「イメージチェンジするの!」
彼女は、私の髪を解く。長い髪が、守るように私の身体をつつみこむ。
「見て見て」
彼女の胸が背中にあたる。柔らかい。ふわりと漂う、甘い匂い。彼女は白い首をせいいっぱい伸ばして、かざした鏡を私の肩越しに覗き込んだ。彼女のとなりに、私が写っている。
彼女の手が、肩に乗っていた。
「ねっ?」
興奮気味の声が、私に笑いかける。
袖のない服を着ていた私は、肌をむき出している。彼女は、なんてことないように私の腕をなでおろして、掌をぽんぽん叩いた。
――やだ、この娘……
彼女は気にしていない。でも、私は彼女の手に私のグリーンピース色が移ってしまわないかと、気が気じゃなかった。私に触った彼女の、意外と短い指は、白いままだった。彼女の背丈と同じように、ちょっとずんぐりした、だけどとても可愛い白い色をした掌。
彼女は気にせず話を続ける。私はついていけない。
何を考えていたんだっけ?
ああ、そうか。気付いたけれど、肌に触れられたのは生まれて初めてだったわ。
『劣等感』