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第七回システィーナ歌舞伎(大塚国際美術館システィーナ・ホール)

2016年2月19日(金)・20日(土)・21日(日)

配役

午前の部(11:00開演)/午後の部(15:30開演)

La Belle et la Bete 美女と野獣

作・演出:水口一夫

出演:
野獣 実は木曽太郎兼光、正太郎:六代目 片岡愛之助
美寿々姫:初代 中村壱太郎
千代姫:二代目 片岡千次郎
松葉姫:二代目 上村折乃助(←純弥)
国常立尊:初代 上村吉太朗
侍女横音:片岡愛一郎
侍女お関:関口義郎
死神:佐藤浩希
鷹司冬明:木場勝巳
お蘭の方 後に山姥、お芳:六代目 上村吉弥


データ

料金

料金:12,000円(全席指定)
※美術館入館料込み

筋書:入場時に1枚の紙を3つに折ったものが配られた。

雑誌

『演劇界』2016年5月号

愛之助丈関連
60~61ページ:第七回システィーナ歌舞伎(舞台写真「La Belle et la Bete」獅子の精、正太郎、野獣、木曽太郎兼光 カラー 各1枚)
62~66ページ:片岡愛之助×水口一夫対談
第三回~第七回までの舞台写真がカラーで載っている。(「GOEMON」×1、「主天童子」×2、「満月阿波噺」×2、「百合若丸弓軍功」×1、「La Belle et la Bete」×2)
109ページ下段「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の記者会見の様子(1/4ページ)
演劇界 2016年 05 月号 [雑誌]

感想

感想


19日の午前の部をCブロックより観劇。

以下のレポでは、場面の順序などおかしいところがあるかもしれません。(配られた筋書のあらすじが短く、また実際の劇と内容が違っているので、確認できないので。)


システィーナホールに入ると、およそ歌舞伎っぽくない舞台が準備されている。(いつものことではあるが。)
このホールには幕はない。
白い衣装の妖精達(システィーナ歌舞伎なので、女性)が現れて踊り、幼い木曽太郎兼光(子役さん)は小さな女の子の妖精と出会う。妖精は大人には見えないらしい。
愉快な侍女二人(愛一郎丈と関口義郎さん)のやりとりがおかしい。

兼光は暴れる白い牡鹿を仕留め、母・お蘭の方(吉弥丈)は見事だと喜ぶ。
しかし、国常立尊(吉太朗丈)が現れ、「神の使いである牡鹿を殺した罰として、お蘭の方は山姥に、兼光は野獣に姿を変えられ、真実の愛を知るまでは元の姿に戻れない」と言う。
国常立尊は「紅葉狩」の山神のような衣装。子役だった吉太朗丈が大きくなていてビックリ。(←親戚のオバちゃんか。)

月日は流れて四百年後。
下剋上の世の中で、弟に城を追われた鷹司冬明(木場勝巳さん)が三人の姫君を連れて落ち延びてくる。
長女・千代姫(千次郎丈)と次女・松葉姫(折乃助丈)はシンデレラに出てくる意地悪な姉2人の役どころかな。
千次郎丈は普段は立役で赤っ面を演じたりするのだが、可愛げがあってそれほど憎々しい姉ではない。
美寿々姫(壱太郎丈)は気立ての優しいお姫様で、父も特別可愛がっている様子。この時代は側室が当たり前なので、母親が違うのだろうか。

冬明がたどり着いた村は、元は兼光が身を隠した場所。
老婆・お芳(吉弥丈)とその息子の正太郎(愛之助丈)は悪人で、お芳は冬明の財産、正太郎は美寿々姫を狙っている。お芳の恰好は山姥みたいで(包丁研いだりりするし)、登場したときはお蘭の方の成れの果てかと思った。
正太郎はやたけたの熊五郎みたいな、歌舞伎のならず者のお決まりの見た目。
お芳にそそのかされた冬明は、森の中にある城へ財宝=軍資金を探しに行く。
城の周りでは、黒い衣装の悪魔?(口述の死神と同じ格好)が何人もうごめいていて、不気味な雰囲気を出している。

美寿々姫に「花が1輪ほしい」と言われた冬明は、古城の庭に咲いている赤薔薇を手折る。
すると、「我が城の花を手折るとは許さん」と野獣(愛之助丈)の声が響く。この時、壁画に野獣(豹っぽい)の顔がライトで映し出された。
冬明は「私には三人の娘がいる。許してくれ」と請うが、野獣に「娘をこの城に寄越すか、お前が死ぬかのどちらかだ」と言われ、冬明は走って逃げだす。仮にも一国の城主なら戦えよ。

その後、舞台には獅子の精=野獣?(愛之助丈)が現れ、気振りをする。
まさか気振りが見られるとは思わなかったので、嬉しかった。

ここで、幕間。

後半は、美寿々姫が「私が花を1輪ほしいと言ったせいで…」と野獣のもとに行く決心をするところから始まる。
姫が城に辿りつくと、愉快な侍女二人に着替えを勧められ、なぜかメイド(女性←念のため)が出てくる。なんでここで、メイドさんやねん。(客席は笑ってた。)
美寿々姫はつぎはぎの着物から、静御前のような衣装にお召し替え。
「主と一緒に夕食を…」と、食堂で待たされる美寿々姫。食卓には西洋風の燭台とパンなどの洋食が並んでいる。

そこへ食器棚からバターンと現れる野獣。(なんでそんなとこから出てくんねん!)
野獣は毛皮のマスクを顔にかぶってり、手足にも爪付きの毛皮をつけている。衣装は西洋風で、マントをつけている。
うん… まあ… 野獣なんだから仕方ないんだけどさ。毛皮のマスクですっぽり顔を覆っているから仕方なんだけどさ。頭がすごく大きく見えて、ちょっと(どころか、かなり)バランスが悪い。
いつもの歌舞伎なら、顔が大きい方が舞台映えするんだけどねぇ…
怯える美寿々姫に向かって、野獣は「俺の妻になれ」「俺の女になれ」と迫るが、姫は心を開かない。(そりゃそうだ。)

数日経っても食欲がなく、元気がない美寿々姫のために、愉快な侍女たちがおてもやん踊りを披露する。(愛一郎丈がやたらグラマーにしてるのので、胸から何か出てくるかと思ったが、結局最後まで何もなかった。)
美寿々姫は熱で倒れ、死神(佐藤浩希さん=フラメンコの先生)が姫に迫る。
死神は城の周りにいた黒い悪魔?と同じような黒づくめに、青い隈取?をしている。流石はフラメンコの先生だけあって、床を踏むときにいい音がするし、動きだけでもただ者ではない感が漂っていた。歌舞伎の悪役みたいに舌を出すけど、赤く塗ってはいなかった。
野獣がキックで死神を倒し、姫を助け起こすが、やはり嫌がられ、「オレが醜いからか」としょんぼり。

姫は「鏡に父が病気で倒れている姿が映っていた。姉たちでは父の世話はできないので、村に返してください」と野獣に頼む。承知しなければ自害するとまで言われ、野獣は10日間だけ村に戻ることを許す。
野獣曰はく「姫がいる間は罪を許され、姫が戻ってこないと自分は死に、城は崩れ落ちる」そうだが、原作の『美女と野獣』を見てないので、なぜそうなのかはいまいちわからない。
姫は野獣と約束のダンスを踊り、野獣は2階のバルコニーから「彼女は振り返りもせずに行ってしまった」というような歌を歌う。(姫もどこかで歌っていたけど、流石に高音は出ないのか、女性の声のテープに合わせていた。)

姫の看病で冬明は回復し、姫は約束通りに城に戻ろうとする。
意地悪な姉たちが「なんであの子だけあんな綺麗な着物を着ているの?」「戻れないように、道案内してきた鳥を隠してしまいましょう」と邪魔をする。
さらに、姫に横恋慕している正太郎が道で待ち伏せして行く手を阻む。この場面では、つり橋に見立てたロープをうまく使っていた。

それを助けたのは山姥になってるお蘭の方。
お蘭の方は能のような謡とともに舞ったり、義仲との馴れ初めを語って舞ったり、和の部分で魅せる。山姥になっても、木曽殿の愛妾だっただけあって、気品のある姿をしている
お蘭の方は引き戻しのように正太郎を引き寄せ、殺してしまう。

姫が城に戻った時、2体のブロンズ像の間の椅子に野獣が倒れていた。姫が「あなた… 死なないで…」と抱き起すと、国常立尊が現れ、「愛を知った兼光は許された」と言い、野獣は小忌衣(おみごろも)をまとった白塗りの貴公子の姿に戻る。小忌衣と野獣のマントと獅子の精の衣装が同じ布地っぽい。ついでに、2体のブロンズ像が愉快な侍女二人に変わる。
いやいやいやいや… ワイルドに肉にかぶりついていた野獣がいきなり義経みたいな貴公子じゃキャラが違い過ぎるだろう。(個人的には、愛之助丈の白塗りは好きだけど。)。
そして、二人で歌い、カーテンコールへ。(ただし、カーテンはない。)
システィーナ歌舞伎はこのカーテンコールが楽しいのだ。

毎年恒例の奇天烈歌舞伎とはいえ、去年がトンデモ過ぎたのでちょっと不安だったが、壱太郎丈が戻ってきてくれて持ち直した感じ。(やはり「歌舞伎」と銘打つなら、ヒロインは女形でないとね。)
突っ込みどころは満載だったけど、面白かった。
大塚国際美術館の前にNHKの車が止まっていたので、どこかで放送されるかも。


おまけ


↑神戸駅で買った「穴子めし弁当」。


↑お土産は「お百姓さんが作ったスイートポテト」と「和三盆ポルボローネ」


↑愛之助丈に届いていたお花。