で、なんで俺は、花屋なんかにいるんだろうね。
 しかも横にいるのが古泉ときている。
 どうも周囲から奇異の目で見られてる気がするぞ。
 視線の中には、古泉に対する女性からの熱い眼差しとやらも混じってはいるが。
 べ、別に羨ましくなんかないんだからね! そして妬いているわけでもないぞ、断じて。
 さて、男二人で花屋。ハルヒの求めている非日常とは違うだろうが、これも結構異常事態だ。
 普通の男子高校生にとってはまず縁のない場所だと思う。せいぜい母の日にカーネーションを買い求めるくらいで、後は……特にないな。
 可愛い彼女持ちの男なら、その愛しのハニーのためにバラの花束なんかを買っちゃったりするんだろうが、あいにく俺は花をプレゼントするような恋人などいない寂しい青春を送っている。
「僕がいるじゃないですか」
 誰が恋人だ誰が。一回やったくらいで恋人面するな。
「二回ですよ」
 ええい、男が細かいことをぐちぐちと。
 ラウンド数を問題にしてるんじゃないんだ。俺のカウントでは一回なんだよ。
「そういえばあなた、二回目は後ろだけでい……」
 俺は慌てて古泉の口を塞いだ。
 もしこの店にトリカブトが売っていたなら、今すぐお買い上げしてこの馬鹿の口の中に放り込めたのに。