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壽初春大歌舞伎 松竹座

2016年1月2日(土)~2016年1月26日(火)

配役

昼の部(11:00開演)

一、歌舞伎十八番の内 鳴神(なるかみ)

鳴神上人:六代目 片岡愛之助
雲の絶間姫:初代 中村壱太郎

二、枕獅子(まくらじし)

傾城弥生 後に獅子の精:三代目 中村扇雀

三、らくだ

紙屑屋久六:九代目 市川中車
らくだの宇之助:二代目 中村亀鶴
家主幸兵衛:初代 中村寿治郎
女房おさい:四代目 片岡松之助
やたけたの熊五郎:六代目 片岡愛之助

夜の部(16:00開演)

一、桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)帯屋

帯屋長右衛門:四代目 坂田藤十郎
丁稚長吉、信濃屋娘お半:初代 中村壱太郎
義母おとせ:五代目 坂東竹三郎
隠居繁斎:初代 中村寿治郎
弟儀兵衛:六代目 片岡愛之助
長右衛門女房お絹:三代目 中村扇雀

二、研辰の討たれ(とぎたつのうたれ)

守山辰次:六代目 片岡愛之助
平井才次郎:初代 中村壱太郎
吾妻屋亭主清兵衛:四代目 片岡松之助
平井市郎右衛門:初代 嵐橘三郎
粟津の奥方:二代目 市川笑也
僧良観:五代目 坂東秀調
平井九市郎:九代目 市川中車

三、芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)

魚屋政五郎:九代目 市川中車
大工勘太郎:二代目 中村亀鶴
左官梅吉:初代 嵐橘三郎
金貸おかね:三代目 中村歌女之丞
大家長兵衛:四代目 片岡松之助
姪お君:二代目 市川笑也
女房おたつ:三代目 中村扇雀

データ

筋書

愛之助丈関連
舞台写真:「鳴神」鳴神上人:7枚
舞台写真:「らくだ」やたけたの熊五郎:8枚
舞台写真:「帯屋」儀兵衛:4枚
舞台写真:「研辰の討たれ」守山辰次:10枚
51ページ:「楽屋探訪」内インタビュー(素顔写真あり、2/3ページ)

舞台写真

愛之助丈は、
「鳴神」鳴神上人が11種類(壱太郎丈の雲の絶間姫との2ショット1種類を含む)
「らくだ」やたけたの熊五郎が6種類(中車丈の久六、亀鶴丈の宇之助との3ショット1種類を含む)
「帯屋」儀兵衛が2種類
「研辰の討たれ」守山辰次が11種類

料金

一等席:16,000円
二等席:8,000円
三等席:5,000円
筋書:1,700円

雑誌

『演劇界』2016年3月号

愛之助丈関連
44ページ:舞台写真「鳴神」鳴神上人(カラーグラビア)
75ページ:舞台写真「鳴神」鳴神上人(モノクロ 4枚)
76~77ページ:舞台写真「らくだ」やたけたの熊五郎(モノクロ 6枚)
78ページ:舞台写真「帯屋」儀兵衛(モノクロ 4枚)
80~81ページ:舞台写真「研辰の討たれ」守山辰次(モノクロ 10枚)
94~95ページ:壽初春大歌舞伎(松竹座)の劇評
演劇界 2016年 03 月号 [雑誌]

感想

昼の部

24日に前方花道寄りで観劇。
この日は奄美大島で115年ぶりに雪が降るという寒い日だった。

鳴神

白雲坊(松十郎丈)と黒雲坊(千壽丈)の掛け合いの後、花道から雲の絶間姫(壱太郎丈)が登場。
可愛らしくも上品な姿に見とれているうちに庵の御簾が上がっていて、鳴神上人(愛之助丈)が座っていた。(←御簾が上がるタイミングをすっかり忘れていた。)愛之助丈の鳴神は久しぶり。
絶間姫は色気がなくてもダメだし、色気のありすぎてもダメだが、壱太郎丈はちょうどよいと思う。
歌舞伎十八番を上方の役者で固めるなんて、松竹座ならではかな。

共演の多いお二人だけあって、息も合っているし、見目麗しくて眼福。
毎回、解き放たれて滝を登っていく竜が小さいと思っていたが、今回の竜は結構大きめでよかった。
鳴神が六方で花道を去っていく姿はなかなかの迫力で、代役で初演したときに所作板を2回も踏み抜いたという話を思い出した。

枕獅子

傾城弥生(扇雀丈)はうたた寝しているが、後見さんが舞台の奥から台を押して出てくる。
傾城だと衣装が豪華で嬉しい。(相変わらず踊りはさっぱりわからんが…)
手獅子(って筋書に書いてあるけど、綱豊卿が能の場面で頭に着けてる鈴みたいなの)に引っ張られて、弥生はいったん退場。

その後、幕が開くと、舞台に獅子の精(扇雀丈)が座っている。
女性用の着物、獅子の隈取、頭上に綱豊卿がつけてるような鈴、となんとも不思議な恰好。
傾城姿も綺麗だけど、私は扇雀丈は立役の方が好きかも。
毛振りが激しくて、ぶんぶん回していた。それなのに息を切らしてないなんて、役者さんってスゴイよなぁ。

らくだ

らくだの宇之助(亀鶴丈)がフグに当たって死んでしまい、兄貴分のやたけたの熊五郎(愛之助丈)が葬式を出す算段をしている。
そこへやってきた紙屑屋久六(中車丈)はらくだの死体を担いで家主の家に行き、カンカンノウを歌う羽目になる。

中車丈が関西弁を喋れるって初めて知った。私は関西弁ネイティブではないせいか、特に違和感は感じなかった。愛之助丈とのやりとりも面白く、亀鶴丈の死体っぷりが最高だ。
幸兵衛(寿治郎丈)とおさい(松之助丈)の家主夫妻もいい味を出していた。
酒に酔った久六と熊五郎の立場が逆転するところも面白い。
最後、らくだが熊五郎の腕を掴んで手を振らせてた。

この演目を見るのは2回目だが、今回も大笑いした。
楽しかった~。

夜の部

23日に前方中央で観劇。

帯屋

永楽館では、愛之助丈の長右衛門で見た。
今回は藤十郎丈の長右衛門。じっと座ってるだけなのに、風情があるのがさすが。
愛之助丈は意地悪な弟・儀兵衛で楽しそうに演じていた。こういう八っつぁんみたいな役が好きなんだろうなぁ。
意地悪な義母・おとせは竹三郎丈。泣かせる母親のイメージが強いけど、意地悪婆さんも似合っていた。憎たらしいんだけど、ふくれっ面が可愛い。
長吉とお半の二役は今回も壱太郎丈。長吉のはじけっぷりとお半の可憐さに、わかっていても「本当に同じ人?」と思ってしまう。
近くの席の女性が幕が下りた後で、「あれ同じ人? お人形さんみたいだったのに!」と驚いていた。さもありなん。

研辰の討たれ

以前、染五郎丈の辰次、愛之助丈の九市郎、獅童丈の才次郎で見た。
今回は、愛之助丈の辰次、中車丈の九市郎、壱太郎丈の才次郎。大体の流れは前回と同じ。
場面転換のたびに幕を閉めるので、テンポが悪いのが残念だが、今回も面白かった。

愛之助丈は情けない卑怯者を生き生きと演じていた。
中車丈の声と話し方が猿之助丈に似ていて、血っていうのは濃いんだなぁとしみじみ思った。
客席を走り回っての追いかけっこ、やりたい放題の辰次、辰次が九市郎に「土下座はあなたの方がお上手でしょうね」と言う半沢ネタ、キレ気味の才次郎など、客席も受けていた。

最後、助かったかと思いきや、辰次は斬られ、もがき苦しんで倒れる。(前回は斬りかかったところで幕が引かれたはず。) 赤紫の夕焼けの中、絶望して死んでいく愛之助丈の表情がよかった。
そして、辰次を斬った後の中車丈のやるせなげな表情もよかった。
だまし討ちで市郎右衛門(橘三郎丈)を殺した辰次が、その息子たちにだまし討ちで殺される。
笑って楽しんだ後、ほろ苦いラストだった。

芝浜革財布

夜明け前の砂浜で、政五郎(中車丈)がぽつんと座って愚痴るところから始まる。(「ひ」を「し」と発音するのがお江戸風。)
政五郎は大金の入った財布を拾い、家に戻って仲間とどんちゃん騒ぎして酔いつぶれてしまう。飲み仲間が女房自慢をするところは微笑ましい。
おたつ(扇雀丈)は政五郎が拾った財布をお役所に届け、「財布を拾ったのは夢、飲んで騒いだのは現実」と嘘をつく。そして、政五郎に切々と心情を訴える。
歌舞伎って、たまに悪妻もいるけど、できた奥さん率高いよなぁ~。
場面転換する間に獅子舞が出てきて、お正月だなぁという感じ。

3年後、心を入れ替えた政五郎は立派な店を構えるほどに出世し、おたつは貧乏長屋のおかみさんから白塗りの奥さんにと変身した。
姪のお君(笑也丈)がお正月の飾りつけをしている。笑也丈の若さにビックリ。「あたし、わかんない」なんて台詞が似合ってしまうのがスゴイ。
おたつはお君に「あなたの好きな市川中車の錦絵(だったかな?)でも買いなさい」とお小遣いを渡す。
おたつ「中車のどこが好きなの?」
お君「土下座の上手いところ(ハート)」
なんてやりとりもあった。

おたつは、財布をお役所に届けたが持ち主が現れずに下げ渡されたことを告げ、それを隠していたことを政五郎に詫びる。政五郎はおたつの心遣いに感謝する。
2人で仲良くお酒を酌み交わすところに、3年前に酒を飲んで喧嘩した勘太郎(亀鶴丈)もやってきた。3人仲良く酒を飲み、ハッピーエンドで幕。
いいお話だった。

おまけ

筋書が1700円になっててビックリ。


↑夜の部の幕間は「はり重」のビーフカツサンド。


↑「アルション」のモンブランとグリオットピスターシュ。
夜と朝にホテルで食べた。これが松竹座の楽しみでもある。


↑リーフティーを少しずつゲット。


↑昼の部の幕間は「かまかま」の三色弁当。


↑お土産はアンドリューのエッグタルト。


↑こっちはショコラタルトとエテルナ。

どれもこれも美味しいものばかり。