>#同題SSTBまとめその2(2012.4月)

虎徹さんに会いに行こうか。
心の整理がついて墓参りに行った日。ようやく、そう思えた。
深い愛情を、僕に教えてくれた人。久々のシュテルンビルト。久々のヒーローTV。
画面の端に見切れたヒーロースーツは。
「…は、はははっ!」
やっぱり、貴方はどこまでもヒーローだ。/あい #同題ssTB



「こんなに愛しているのに、どうしてお前は言う事を聞かないんだぁ!」
それは本当なの、パパ?
「あなた、愛してます、だからやめて」
語尾はガラスの割れる音に掻き消されて。
最初はただ哀しかった、でも。
…ねぇパパ、愛してるから、殺してしまいたくなるんだね。僕もそうだよ。/あい #同題ssTB


そろそろ卒業だし、演奏のアルバイト、辞めよっかなって思ってたある日。
ピアノの上に置いてあった。濃い藍色の、小さな薔薇の花束。
「…!」
慌てて辺りを捜したけど、いない。けど。
「還ってきたんだ…何よ、カッコつけて!」
涙声なんて、絶対聞かせてあげない!/あい #同題ssTB


同題落書コラボ 
腕が上がらない。
結うこともできずに垂らした髪が顔を覆う。
いつもこうしていれば、不意に現れる痣を気に病む必要はないのだろうか。
/髪 #同題落書 #同題SSTB


「ったく、救助のためだから仕方ねぇだろ! 電車のドア1枚壊したからって、どーしていちいち裁判にかけられなきゃ…」
「しっ、虎徹さん、後ろ後ろ!」
「裁判しないといけないような事をしている自覚がないのはよくわかりました」
「だっ!」
「はぁ…」
/ホラー #同題ssTB


ヒーロー事業部閉鎖は仕方ねぇかもしんねぇけど、最初の契約金を一部返還しろとか、言って来ないよな…?/ホラー #同題ssTB


「みんなでバーべキューしよう!」
「お、じゃあ俺が火起こしをしよう」
「じゃあアタシ食材手配するわ」
「俺炒飯作る」
「僕は買い物に行きましょうか」
「では私も一緒に行こう!」
「ぼく、準備手伝います」
「え、あたし、どうしよう」
「サラダ用のキュウリでも切ってなさいな」/しよう #同題ssTB


「ペトロフ管理官、先日はありがとう、そしてありがとう!」
大声に振り向くと、満面の笑みを浮かべた私服姿のKOHがいた。
そのジーンズには。
「先日のベルト、使っていらっしゃるんですね」
「よく似合うだろう? とても気に入っているんだ、とても」
…全く、くだらない。/しよう #同題ssTB


「あ、裁判官、ちょっといいっすか」
「…申し訳ありませんが今から私用で外出するので、また後ほど」
早く出ないとマント用の布地を調達出来ない…! 明日は満月だというのに! /しよう #同題ssTB


【蜂蜜】裁判官兼ヒーロー管理官ユーリ・ペトロフが紅茶に好んで入れるもの。…いけない事を考えた人は全員タナ声を聞きます。 #同題ssTB


「はぁ」
「ん、どうしたドラゴンキッド」
「…なんとなく、の手料理が食べたくなって」
「そーかそーか、で、何が食いてぇ?」
「市場でしめた鶏を買って来て、お腹に薬味沢山入れて蒸し焼きにしたやつ! 美味しいから丸ごと食べられるんだよ!」
「そ、そっか…」/むし #同題ssTB


昆虫のように表情のないルナティックのマスクを手に、持ち主は深い溜息をついた。
「手縫いだと同じ表情にならない…均質化するのに良い手段はないだろうか…」/むし #同題ssTB


「ねぇ、何でこんなに蒸し暑いの?!」
「あー、今朝からエアコンの調子が悪ぃみたいでなー」
「…で、調子を見ようとした虎徹さんがどうやらエアコンを本格的に壊したようで」
「ローズ、ぱぱっと氷出してくれよ、お前にしか出来ねぇ事だ!」
「…じゃあ土下座してみてよ」
「え」/むし #同題ssTB


娘を惨たらしい方法で殺された母親が、生気のない虚ろな瞳を向けた。
「あなた、ヒーロー管理官なんでしょう? 何故、娘は殺されたのに犯人は生きているの? 終身刑の上の死刑が、どうしてないの?」
その嘆きを、怒りを、何度聞いたか。
「心中お察しします」…だから、決めた。/うえ #同題sstb


イワンの顔が上を、正確に言うと天井に隠れていた俺の方を向いた。
「そこだろう、エドワード」
また見つかった。
「何でわかるんだよ」
「え、僕、能力ぱっとしないから、ニッポンのニンジャみたいに気配を探れたらいいなって…」
ちゃんと出来てるじゃねーか。
「もっと自信持てよ」/うえ #同題ssTB


司法局を出た途端に取材陣に囲まれた。
ルナティックの出現は格好のネタなのだろう。
内心で嘲笑しながらあしらう。
「正義の裁き、と言っていましたが」
自らが発したはずのその言葉は、思った以上に空虚だ。
「…犯罪者に正義などありません」
道化はまだ、登場したばかり。/キーワード #同題ssTB


ワイルドタイガーがふくれっ面の少女と歩いている。
何気なくそちらに視線をやると、少女と不意に目があった。
「おとうさん」
大声で彼を呼んだ少女は、ばん、と彼の背中を叩いた。
顔を顰めながら彼はこちらを向く。
…自分達親子にあんな交流が残っていたら。少しだけ胸が痛んだ。/子供 #同題ssTB


朝からマスコミの囲み取材でうんざりしていた所に、ワイルドタイガーが現れた。
「あ、裁判官! ルナティックの逮捕状、再発行出来ないっすか? こないだ落としたみたいで」
…まず粛清が必要なのはお前だ鏑木虎徹。/朝 #同題ssTB


トーストに目玉焼き、コーヒーとサラダ山盛りのボウルが並んだテーブル。
「頂きます」
律儀に手を組むバニーの顔に、俺は思わずニヤけてしまう。
「…どうかしましたか?」
「いや、誰かと一緒に朝メシ食うって、いいよな」
苦笑するバニーと食べるカリカリのトーストは、極上の味。/朝 #同題ssTB


シャワーの温度を下げて、冷たい水を浴びる。
自らの放った蒼炎で身体を灼かれるような感覚が、いつまでも消えない。
体内を這いねぶるような火照りを鎮めるには。
髪を手早く乾かし外へ飛び出す。
この感覚さえ忘れさせる程の激しい熱量をもたらす、かの人の元へと。/水 #同題ssTB


明日からテスト。
でも今晩もバイトのシフト入ってる。
時間ない。どうしよう。
くらりと目眩がする。
途端、犯人を拘束してた氷が水に戻ってバシャン、と弾けた。
「!」
不意に、目の前に人影。
「何してんだローズ」
からかうような声であたしの前に立ったのは。
何よ、二部のくせに!/水 #同題ssTB


「ジョン、待つんだジョン!」
ラフな格好の青年が、レトリバーに引きずられている。
市民に愛されるKOH、スカイハイ。
生き生きとした瞳が、不意にこちらを向いた。
「あ、貴方は…先日はありがとう、そしてありがとう!」
相変わらず私が誰かはわからないのか。思わず苦笑した。/生 #同題sstb


「あのなバニー、まず自発呼吸があるか確認して気道の確保、あとスーツに装置ついてるだろ? 脈拍が計測出来なかったら心臓マッサージをだな…」
「僕がアカデミーで学ばなかったとでも」
「あの時確認してなかっただろ」
…それは貴方を喪ったと思ったからですよ、虎徹さん。/生 #同題SSTB


誂える仕事用のスーツは決まって灰色。
黒の法服を着た時に華美にならぬように。
そして。
裁きの天秤を掲げた女神の傍で、白黒を決めつけるのではなく常に中庸たれと教えられてきた。
自ら手を下すようになった今も、スーツの色だけはそのまま。
秤にかけられ揺れる心のように、曖昧な/灰 #同題SSTB


穏やかな顔をしたまま扉の向こうに消えた妻は、灰になって戻ってきた。
小さく砕けぼろぼろになった骨の欠片。
きっと過酷な治療だっただろうに、いつも笑顔を絶やさなかった。
家に帰ろう、友恵。
もう痛くも苦しくもないから、心からの笑顔を浮かべてくれ、俺と楓の前で。/灰 #同題SSTB


解いたままの髪が俯く頬に落ちる。
邪魔で仕方ないのに、上がらない腕は髪を束ねる事も出来ない。
逃がすべきではなかったか。…今更後悔しても遅いのに。
一体何故手を差し延べるような真似をしたのか。
力をなくした指先からこぼれ落ちたペンを拾いながら、溜息をついた。/落ちる #同題SSTB


「タイガーさん、浴衣の肩がずり落ちないようにするにはどうしたらいいんですか?」
「あー折紙の撫で肩じゃズルズルだな。スーツと同じように片肌脱いどけばいいんじゃねぇか」
「そ、それって、上半身裸って事…ですか」
「当たり前だろそんなん。何真っ赤になってんだ」/落ちる #同題SSTB


能力が切れた。
ブノワに飛ばされた体がゆっくりと落ちてゆく。
相棒は、いない。
…いつの間に俺は、こんなに誰かに依存するようになってたんだ。
文句を言いつつも抱え上げてくれる存在はここにいない。
…一人で。
一人で立たないと。
背中の冷たさにぶるりと震えた。/落ちる #同題SSTB


二人きりになった家に、ガラスの割れる音や壁の壊れる音はもうしない。
聞こえるのはただ、生きながら死んでいるママの悲鳴だけ。
今日も、また。/音 #同題SSTB


パパが大量に酒を飲んで暴れるようになったのはいつからだろう。
何度病気かもしれないと訴えても聞き入れてはくれず、暴力は酷くなった。
その横暴が止む日が早く来ればいいのに。
ママの悲鳴が止めばいいのに。
その希望は絶望に変わった。
僕が止める。閉じた瞼を蒼い焔が灼いた。/やむ #同題SSTB


中空にかかる満月は白金の光を湛えている。
道化の衣装を脱ぎ灰色のスーツに着替え、戻るのは非日常。
明日はルナティック出現に関する仕事が増えるだろう。
きっと帰宅は遅くなる。
司法局で繰り広げる滑稽な芝居。
終わらないゲームにけりをつけるのは、一体誰になるのだろう。/光 #同題SSTB


久々にヒーローTVの中継を見た。
引退後ずっと遠ざかっていたのに。窃盗犯を追いかけているのはワイルドタイガー。
画面の端に映る60秒からのカウントダウン。
息を呑んで見つめていると、ヒーロースーツが光を失った。
永遠のような1分間。
…戻らなきゃ、あの場所へ。
彼の隣へ。/光 #同題SSTB


「あ、斎藤さんは赤鼻のおっさんみたいなアンドロイド作りたくねぇんすか?」
「…」
「へ?」
『私はヒーローのための装備を進化させる事以外に興味はないっ!』
「うおっ、ボリュームでか! …ははっ、そっか」/夢


その公園に行く度に、ご主人様はがっくりと落ち込むんだ。
ああ。僕が人間だったなら、大切なご主人様に伝えられるのに。
ベンチにいた何かは、人間の匂いがしなかったって。
ゴムと油と金属の匂いがしたって。
だから、そんな表情をしないで。
悲しむ顔を見るのは、僕も辛いから。/夢 


「誕生日おめでとうございます」
来客かと思ってアパートのドアを開けたら、満面の笑みを浮かべたバーナビーが、炒飯を持って立っていた。
トシ取ると、なんで涙腺が弱くなるんだろな。/贈る #同題SSTB


受け取る人のない薔薇の花束を捨ててしまうのは忍びなくて、トレーニングセンターへ持って行った。
「まぁ、綺麗ね」
ファイヤーエンブレムがそう言うと、花瓶を持って来て窓際に薔薇を飾る。
「せめて彼女の心に届くといいわね」
彼女を思わせるような、甘い香りが部屋に満ちた。/贈る #同題SSTB


彼女を前に俺は深く息をついた。
小さな箱に入った指輪をいつ差し出せばいい。
最大の問題だ。
前菜の前? 乾杯の時? デザートの後? 
ヤバい頭が真っ白だ。
ちょっと俺カッコ悪いんだけど! 
不意に彼女がニッコリ笑った。
「緊張するとか、らしくないよ」
何だよバレバレかよ!/贈る #同題SSTB


顔に巻かれた包帯を外して医師は僕に告げた。
「火傷の跡はわからなくなったよ。大丈夫だ。強く生きるんだよ」
ただ頷く。
「将来の夢はあるかい?」
命を焼き尽くした僕に未来なんてあると思わない、けど。
「裁判官に、なりたいです」
あの男と同じ道は辿らない。決意を言葉に込めた。/夢 #同題SSTB


(兎虎)受け容れる事すら容易でなかった隘路が、今では待ちわびたように綻び、緩くきつく僕を包み込む。
滴る汗と、名を呼ぶ掠れ声。もう抜け出せない。離れられない。
耳元で囁くと、虎徹さんは紅潮した頬に笑みを浮かべた。
「…俺もだよ」/隘路 #同題SSTB


殺した後どうする。
骨も残らない位に燃やし尽くしてしまうべきか。
虐待への過剰防衛で能力発動させてしまったと主張すれば罪には問われない。
施設には送られるかもしれないがママがこれ以上傷付く事はない。
考えろ。この計画のボトルネックを洗い出し、完全な死を与えるんだ…。/隘路 #同題SSTB


様々な隘路を抜けて私はここまで来たのだ。
その労苦の結実がバーナビー。
酒に溺れ我を忘れた紛い物の英雄とは違う。
ヒーローの、NEXTの栄光を一身に背負って、輝かしく明るい未来を視聴者に、シュテルンビルトの市民に見せつけるといい。
…陰に潜む陰謀を悟られぬように。/隘路 #同題SSTB


溶け残った蜂蜜が舌に絡みつく。
とろりとした感触とダイレクトな甘み。
洗い流したくて、ポットに残っていた紅茶を注ぎ飲み干す。
…まだ消えない。この舌を拭えればいいのに。
「裁判官いいっすか」
現れたのはワイルドタイガー。
…丁度良い。
ユーリは無言で、無防備な彼に近付いた。/舌 #同題SSTB


「いてて」
「どうしました?」
「いや、昨日メシ食ってる時に舌噛んじまって」
「口内炎の軟膏ありますよ。塗りますから舌出して下さい」
「…ちょっと待てバニー、お前そんなもん持ち歩いてんのか」
「薬箱携帯するのは常識でしょう? すぐあちこちに傷作る誰かもいますし」
「」/舌 #同題SSTB


昔のオトコがしてたからってバカな理由で、アタシも真似して舌ピアスしてた事があるの。
別れた時に外しちゃったけど、まだ穴の跡は残ってる。
…キスしたら、どこに跡が残ってるかわかるわよ。どぉ?/舌 #同題SSTB


長いことヒーロー達と関わってきたが、終わる時は一瞬だ。
トップマグのヒーロー事業部は閉鎖。俺も失業。
呆気ねぇけどせめて、腹芸を知らない馬鹿正直なアイツが、ヒーローを続けられるよう。
見上げるはアポロンメディア。さぁ俺の最後の仕事だ。お前の活躍の場を作ってやる。/長 #同題sstb


能力の発動時間が1分になった今では、5分がとても長く感じる。
今は発動のタイミングに気をつけるようになった。
そして昔みたいに力でゴリ押しする事も減った。
それはきっと、俺よりも4分長く100パワーを発動出来る相棒に、花を持たせたいからだ。
今後もよろしくな、バニー。/長 #同題SSTB


顔の火傷を覆い隠せるよう長く伸ばした髪は執務中には邪魔になる。
適当に束ねようか。そう考えていた矢先、昔のように穏やかな顔をしたママが黒いリボンを持ってきた。
「これを使って? 私ねぇ、娘が欲しかったの。リボンで髪を結んであげたかったのよ」
また一つ、呪縛が増えた。/長 #同題SSTB


「キッド君、お願いがあるんだが」
「なぁにスカイハイ」
「今度、雷の音が聞こえてきたら、私と一緒に雷雲を見に行かないかい? 一度近くで見てみたくてね」
「…ボク、避雷針替わりなの?」
「はっきり言ってしまうとそういう事だよ!」
「スカイハイ、時々凄く子供だよね…」/遠雷 #同題sstb


裁きの雷の音が近づいてくる。
空気を裂く音。私が過去に犯した罪を思い起こさせる。
「サァ!」
ドラゴンキッドか…!! /遠雷 #同題sstb


司法局側の公園。
レジェンド像の近くにオリエンタルタウンから枝垂れ桜が移植された。
あ、裁判官がいる。
「花見っすか」それを見つめたまま彼は言った。
「昔日本の留学生から、枝垂れ桜は死体を埋めた印と聞いたのですが、本当ですか?」
肌が粟立つ。
冷たく昏い瞳が俺を見据えた。/桜 #同題SSTB


「オリエンタルタウンの桜吹雪は綺麗だぞ」
実物を見た事がないというバーナビーに言うと、僅かに表情を曇らせた。
「散る花は…まるで誰かの死を暗示するみたいで」
沢山のものを喪った青年の頭をくしゃりと撫でる。
「桜の木の寿命は人間より長いんだぜ、だから毎年見に行きゃいい」/桜 #同題SSTB


「本物の桜吹雪は見た事ないんです」
「オリエンタルタウンに名所があるぞ折紙」
「そうなんですか! 行ってみたいなあ」
「では今から私が連れて行こうじゃないか!」
「え、ど、どうやって」
「抱えて飛んで行けばすぐだ、そしてすぐだ!」
「僕、生身だから息が出来ません…」
「え」/桜 #同題SSTB


「エドワード!」
ガラスの向こうでイワンが笑う。
昔のおどおどした表情がなくなった。
再会までの空白の期間、テレビの向こうのイワンは見切れるだけで、ヒーローである事を拒否しているようだったのに。
「会えて良かった。ありがとう」
ちくりと胸は痛むけれど。オレもそう思う。/空白 #同題SSTB


誰も俺の事を覚えてない。
俺に関する記憶だけ空白になってる。呆然とした。
俺は誰だ。
「鏑木虎徹」
不意に俺の名を呼んだのはルナティックだった。
どうして俺を逃がそうとする。
必死で駆け出しながら、ふと思った。
あの男の記憶の中に、俺はどういう形で存在してるんだろう。/空白 #同題SSTB


奨学金申請の書類。両親の名を記述する欄があった。
「オリガ・ペトロフ」
母の名前のみ書き込む。
父親は自分が殺した。
その名も存在も消えてしまえばいい。心から望んだ。自由になった筈だった。
なのに、たった3インチの空白が、何故こんなに胸苦しさを呼び起こすのか。/空白 #同題SSTB


「元気でな。テレビには映らなくなると思うけど、電話はするからな」
能力の減退は止まったけれど、以前程の活動は無理だろう。でも続けると決めた。
「うん。またね。…お父さんは、私のキングオブヒーローだからね! 一番諦めの悪いヒーロー!」
一言多いって。
サンキュ、楓。/数字 #同題SSTB


ヒーローの器物損壊に対する賠償額は交通事故の算定時と同じように大体数字が決まっている。
「屋根破損と自動車全損」企業からの書類に書かれた被害額。どうせ復帰したワイルドタイガーだろうと思ったら、自動車を壊したのはバーナビーだった。
二人で私に喧嘩を売っているのか。/数字 #同題SSTB


「やあ、シュテルンビルトの良い子のみんな、スカイハイだ! みんなもニュースなどで、嵐が近づいているのは知っていると思う。とても危険だから、外に出てスカイハイごっこをしないように、絶対しないように! スカイハイごっこは晴れてから!私との約束だ!」/暴風雨 #同題SSTB


「子供の頃に先生にしてた悪戯ってどんなんだ?」
「俺は黒板消しをドアの隙間に挟んでたな」
「あーバイソンらしいよな」
「なんだ虎徹その言い草は!」
「俺はスマートにチョーク投げてたぞ」
「ひねりがねえよ!」
「…アタシはイケナイ道に誘い込んでたわね」
「…」
「何よ」/悪戯 #同題SSTB


「トリック・オア・トリート!」
魔女の格好をした楓が手を差し出した。
まだ小さな掌。
その手を握っていた妻は空の向こうに去ってしまったけれど、いたずらっ子めいた微笑は彼女に良く似ている。
「わかったわかった!」
小さな袋入りの菓子を差し出すと魔女は悪い笑みを浮かべた。/悪戯 #同題SSTB


何が「バニーちゃん」だ。
ふざけるのもいい加減にしてほしい。
引退寸前のロートルヒーローのくせに。
僕はウサギじゃないし耳も長くなんてない。
冗談じゃない、あんなおじさんと組まされるなんて。
…って思っていたなんて信じられない。
虎徹さんは僕が、絶対に敵わない人です。/動物 #同題SSTB


「ワイルドに吠えるぜ!」
決め台詞が妙に白けて聞こえる。
青いヒーロースーツ姿が、テレビに流れる時間も減ってきた。
タイガーって言われてるけど、まるで飼われてるネコみたいだ、なんて思ってしまう。
溜息がこぼれた。
…さあ、スーツ着て仕事だ。/動物 #同題SSTB

2012.5.14アップ。ツイッターアカウント@kaya_sstbでポストしている#同題SSTBの4月分まとめです。
今回は1か月分フルであるので、改行入れるだけでも一苦労だったり(そもそもメモ帳でタグ打ちしてるからだっていうのは置いといて)。 でも、長編のアイデアの断片になる事もあるんだなあと思うと、継続って必要ですねえ。
ここのところ更新ペース落ちてはいますが、これから夏に向けてじょじょに原稿書きためていけるよう頑張ります!