昼間降った雨が嘘のように晴れ上がり、夕方から雲が切れはじめた今夜は、七夕に相応しく天の川が見事に輝いている。
君が逝ってから天の川がこんなにも綺麗に見える七夕は初めてかもしれない。
ふとそんなことを思いながら今日のこの空を幼い頃にも見た記憶があると思い出す。
ああ、そうだ。初めて幼い君と出逢った日も七夕だった。
紫陽花の花の陰で雨に濡れていた君は僕と約束をしたね。
『僕が病気を治すまで決して死なない』…と。
幼い僕たちの約束を星はちゃんと覚えていて僕らを運命の元に導いてくれた。
だけど、僕は君の病気を治す事も、君に幸せな時間を充分に与える事も出来なかった。
流れ星は願いを叶えるなんて誰が言ったんだろう。
時折、夜空に光の筋を引きながら消えていく
流星。
その光景に
夜毎星空を見上げて流れ星を探していた茜を思い出す。
僕と過ごす時が永遠であるようにと祈りを込めて消え行く星を見上げては願いをかけていたね。
君は今、その星となって僕らを見つめているのかな?
茜の思い出を星の中に見ている僕は、七夕でなくても夜空の中にいつも流星を追い求めている。
決して叶う筈の無いただひとつの願いを胸に秘めて…。
「ねぇ?あきらくんは、おかあさんに会いたくない?織姫と彦星は一年に一度だけあの星の川を渡って会えるんだって。あきらくんとおかあさんは会えないのかな?」
自分の心を読まれたような暁の思わぬ言葉に胸が熱くなり、そっと抱き寄せる。
フワリと笑った暁のその表情(かお)は…
茜…君の微笑と同じだったよ。
七夕は君に会いたいと願う僕の願いを、暁の中に君を見ることで叶えてくれたのかもしれないね。
流星群の活動する時期には窓に張り付いて何時間も離れなかった茜。
その姿が今日の暁と重なって、切ない思い出が鮮やかに蘇ってくる。
暁の中に君の面影を見つけるとき僕は思うんだ。
君の願いは叶ったのかもしれないって。
君の想い、君の愛、君の瞳を暁は受け継いで、真っ直ぐに綺麗な心で育っている。
君の願った永遠とは僕と共に過ごす時間だけではなく、君の愛を受け継いで次の世代に伝える事だったんだろう?
今夜は七夕だからきっと君の願いは叶うだろう。
君の最後に願った事
君の愛した全ての人が幸せである事…。
そうだろう?茜。
満天の星空。今夜は天の川に願いをかけよう。
君の魂がいつまでも僕の傍にいてくれるようにと
君の姿がなくとも、君を感じる事が出来るのは、あの流星群に君が願い続けたからだろう?
心はいつまでもみんなの傍にいられますように…と。
+++ Fin +++
【七夕の夜空に 暁視点】へ
今日は七夕だなあ…と思っていたら、ふと暁の声が聞こえました。「ねぇ?あきらくんは、おかあさんに会いたくない?織姫と彦星は一年に一度だけあの星の川を渡って会えるんだって。」
ここから一気に情景が溢れてきました。幼い頃の暁は純粋ですね。ちなみに時間軸は暁4才、晃25才の頃の出来事です。
七夕に二人の願いが届きますように…。
2006/07/07
朝美音柊花
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『大人の為のお題』より【流星群】 お提配布元 : 「女流管理人鏈接集」