TOP > データベース > 2019年(平成31年/令和元年) >第十二回 永楽館歌舞伎 出石永楽館
	
第十二回 永楽館歌舞伎 出石永楽館
	2019年11月4日(月・祝)~11月10日(日)
	※10日(日)は昼の部のみ
	
配役
昼の部(11:30開演)/夜の部(16:00開演)
一、新作歌舞伎 道成寺再鐘供養(どうじょうじごにちのかねくよう) 仙石権兵衛出世噺
	水口一夫 作・演出
	
	仙石権兵衛秀久:六代目 片岡愛之助![]()
	清姫、白拍子花子実は清姫の霊:初代 中村壱太郎
	一つ家の娘お笹:初代 上村吉太朗
	安珍、根来修理之助:三代目 澤村宗之助
	一つ家の老婆お清:六代目 上村吉弥
	
二、滑稽俄安宅新関(おどけにわかあたかのしんせき)
	富樫左衛門、国税局査察部統括官:六代目 片岡愛之助![]()
	通人、小桜姫:初代 中村壱太郎
	亀屋忠兵衛:初代 上村吉太朗
	富樫奥方加賀:三代目 澤村宗之助
	傾城梅川:六代目 上村吉弥
	
データ
筋書
	愛之助丈関連
	20ページ:「コウノトリ育むお米」のチラシ(カラー)
	20ページと21ページの間の折込(すべてカラー)  舞台写真「弁天娘女男白浪」弁天小僧菊之助、「東海道四谷怪談」民谷伊右衛門
	 裏はポスター:舞台写真「川連法眼館」源九郎狐(カラー)
	21ページ:舞台写真「新説諸国譚 TAMETOMO」源八郎為朝、「月光露針路日本 風雲児たち」新蔵(全てカラー)
	
料金
	全席指定:12,000円
	筋書:1,000円
	
感想
感想
	盛大にネタバレしてるので、観劇前の方はお読みにならないでください。
	
	
	5日の昼の部を前方中央で観劇。
	
新作歌舞伎 道成寺再鐘供養 仙石権兵衛出世噺
	最初、幕を下ろした状態で、僧(千次郎丈)が安珍清姫の伝説を語りながら、客席をぐるりと歩く。
	幕が開いたら屏風だけのセットで、清姫(壱太郎丈)が安珍(宗之助丈)を口説いている。
	安珍は清姫を「今夜忍んでいく」と騙して逃げ、清姫はそれを追う。
	清姫の情念のこもった踊りはよかったが(壱太郎丈って、「GOEMON」のフラメンコとか、情念のこもった踊りがうまいと思う)、正直、この序幕を見た時は「新作歌舞伎、大丈夫か?」と思った。(←杞憂でした。すみません。)
	
	ところ変わって、道成寺の鐘供養。
	聞いたか坊主が見張っているところへ白拍子がやってきて躍りを披露する、まあいわゆる道成寺もの。
	壱太郎丈は汗だくで踊っていた。
	鐘が落ちたところで暗転して休憩。
	
	次の場面は山中の一軒家。
	そこに住む老婆(吉弥丈)は旅人を殺して身ぐるみ剥いでいると言う。
	道に迷った仙石権兵衛(愛之助丈)が花道から現れて、老婆に一夜の宿を所望する。
	権兵衛は老婆にせがまれて自分の初陣について語るのだが、それが実盛のような感じだった。
	
	実は老婆は清姫の亡霊で、1000人の男の生き胆を食らうと元の体に戻るとかなんとか。あの可憐な清姫がなんてこったい。
	ちょうど権兵衛が1000人目だったのだが、老婆が拾って育てたという気立ての良い娘の小笹(吉太朗丈)が権兵衛に一目惚れして逃がしてしまう。
	小笹は権兵衛の身代わりに老婆に切られ、改心するよう老婆に哀願するも、怒り狂った老婆は聞かない。あの上品な吉弥丈がすっかり鬼婆になっている。
	そこへ現れた権兵衛が老婆に斬りつける。おい、コラ、ヒーロー! 間に合ってないぞ!!
	もう少し早く出てこれば小笹は助かったのに。(まあ、歌舞伎にはありがちなんだけど。)
	
	権兵衛が老婆と斬りあっていると、突然家が壊れ、障子を破って大蛇が登場。
	まるでどこかのお祭りに出てくるドラゴンみたいに真っ赤な大蛇で、長い尻尾を振り回す。しかも、火炎放射ときた。
	すごいぞ、大蛇! この文化財の中で火を噴くか!! おまけに尻尾が舞台からはみ出してるぞ。
	権兵衛と立ち回った後、大蛇は花道を逃げて行った。
	
	さて、またも場面は道成寺。根来衆が鐘を釣り上げようとするが、上がらない。
	なんと、さっきのドラゴン(←違)が鐘の上でとぐろを巻いていた。
	ドラゴンは赤い髪(「連獅子」の仔獅子の精のようなもふもふの毛)に金の角、青い隈取りの蛇の精(壱太郎丈)の姿になる。
	そこへ花道から仙石権兵衛が押し戻し(永楽館的に言えば、「神の鳥」の山中鹿之介)の格好で大きな竹を担いでやってきた。
	はっきり言って、別人です。
	この権兵衛だったら、小笹ちゃんは惚れたかなぁ…?
	
	そんな権兵衛をみた清姫の霊は「あなたじゃ、あなたじゃ、あなたじゃわいなぁ」と権兵衛にしなだれかかる。
	いやいや、全然似てないって! 安珍は優男だったやん!
	青隈の亡霊に迫られて、さしもの権兵衛も大弱り。
	結局、清姫の霊は仏の功徳で成仏して、すっぽんに消えていった。
	権兵衛は花道で観客にご挨拶して、鐘を担いで花道を去っていく。
	
	いや~、面白かった! 
	道成寺、実盛物語、黒塚の面白いところを混ぜただけかと思ったけど、ここまで派手にやるとは思わなかったわ。
	ストーリーがあるかというとないと思うが、舞踊あり、戦語りあり、火を噴くドラゴンありで、楽しかった。
	永楽館みたいな芝居小屋では、客席と一体になって盛り上がる、こういうお芝居が合うと思った。
	
滑稽俄安宅新関
	見ているうちに頭が混乱してきたので、出てきた順番とかうろ覚えで間違っているかもしれません。
	
	演目が発表になった時、「俳優祭かい!」と突っ込んでしまったが、これまた面白かった。
	今回は人気の口上がなかったが、それを補って余りある楽しい舞台だった。
	もし、「口上がないから」と観劇を止めた人がいたとしたら、「勿体ないことしましたね」と私は言いたい。
	
	富樫左衛門(愛之助丈)は一芸に秀でた人を召し抱えるため、新関を設けて通る人に芸をさせている。
	富樫と言っても「勧進帳」の富樫ではなく、衣装はそのまま(多分)で、白髪に白い髭のおじいちゃんになっている。
	
	まず最初にやってきたのは巡礼おつる実は駒形茂兵衛(當吉郎丈)。横綱の土俵入りを見せて去っていった。
	何を言ってるかわからないって? 私も何を見ているのかわからなかったわ。
	
	次に現れたのは通人(壱太郎丈)。
	「壱ネット但馬」の看板とともに、いつものようにグッズを紹介し(やっぱり、これがないとね)、富樫から出石の観光大使(だったかな)に任命されて、去り際には12月の顔見世と国立劇場の宣伝をして去って行った。
	
	続いて登場したのは、忠兵衛(吉太朗丈)&梅川(吉弥丈)。
	番卒(佑次郎丈&中村光丈)に「そこの親子連れ」と呼び止められ、梅川は「カップルですぅ!」と御立腹。
	富樫からは「さっきの山小屋の婆に似ている」だの「そこの老けた女」だのひどい言われようだったが、せめて美魔女と言ってくれ。
	忠兵衛は歌謡曲をバックに踊りを披露。梅川はマイクを持ってノリノリで歌を披露してくれた。
	
ここで、富樫の奥方(宗之助丈)が「皿そばができましたよ」と富樫を呼びに来て、富樫は奥へ引っ込んでしまう。
	その後やってきたのは、米沢彦八(折乃助丈)。
	小咄を披露するも、番卒の2人から「つまらん!!」「昨日と同じではないか!!」叱られ、奥方に「時間がないから許しておやり」と言われて去っていった。
	
	今度は「鯉つかみ」の小桜姫(壱太郎丈)と呉竹(鴈乃助丈)がやってきて、大衆演劇チックな芸を見せてくれた。
	「ちゃらららららららら、アン♪」という歌に合わせて踊る?呉竹と「さくらーさくらー♪」という歌とともに踊る小桜姫… 小桜姫の衣装(髪飾り)は大衆演劇みたいな感じでキラキラしてた。
	
	もうそろそろおなかいっぱい… というときに、国税局のオネエ(愛之助丈)が花道から現れた。
	あの人じゃなくて、あの人の弟だという国税局査察部統括官は、新関の通行税をごまかしているというタレこみで調査に来たそうだ。ちゃんと番卒のアソコを握るネタも披露して、関所の中に入っていった。
	奥方は「主人の若い頃にそっくり!」と喜び、襖から富樫が顔と箸を出して「変な男が来たぞ~」とか言ってた。
	
	さて、せっかくがさ入れにきたのに、この関所にはお金がない。
	なぜなら、通行税の代わりに一芸を披露して通らせるので、税金をとっていないのだ。
	残念ながら、国税局のオネエは関所は通らずに花道を戻っていった。
	
	オネエにオバサン呼ばわりされて奥方が切れていると、今度は千次郎丈率いるオールフラックス(ブではない)が登場。残念ながら、私はラグビーは全く見ていないので、多分面白さが半分くらいしかわかってない。
	愛三朗丈がトライを決めたり、愛治郎丈がトンボ返ったり、愛一朗丈のカツラがずれたり… 當史弥丈、翫政も変なメイク(失礼)だった。
	
	そこへ「ここは通さん!」と富樫がやってきて、本家本元の「勧進帳」で弁慶が四天王を押しとどめて富樫と対峙する場面のパロディが始まる。やだなぁ、そんなことしたら歌舞伎みたいじゃないですか。(←?)
	最後は奥方を中心に総踊りで、華やかに幕。
	
	久しぶりにこんなに長く感想を書くくらい面白かった。
	やはり、永楽館はよい。
	
おまけ
	
	↑「山下」さんの皿蕎麦。(永楽館の観劇チケットを見せると、10%割引のサービスが受けられる。)
	
	
	↑愛之助丈パッケージの「コウノトリ育むお米」、「湖月堂」さんの栗蒸し羊羹、「栗らんぐ」。
	
	
	↑「丹波の黒豆」「柚子さんぽう」「丹波黒豆グラッセ」。
	
	
	↑「湖月堂」さんのお饅頭3種類。