☆ホタルの住む森30000Hits REQUEST SPECIAL STORY☆〜Request from 部長さま〜
Step5 クリスマスの誓い 3
響先輩が譲ってくれたのはこの辺りでは一番人気のアミューズメントパークのチケットだった。
ここでは四季折々のイベントが常に行われている。水族館に遊園地やプール、映画館にボウリング場などその種類の多さは思いつく限りのレジャー施設が詰まっているのではないかと思う位だ。
しかも12月24日にはアイスリンクでのクリスマス特別ショーが開催される。
このチケットが取れなくてプレミアがついたりしていると聞いているから、偶然とはいえ響先輩がこのチケットを譲ってくれたのはとてもラッキーだと思う。
クリスマスデコレーションの美しいこのパーク内には入ると、数ある施設の中からあたしたちが一番に来たのはもちろんアイスリンクだった。
アイスショーの準備の進んでいるリンクは滑走できるエリアは半分に制限されていたけれど、へたくそなあたしが滑るには充分すぎるくらいの広さがある。
龍也先輩は運動神経が良い為難なく滑っているけれど、あたしは手すりの掃除をしているようなもので先輩の差し出す手に手を重ね…るんじゃなくて縋り付いて何とか立っているって感じだ。
大体こんなツルツル滑る氷の上を自由自在に滑れる事のほうがおかしいと思わない?
あたしの手を握り腰に手をあてゆっくり滑ってくれる龍也先輩はとてもやさしくて、凄くドキドキする。繋いだ手から鼓動が伝わるんじゃないかと思うくらいに心臓がビートを打っている。
龍也先輩みたいな素敵な人があたしをエスコートするように滑っているのはきっと凄く絵になっているんだと思う。
だってほら、リンク内にいる誰もがあたしたちを見ているもの。
なんだか恥ずかしい。あたしなんかが先輩と一緒にいると不釣合いだって思われてしまうんじゃないかな。
周囲の視線が気になって集中できなくなっていたせいだろうかバランスを崩してふらついてしまった。
「あ、きゃっ!ひゃあぁぁっ。」
「危ない聖良。」
強く腕を引かれ抱きしめられる。すっぽりと先輩の腕の中に収まったあたしは何とか転ばずに済んだみたいだった。
「ひゃ〜〜。怖かった。ありがとうございます先輩。」
「大丈夫か。あんまり下ばっかり向くな。目線を高くするんだ。」
だって…視線を感じて出来ないんだもん。
「…って、無理か。これだけギャラリーが多いとなぁ。みんな聖良が可愛いからずっと目で追っているしな。俺もちょっと嫉妬で限界かも…。」
何を言ってるんでしょうかみんなが見つめているのは先輩なのに。
「先輩…それって勘違いです。みんなが見ているのは先輩ですよ。」
「ン…それもあるかな。俺達二人を見ているんだよ。きっとあれのせいだ。」
先輩の視線の先にはなにやらポスターのようなものが貼ってある。
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イヴのベストカップルコンテスト!
優勝商品:スィートルームで過ごすハワイ5日間の旅をプレゼント!
今年のベストカップルは誰だ!
クリスマス・イヴのアイスショーの後に今年のベストカップルコンテストが行われます。
あなたの周りのベストカップルや素敵と思うカップルをご紹介下さい。
自薦他薦は問いません。多数の方の参加をお待ちしています。
ベストカップルに選ばれた方には1年間当パークのイベントポスターの
専属モデルとしてご契約いただきます。
あなたもぜひ参加して素敵なクリスマスの記念にしてみませんか?
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「これ?」
「そうこれ。自薦他薦は問いませんってあるだろう?俺達結構注目されているみたいだな。」
「えぇぇ?違いますよ。先輩は素敵だからわかるけどあたしなんて…。」
「また、そんなこと言って、そこいらの子に嫉妬されるぜ。聖良はこんなにかわいいのにそんな事言ったら贅沢だって。」
「かわいくなんてないです。」
「また…今度そんなこといったら所構わずキスしてやる。いいか?聖良はマジかわいいんだぜ?もっと自信もっていいんだよ。俺がこんなに溺れているくらいのいい女なんだから…。」
「そんな…だって。」
「ああもう、ウルサイ口だな。」
グイッと後頭部を引き寄せられる感覚があったかと思うと、唇を先輩の唇が塞いでいた。
周囲から『きゃー』とか『おおー』とかどよめきが上がった。
恥ずかしくて顔が真っ赤になっていくのがわかる。
湯気が上がりそうな頬を抑えて先輩から離れると文句を言おうと意気込んでみたけれど…。
「こんな風にね。ごちそーさま。」
ニッコリ♪と効果音&背中に花束を背負った少女漫画のワンシーンみたいな迫力でチラリと舌を出して悪戯っ子みたいな笑顔でを振りまく先輩…。
何も言えない。あたしって先輩の笑顔に弱すぎる…。
周囲の声も聞こえないくらい呆然としていたあたしだけど、かなりの人数があたしたちを見ていたらしくいつの間にかアンコールならぬキスコールが始まっていていた。
背中を冷や汗が流れ始める。
まさかこんなコールに応える先輩じゃないよね?
不安に思って先輩を見上げたらなんだか凄く嫌な笑顔。
あたしを抱きしめる腕にも力が入っている気がするのは気のせいじゃないような…。
先輩の顔が近付いてきて…唇が頬に触れる。
途端に大きくなる歓声と拍手。
あたしたちは見世物ですか?
でも…。
唇が触れたのが頬だった事に一瞬ほっとして、次の瞬間少し残念に感じたなんて先輩には口が裂けてもいえないわ。
鳴り止まないキスコールの中、あたしは真っ赤になりながら先輩の腕に抱かれてリンクを降りた。
このときはアイスショーの後あたしたちがたくさんの人からの他薦を貰って半強制的にコンテストにノミネートされる事になるなんて考えてもみなかった。
その上、気付いたら優勝までしてしまっていたなんて話、きっと誰に話しても信じてもらえないんじゃないかな?
お兄ちゃんの不機嫌の種をまた拾ってしまった気がする。
優勝商品のハワイ旅行に龍也先輩と一緒に行くなんていったらお兄ちゃんは倒れちゃうんじゃないかな?
…一体どうしたらいいんだろう?
〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
アイスショーは凄い迫力で素晴らしかったし、その後のコンテストに至っては予想外の出来事だったが周囲からの圧倒的な推薦で、俺達は逃げる事が出来なくなり流れで出場するような形になった。
ハワイ旅行なんて特に興味が無かったし、盛り上がっている場を壊さない為だけの理由で登ったステージだったが、気付いたら何故か俺達は優勝していて、海外旅行の目録と賞金20万円を受け取る羽目になっていた。
ウソみたいな話だな。響にはいい土産話が出来た。あいつ、ビックリするだろうな。
隣接したショッピングセンターで聖さんのクリスマスプレゼントを聖良と一緒に選んで、遅めの昼食を取ってから、遊園地へ出かけた。
遊園地は普段以上にイルミネーションに力が入っていてあちこちで恋人同士のハグやキスが見られて何となく俺達も寄り添ってしまう。
楽しそうに笑う聖良の笑顔が今日一日俺を支えてくれていたと思う。
俺は人ごみが嫌いだ。
特に家族連れが集まるようなアミューズメントパークだと、イヤでも幸せな家族を見ることになる。
意識して忘れようとしても未だに深い傷となり時々思い出したように血を流す母親の記憶が俺を蝕んでいる。
幸せそうな家族連れを見ると何故俺が一人で生きているのか、何のために生きなければならないのか。それすらわからなくなってくる。
そんな俺の凍るような冷たい心を今日は聖良が傍にいるだけで暖めてくれた。
聖良が俺の傍で笑っていてくれる。それだけで周囲の家族連れのことも気にならないし前向きになれる自分がいた。
こんな事は初めてだ。
聖良は俺を何処まで変えていくんだろう。
「先輩あれ、乗りましょう。」
聖良が指差したのは大きな観覧車だった。もう少し暗くなればライトアップされとても綺麗になるだろう。
「聖良高い所平気なんだな。じゃあ、行こうか。」
俺をどんどん優しく素直に変えていく聖良。
おまえの望むことならどんな事だって叶えてやるさ。
ゆっくりと観覧車が回りだす。地上が遠く離れて空が近くなって来る。
にわかに暗くなり始めたかと思うと冬の夕暮れはあっという間に訪れた。俺達が観覧車に乗り込んだ頃、急速に夕日がその姿を滲ませ始め、空を紅く染め始めたかと思うと、一番高い位置に到達する頃にはもう太陽は跡形も無く僅かに沈んだ位置を紅く染めているだけだった。空には夕日に変わって白く輝く月と宝石をちりばめたような星が姿を表していた。
「すごい…綺麗。」
「うん。地上に降りるとイルミネーションの光に負けてここまで綺麗に見えないよ。夕日と星を両方見れるなんてすげぇラッキーだったな。」
「あたしの普段の行いがいいからですよ。」
おどけて胸を張って見せる聖良。こんな仕草まで何をとってもかわいいから困る。
「聖良…今日は楽しかったよ。聖良とデートが出来てよかった。無理だと思っていたし、響には本当に感謝だな。予定外のハプニングもあったけど、臨時収入もあった事だしな。」
先ほどのコンテストの事を思い出し、聖良を見ると頬を染めて恥ずかしそうにしている。
「俺達って、結構お似合いのカップルっていう風に世間では見られているってわかっただろう?もっと聖良は自分に自信を持っていいんだよ。俺の傍で笑っている聖良の笑顔は誰にも負けないくらい綺麗だし、本当に天使みたいにかわいいんだぜ。」
肩を抱き耳元にそっと囁く。狭い観覧車の中で身を寄せ合って隣に座っているんだから耳元で話す必要なんて無いのに何故かそうして、聖良に特別な想いを伝えたい気持ちだった。
「先輩…先輩の隣にあたしがいて先輩が恥ずかしくなる事は無いですか。あたしは先輩に相応しいんでしょうか?」
「今までも何度も言ってきただろう?おまえしかいないんだよ。俺が心を開いて全てを曝け出せる人間は。暁や響でさえ見せた事の無い俺の弱い部分を聖良にだけは見せているよ。そうだろう。」
そう言って俺はポケットから小さな箱を取り出して聖良に渡した。
「これ…?」
「クリスマスプレゼント。着けてみてくれるかな。」
「ウソ…。これって本物ですか?凄い高いんじゃないですか?」
箱の中身は聖良の誕生石の真珠のプチネックレスとピアスのセットだ。聖良の驚く顔がおかしくて付けてやるよと取り上げる。
細い首に薄いピンクのパールは良く映えた。
「うん、思ったとおり良く似合うよ。」
「こんな素敵なプレゼントを…ありがとうございます。あたし、先輩へのプレゼント家におきっぱなしで。」
「いいよ。何もいらない。聖良の笑顔があれば俺はそれで幸せだから。」
聖良は微笑んで黙って頷くと俺を見上げて静かに瞳を閉じた。
思いを込めて唇を重ねる。
愛しているよ聖良…おまえを失ったら俺は心を失ってしまうよ――
〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜
観覧車に乗って冬の落陽と満天の星空を堪能した後、もう少しだけ時間があるという先輩にあたしは水族館に行きたいと言った。
先輩は一瞬迷った様子だった。
「いいけど、あまり時間が無いから急ぎ足で見ることになるけどいいか?」
先輩が普段どおりの優しい笑顔でそう言ったので、あたしは気づかなかった。
先輩が躊躇した本当の理由に。
ゆっくりと館内を見て回ると色とりどりの魚たちが群れをなして泳いでいる大きな水槽があった。圧倒されてぼんやり見ていると、傍に先輩がいないことに気付く。
今までここにいたのに…。
不思議に思って少し歩くと次のエリアの一つの水槽の前で先輩が足を止めて見入っているのが見えた。
「せんぱ…。」
声をかけようとして思わず息を飲んだ。水槽に見入る先輩の横顔が今までに見たことが無いくらい悲しげで儚かったから。
薄暗い水族館の青白い照明の中水面の反射する光と影が先輩の横顔の陰影を濃くして、とても不安定に見せた。
まるで迷子になった少年のように見えて今すぐにでもここから消えてしまうような錯覚に陥る。
先輩が悲しい瞳で見つめている水槽の中にいるのは親子で寄り添うように泳ぐイルカだった。
母親に必死に付いて泳ぐイルカを少し離れては気にかけ、追いついては離れと繰り返し決して一人にすること無くついて泳いでいる。
微笑ましい光景だが、昨日の先輩のお母さんの話を聞いたあとでは、その光景すら何だか龍也先輩の心の傷に触れているように感じて痛かった。
「先輩……あたしはずっと先輩のそばにいるから…一人になんてしないから。」
そう言って水槽を見つめる龍也先輩を背中から抱きしめる。
温かい大きな背中。いつもあたしを支えて、抱きしめてくれる優しい人を今日はあたしが抱きしめてあげたい。
あなたの心が少しでも癒える様に。
あなたの淋しい心が少しでも温かくなるように。
「あたしが龍也先輩のお母さんになってあげるから。だから甘えていいんです。淋しい時悲しい時はあたしに甘えて。
全部受け止めてあげるから。心ごと抱きしめていてあげるから。」
「聖良…。」
不意に身体が浮んだような気がした。
それはまるで目眩でも起こしたような感覚で、一瞬なにが起きたのかわからなかった。
水槽のイルカが視界から消えて…
気付いたら先輩の吐息がすぐ傍にあって…
あたしは先輩の腕の中に抱すくめられてキスの雨を受けていた。
唇をぴったり塞がれて口内に先輩の想いが流れ込んでくる。
「ん…っ…。セン…パ…。」
何も言わせないという風に何度も絡められる舌に必死に応えて、想いを返す。
あなたが好き…あなたを支えてあげたい…。
唇の端から漏れるどちらのものか分からない唾液をそっと舌で絡め取りようやくあたしの唇を解放した先輩はあたしを痛いくらいに強く抱きしめて、僅かに震える声で言った。
「聖良…ありがとう。おまえが傍にいてくれるだけで俺は救われるんだ。」
あたしは静かに抱きとめるように先輩に手をまわす。
先輩は深呼吸をするように息を整えてから悲しい声で言った。
「ここは…俺が両親と3人で最後に来た場所なんだ。ずっと目をそらし続けてきた場所だ。…聖良が一緒でなかったら一生来る勇気がなかったかもしれない。」
衝撃の事実に息を飲む。…ああ、だからあんなに悲しげな瞳でイルカの親子を見ていたんだ。
きっと昔の自分とお母さんを重ねて見ていたのね。
愛しい気持ちが溢れて止まらない。
出来る限りの愛情を込めて腕を回しギュッと抱きしめる。
「泣きたい時は泣いていいんです。あたしが受け止めてあげるから。苦しい事も悲しい事も全部分けて下さい。一人で抱え込んで苦しんだりしないで…。あたしがいつだって付いているから。」
先輩は声を出さなかったけれど静かに震えてあたしを抱きしめ続けた。
先輩の心に負った傷の深さをこの時あたしは初めて知ったような気がする。
苦しくて悲しくて…胸が詰まって声さえあげることの出来ない悲しい悲鳴…。
彼は何年もたった独りでこの傷を抱えてきたんだ。
愛しくて、護ってあげたい気持ちが膨らんで、想いがそのまま言葉になっていた。
「愛しています…龍也先輩。」
〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜
俺は動物園とか水族館とかが苦手だ。
周りは家族連れが多くて、親子の愛情が一杯に溢れている。
動物たちでさえもそうだ。自分の子供を愛しむ心を持っている。
それは哺乳類の持つ本能なのではないかと思う。
だが、俺の母は、そうではなかったらしい。
理由さえ分からずある日突然失踪した母親。
一体何が起こったのか幼い俺には全くわからずただ、母を思い泣き続ける日々が続いた。
母がいなくなってから数ヵ月後、父は俺に一言だけ言った。
「お母さんはもう帰って来ない。もう待つのは止めなさい。これからはお父さんと二人で暮らしていこうな。」
何故?という問いに父は決して答えてくれなかった。
いっそ死んだとでも言ってもらったほうが良かったのかもしれない。
何故俺を捨てたのか…母に会うことがあったら聞いてみたいとずっと思っている。
俺の心はずっと血を流したまま黒く立ち込める霧の中で手探りで何かを探し求めていた。
それが何かなんてずっとわからなかった。
聖良に会うまでは…。
聖良の輝かんばかりの笑顔が俺の心に一筋の光を差し込んでくれた。
そのときに初めてわかった。
俺はあの憎い女をやはりどこかで求めていたって事を。
俺を優しく抱きとめてくれる温かい手が欲しいとずっと思っていた事を。
『あたしが龍也先輩のお母さんになってあげるから。だから甘えていいんです。淋しい時悲しい時はあたしに甘えて
全部受け止めてあげるから。心ごと抱きしめていてあげるから。』
聖良がそう言ったとき俺の中の耐えてきた何かがぷつんと切れた。
込みあげてくる切なさと共に胸が痛くなるほどの苦しさ、助けて欲しいともがいていた幼い日からの心の叫びが噴き出してきて聖良を抱きしめる腕の震えを止める事が出来なかった。
『泣きたい時は泣いていいんです。あたしが受け止めてあげるから。苦しい事も悲しい事も全部分けて下さい。一人で抱え込んで苦しんだりしないで…。あたしがいつだって付いているから。』
聖良の言葉に誘われるように頬を温かいものが伝うのを感じる。
自分でも信じられなかった。父親が死んだときでさえ涙は出なかったのに…。
母が出て行ってから、俺は泣く事が無くなった。涙の流し方さえ忘れてしまった。
同時に笑うことさえ無くなっていた。
笑い方は暁と響によって思い出すことが出来たが、涙はずっと忘れたまま10年が過ぎた。
聖良の声が俺の心の扉を開き、暗い闇に光を当ててくれた。
泣き方を忘れた俺は声を出す事は無かったが、それでも頬を伝う温かい感情に心が凪いでいくのを感じずにいられなかった。
震える自分自身を支えようと聖良を掻き抱くように強く強く抱きしめて細い肩に顔を埋める。
ふわっと聖良の腕が俺の心を包み込むように優しく柔らかく俺の背中に回された。
『愛しています…龍也先輩。』
聖良の声が俺の胸の傷を癒すように響く。
どうしておまえはこんなにも俺の心にするりと入ってくるんだろう。
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