Love Step

〜☆〜Christmas Special Step 1〜☆〜





冬の気配を纏った晩秋の風が校舎の中を駆け抜ける。


秋が最後の輝きを放ってその葉を散らす。やがて今年最初の雪が校舎を銀色に染めるだろう。


真っ白な雪に輝くイルミネーションが夜を彩るあたしの大好きな季節がやってくる。



10月に生徒会は後期を迎えた。
あたしの彼、佐々木龍也はかねてからの噂どおり、誰とも争うことなく全校生徒の指示を受け、生徒会長に就任して、もうすぐ2ヶ月になる。

学校でも有名な2年のビケトリ(美形トリオ)が3人とも生徒会にいるのだから、女生徒の注目度も高く、そんな生徒会長を彼に持つあたし、蓮見聖良は最近校内でも目立つ存在になりつつある。

一つ目は、龍也先輩の彼女って言う理由から

二つ目は、1年生では例の無い生徒会会計に抜擢されたって言う理由から

三つ目は…



「蓮見さん、ちょっと顔貸してくれないかしら?」


…ほら、また呼び出しだ。


三つめの理由はこれ。やたらと上級生の先輩方に呼び出しをされるという理由から


龍也先輩と付き合うようになって4ヶ月余り、一体何度目の呼び出しだろう。
紺色のタイをしているという事は今日は2年生の先輩らしい。

どんな嫌味を言われるのかとドキドキしながら呼び出された場所へと赴く。

先輩と付き合いだしてから、こうして呼び出しを受けるのにも段々慣れてきてしまった。
最初はすごく怖くてビクビクしていたのにね。

あたしみたいな特別美人でもない女の子が先輩と付き合っているのが面白くない女生徒からこうしてしょっちゅう呼び出しを受けるようになったのは新学期が始まってすぐの9月のことだった。

こんなの無視して呼び出されても行かなければいいって先輩は言うけれど…そんなことしたら何をされるかわかったモンじゃないんですよ。 とりあえず話を聞いて、言いたい事を聞いてあげるほうがむしろ何もされないこともあるんです。

女の嫉妬は怖いんですから…

「あなた、本当に佐々木君と付き合っているの?」

…まただ、必ず聞かれる事。『本当に付き合っているの?』
あたしと、龍也先輩が不釣合いだって遠まわしに言っているんだろうな。

「…はい、付き合っていますけど。」

「あたし、ずっと前から佐々木君のこと好きだったのよ。何度も告白して断られていたのに…。
それなのにどうしてあなたみたいな特別美人でもない娘を彼が気に入ったのかわからないわ。」



それは…自分のほうが綺麗なのに何で選ばれなかったのかって言っているんでしょうか?



「納得いかないわ。何で蓮見さんみたいな平凡なコなのよ。」

…それは、あたしではなく先輩に直接聞いて下さい。

「何で、あたしじゃダメなのよ?」

…だから…あたしに聞かないでよね。




「金森。いい加減にしろよ。そういうのがウザイって言ってんだろう?まだわからない?」

いきなり聞き覚えのある声が聞こえてきた。声に導かれるようにふりかえると眉間に皺を寄せて機嫌の悪い顔をした龍也先輩が腕組みをして立っていた。

「龍也先輩・・・。どうしてココに…?」

「聖良が教室にいないって聞いたから、探しに来た。」

「教室にいないって…誰に聞いたんです?」

「ん?秘密の情報網。知りたい?」

「…あたしの友達と繋がってるとか?」

「さあね、ナイショだよ。聖良がキスでもしてくれたら教えてやってもいいよ。」

「……知らなくてもいいです。」

「…っ、つめてぇ。聖良ぁ。心配してきてやったのに、お礼にキス位してくれたっていいと思うぜ。」

そう言ってグイッとあたしを引き寄せて、唇の触れそうな距離まで顔を近づける。
なんだかワザと見せ付けているみたいな龍也先輩の態度に戸惑ってしまう。

「イヤです。時と場所を考えて下さい。ほら、龍也先輩…あの…。」

あたしを呼び出した金森先輩がすごい目つきであたしを睨んでいる。
こわいよぉ…。

龍也先輩はあたしを抱きしめたまま金森先輩を冷たい目で見つめた。

「こういうの、止めろよな。聖良に文句言ったって俺の気持ちが変わるわけじゃないってわからねぇのかよ?」

「わからないわよ。何で蓮見さんなの?もっと可愛いコはたくさんいるでしょう?納得できないわ。あたし…佐々木君のこと好きだって何度も言っているでしょう?」

「ウザイ!」

ピシャリ!!
そんな効果音が聞こえてきそうな勢いで言い放つ。

「俺が好きなのは聖良だけだ。他の女は興味が無いんだよ。聖良にちょっかい出されると余計のあんたの事イヤになるんだけどさ…わからない?」

「……っ!」

「今度こんなことしたら許さないから。いいね。」

口調は静かで口元は薄く微笑んでいるけれど…先輩。目が笑っていませんよ?

スゴクこわいかも…


「俺は聖良しか見ていないんだよ。俺たちの亊邪魔するヤツは誰だってゆるさないからな。覚えておけよ。」

金森先輩はあたしを睨んだまま『諦めないから』と言うと走っていってしまった。

龍也先輩が金森先輩の走り去った廊下を怒りを込めた目で見つめて静かに言った…

「バカなヤツだよ。俺の事なんて何も知らないくせに何を好きだって言うんだ。」




たぶんあたしは龍也先輩のこんなに冷たい声は聞いたことが無かったと思う。







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【Love Step Christmas Special Step】連載を始めてしまいました(笑)
良いのだろうかと不安を感じつつのUPです。まだ、大丈夫ですね。ほのぼのしています。(これでも)
これまでのラブラブバカップルの二人とはちょっと違って、傷ついたり悲しんだりしてしまいますが、
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
大きな試練を乗り越えて二人が素敵なクリスマスを迎えられる事を祈っていてやって下さいね。