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十二月大歌舞伎(歌舞伎座)

2017年12月2日(土)~12月26日(火)

配役

第一部(11:00開演)

一、源平布引滝 実盛物語(さねもりものがたり)

斎藤別当実盛:六代目 片岡愛之助
女房小よし:六代目 上村吉弥
葵御前:三代目 市川笑三郎
郎党:三代目 澤村宗之助
同:六代目 市村竹松
同:三代目 大谷廣太郎
同:二代目 大谷廣松
百姓九郎助:四代目 片岡松之助
瀬尾十郎:四代目 片岡亀蔵
小万:八代目 市川門之助

二、新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)

叡山の僧智籌 実は土蜘の精:四代目 尾上松緑
源頼光:九代目 坂東彦三郎
侍女胡蝶:四代目 中村梅枝
坂田公時:初代 中村萬太郎
巫子榊:初代 坂東新悟
太刀持音若:三代目 尾上左近
石神 実は小姓四郎吾:六代目 坂東亀三郎
碓井貞光:初代 市村橘太郎
渡辺綱:六代目 中村松江
番卒藤内:三代目 坂東亀蔵
番卒次郎:四代目 片岡亀蔵
番卒太郎:四代目 河原崎権十郎
平井保昌:九代目 市川團蔵


第二部(15:00開演)

一、らくだ

紙屑屋久六:九代目 市川中車
やたけたの熊五郎:六代目 片岡愛之助
家主幸兵衛:初代 市村橘太郎
家主女房おさい:四代目 片岡松之助
らくだの宇之助:四代目 片岡亀蔵

二、倭仮名在原系図 蘭平物狂(らんぺいものぐるい)

奴蘭平 実は伴義雄:四代目 尾上松緑
壬生与茂作 実は大江音人:三代目 坂東亀蔵
水無瀬御前:六代目 中村児太郎
一子繁蔵:三代目 尾上左近
女房おりく 実は音人妻明石:初代 坂東新悟
在原行平:六代目 片岡愛之助

第三部(18:30開演)

一、瞼の母(まぶたのはは)

番場の忠太郎:九代目 市川中車
金町の半次郎:九代目 坂東彦三郎
板前善三郎:三代目 坂東亀蔵
娘お登世:四代目 中村梅枝
半次郎妹おぬい:六代目 中村児太郎
夜鷹おとら:三代目 中村歌女之丞
鳥羽田要助:六代目 片岡市蔵
素盲の金五郎:四代目 河原崎権十郎
半次郎母おむら:二代目 市村萬次郎
水熊のおはま:五代目 坂東玉三郎

二、楊貴妃(ようきひ)

楊貴妃:五代目 坂東玉三郎
方士:九代目 市川中車

データ

舞台写真

愛之助丈は、
「実盛物語」斎藤別当実盛が8種類
「らくだ」やたけたの熊五郎が7種類(中車丈の久六との2ショット1種類、中車丈の久六と片岡亀蔵丈のらくだとの3ショット1種類、片岡亀蔵丈のらくだと橘太郎丈の幸兵衛との3ショット1種類、片岡亀蔵丈のらくだと松之助丈のおさいとの3ショット1種類を含む)
「蘭平物狂」在原行平が3種類

料金

1等席:15,000円
2等席:11,000円
3階A席:5,000円
3階B席:3,000円
1階桟敷席:17,000円

雑誌

歌舞伎DVDコレクション 第30号

この公演の「らくだ」の映像を見ることができる。
歌舞伎特選DVDコレクション全国版(30) 2020年 10/21 号 [雑誌]

『演劇界』2018年2月号

愛之助丈関連
28ページ:舞台写真「仙石騒動」神谷転(モノクロ 1枚)
62ページ:舞台写真「実盛物語」斎藤別当実盛(カラーグラビア)
88~89ページ:舞台写真「実盛物語」斎藤別当実盛(モノクロ 6枚)
92~93ページ:舞台写真「蘭平物狂」在原行平(モノクロ 4枚)
96ページ:舞台写真「らくだ」やたけたの熊五郎(モノクロ 4枚)
111~113ページ:十二月大歌舞伎(歌舞伎座)の劇評
132ページ:第八回 システィーナ歌舞伎の紹介(1/3ページ)
演劇界 2018年 02 月号 [雑誌]

感想

第一部

9日に前方中央付近で観劇。

実盛物語

去年の京都の顔見世で初役の実盛を見たばかりだが、歌舞伎座なら馬に乗って花道を引っ込むことができるので、それが楽しみだった。
同じ演目を何度か見ると、「あ、ここでこんな表情してたんだ」「ここでこういう動きがあったのか」など、初見では気付かなかったことに気付いたりするのも面白い。

九郎助(松之助丈)と女房の小よし(吉弥丈)が木曽義賢の妻・葵御前(笑三郎丈)をかくまっているところへ、斎藤別当実盛(愛之助丈)と 瀬尾十郎(片岡亀蔵丈)が詮議にやってくる。
九郎助夫婦は葵御前が腕を産んだことにしてピンチを切り抜けようとし、平家の禄を食みながらも源氏に心を寄せているの実盛は、何とかして葵御前の腹の子を助けようとする。
実盛は中国の故事を引き合いにいろいろと蘊蓄をたれ、瀬尾を納得させる。

その後、実盛が小万(門之助丈)の腕を切った事が判明し、その時の様子を語る。
そうそう、こういうのを演じる愛之助丈が見たいんだよ。新作や歌舞伎以外もいいけれど、ちゃんと歌舞伎役者だってのを見せておかないと、劇場に足を運ぶファンはつかないと思う。(テレビで見れるなら、劇場に行く必要ないからね。)
なんだかすっかりマスコミからの“叩かれ枠”に入ってしまったようで、タイトルを見ただけでも「何言ってんの?」と思うヘンテコな記事も多々見かけるが、歌舞伎修行だけしっかりしていれば、ファンはついていきますよ。(←エラソウ。)

運び込まれた小万の死体が蘇生して再び息絶え、葵御前が無事男子を出産し、そこへ瀬尾がやってきて…
実は太郎吉が瀬尾の孫ということが判明し、瀬尾は太郎吉を駒王丸(未来の木曽義仲)の家来に取りたててもらうため、自分の首を差し出す。
この時、座ったままくるんとトンボを返るのがダイナミック。

最後、実盛は太郎吉を馬に乗せてやり、花道を馬で去っていく。 花道でぐずる?お馬さんが可愛かった。

土蜘

幕が開くと、そこは松羽目物の舞台。 具合が悪い源頼光(彦三郎丈)のもとに平井保昌(團蔵丈)が見舞いに来て、胡蝶(梅枝丈)が薬を持ってくる。胡蝶は舞を舞って去るのだが、ふと花道を見ると、いつの間にか智籌(松緑丈)が立っていた。人間の役じゃないのですっぽんから出てきたのだと思うが、全然気づかなかった。
智籌が身の上話をしている途中で、太刀持音若(左近丈)が「御油断めさるな!」と叫んで太刀を抜く。
招待を見破られた智籌実は土蜘の精は逃げていく。

場面は変わり(舞台装置は変わらないが)、番卒の太郎(権十郎丈)、次郎(片岡亀蔵丈)、藤内(坂東亀蔵丈)と巫子の榊(新悟丈)、石神に化けたお小姓(亀三郎丈)のユーモラスなやり取りが繰り広げられる。お小姓さんが可愛らしい。
平井保昌、碓井貞光(橘太郎丈)、渡辺綱(松江丈)、坂田公時(萬太郎丈)が蜘蛛退治に出掛け、塚の中から土蜘の精(松緑丈)が現れる。
土蜘の精は糸を投げつけて応戦するが、結局退治される。

お昼休憩の後にこの演目は厳しいのか、近くの席のおじいちゃんがいびきをかいて寝ていた。
寝るなら静かに寝てくれ。

第二部

9日に前方上手寄りで観劇。

らくだ

紙屑屋久六(中車丈)とやたけたの熊五郎(愛之助丈)のコンビは前に見たことがある。
物語として筋があるわけではないので、とにかく舞台を見て笑っているだけという感じ。
最後、らくだの宇之助(片岡亀蔵丈)が自ら踊り出すところが前と違った。(他にも変わっているところがあるのではないかと思う。どこが違うかまでは記憶にないが…)
家主の幸兵衛(橘太郎丈)と女房(松之助丈)のやり取りも面白い。らくだのカンカンノウにビックリした家主が柱をよじ登るのがおかしかった。

蘭平物狂

題名はよく聞くのだが、初めて見る演目だった。
感想を一言で述べるなら、「なんじゃそりゃ」。これに尽きる。

在原行平(愛之助丈)は須磨時代の恋人・松風を忘れられず伏せっている。奥方の水無瀬御前(児太郎丈)は奴の蘭平(松緑丈)に松風に似ている女性を連れてくるようにと命じる。
…なんてよくできた奥方だ!
夫が須磨に流されている間家を守り、帰ってきた色ボケ夫のために恋敵にそっくりな女性を呼び寄せるとか、今の時代じゃあり得ないね。

蘭平に連れられて、松風そっくりのおりく(新悟丈)とその夫・与茂作(坂東亀蔵丈)がやってくる。(与茂作は松風の兄と偽っている。)
行平は喜ぶが、松風実はおりくとはなんだか噛み合わない。(そりゃそうだ。) ちなみに、行平は小忌衣に病鉢巻をしている。
そこへ曲者が現れて、追手に蘭平の息子の繁蔵(左近丈)が差し向けられる。繁蔵はまだまだ子供のため、蘭平は息子が心配で、行平の呼びかけを無視してしまう。

行平が怒って刀を抜くと、蘭平は狂気に陥り、延々と踊ったりなんかしている。
正気に戻った後、松風実はおりくのとりなしもあって、行平は蘭平を許す。
曲者を打ち取った繁蔵が戻ってきて、行平は繁蔵を武士に取りたてる。
与茂作実は伴義澄が「親の仇!」と行平に斬りかかり、なぜかこの時は刃物を見ても狂わなかった蘭平が取り押さえる。
蘭平は実は伴義雄で、伴義澄の兄。2人は刀からお互いが兄弟だとわかり、親の仇・行平を討とうとする。
蘭平が刀を見ると狂うというのは嘘で、行平に近づくための策略だった。
あんた、実は正気なのにあんなに長々ととち狂っとったんかい!

場面が変わり、幕が落ちたら、血まみれの蘭平が舞台の中央で捕手に囲まれている。
はしごを使ったり、屋根から飛び降りたりする立ち回りが長時間続く。愛之助丈のお弟子さん・愛治郎丈がすごく頑張っていたので、たくさんいる捕手の中からぜひ見つけ出していただきたい。
捕手さんが屋根の上で、投げられた刀を取り落としそうになったのを見てひやっとした。
激しい立ち回りの中、蘭平は「ととはここにいるぞよー!」と声を上げながら繁蔵を探す。

そこへお着替えをした行平と与茂作実は伴義澄を騙っていた大江音人(=小野篁の家来)、水無瀬御前、松風を騙っていたおりく実は明石(音人の妻)が現れる。
チョットマッテ。
行平の恋煩いはお芝居だったってことなのか? だから奥方が快く恋敵そっくりの女を探して来いとか言ったのか?
結局、行平って、色ボケなのかアホなのか賢いのか策略家なのかどうなんだ!?

混乱しているところ、さらに行平は武士に取りたてた繁蔵に蘭平を討つように命じる。
当然父子は苦悩する。行平、ただのドSか!
蘭平は繁蔵に「手柄にしろ」と降参し、盗んでいた宝を渡す。
行平は繁蔵の手柄に免じて伴の家の再興を約束し、蘭平を逃がしてやる。「中納言行平がお家の再興?」なんてことを考えていたら歌舞伎は見れないので、その辺りは気にしないことにする。
最後は蘭平が段の上で見得をして幕。

舞台写真はまだ販売されていなかったので、来月観劇する際に買おうと思っている。

おまけ


↑幕間に食べたお弁当。(場内の売店で購入。)


↑二部の開場直後に食べためでたい焼き。


↑お土産は「銀のぶどう」のチョコサンドにした。(東京駅で購入。)