―茜へ―
時間が経つのは早いものだね。
君が逝ったあの日から、もう7年が経とうとしているのだよ。
暁は相変わらず元気で、最近は手が付けられないよ。
わんぱくって言うのは暁のための言葉だったんだね。
僕は最近大学病院をやめて、とうさんの病院を手伝いはじめたんだ。
お陰で暁と過ごす時間も多くなって、暁もよろこんでいるよ。
相変わらず、蒼ママが大好きな、甘えん坊だけどね。
この間、暁は蒼の家の庭で、木登りをしていて落ちたんだ。
ほら、君の生まれた家の庭にあった一番大きな松の木だよ。
頭を打っていて、意識不明だった。
僕は、君が暁を連れて行かないでくれると信じていたけれど、それでも2日間眠り続けた暁を見守っている間、不安で不安で仕方が無かった。
目覚めた暁が言った言葉を、僕は一生忘れられないだろう。
「おとうさん。ぼく、おかあさんにあったよ」
暁は夢を見ただけなのだろうか?いや、違う。
茜、君なんだろう?君が暁を助けてくれたんだね?
暁が言うには、蒼ママより若いけどそっくりな女の人に会ったそうだよ。
『お家には「お父さん」が待っているから、帰らないとダメよ。私はいつも、暁と晃を見ているからね』と言われたそうだ。
その人に、背中を押されたら帰ってくることが出来たそうだよ。
ほら、ね?こんな事するのは、君しか考えられないじゃない。そうだろう?
あれから、暁は僕をおとうさんと呼んでくれるようになった。
僕もやっと、「あきらくん」から卒業できそうだよ。
――― ありがとう。 茜 ―――
+++ Fin +++
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