Step7 キスの代償 嫉妬の矛先 7
「あたしが…あなたを抱いてもいいですか?」
小さく擦れた声
鈴の鳴るような甘い声が俺の深部を揺さぶった。
頬へ触れた唇が瞼に落とされる。少しずつキスの雨を降らせていく聖良の柔らかな唇の余韻に身を委ねると、俺の中の不安は徐々に消え去り温かなものが胸の中に溢れてくる。
心の奥底の闇を拭い去り、そこに一筋の光が差し込む。まるで心ごと抱きしめられ、
邪まなものを全て浄化していくようだった。
「せ…いら…?」
「龍也先輩。愛しています。」
その言葉と同時に唇に聖良を感じた。
甘く柔らかな唇がいつもより艶かしく俺を誘うように触れてくる。
頭の芯まで痺れるような濃厚なキスに目眩がしそうだった。
こんなキスを聖良からしてきたのは初めてだ。
濡れて身体に貼りついたシャツをキスの合間にもどかしげに剥ぎ取っていくぎこちない指の動きが愛おしい。
思ってもみなかった聖良の行動に驚きながらも、ようやく冷静になりつつある自分を感じていた。
聖良が俺の腕の中にいる。
細いその腕で力の限り抱きしめて支えてくれる。
全てを捧げるように俺に触れ、何もかもを受け入れる様に優しく口付けてくれる。
夢でも幻でもなく、彼女は今、俺に触れてその全ての愛情を俺のためだけに注いでくれている。
「龍也先輩…誰よりも愛しています。」
胸がいっぱいになって涙が溢れてきそうだった。
「聖良…愛しているよ。俺を独りにしないでくれ。」
「ん…ずっと傍にいます。どんな事があっても死が二人を別つまで…。いいえ…。」
一瞬唇を離し距離を取ると俺の瞳を真っ直ぐに覗きこんでくる。
その瞳に映った俺は…まるで小さな子供のように心細い表情(かお)をしていた。
「あなたはあたしの魂そのものだから。死が二人を別つ事があっても、それは肉体(からだ)だけの事。魂は永遠にあなたの傍にいます。」
聖良の言葉に心の奥底から込み上げてくる感情に胸が詰まった。
そんな俺をフワリと抱きしめて柔らかな唇を頬に滑らせる聖良の仕草に、ようやく自分が涙を流している事に気付いた。
聖良が俺を抱きしめる。
愛していると甘く囁く。
それだけで…俺の全てが満たされていくのは何故だろう。
心がどんどん強くなっていく自分がわかる。
おまえが傍にいてくれるだけで…俺はどんな事でもできる気がするよ。
何故そんなに大胆になれたのかなんてわからない。
きっと龍也先輩がいつもよりずっと幼く見えて、あたしが護ってあげなくちゃって思ったからなのかもしれない。
あなたの普段は見ることのできない無防備で幸せそうな顔をもっと見たくて…彼を包み込むように抱き締めると何度も唇を寄せた。
眉間に僅かに皺を寄せて切ない顔をする先輩に一瞬戸惑ったけれど、すぐにあたしの髪を剥く様に優しく触れてくる。
その手から伝わるあなたの愛にもっとあなたが欲しくなる。
熱い吐息とともに二人の切ない声が重なり心が一つになる。
あなたを孤独と恐怖から救い癒してあげたい。
あなたの為ならばどれだけでもあたしは強くなれる。
誰よりも愛しい人。
全てを受け入れてあなただけを愛して生きていく。
龍也先輩…
どんな事があってもこの気持ちだけは決して変わることがないとあなたに誓うわ。
まるで催眠術にかかっているようだった。
聖良の甘いキスが官能的に俺を煽り立てていく。
柔らかく激しく触れるキスの余りの気持ちよさに恍惚としていた俺だが内心は聖良に感動すると同時に動揺を隠しきれなかった。
いつになく大胆な聖良が俺に触れるその仕草の視覚からの刺激と直に伝わる甘美な感覚に抵抗などできなくなってしまう。
まるで脳を直接撫でられるようで肌が粟立ち、柔らかな聖良の胸の谷間や、その艶やかな唇が俺を愛していると全身で訴える。
その悪魔的な魅力は昼間の女神のイメージとかけ離れていて、まるで俺が聖良を汚してしまったような気持ちになった。
だが、そんな罪悪感も聖良を求める本能の前には、あっという間に砕け散ってしまう。
これ以上自制するのは無理だと思えるくらい、俺は聖良求めていて我慢などできそうになかった。
俺の全てを受け止めるようにその細い身体で心ごと抱きしめ返してくれる聖良。
俺が汚したのではないかと思った女神は、穢れるどころか更に美しく輝いて見える。
聖良は神様が俺の心の闇を彼女の身の内で浄化し、幸せに導いてくれる為に遣わされたのではないかと思った。
おまえはやっぱり俺にとって無くてはならない救いなんだ。
愛しい聖良
おまえのいない人生を生きるくらいなら、この命なんて死神にでもくれてやる。
おまえを失ったら俺は一秒だって生きてはいけないよ。
冷え切った身体をそっと抱き上げる。
聖良の余韻を感じながら強く抱きしめ合い、想いを込めてキスを交わす。
キスマークは増やすなと釘を刺されたけれど
…ごめん佐藤さん。
今夜はちょっと自制できそうにねぇよ。
身体が冷えている事に気付いた先輩はあたしを抱き上げ湯舟に身を沈めた。
狭い分だけ密着度が高くなり、冷えた身体とは裏腹に一度火の付いた身体の内はどんどん熱くなっていく。
もっと触れていたい。
もっともっと近くなりたい。
どれだけ強く抱き合っても足りないくらいにあなたが欲しくて堪らない。
「…今夜は覚悟しておけって言ったの覚えているよな?
たっぷり時間をかけて俺以外の男には触れられるのも嫌になるように身体に教え込んでやる。俺を嫉妬させた代償は大きいってシッカリ刻み込んでやるよ。」
そう言ったあなたの表情(かお)はいつもの意地悪な瞳で…さっきまでの迷子の少年のようなあなたはもう影を潜めていた。
もう大丈夫なのね?
あたしはあなたの心を癒せたのかな?
その質問をしようと開いた唇は、すぐに塞がれてしまい…。
龍也先輩の宣言したとおり、あたしは本当に覚悟を決めることになった。
必然的に互いの身体には、たくさんの痕が残り…
龍也先輩は、次の日佐藤さんにこっぴどくお目玉を喰らう事になった。
Next /
NovelTop
えっと(滝汗)すげー短いですね。………ゴメンナサイ
ヤバイシーンをカットしたらオリジナルの半分になってしまった…。
拍手リクエストにRIRICA様より頂いた『龍也と聖良でお風呂で(///)な話…』にお応えしました。
…が、森バージョンではこれが限界です。かなり微妙な線ですが、R15指定でこのくらいならOK?
え゛…だっ、ダメかな?( ̄□ ̄;) 教育委員会様。見逃してくださ〜い!!(滝汗)
次回はいよいよ模擬結婚式当日。龍也はこっぴどく叱られるんでしょうねー♪
2006/06/01≪オリジナルバージョン作成≫
2006/09/19≪森バージョンに改訂≫
朝美音柊花
←ランキングに参加中です。押していただけるとウレシイです。