「イメージチェンジするの!」

彼女は、私の髪を解く。長い髪が、守るように私の身体をつつみこむ。

「見て見て」

彼女の胸が背中にあたる。柔らかい。ふわりと漂う、甘い匂い。彼女は白い首をせいいっぱい伸ばして、かざした鏡を私の肩越しに覗き込んだ。彼女のとなりに、私が写っている。
彼女の手が、肩に乗っていた。

「ねっ?」

興奮気味の声が、私に笑いかける。
袖のない服を着ていた私は、肌をむき出している。彼女は、なんてことないように私の腕をなでおろして、掌をぽんぽん叩いた。

――やだ、この娘……

彼女は気にしていない。でも、私は彼女の手に私のグリーンピース色が移ってしまわないかと、気が気じゃなかった。私に触った彼女の、意外と短い指は、白いままだった。彼女の背丈と同じように、ちょっとずんぐりした、だけどとても可愛い白い色をした掌。

彼女は気にせず話を続ける。私はついていけない。
何を考えていたんだっけ?

ああ、そうか。気付いたけれど、肌に触れられたのは生まれて初めてだったわ。

 

『劣等感』
2007.10.20