手紙1 あれから数年



ー茜へー

茜が逝ってから僕は、僕らのこどもに暁(さとる)と名付けた。
そう、君が去ったあの日の空の色と同じ、君と同じ色の名前だよ。
君がそう願っていたような気がしてね。

君の命を受け継いだ暁は、すくすくと元気に育っているよ。

あれから僕はちゃんと医者になったよ。約束だったからね。
学生の間も子育ては大変だったけど、卒業してからは大学病院の仕事と育児はとても兼務が出来なくなってきて、夜勤のときや、普段も遅くなる時は、蒼と右京の世話になっているんだ。
あの二人は相変わらず仲がいいよ。
二人の間に生まれた赤ちゃんの話はしたっけ?
女の子だったんだよ。杏(あんず)っていうんだ。可愛いだろ?
おじバカって言わないでくれよ。君だって杏を見たら、頬擦りしたくなるさ。
暁は杏をお嫁さんにする。なんて言って、片時も離そうとしないんだよ。
右京は杏をお嫁になんて出せないだろうな(笑)
笑い事じゃないんだよ茜。
もしかしたら、暁がお婿さんになるかもしれない。
それも、いいかもしれないね。

僕の勤務時間が不規則だから、暁は蒼と右京に半分育ててもらっているようなものだよ。
暁は蒼のことを蒼ママ、右京の事を右京パパと呼んでいるんだけど、何故か僕のことを晃くんって呼ぶんだよ。
多分蒼がそう呼ぶからなんだろうけど・・・。
ちょっと寂しいかなぁ。

僕だって「おとうさん」って呼んで欲しいな。
茜だって「おかあさん」って呼んでもらってるのになあ。


ねぇ、茜。
君はどんな風に暁を育てたかったの?
どんな風に暁と過ごしたかったの?
どんな風な家族になりたかったの?

僕は、君がいつも、僕らの傍にいるような気がするよ。


+++ Fin +++



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