Chaparral
  後編

「いよいよだ」
 目をきらきらさせながら、星空を見上げるルーシー。
 いつになっても子供みたいだ。まあ無理もないかもしれない。
 そういう俺も興奮を隠せず、ラジオから流れる続報を今か今かと待っている。
 周りの皆も似たような有様だった。
 夜の学校の屋上に忍び込み。思い思いの場所に座り星を見る。
 いつも通りの天文部の活動。
 それにしては誰も望遠鏡を持ってきていないというのだから何をしに来たのだか。
 本当にただ星を見に来ただけ。それでも今日は趣きが違うか。何と言っても。
「なあ、すごく近くまで来るのだろう」
「みたいだ。ニュースでは、地球ギリギリを掠めていくらしい」
 運のいい事に日本側の上空を通るとの予測だった。
 きっと大迫力の光景となる。
 その期待と興奮と共によぎるある感情。
「でもちょっと怖いな」
 俺は心のまま呟いていた。
 あの星が近づく事に妙な切迫感と共に湧き出す不安があった。
「そうなのか。ふふふ、心配するな。もし何かあっても私が守るぞ」
「バカ、それは俺の台詞だ」
 そんな不安もルーシーが一緒なら大した事ではなくなってしまう。
「来た」
 薄っすらと雲の掛かった星空を割り、現れる巨大な星。
 夜だというのに、辺り一面を照らすほど強い光を放っている。
 まるで星空に一際輝く一等星のように。
 誰もがその光景に息を呑み圧倒された。歓声はなく、あるのは小さな吐息のみ。
「すごい」
 誰かがそう呟いた。皆の心を代弁するように。
 確かにスゴイの一言だった。
 だが、この奇跡のような時間は訪れると同時に終演に向かっていた。
 夜空を割り裂き流れていく星は、ゆったりとした動きながらも次第に遠くに離れていく。
 行ってしまう。まだ行かないでくれ。
 止め処ない思いが溢れる。追い縋るように手を星へ伸ばす。が、そっとその手を握られる。
 見ると、ルーシーが黙って首を振る。
 俺の手を優しく握り締めながら、このまま静かに終わりを見届けようと。
 それがいいのかもしれない。
 腕を下ろした俺の肩に彼女が寄り添い共に星空を見上げる。
 このまま離れていく星を二人で見送ろうと。
 バタン
 突然、盛大に開いた扉から顔を出す。
「お待たせ、たかちゃんっ」
「笹森さんっ?」
 屋上に現れたのは花梨だった。
 彼女はいそいそ俺に近寄ってくると、星空を見上げ目を見開く。
「うわっ、もう来ちゃってるっ。急いで急いで」
 慌てて肩にかけた鞄から何やらガサゴソと取り出した。
「ほい、確かに言われたとおり持って来たよ」
 そう言って花梨が差し出してきた金属プレート?を反射的に受け取った。
 滑らかな表面。銀でも、プラチナでもなく、一体これはなんだろう。
 ふと頭に浮かぶものがあった。
 これは単なるプレートではなく、何か意味があったのではないか。
 その時、割ってはいる花梨の得心を得た笑み。
「そうそう、忘れてた。これはね、聖なる星、デネブへの通行証なんだって」
「え、それって」
 目をキラキラさせながら、俺を見つめる花梨。間違いなく変だった。
「ふふふっ、やっぱり本当に忘れちゃったんだ。演技だとしてもすごいなぁ」
 意味不明な発言に困惑する俺を他所に一人楽しげに納得している。
 一体何を言いたいのか。いい加減にしてほしい。
 さっきから妙に胸がつかえ、むかつきが取れないのだ。喉に刺さった小骨のように。
「これはね。たかちゃん自身が言ったんだよ。今日この日、このプレートを渡してくれって」
 え、何をバカな。
 予想超える花梨の発言。
 そんな事言ったのか。いつ、誰が、俺自身?
 そう言われるとそんな気もするが、はっきりと思い出せない。
 まるで記憶にぽっかりと穴が空いているようで。
「それにしても、私にも覚えが無かった金属プレートを言い当てた事といい。自身の記憶喪失を予想したり、いつそんな力を手に入れたの。ねえねえ」
 混乱している所を構わず聞いてくる花梨。
 そんなの俺こそ教えて欲しい。
 思わず、どういう事なのか。詳しく説明を求めようとして。
 再度、割ってはいる声。
「ねえ、タカくん。写真の裏を見ろって」
「何を」
 まさか。予感が俺の内側を走り抜ける。
 このみまで。
「もう、この前タカくん自分で言ったんだよ。はい」
 手渡されたペンライト。予感は確信に変わる。
 俺の知らない俺がいた。俺は一体何を。
「ほら、写真の裏側を照らしてみるんだって」
 言われたとおりに従った。
 恐る恐る、ペンライトの光を写真の裏に当ててみる。
 すると浮かび上がってくる文字。否、急いで書いたような走り書きだ。
 それは俺の知らない俺からのメッセージだった。
『思い出せ。頼む俺。るーこ・きれいなそら。それが本当の彼女の名前だ。たとえ忘れてしまっても、百万回口にしてでも思い出せ。俺がるーこを忘れる筈ないんだからっ!』
 るーこ。心の中で呟く。
 嫌じゃない。むしろ懐かしい気がする。
 るーこ。繰り返す度に胸が締め付けられる。
 るーこ。同時に言いようのない歓喜が溢れた。
 俺は知っている〝るーこ〟という名前を、それは。
「ぅぅぅっ」
 痛み出した頭を抱える。
 もう少し、あと少しで大切な何かを思い出せるのに、俺の頭の中で最後の一線を頑として防いでる壁があった。
「貴明、どうしたんだっ。しっかりしろ」
「ダメだっ」
 差し出されたルーシーの手を反射的に払いのけた。
 あっと傷ついた顔をした彼女に胸が痛むも、今はその手を掴めない。
 何故か強くそう思った。
 まだ何かないのか。きっとまだ何か足りない。
 忘れてしまった何かを思い出すにはまだ何か足りず、俺は必死で記憶を探った。
 けれど、見つからずただ頭痛に耐え、過ぎ行く星を睨み付けた。
 なんでだよ。今しかないのに。この機会を逃せばもう。
 脅迫観念にまで達した焦りが身を捩じらす。
 肝心な事は思い出せずも、大切な譲れぬ事だった筈だ。
 その実感だけが記憶に焼きついている。
「もういい。もういいんだ貴明」
 そっと肩に置かれた手に甘えてしまいたくなる。
 いい訳あるかっ。お前の事なんだぞ。
 一瞬過ぎる思考もすぐに消えてしまう。
「でも、もうほら」
 そう言って彼女が指差した先には、今にも星空の海に帰っていこうとする流れ星。
 こうしている間も。
「ぁ」
 口から零れた絶望の吐息。
 星は最後に尾の余韻を夜空に残し、完全に姿を消した。
 身体中から力が抜ける。胸を貫いた実感。
 終わってしまったのだ。もう全てが元には戻らない。
 でもきっとこれで良かったのだ。また今までと同じ日常が続いていくのだから。
 たとえ何かを忘れているのだとしても、隣にはこうして彼女がいてくれる。
 それの何処に不満があろうか。
 なのに、なのにどうして。
「なんで泣くんだ貴明」
 涙が勝手に零れた。
 心配して覗き込んでくる彼女の顔がまともに見れず、顔を伏せる。
「どうしたんだ。私が悪いのか。そうなら言って欲しい貴明っ」
 違う。お前が悪いじゃない。お前は何も悪くない。
 きっと俺の気のせいなんだ。
 こんなに胸が苦しいのも、締め付けられるほど切ないのも。
 全部、全部、もう終わってしまった事なんだ。だってもう手は残っていないのだから。
 くっ、他の手?
 記憶の片隅で何かが疼く。
 まだ何かあったような。まだ誰かに、何かを頼んではいなかったか。
 薄っすらと靄のかかった記憶の残滓。
 それが徐々に形をとろうとした所で、空を切り裂くような轟音が鳴り響いた。
「貴明ーっ。るー☆」
 夜空を割って入った一機のヘリ。
 その扉から顔を出したのは珊瑚ちゃん?
「遅くなってごめんな。アメリカさんからこれ借りるのすごい時間がかかってもうたんや~」
 そう言って機内の奥を示す珊瑚ちゃん。
 まさか、これが最後に残された手段。
 そのまま彼女を乗せたヘリは校庭に降り立ち、待機する。最後の乗客を乗せる為に。
 気づけば、独りでに駆け出していた。
 これが訪れた最後のチャンスだと、逸る胸を抑え切れず。

   ◇ ◇ ◇

 機内に乗り込むと、鎮座していた巨大な機械。これは。
「それが頼まれたものや。えらい交渉に難儀してな~」
 珊瑚ちゃんがぽわんとした笑みを浮かべながら、
「せやからな、最後は脅して持ってきたんよ~」
 えらい冷や汗の出る説明をしてくれた。
 本当に大丈夫なのだろうか。
「でも、無理したかいはあってな。これなら」
 そう言ってパチパチと機械のスイッチを入れていく。
 ブゥンと機械が立ち上がる音がし、付属のマイクを差し出す珊瑚ちゃん。
 気づけば俺は、渡されたマイクを固く握り締めていた。
「アメリカさんの特製や。星の海にも届くはず」
 そうか、これが俺の知らない俺が最後に用意していた手段か。
 水を吸い込むように自然にすっと理解した。
「それからな。はい、貴明。ほら真似する~」
 徐に両手を頭上に掲げた珊瑚ちゃん。
 一体何の真似?
 困惑する俺は、彼女の本気を悟り、慌てて手を掲げてポーズを真似る。
「こ、これでいいの?」
「そう、それでな、るー☆」
「る、るー?」
 不可思議なポーズの後は、奇天烈な掛け声。
 本当に何がしたいのか。
 ますます混乱を深めた俺に、珊瑚ちゃんは秘密の話を打ち明ける女の子みたいな笑みを零した。
「これはな、宇宙の挨拶や。信じれば、信じた分だけ力を増す魔法の言葉。きっとこれで貴明の願いも叶う。そう貴明自身が教えてくれたんやから」
 俺は知らぬ間に頷いていた。これで全ての準備は整った。
 その時、重大な事に気づく。彼女がいない。振り返ると、そこにいた。
「ルーシー」
 ヘリの扉の前で立ち尽くす彼女は、いやいやと首を振っている。
 必死で何かを拒み、躊躇う彼女へ俺は叫んだ。
「一緒に行こう!」
「ダメだ、それだけはダメだっ」
 尚も拒否する彼女の手を掴み包み込む。
「何があっても俺が守る。絶対、お前を悲しませない」
「そんなの無理だッ」
「頼む。それでも信じてほしいんだ」
 ほんの僅かな逡巡後、微かに頷いた彼女と共に最も星星に近い空の上へ。

   ◇ ◇ ◇

 上空六千メートル、限界まで星へと近づいた俺達は手に持った通信機のマイクで呼びかける。何度も何度も、薄まった酸素に喉を嗄らしながら、過ぎ去った星へ向けて。
 未だ何の為か思い出せずとも、胸の内に宿った切迫感に身体は勝手に突き動かされる。
 こんな筈でいい訳ないと。
「なんも起きへんね~ふぅ」
 一緒に呼びかけてくれる珊瑚ちゃんも荒く息を吐いていた。
 もう休んでいてと声を掛けるも、気丈にもにっこりと笑って首を振る。
「もう少し大丈夫や」
 はっきりと分かるぐらい血の気の引いた顔で、そう言ってくれる彼女に俺は何も言えなくなる。応える術は一つしかない。
「るー」
 信じろ。そうだ信じろ。必ず届くと。
 そういつだったか、彼女は言った。
『〝るー〟の力とは信じる力だ。信じた方に世界が動く』
 だから、この声は必ず届く。そう信じている。
「るー、るー、るー」
 頼むよ。応じてくれよ。違うだろ、そんなのっ。
 なのに通信機から流れるのは、細波のような無機質な雑音のみ。
 やっぱり、あれはただの星で、るーなど。
 諦めが胸を覆い始める、その瞬間。
(『信じろ、うー』)
 誰かの言葉を思い出す。
 そうだ信じろっ。
 一度彼女を信じたからには、とことん信じ抜け。
 彼女は確かに存在した。そう信じたのだ。彼女を、彼女の言葉を。
 断片のように浮かんでくる記憶。
 名前も顔もはっきりと思い出せずとも彼女の言葉を、俺は確かに覚えている。
 いつだっただろう。彼女は言った。
「〝るー〟は〝るー〟を見捨てないんだろ!」
 反応は思わぬ所から返ってきた。
 胸ポケットから突然、光が溢れ出す。
 これは花梨の。
 溢れ出した眩い光が瞬く間に機内を埋め尽くす。
 湧き上がる期待に任せ、取り出したプレートを。
「やっぱりダメだっ」
 奪われた。
 止める間もなく扉をこじ開けたルーシーが何を思ったか、そのまま下に飛び降りた。
「バカっ何してんだっ」
 反射的に後を追う。
 彼女を求め、宙へ躍り出た。
 その瞬間、落下の恐怖など麻痺して吹き飛んでいた。
 凄い勢いで落ちる。身を切る空気に凍える。閉じかけた瞼をこじ開け必死で彼女を探す。
 いた!
――っ」
 声が出ない。凍りついた喉。
 こんなにも彼女を呼びたいのに。
 狂おしい思いが、落下の恐怖と激しく拮抗する。
 俺はこのまま死ぬのかよ。ふざけんなっ!
 死の予感に吹き出たアドレナリンが全てを強引に押し流す。
 俺は彼女をはっきり求めた。
「るーこっ!」
 思い出した彼女の名前。彼女との記憶。
 俺はやっと、彼女を呼べた。
「るーこ、るーこ、るーこっ!」
 なのに変わらぬ現実。地上への落下は止まる事を知らない。
 こんな所で。
 悔しさに歯噛みしながら、彼女を求め手を伸ばす。
 このまま終わるにしてもせめて彼女を感じてからだ。でないと死んでも死に切れない。
 そうして伸ばしたその手は。
「思い出したんだな、うー」
 彼女の手に握られた。確かな彼女の温もりに包まれる。
 そのまま彼女を抱き寄せた。ずっとこうしたかったのだと。
「俺さ。ごめん、お前の事」
 どうして忘れてしまったのだろう。
 胸の中に彼女を抱きしめたまま、落ちて行く。
 恐怖はあれど、それ以上に満足感と申し訳なさが胸を占めた。
 決して忘れないと思ったのに、それでも忘れてしまった彼女に対してなんと言えばいいか分からない。反対に、もう何年も出会えなかった彼女にようやく会えたかのような喜びで胸が詰まった。尚も、言うべき言葉を捜していると。
「いいんだその事は。それより来るぞ」
 何もかも遮るように彼女は徐に指差した。
 遥か彼方、落ち行く俺達とは真逆の方角、星の海がある場所を。
 言われて振り向く。
「っ!?」
 先程とは比べようもない強い光が俺達を包み込んだ。

   ◇ ◇ ◇

 時間が、いや空間が切り取られたかのように停止した。
 そうして気づく身体を自由に動かせる事に。
 まるで落下していた事実が嘘のように空中を自在に歩き回れた。
 いつかと同じように音も色も失われた静まり返った世界。
「無茶が過ぎるな」
 突然、聞こえた声に俺は慌てて辺りを見回す。
 すると、ぼんやり浮かび上がる光。
 その光は徐々に人の形をとり、ゆっくりと俺達に近づいてくる。
 そうして目の前で足を止めた。
 見た所、壮年の男性だが、全身を包んだ淡い光ではっきりとは読み取れなかった。
 けれど、今は大した問題じゃない。
 全てを思い出した俺は、眼前の人物の正体に確信を持つ。
「貴方が〝るー〟の代表ですね」
 勢い込んで尋ねる。
 此処に来て〝るー〟以外の何者である筈がない。ならばこの人はきっと。
「そう逸るな〝うー〟の若者よ」
 男性が微かに揺れた。はっきりと伝わってくる相手の苦笑。
 途端に自分の態度が礼儀を欠くものだったと恥ずかしくなる。
 それでも逸る気持ちは抑えきれず、気づけば身を乗り出していた。
「すみません。ですが、どうしても聞いて頂きたいお願いがあります」
「まあ、待て」
 片手を掲げた男性に、俺はその場で二の足を踏む。
 それ以上前に進めずにいると、しげしげと全身を観察されているのを感じ、途端に居心地が悪くなる。まるで品定めをされているようで何だか酷く落ち着かない。
 なんだってんだよ。
 急にこの場から逃げ出したくなる。
 そうこうする内に観察を終えた男性は、一度大きく頷き再び俺を見つめた。
「若さゆえの無鉄砲な行いだったが、よくぞ咆えた。中々に見所がある」
 そうして、張りのある快活な声で宣言した男性の言葉に黙って耐える。
 けれど内心は、どこからそういう流れになったんだとさっぱり分からず困惑していた。
「いいだろう、認めよう。うーの青年よ、お前を娘の婿として」
 寝耳に水な発言に仰天して飛び上がる。
 娘、誰の、もしかして?
 失念していたその可能性。
 彼女は星ではVIPなのだ。
 衝撃的な事実がゆっくりと浸透していく。
「えーーっ?」
「ふははははっ」
 慌ててる俺を見つめ、ますます威勢がよいと豪快に笑う男性。
 ちょっと待ってください。やっぱり貴方がるーこのお父さんですか。
 確かに以前、彼女は族長の娘と言っていたが、まさかこんな所で会うなんて。
 複雑な感情が捲き起こる。気に入られたから良いようなもの。
 最初はきちんと自己紹介から始めたかった。
 混乱した頭で自分の言動を顧みて切に思う。
「ただし」
 それも束の間、俺は反射的に姿勢を正した。
 一転して厳粛な雰囲気を纏った男性。
 先程の発言をした人物とは、思えぬくらいの変化だった。
 きっとこれが〝るー〟を束ねる長としての彼の姿なんだ。
 自然とそう理解させる程の威厳に満ち溢れていた。
「それは親としてだ。一族の全てを預かる長としては、断じて認められぬ」
 有無を言わさぬ断定の響き。
 そして気づく。いつの間にか全身が小刻みに震えている。
 俺は今この人の迫力に圧倒されている。
 今にも一歩下がりそうになった足を意地で踏み留める。
 彼女の事を話し合うのだ、あくまで対等に無様な姿は見せられない。
 そんな俺の虚勢など気にも留めず、彼は言葉を重ねる。
「愚かな娘だ。一族の決定を二度も破ったのだから」
 感情を覗わせぬ淡々とした物言い。
 きっとそれが他者を束ねる彼の在り方なのだろう。
 ならば、今は彼の主張を黙って聞こう。
 自然とそう思えたのは、彼が全ての〝るー〟の意思を代弁している。それが分かったから。
「〝うー〟に対する限度を越えた力の行使。戻った娘に下った裁き、それが、今後〝うー〟との接触を一切禁ずる事だった」
 明かされたあれからの出来事。あの別れの後、彼女の身に起こった試練。
 やはり、彼女は罰を受けていた。なんとしても引き留めるべきだったろうか。
 彼女の意思を汚してまで?
 浮かんだ過ぎ去った選択をそれじゃあただの独り善がりだと自重する。
「だがな、それをこの娘は破った。あろう事か、るーとしての成人の儀を迎えた日に、単独でうーへ向かったのだ」
 男性が俺を見つめた。この時ばかりは、彼の瞳はどこか寂しげな父親の物だった。
 途端に彼に対して好感が湧く。
 たとえ一族の長としての娘に罰を与えようとも、彼は彼女をとても深く愛している。そうじゃなきゃ、娘を奪った何処の馬の骨とも知れない俺なんかをそんな眼差しで見れる筈がない。
「そうだ、うーよ。全てはお前に会う為だ」
 己の感傷を振り払うように首を振る男性。すぐさま厳粛の雰囲気を纏い直して続ける。
「しかしな、るーを捨てうーの元に走るなど、るーの多くが認めない。うーよ。お前の言うとおり、るーはるーを決して見捨てない。だが物事には例外がある。罪人は別なのだ。掟を破ったものには、それがたとえ長の娘であろうと、厳罰に処せられる」
 そして一度口を噤み、彼は一族の全てを背負い再び口を開く。
 そこに悲観な響きは微塵もなく、逆にそれがとても悲しくも尊敬せずには入られない。
 どれほど長い時間、彼は耐えてきたのだろう。
 一族の罪を裁く事に。果ては自分の娘さえも。
 俺だったらたとえ過程がどうあろうと、きっと最後は泣きながら彼女の赦しを請うだろうに、彼は微動だにせずただ静かに判決を受け入れたと確信できる。
 何故なら、かつて彼女が誇らしげに語った両親とは、眼前の人のようなそんな存在だった。
 けれど、それでも認められないものがある。
「それがるーの掟だ」
「ですが、だからと言って、るーこの記憶を勝手に奪って良い筈ありませんっ」
 俺はあえて口を挟んだ。
 彼が伝える一族の決定に、俺なんかが口出しできる筈もない。
 けれど、これだけは譲れぬ問題だ。
 人の心を操るなんて、絶対に許していい事ではないのだから。
 なのに、男性は不思議そうに俺を見た後、疲れたような吐息を零し頷いた。
「ふむ、そういう事か。どこまでも愚かな娘だ。うーよ。お前は思い違いをしている。我々はその娘から記憶を奪ってなどいない」
 え、まさか。
 一瞬でも彼の言葉を疑った。
 そんな嘘を吐く人ではないと短い時間で理解していた筈なのに。
 やはり信じられず、もう一度彼を見つめる。
 俺の疑念を悟ったのか頷かれた。そこに嘘は見られない。
 なら、だったら。
 答えは信じたくないと除外した可能性。
 俺はその時、見過ごしてしまっていたある事実を思い出す。
 るーこ、お前、さっき。
「お前達うーの記憶を奪ったのは、確かに我々だ。それは娘の過失の痕跡を消す為でもあるが」
 必要な措置とはいえ、その事は謝罪しよう。
 続けて彼はそう言った。
 けれど俺はそれ所じゃなく、ある推測に混乱していた。
 それなら、さっきの言葉やあの行動も不自然じゃない。
 でも分からない。理由は?
 それが分からず頭を抱えている所に答が降って湧いてきた。
 目の前から。
「もし記憶を奪ったというなら、犯人はその娘自身だ。我々の迎えを誤魔化す為に、浅はかにも〝るー〟の力を封じる事で〝うー〟になりきろうとした」
 〝るー〟は〝るー〟以外の何者にもなれぬというのに。
 疲れたように彼は続けた。
 その言葉で理解した。彼女自身が当事者だと。
 それでも俺は信じきれない。だったら何故彼女はそんな事をしたのだろうか。
 尚も問いを重ねる。
「ですが、彼女は確かに記憶をっ」
「いつまで、彼を騙すつもりだ。もうとっくに目は覚めているのだろう」
 男性はこの時、初めて彼女に視線を移した。静かに叱り付けるような声音と共に。
 それまで黙ってこちらを見守っていた彼女が微かに揺れ動く。
 そうして誤魔化せないと判断したのか、ルーシーいや、るーこが彼に向き直った。
 その姿に、最後の疑念が消え、確信に変わった。
 ああ、やっぱりお前だったんだな。きっと俺が全てを忘れた頃から。
 いやそれとも、もっと前なのか。
 微かに刺さった疑いという名の棘に胸が苦しくなる。
「違う。騙してなんか、初めはっ」
「無意識の防衛反応だというのだろう。だがお前は目覚めて尚、彼に黙っていた。それはとても卑怯な行いだ。それで彼が傷つかないとでも?」
 それ以上に何も言えず俯くるーこ。
 頼む黙らないでくれよ。
 俺の中の彼女への疑念はますます膨らんでいく。
 彼女は無言の内に彼の言葉を肯定していた。
 それから彼は、含めて言い聞かせるように言葉を続ける。
「それでも、〝るー〟は〝るー〟を決して見捨てない。それが愚かにも罪を重ねた我が娘でもだ。だから、我々はお前を迎えに来たのだ」
 咄嗟に口を挟んでいた。
 疑念も不安も吹き飛んでいた。
 彼女が連れて行かれるという恐怖に突き動かされるままに。
「彼女は俺が守ります。ですからっ」
「残念だがうーよ。〝るー〟は〝うー〟を認めんのだ。星の海を渡れぬ〝うー〟を〝るー〟は決して認めない。この娘の事は諦めよ」
 それから彼は同情するような視線を俺に寄越す。
 そんなのできる筈がないのに。それでも尚、俺に彼女を諦めろと。
「お前の苦しみを取り除いてやる事もできるが、どうする」
 応えれる筈もない彼の問い。
 それは記憶を消すって事かよ。また俺からるーこの記憶を奪うっていうのか。
 そんなのもう沢山だった。
 記憶がないにも関わらず、時折襲われる途方もない虚無感。
 心の何処かが、身体の何処かが、あいつをるーこを求めていた。
「ですが、彼女を連れて行かずとも他に何か方法が」
 彼は申し訳なそうに首を振る。
 それは彼自身も不本意だという証。それでもやはり彼は一族の長だった。
 決して約定を破らぬ人だった。
「これはもう決まった事だ。娘からうーに近づく事は許されない。それに〝るー〟は〝るー〟としてしか生きられん。どんなにうーに染まろうとも、いずれ娘は身を滅ぼす。だから、どうか分かって欲しい」
 なのに、最後の最後に来て彼は娘の為に人の親に戻った。
 ずるい。頭を下げてまで娘の為を思う父親の頼み。
 そんなの断れる筈が無かった。
 けれど俺だって、彼女を絶対に離したくないのに。
 それがお前達に示す我々の決定だ。
 そう最後に付け加え、彼は沈黙した。あとは俺達の出す答えを待つと。
 どうすればいいのだろうか。彼女を離したくない。
 けれどその結果、待っているのは不幸だけだというのか。
 そんな酷すぎる。
 俺は決められず、るーこを見た。
 彼女もまた、青褪めた顔で唇噛み必死で何かを考えている。
 どうして黙っていたのか、その事を含めて彼女の意思を聞きたいと強くそう思った。
「少し時間をくれますか。彼女と話がしたいんです」
 俺の言葉に、男性は頷き、一旦その場から姿を消してくれた。
 残ったのは俺と。
「るーこ」
 俯いたまま、必死に耐える彼女だった。
 下を向くお前は似合わないよ。
 苦笑めいた感想を持つ。
 いつでもお前は誇らしげに空を星を見上げている姿がやっぱり一番似合っている。
 記憶が戻った今だからより一層そう思う。
 暫く待つと彼女はポツリポツリと語り出した。
 今までずっと言えなかった本当の話を。彼女の想いを。
「うー、るーは待った。待ったのだ、ずっと。またお前に会える日が来るのを信じて。だが、二度と会ってはならないと言われ初めて恐怖した」
 肩を震わせ、喉を震わせ、全身を震わせながら彼女が言葉を口にする。
 それは真っ暗な宇宙に漂う孤独に思えた。
 その姿は何処までも遠く、手を伸ばしても届かないように思えて、そんな事はないと俺は彼女の肩を抱いた。
 俺は此処にいる。彼女も此処に、俺の隣に確かにいるんだ。
 肌に伝わる温もりに現実を求めた。
「るーを裏切る事より、うーお前に会えぬ事を。それでも、いつか会えるなら、耐えられる。けれど、二度と会えぬというのだ。限界だった」
 それが無茶をしてまで、俺に会いに来てくれた理由。
 ならどうして、彼女はるーこと名乗らなかったのか。それだけが納得できない。
 答えは彼女が教えてくれた。
「最初は真実、記憶の混乱だった。十分な準備もないまま、単独で〝るー〟を飛び立ったるーを待っていたのは、気が遠くなるほど長い航行。誇るといいぞ。その孤独時間に耐えられたのは、うーとの思い出のおかげだ。何度も繰り返して思い出す度に、自分の記憶と混ざってしまったがな」
 それは、どれ程の時間、どれ程の孤独だったのだろうか。
 その間自分自身を支える為に、何度俺との思い出を繰り返したのか。
 千回か、それとも一万回だろうか、いや百万だって足りないかもしれない。
 発狂せずにはいらない宇宙の闇を彼女は独りで耐え続けた。
「そして無事たどり着けたのは、うーとの約束があったからだ」
 そう誇らしげに語る彼女の顔が一転して曇る。
「けれど、すぐに気づいた。〝るー〟がるーを追ってきたのを。そして理解した。るーの不始末を処理する為に、るーの記憶を持つ全ての〝うー〝から記憶を消すつもりだと」
 ようやく落ち着けたその身に襲い掛かる逃げてきた筈の過去。
 彼女は己の身を守る為に自らの記憶を消すしかなかったのかもしれない。
 それが俺達が一緒にいる為の代償だったというなら悔しいが仕方ない。
 なのに彼女は、それすらも大した事ではないのだと首を振る。
 より恐ろしいものがあったのだと、彼女は震える身体を掻き抱く。
「だがな、うー。〝るー〟に見つかる事よりも、もっと耐えられぬ事があった。それは、るーを忘れた後のうーだ。そんなうーと一緒にいる事が、るーは耐えられなかった」
 ああ、だからなのだ。
 だから彼女は無意識の内に俺が作り上げた地球人のルーシーに成り代わったのだ。
 俺が俺を忘れた彼女に耐えられなかったように彼女もまた同じだった。
 俺達は同じ想いを抱えていた。
 そう理解した瞬間、胸の内にあった最後の蟠りがとけて消えた。
 そうして彼女の話も終わる。
「だが、もう心配要らないぞ、うー。るーは〝うー〟になる事にした。一族が何と言おうともだ」
 お前の為だ。名誉な事だぞ。誇れ。
 それが彼女の出した結論。今にも泣くのを必死に堪えている彼女を見ていられない。
 俺との約束と故郷の掟に板挟みになり、それでも俺との再会を選んでくれた。
 そして今も後悔しながらそれでも尚、俺と一緒にいることを望んでくれている。
 嬉しい、本当に嬉しくて幸せな気持ちで一杯になり胸が詰まる。
 でもそれなら俺は何を選べばいい。
 こうまでして俺と共に在る事を選んでくれた彼女に、彼女の想いに何で報えば良い?
 そんなの決まっている彼女の幸せだ。彼女の100%の嘘偽りのない幸せを。
 だったら、それなら答えはすでに出ている。
 悔しさで奥歯が壊れそうなほど歯を噛み締める。拳を握り締めて叫び出すのを耐える。
 彼女を、るーこを帰さなければ。
 るーこと一緒に暮らすのは、それだけで幸せな現実だ。
 けれど、彼女の方こそ、きっといつか耐えられなくなる日が来る。
 るーを捨てたという過去は彼女をいつまでも責め苛むのだから。
 その度に彼女は自分で自分の記憶を消してしまうかもしれない。
 そんなの悲し過ぎる。
 そして俺はその事実に目を瞑り、彼女共に過ごす俺自身を許せない。
 今の俺じゃあ彼女を〝るー〟にも、〝うー〟にもしてやれない。
 だから、きっと正しい選択などたった一つしか……違う。そうじゃない。
 きっと俺はまだ信じていなかっただけだ。自分も彼女も。
 だから俺は躊躇わず、その答を口にした。
「帰れ。ここはお前の星じゃないだろ。るーに帰れよ」
「うーっ」
 裏切られたような声、傷ついたような顔。
 そんなるーこに胸が締め付けられる。
 けれど毅然とした態度を必死で保ち俺は続けた。
「お前、忘れたくないんだろう。〝るー〟としての記憶も、俺との思い出も」
「だがうーっ!」
 分かっている。その為には、二人は此処で別れなければならない。
 このままずっと一緒に居たいなど子供じみた我侭は許されない。
 俺達はもう大人になるのだから。
 それでも、お前はこうして俺に会いに来てくれた。
 形振り構わず、あの時の約束を守り、再び俺に会いに来てくれた。
 だったら。
「今度は俺が約束する」
 そうだお前が約束を守ってくれたなら、今度は俺がそれを果たす番だ。
 この星でいつか起きる奇跡を、お前との再会を待っているだけなど、どうしてできよう。
 たとえ、どんなに二人の距離が離れていようとも、そこには確かな指針がある。
「45光年。たとえ45光年離れていても、俺とお前の心は繋がっている。あらゆる物理法則を越えて二人は一つだ。そうだろう?」
 いつか言われた言葉を今度は俺が。
 でもそんなの無理だと首を振る彼女に俺は、心配ないと笑って告げる。
「お前が会いに来てくれた。だから今度は俺が会いに行くよ。45光年だ。それぐらい待っていてくれよな」
 絶望的な数字だろうか。いや、きっと叶えてみせる。
 お前と会う為ならば、不可能なんて越えてみせる。光の速さとまとめて一緒に。
 尚も、首を振って拒否するるーこに俺は告げる。
「頼む。分かってくれよ。俺も忘れて欲しくないんだ。るーこ・きれいなそら。お前は俺が惚れたお前でいて欲しいから、だから、この道を選びたい」
 言葉を重ねる溢れ出す想いを乗せて。お前に届けと。
 お前が笑って頷いてくれるなら、俺はどんな無茶だって叶えられる気がするんだ。
 そして暫く押し黙った彼女は徐に空を見上げたまま、ポツリ。
「バカだな、うー」
 零れ落ちたのは星の雫。


 二人並んで待った。今だけはと互いの手と手を繋ぎながら。
 そうして再び訪れた男性は、重く深い息を吐き俺を見た。
 一目で分かった。彼が何処かで俺達の答を聞いていた事を。
「愚かだな、うーの青年よ」
「はい、貴方の娘さんと同じくらい」
「そうだな、確かにそうだ」
 そう言って、笑ったるーこのお父さん。
 またお会いしますよ。必ず、なんとしても。
 叶えなければならない約束も一つ増えた事ですし。
「では気長に待つとしよう。〝うー〟が〝るー〟を訪れる日を」
「その時は」
「好きにするといい」
 莞爾と笑って彼は去った。
 次第にぼんやり消えていく光の人影。
 残ったのは俺と。
「るーこ」
「45光年だ、うー」
 わざと茶化すような笑みを浮かべながら、るーこは俺を見つめる。
「びた一文とて負けぬぞ」
 俺も笑って応じる。
 あの時とは違い、今度は笑って彼女を見送る。
「もし破ったら?」
「決まっている。またるーから会いに行ってやるぞ」
「そうしたら次は駆け落ちだな」
「それも悪くない。すーを股にかけた逃亡生活だ」
 そう言って俺達は、固く繋いだ手を離す。
 その感触を惜しむように互いに手を伸ばすも、いつか同じように光がるーこを包み込む。
 その間際、微かに触れ合った互いの指先。伝わる熱。伝わる想い。
 そして同時に溢れ出す別れの言葉。
「待っている、待っている。お前を待っているぞ、うー。いつまでもだっ」
「ああーっ。信じろっ。必ず会いに行く」
「当然だ」
「「〝るー〟の力は信じる力だっ」」
 俺達はその日、泣き笑いながら再会を約して再び別れた。
 45光年離れようとも、二人は一つだと笑ってさよならしたんだ。

   ◇ ◇ ◇

 北東を見上げると夜空に浮かぶ満天の星星。その先にある筈の星を想う。
 あの懐かしい青い星を。
 丘の上の草原に立ち、風に揺れ耳を澄ます。いつ届いても聞き逃さぬように。
 いつか訪れると信じている彼の到着。今日かも知れぬし、明日も知れない。
 早くて45光年。ゆっくり気長に待つつもりだ。
 ただ彼女は信じるまでもなく、分かっていた。
 己の時間が許す限り、自分は此処で彼を待つのだと。
 いつか交わした約束を叶えにやってくる彼を待つ。
 その時ふと、風に乗って何か聞こえたような気がした。
 そうして鮮明に蘇る彼の声。
 けれど彼女は己の気のせいと、首を振って空を見上げる。
 再び風に揺られながら星を眺めて彼を待つ。
 自然とその胸は温かなもので満たされていた。


 手には通信機のマイク。
 所詮は気休め。この程度の代物では彼女の元には届きはしない。
 けれど気分の問題だった。
 これは彼女と自分自身への宣誓なのだ。ようやく約束を叶えに行く事への。
 俺は新造された宇宙船の中から、遥か遠くかけ離れた場所にいる彼女に語りかける。
「45光年。これから45光年かけてお前に会いに行くよ。だから――
 続く言葉は再会の後。
 今も信じて待っているだろう、〝るーこ〟へ……

《fin》




















【後書き】
 まず最初に、この作品はサンクリ40で無料配布したコピー誌用のSSです。
 せっかくだから、掲載してみました~
 さてそれでは、今回のコンセプト。
 ゲーム本編のるーこシナリオのその後の話を自分なりの解釈で補完してみた。
 うん、突き詰めればそれだけですw
 一重に「るーこ」の魅力のなせる業でしょうか
 思わずクライマックスの別れのシーンで、グッと来たのと
 彼女のシナリオは、結局明確には明かされないままの伏線が多く
 その辺をあれこれ考えている内にいつの間にか描きたくなっていました。
 つまり、エピローグで「ルーシー」と名乗る彼女が、やはり″るー″であるなら何があったのか。と考えた末に、今回の作品の大体の構想が生まれたという訳です。
 その思いついた構想を、ラストの「もう一度再会を約す二人」を演出する為の流れとしてまとめたものが今作。
 ただ今読み返してみると、導入部やクライマックスのインパクト、また全体のメリハリを意識したつもりが、
 貴明の追い詰められていく心情が上手く描けなかった所為か、導入部は弱いし、
 〆切に追われ急いで描いた為、到る所で展開が早急すぎるし、
 逆に各伏線を無理に解釈しようとした為、会話含めて説明文が多く中弛みも目立ち、
 要反省orz
 救いとしては、ラストの二人の別れは、自分でも結構お気に入りだったりします。
 それと蛇足過ぎて削ったシーンに、珊瑚に弟子入り志願し来栖川重工に入る貴明みたいなネタもあったり。
 総括としては、時間がなかったのは言い訳にならんのでもっと精進といった感じでした~


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