3.5 褌に萌え萌え(…やめれ!)
正月だし、キスくらいいかと油断していたら、すっかり惣一郎のペースののせられてしまった。『凶』のおみくじをひいた惣一郎が、気の毒だったというのもある。着物の前を開かれ、胸を弄くり回されているうちに、すっかり息があがってしまった。気がついたら和室へ連れ込まれ、畳の上に寝かされていた。ふと視界に入ってきたものは…初めて見るランプだった。
( な、なんだ、あの行灯もどきは?
さっき和室でごそごそしてたと思ったら、
こんなものを押し入れから引っ張り出していたのか?
いつの間に買ってあったんだろう…。
まあ…ちょっと江戸時代のような雰囲気はあるが…あの電気コードはいただけないな)
時代物となると、やはり私はディテールにうるさいのであった。
(それはそうと…寒いんだけど…)
暖かいリビングから離れたくなかった私は、ほんの少し不機嫌になった。
惣一郎は私の項や肩に丁寧に唇を這わせている。奉仕のごとき愛撫に、私はいつも身を任せているだけだ。洋服を脱がせるのはいやに手際のよい惣一郎だったが、和装には慣れていないはず。
(どうせ、帯も満足に解けないんだろう?)←ひ、ひどい…。
惣一郎には気付かれないように、背中に手を回し、貝の口に結んだ帯を自分で緩めておいた。
何も知らない惣一郎は、楽しそうにするすると帯をとき、腰紐もほどいて着物の前を開いた。
「あっ…!」
「な、なんですか?」
「おまえ……こんなものをつけていたのか?」
(しまった…六尺をつけてたのをすっかり忘れてた…)
見られてしまっては仕方がない。私は居直ることにした。
「和服なんだから、下着もそれなりにすべきでしょう? ブリーフなんかはいてるほうが邪道なんです」
惣一郎はぐっと言葉に詰まったが、
「…それなら、私の分も用意してくれればよかったのに?」
意外な反撃に、今度は私が答えに窮した。
惣一郎に褌…。今生の惣一郎はどちらかといえば『西洋かぶれ』だ。が、やはり根は日本男子なのだから、きりっと締めた六尺はそれなりに似合うかもしれない。
「来年は私も褌にしよう…そうだ、せっかくだから、どんな仕様になってるのかよく見せてくれ」
惣一郎は何やら好奇心いっぱいの目で、前垂れをめくった。
「ふむ…このぴらぴらはの下は…ほお、こんな風に前を包んで後ろへ回っているのだな」
言いながら、惣一郎は私の身体をひっくり返した。うつぶせにされ、着物や襦袢を全て脱がされてしまう。
「さ、寒いじゃないですか!」
惣一郎は着物をきたままで、私ひとりが下帯一枚に剥かれていた。いたたまれなくなった私は、今度こそ本気で逃げ出してやろうと思った。せめて床暖房でぽかぽかのリビングへ戻るのだ。よし、匍匐前進開始だ!
「じっとしていなさい」
声は優しいが、思いがけない力で背中を押さえつけられた。
間を置かずに惣一郎が私の双丘の上に屈み込んだ。
六尺の布が食いこんでいる谷間の周囲に、微妙なタッチで触れてくる。
「なるほど…こういう風に巻き込んで留めるのか…」
締め方を観察するふりをして、惣一郎は私の脚を軽く開かせた。
「で…ここを通って…」
○陰のあたりにいきなり唇がふれ、思わず総毛立った。脚を閉じようとしたが、既に惣一郎の頭がしっかりと割り込んでいた。惣一郎は案外器用に布を緩め、さらに深く舌を差し入れてくる。そのまま、双丘の谷間を舌先がなぞっていく。ずらされた下帯の綿絽が肌に摺れるのと、惣一郎の濡れた舌の感触があいまって、常とは違う刺激に肌が粟立った。
「あ…」
全身にさざなみのような震えが走る。息をつめて身を固くすると、惣一郎の舌が蕾をこじあけるように侵入してきた。
「んっ…や、やめて…くださいっ」
叫び出したいような羞恥と、それを上回る淫靡なうねりが全身を駆け抜けた。私は傍らに脱ぎ捨てた、ばあちゃん手製の着物を引き寄せ、顔を埋めて声を殺した。
惣一郎は入口を軽くつついたり、指で開いて奥まで舐めあげたり、とても言葉にはできないようなやり方で蕾を嬲っている。少しでもこの状況を客観的に眺めてしまえば、恥ずかしさで消え入りたくなる。こんなことをされて感じてしまう自分も自分だ。
「ふ…あ、っん…」
人生踏み外したかと思うのは、こんな瞬間だ。
やがて堪能したのか惣一郎は一度身を離した。
ほっと息をついたのも束の間、今度はひんやりしたものが塗り込められた。
(ああ、昔は膏薬くらいしかなかったが、今は何でもあるのだなあ…)
確かに挿れる前に何か塗ってくれると楽は楽だ。呑気にそんなことを考えていると、再び惣一郎の指が侵入してきた。ゼリーの助けを借りて、惣一郎の長い指も奥まで楽に届いた。内壁をこするように蠢く指に身体の全神経が集中してしまう。
多分わざとだろう。あのポイント一触れられれば正気でいられなくなる、あの場所一を微妙に外してくる。それがもどかしくてたまらない。惣一郎の指が与える快感を、はやくも貪欲に取り込もうとする自分がいた。
最初は…こんなこと、おぞましいだけだったのに。男なら歯を食いしばって耐えるのみ…と、半ば苦行僧のような覚悟で、惣一郎との新婚生活が始まった。それが…、惣一郎が優しかったのもあるが、ひと月もたたないうちにすっかり…。こほんっ。
人間、慣れとは恐ろしいものだとつくづく思った。
惣一郎は私の後孔を弄くりながら、身を寄せて隣に横たわった。私の反応をうかがいつつ、耳や項に唇を這わせたり、甘噛みして遊んでいる。相変わらず着物もきたままだ。惣一郎の正絹の着物地が素肌に触れていくのが心地よい。このまま、まったりと快感に流されていくのも悪くなかったが、ふと、気になってしまった。惣一郎はもしや一人で帯が解けないのではないか?
「…先生…、帯、ほどきましょうか?」
つい世話女房気質が出てしまう。惣一郎はこちらが恥ずかしくなるくらい、蕩けそうな目で私を見つめていた。
惣一郎は上体を起すと、あぐらをかいて座った。それを無言の了解ととり、私も起き上がると、彼の背後に回って帯を解き始めた。着付け同様、手際よく帯や紐をとき、着物や襦袢を後ろから脱がせてやった。
せっかくばあちゃんの縫った着物だ。しわくちゃにされては困ると、私は惣一郎の着物をまとめて部屋の隅に押しやった。
ふわりと背中に温もりを感じれば、惣一郎が再び後ろから覆い被さってきた。そのまま、畳の上に四つん這いにさせられる。正月早々、こんなふしだらな体位は困る…と思ったが、再びさっきのゼリーがぬられ、もう待ちきれなくなったのか、固く張り詰めた惣一郎自身がぐいっと後ろに押し当てられた。
粘膜を押し開き、先端がめりこんできた。
「んっ………!」
最初の瞬間は圧迫感に息がつまりそうになる。畳に爪をたて、背を逸らせて衝撃に耐えた。
惣一郎は焦れったいくらい少しずつ身を進める。初めは慣れない身体を気づかってくれてるのかと思ったが、最近そうでもないことがわかった。ゆっくりと肉棒が内壁を摺るたびに、もどかしさにじっとしていられなくなる。少しでも気を抜けば、さらなる刺激を求めて腰が勝手に動いてしまう。惣一郎は全てお見通しだ。とんでもない確信犯だった。
惣一郎は己の物を根元まで納めきると、今度は両手で私の胸をいじり始めた。軽くひっぱるように突起をつままれ、私は思わず掠れ声を上げた。反射的に後ろが惣一郎のものを締め付け、粘膜がよりリアルに惣一郎を感じた。気のせいだろうか…いつもより、さらに熱く質量が増しているように思える。
ああ、だめだ。堪えても堪えても、息があがってくる。結合部から身体中に微熱のような疼きが広がっていく。
「あ…せん…せい、何だか…へんです…」
「どうしたの…辛いのかい?」
心配そうに耳元にささやきながらも、指先はしっかり胸の突起を軽くひねったりこね回したり忙しい。
「あ、あぁ…っ」
胸に刺激が加わるたびに、穿たれた楔に肉襞がまとわりついてしまう。何とはしたない。
「右近…」
片方の手が胸を離れ、中途半端に緩められた下帯をむしりとった。露になった下腹に再び手が伸びてきた。
「今日はほんとにどうしたの? ほら…もう、こんなだ…」
触れられて初めて気付いた。張り詰めた先端からは、すでに雫がこぼれ出していた。惣一郎はそれを己の指にからめてそっと上下させた。幹全体に塗り広げるような動きに、私はたまらず声を上げていた。
悔しいが…もうだめだ。…溶けて崩れてしまいそうだ。
相手の思う壷にはまった気はするが、快楽を追い始めた身体は、私の意志を裏切って暴走し始めた。
「せ…せんせいっ」
肩ごしに振り返るように後ろを見れば、惣一郎が欲情に潤んだ瞳で見つめ返してきた。
「先生…じゃないだろ?」
口元に微笑を浮かべながら、惣一郎がようやく腰を使い始めた。ぴったりと合わさっていた内壁が、離れていく惣一郎自身にからみつく。菊座の入口が、逃すまいと先端を締め付けたらしい。惣一郎が思わず小さくうめいた。
「…惣一郎って、呼んでごらん?」
そのまま浅いところで抜き差しされ、たまらず腰が揺れる。
「どうしたの…ほら」
惣一郎は前に回した手で、私の袋をやんわりと揉みしだきながら、腰をグラインドさせ、より深く入り込んでくる。
「っ…そ…惣一郎っ」
思わず洩れた声に煽られたのか、惣一郎の肉棒がいきなり奥深くを突き上げた。
「あぁぁ一っ」
その一点を突かれ、あられもない声が洩れた。
震えがくるくらい…いい。
執拗にその場所を責められ、歯止めの利かない快感に身体中が叫び声をあげる。
「惣一郎っ…あ…うっ…んん…」
「右近っ…」
惣一郎が私の腰を掴んで膝立ちになった。串刺しにされたまま、激しくゆすぶられる。もう両手で上体を支えていることもできず、私は腰だけ高くあげたまま畳の上に突っ伏した。何かすがるものが欲しくて、思わず脱ぎ捨てた着物をたぐりよせていた。
「あっ…ふ…も、もう…惣一郎っ…」
宙に浮いた腰を抱えられ、抜き差しを繰り返す屹立を受け入れる。外れる寸前まで引き抜かれ、最奥を突かれ、目の前が真っ赤になっていく。
ばあちゃんの縫ってくれた紬をくしゃくしゃに握り込み、私は身体中で惣一郎を感じながら、我を忘れて泣いた。
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