残っていた衣服をはがす男の指が触れるたび、怯えて震える。
「……ぅ、ぅ…」
轡と怯えに邪魔されて、まともな声などとっくに出ていない。
だが、男には何となくいいたいことが分かった。
出来たばかりの痣が目立つ身体を撫で回しながら、にやにやと言う。
「ああ、さっき確かに『勝てばいい』みてぇな事言ったよ。俺は」
興奮で充血した目と、恐怖で竦みあがった目が真正面に向き合う。
その間も、男の角の無い手が、剥き出しの青年の肌をなぞり、確かめつづける。
剥いだ下肢から、脚の付け根、腰骨、腹、鳩尾、肋骨の上を通り、
胸、鎖骨の窪み、首、そして頬を包み込むように掌が上がってきた。
そして包み込んだ頭を自分のほうへ引き寄せ、宣告する。
「だけどな、それだけじゃつまんねぇだろ?俺も、皆さんもだよ!」
「なぁ!」
最後の言葉は青年ではなく、客席を見渡すように告げられた。
なんと形容したらいいのか、その場にいる数百人の歓声が同意の意味で返される。
先ほどまで賭けに興じていた者たちも、ここまでくれば勝敗も明らかなために、一緒になって吼えている。
「…まぁ、そう言うわけだ。せいぜい大人しくしてれば…手加減してもやるよ」
「…………!」
涙目になった青年が弱弱しく首を振ったのが、男の理性の終わりだった。
青年の口許には、まだ乾いていない血が付いていた。
それを拭い取り、指にぬるっとした感触を楽しむ。
男は青年の髪と、頭をもう一方の手で鷲づかみながらその傷痕を舐める。
初めて男にそんな事をされたのだろう――ここでは、初めてでないものも珍しくない――、
青年は精一杯反対がわに首を曲げ、避けようとする。
だが男はそこにそんなに執着があったわけではなかったらしい――
逆に無防備になった首筋の筋肉に(胸鎖乳突筋といったか)舌を進める。
「うぅ…!」
そのぬるっとした感触のおぞましさに、青年は悲鳴を上げる。
同時に鳥肌の立つ肌をなぞりながら、男の舌が這い進む。
「硬くなってるなぁ…そんなにこわがるなって…」
全身の硬直した筋肉や動作を楽しみながら、男の愛撫が段段核心に迫っていく。
舌を鎖骨から離し、顔を上げると、青年の頬に舌を這わせる。
べろりと大きく舐めると、顔の小刻みな震えまで感じられて面白い。
まだほとんど何もしていないというのに、既に涙が一筋流れている。
あたり前だ。彼は無理矢理ここに出されただけだ。不条理の極みとも言える。
だが、ここに出てしまった以上、そして『謝罪の言葉』が無い以上、
代理戦争は進行するしかない。
男は血と涎を拭った指を青年の胸に這わせる。
大胸筋を、掌全体で皮膚ごと動かすように揉む。性的な動きに、青年が動揺した。
心拍数さえ、上がったのが感じられる。
「…まだまだ序の口……なんだからな。分かってるよな?」
同時に、血塗れの指で、きゅっと乳首が摘まれた。そのまま指の腹で揉みこまれる。
勘弁してくれ、と青年が激しく首を振った。
「う、ぅ…う、ふぇ、ん…ふぁ…はひ…!」
轡越しの、必死の謝罪が遠く聞えた。
「う…んぅッ…ふは…ぁ、あっ!」
男と青年の代理戦争――いや、もはや公開調教と化している――は数十分続いていた。
冒頭に与えられた苦痛とは打って変わって、今青年は快楽に喘いでいる。
無論、それはこれから男が自身を挿入する為の慣らしに過ぎないのだが。
男は時折青年の向きを変え、客が飽きないようにサービスしている。
青年は、今は背面座位に抱きかかえられ、
さらに腰を突き出すようにして転ばないようにしていた。
男の片手は脇腹から胸の辺りを這い、時折思い出したように乳首を責める。
桃色と肌色を混ぜた色の突起は、今は男の親指と人差し指の間で硬くとがっている。
こりこりと、硬さを楽しむように指が蠢き、攻め方を変えると、青年は腫れた目でさらに泣く。
男のもう一方の手は股間を這っている。
先走りと男の唾液に濡れた勃起を扱いたかと思えば、気まぐれに移動して
その下、脹らみや会陰を撫で擦る。
今は、これからの事に備えて青年の後孔を3本の指が貫いていた。
赤く腫れて口を開いた孔が太い男の指を飲み込んでいるというよりは、
指の方が無理矢理口を開かせている、と言った印象だ。
だが、青年は今は苦痛のうめきでなく、快楽の吐息を漏らしている。
蠢く指が弱点を攻めているのか、時折ビクッと反応し息をつめる姿が艶めいていた。
クチッと濡れた音がして指の角度が変わる。
同時に青年が目を閉じ、眉根を寄せた。
「ん…んっ…ふぅん…ッ…ん、ん!」
広げさせられた足に筋が浮き、力が篭っている事が分かる。
「そろそろ……お客さんも疲れた頃合だろうから…な」
グッ、グッと指を押しこめながら男は囁いた。
青年は聞えているやらいないやら、ただ目をきつく瞑って轡に息を吹きかけている。
だがその頬は、さっき男が舐めていたときと違って桃色に染まっている。
男は青年の胸から手を離すと、今度は足にかけて大きく裂くように広げる。
「―――ふっ、はぁッ――!?」
観客からもおお、と言う声が上がる。
青年の頭の先から尻の孔まで、全てがスポットライトに照らされてはっきりと浮かび上がる。
流石の青年もこのことに驚くが、後孔からの快楽に一瞬で引きずり込まれる。
「ングッ、ん、うぅ、ふぐッ…ん、ん…!」
男の抉るような指遣いに、未知の快楽を貪る青年。
「…また…いかせてやるよ…これで何度目だっけか?なぁ」
逆に、青年の痴態に酔い痴れる男。
「そんで、オマエの処女を皆の前で頂いてやるよ」
その狂った雰囲気に飲みこまれ、一体になる観客。きっと、貴方もその中の一人になっているはずだ。
「う、…う…んううっ!」
内側の指の動きがはっきりと見えるわけでもないが、青年の反応からすると、急所だけを捏ねられているらしい。
首を男の肩に乗せる感じで、思い切り仰け反って喘いでいる。
冷や汗をかいていた全身は逆に火照り、熱い滴りがあらゆる場所から落ちていく。
「ふっ、ふっ、!…ふんっ…」
激しく蠢く指の上で、青年の肉棒が揺れている。
堅く反り返り、青年の痣が浮かんだ腹に粘りを塗りつけている。
空中に先走りの糸を引くほど、激しい快楽を与えられているのが、そこでよく分かる。
ぐちゃぐちゃになった股間部に、あらゆる視線が注がれていた……
「いけ、ほら…出しちまえ!」
男が一際強く突き込むと、最大限に刺激された青年の弱点が、悲鳴を上げて限界を迎えた。
「…ん、ぐぅッ・・う、はぁッ!」
青年自身から、悲鳴に一瞬遅れるように白濁が迸る。
ぱたぱた、という音と共に飛んだ精液がリングに撒き散らされる。
「……本番はこれからだぜ?」
男が、脱力して項垂れている青年の顎をとらえて上げさせる。
潤んで、目元を真っ赤にし、激しい快感の余韻に浸っているその顔には、自身の白濁がべっとりと付いていた。
「…ッは…」
男が人差し指と、中指の第一関節を残して、指を引き抜く。
ライトに照らされてぬらぬらと光る指、そのせいで節くれ立った所や、たこのようになった所がより目立つ。
未だに青年の体内にほんの少し残るそれが、その指に刺された青年には凶器のように見えた。
一方その凶器を銜え込む傷口、後孔は、今までの太さと深さになじんだためか、余裕で残りを含んでいる。
だが表面は強い赤みを帯びて腫れて、痛々しい。特に傷ついているような所はないらしいが。
青年は未だ射精の余韻から抜けきれないらしく、
汗に濡れて乱れた髪の下から焦点の合わない目を半開きにし、観客の方を見ている。
後孔の赤みと同じくらいの強い赤みの浮かぶ頬に流れる、彼自身の精液が厭らしく対照的だった。
「…ふっ…う…」
彼は意識していないだろうが、声帯の奥にひっかかった吐息が微かな声になって漏れ出ている。
口元からはそれと別に唾液が垂れ流しになったままだ。
べしゃべしゃに涎で濡れた轡のせいで、その声はよけいくぐもって小さくなる。
男も興奮で頬を染めながら暫くそのままでいた。
ほんのわずか挿入された指先を弄くって、青年の括約筋を玩んでいたが、
青年が落ち着くに連れて表情が意外そうなものを浮かべる。
「…何だオマエ、今の状況忘れてるわけじゃないだろうな?」
汗ばんだ青年の尻を前に突き出して、指が含まされたままの後孔を見えやすくする。
そしてそのまま2本の指を広げ、それこそ奥まで見させるように仕向けた。
観客、いや、手を下してこそいないが青年を可哀想な獲物としか見ていない数多くの猛獣が哂い、手を叩く。
男の指と言う凶器で広げられた傷口が、ぱっくりと鮮やかな媚肉を覗かせる。
生々しいピンク色に滑り光るそれは、青年の呼吸とは殆ど無関係に勝手に蠢いている。
角度を変え、向きを変え、観衆全員へ青年を晒し者にすると、男は青年を床へ転がした。
その拍子に指がすっぽ抜けて、厭らしい音を残して後孔が口を閉じる。
「どこのお坊ちゃんが何で出させられてんのか、知ったこっちゃねぇけどな、」
観客が息をのむ。これで、青年はやっととどめを刺されるのだ。
男が深く息をついて、自身を取り出す。青年よりも一回りも二回りも大きく、使い込んだ貫禄がある。
「……行くぞ」
青年はもうあきらめたのか、脱力して動けないのか、もはや抵抗はしない。
それを良いことに、男は青年の開いた後孔にそれをあてがうと、一気に貫いた。
「ぅむ…ん、んふぐ、むぐぅうううぅーー!」
青年の悲痛な悲鳴があがるのと同時に、観客が沸いた。
哀れな獲物が、凶暴な肉食獣にとどめを刺された瞬間だ。
肉食獣は、獲物の媚肉の感触に軽く眉根を寄せて愉しみ、獲物は痛みに呻く。
青年は暴れようと四肢をつっぱるが、縛られたままの腕は痺れ、足は快感の余韻で自由にならない。
男は青年が脱力したままでいるおかげで、大した痛みもなく押し進められている。
それどころか濡れた肉が肉棒にまとわりついて、ほどよく締め付ける感触がたまらなかった。
青年には理性はもはや無かったが、男のたがも外れかけていた。
>>NEXT
<<BACK