最近姉はすごく綺麗になった、と新八は思うわけだ。
弟バカといわれるかも知れないけれど、本当にそう思うんだからしょうがない。
初めは、スナックに勤めだしたから化粧が上手くなったんだ、と単純に考えていた。
でもすぐに、そんなんじゃない、それは違うと気がついた。
もっとなにかこう、表面ではなくて、内側から薫るような綺麗さ、というのだろうか。
乱暴なところなどは全然変わっていないし、新八にとっては恐ろしい姉であることにも変わりはないはずなのに。
何が姉の中であったのかわからないけれど、確実に「何か」はあったのだ。
(ここで、作者が絵が上手くなっただけとかいう無粋な突っ込みは無しだ)
姉はもともとの素材はいいのだ。
黙って微笑んでいれば、立てば芍薬・座れば牡丹・歩く姿は百合の花、なんていうこっぱずかしい形容句も全然お世辞なんかではなく似合ってしまう。
実際今までだって、何度か一目ぼれされることもあったらしい。
まあ、そういう男たちは姉の本性を知るや否や彼女のことを諦めたようだったが。
ああそういえば、姉にどんなに冷たくされても諦めない(現在進行形)人もいた。
そちらは例外、世の中にはああいう奇特な人間もいるということで。
「なあに新ちゃん、人の顔じっと見たりして。何かついてる?」
妙が笑いながら茶をすする。
新八には妙をそんなに眺めていた自覚はないのだが、そう言われるところを見ると随分長いこと見ていたのだろう。
「何考えてんだ、新二」
「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……って何やらせんですか」
「お前が勝手にやったんだろォが」
新八の隣に座っていた銀時がからからと笑った。
「面白いと思うなよメガネ。勘違いするな」
そして妙の隣の神楽は毒舌っぷりを発揮する。
「第一今時の若者にそのネタは通用しないネ」
「新三はおっさんくさいからな」
「何勝手におっさん認定してるワケ!? それに僕まだ10代なんですけど!!」
「名前にはつっこまないのか」
「ああもう、ああ言えばこう言う!!」
「キーキーキーキーうるさいよ新四。ヒステリーですか?」
「誰のせいか誰の!!」
いいようにあしらわれている、と思う。
「新五、一人だけまじめぶっても無駄ネ」
「安心しろ、お前も立派な俺たちの仲間だから」
「なにその嫌なお墨付き!」
放っておけばどこまでも暴走する彼らを止めるのが自分の役目だという気がしていたが、自分みたいな普通の人間にこんなむちゃくちゃなやつらが止められるのかと、自信がなくなってきた。
助けを求めるように妙を見ると、妙はこちらを向いてやはり美しく微笑んでいた。
ただし妙が見ているのは新八ではなかった。妙は――銀時を、見ていた。
合点がいった。
ああそうか、とその事実が新八の中ですとんと呑み込めてしまった。そうだったのか。
スナックに勤めだしたころとは、つまりは新八の隣にいる男に出逢ったすぐあとなのだ。




なんだかむかつくので、銀時には言わないでおくけれども。




ルドモ