身体はもう正直なのに、
といわんばかりに葵の中に埋まっている指を軽くかき回した。
「いや……ぁ……」
いけない、と思いつつも勝手に意識がベネッサの指先の感覚を追ってしまい、
そこに再び平手打ちが加えられると、痛覚も快感も数倍に増してしまい、ただうわ言のように数を呟く。
「つっ! ……ぁ、じゅ、じゅう………いち……」
ベネッサは十一回目からは、一度叩く度に焦らすように尻や太腿をじっくりと撫でまわす。
痛みと快感を交互に与えて、次第に両者を錯覚させてしまういつものやり方で、
これで手に入れた女性が、自分から痛みを求めて来るその瞬間が、ベネッサはたまらなく好きだった。
「あ、ふ……もう、堪忍どす……」
ベネッサが一六回目を叩いた時、遂に葵は泣き出してしまう。
そこには合気柔術の達人として鳴らした姿はもう微塵も無かった。
だらしなく開いた足の間から、おびただしい量の蜜が溢れて地面を濡らしている。
もしかしたら、軽く達してしまったのかも知れない。
(もうそろそろね)
そう考えたベネッサは、いよいよ最後の仕上げにかかる事にした。
ゆっくりと尻を撫でてやりながら、葵が落ちつきを取り戻すのを待つ。
それはベネッサにとってこの上なく楽しいひとときだった。
「良く頑張ったわね」
葵が泣き止んだのを見てとったベネッサは、
身体を抱きかかえて起こしてやると、そっと唇を合わせた。
葵は同性にキスをされたショックですっかり混乱したままベネッサの舌を口腔内に迎え入れてしまう。
ほとんど何も考えられない頭に、ベネッサの舌の熱さだけが伝わってきて、
いつの間にかしがみつくようにしながら夢中でその快感を追い求める。
「痛かった?」
長いキスの後、ほとんど唇が触れるくらいの距離でベネッサは優しく語りかけた。
「あ……はい……」
葵が小さく頷くと、考える隙を与えずに再び唇を奪う。
「でも……まだあと四回残っているわ」
それを聞いた葵が腕の中で身を硬くした。
「葵が……貴女が、私が日本に居る間……そうね、あと三、四日だと思うのだけど……
私の言う事を聞いてくれたら、止めてあげても良いんだけど」
それは先刻と同じように、提案に見せかけた命令だった。
「言う事を聞く」それがどんな事なのかはいくら葵でも察しがついたが、
それでも、葵の心境は微妙に変化していた。
(痛いのは、もう嫌……ちょっとの間だけやし、言う事を聞いた方がましやよ……
それに、ベネッサはん……ちょっとだけ……気持ち……ええし……)
冷静に考えれば他の選択肢もあったのかもしれないが、
とにかく、葵は進んでベネッサの提案を受け入れる気になっていた。
「痛い事は……しまへんか?」
「ええ。約束するわ」
貴女が求めてきたら話は別だけど。ベネッサは内心ほくそえんだが、
もちろんそんな表情はおくびにも出さない。
「それなら……」
口にするのは恥ずかしいのか、葵はベネッサの顔を見て小さく頷いた。
「良かった。私もこれ以上貴女の身体が傷つくのを見たくなかったの」
ひどく勝手な言い草だったが、ベネッサの笑顔につられるように葵は安心する。
「それじゃ、行きましょうか」
ベネッサは葵を抱きかかえたまま立ちあがった。
「あ……あの、自分で……歩けます……」
「そう? ……でも、着物を破いてしまったしね」
言われて葵は慌てて布地を擦り合わせる。
顔を赤らめる葵を再び軽々と抱えなおすと、ベネッサは演舞場を後にした。
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