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第十四回 永楽館歌舞伎 出石永楽館
2024年11月4日(月・休)~11月11日(月)
※11日(月)は昼の部のみ1回公演
配役
昼の部(11:30開演)/夜の部(16:00開演)
一、奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)袖萩祭文
安倍貞任:六代目 片岡愛之助
貞任妻袖萩:初代 中村壱太郎
安倍宗任:四代目 中村歌之助
直方妻浜タ:初代 片岡千壽
平傔仗直方:四代目 市川九團次
八幡太郎義家:初代 片岡孝太郎
二、お目見得 口上(こうじょう)
幹部俳優出演
三、高坏(たかつき)
次郎冠者:六代目 片岡愛之助
高足売:初代 中村壱太郎
太郎冠者:四代目 中村歌之助
大名某:四代目 市川九團次
データ
料金
全席指定席:14,000円
筋書:1,500円
感想
昼の部
5日昼の部を花外から観劇。
2階席には地元の学生さんが観劇にきていた。(大向こうをかけたりして、楽しんでいた様子。皆さんお行儀が良かった。)
奥州安達原 袖萩祭文
えらい難しい演目を出してきたなぁ、というのが最初の感想。(筋書であらすじを確認するか、イヤホンガイドを聞くかしないと、初心者には話を理解するのは難しいと思われる。)
この演目は、大昔に猿之助丈(当時は亀治郎丈)の袖萩/貞任の二役早替わりで見た記憶がある。
袖萩(壱太郎丈)が、父・平傔仗直方(九團次丈)の難儀(=攫われた環宮を見つけられなければ、本日切腹)を聞きつけ、娘・お君とともに御殿の庭先にやってくる。袖萩の妹は八幡太郎義家殿(孝太郎丈)に嫁いだが、袖萩は下郎と駆け落ちして盲目になり、ぼろをまとっている。
母・浜タ(千壽丈)に「なぜ祭文を謡わぬか」と言われ、袖萩が三味線を弾きながら祭文を語るのが見どころ。
母に雪がかからないように手ぬぐいを広げるお君ちゃんが健気。
それでも許さず追い出そうとする直方に、袖萩は「夫は下郎ではなく名のある侍」と手紙を見せる。
その手紙を見た直方は袖萩の夫が敵の貞任であると知り、屋敷の奥へと引っ込んでしまう。
ショックで持病の癪を起して倒れる袖萩に、お君ちゃんが自分の着物をかける。
それに気づいて驚く袖萩に、「あんまりお前が寒かろうと…」と答えるお君ちゃんがいじらしくて泣ける。
たまらず奥から浜タが駆け出してきて、打掛を投げわたし、武士につれそう身を嘆く。この辺りは涙、涙。
奥から安倍宗任(歌之助丈)が現れて、「直方を殺せ。さもなくば、兄に代わって離縁するぞ」と袖萩に刀を渡す。
いやいや、直方切腹間近なんちゃうの?
さらに、八幡太郎義家(孝太郎丈)登場。
珍しく孝太郎丈が立ち役。さすがに上品で素敵。
宗任に通行手形を渡して去っていく。歌之助丈は若いのに結構よかったな。
直方が屋敷で切腹し、袖萩も庭先で刀を腹に突き刺す。
直方の刀の先には白梅がついていて、白梅を血で染める自分は結局平氏なのだとかなんとかいう台詞があった。
そこへいきなり公卿(愛之助丈)が現れ、袖萩のことを気にしている素振りで引っ込もうとするのを、義家が呼び止める。
実はその公卿が安倍貞任。源氏の白旗に歌を書いたから正体がわかったとかなんとか言ってたが、なんでそうなるのか正直よくわからない。
貞任はぶっ返って正体を現す。愛之助丈はなかなかに立派だった。
さすがの貞任も、すがる娘と「最期に目が開きたい…」と嘆く妻を前に涙する。
そこへ宗任が再登場。
義家を討とうとする宗任を貞任が押しとどめ、戦場で決着をつけようということで「さらば、さらば」で幕。
最後は派手で映えるけど、やっぱり内容が難しいよなぁ…
お目見得 口上
舞台上手から、孝太郎丈、歌之助丈、愛之助丈、九團次丈、壱太郎丈。
(※以下、一言一句この通りに話していたわけではなく、だいたいこんな感じのことを話していたということで、覚え間違え等あったらご容赦ください。)
まずは愛之助丈からご挨拶。
今日は出石高校(たしかそう言ってた)の皆さんがいらしてる。楽しかったですか? 聞こえないな… 楽しかったですか?
(客席の学生さんから返答あり)
こけら落としの時は夏で暑かった。
鬢付け油が溶けてきて、床山さんに「どうしましょう」と言われ、「冷蔵庫に入れたらどうか」と言ったら、本当に冷蔵庫の中に鬘を入れていい感じになった。
冷蔵庫を開けたら鬘が並んでいるのは役者人生長いが初めての体験。
秋開催になってよかったと思ったら、今度は寒かった。
私はそんな永楽館歌舞伎が大好きです。
今日は前市長の中貝さんもお見えになっている。
前市長のおかげで永楽館歌舞伎ができ、現市長にも続けていただいて感謝している。
中貝さんは本も出版されており、私も読んだ。皆さんもぜひお読みください。
歌之助丈。
芝居小屋は初めてで、出演できて嬉しい。
数年前、父(芝翫丈)が宗任を演じているとき、私は郎党役で見ていた。
いつかやってみたいと思っていたが、こんなに早く演じられるとは思わなかった。
今回は猿之助さんの澤瀉屋の型で、猿翁さんが地芝居でのやり方を取り入れたもの。
お蕎麦が大好きで、出石そばを楽しみにしていた。
愛之助お兄さんの41皿の記録を破りたい。
孝太郎丈。
(女形のこしらで)普段は女形だが、今回珍しく立ち役。
ずっと愛之助さんに「永楽館に出たい」と言っていたがなかなかかなわず、「この人(愛之助丈)、ちゃんと考えてくれてるのかな」と思っていたが、今回「立ち役なんですが出てくれますか?」と言われて出演した。
お初お目見えなのにお練りで「おかえりなさい」と言われて、後ろに伯父の秀太郎がいるのが皆さんに見えていたのかもしれない。
今回の裃は伯父の形見。(と言ってた気がするが、思い違いだったらすみません。)
何を話してもいいと言われたので…(と、福知山コンサートのチラシを取り出して)ぜひお越しください。
壱太郎丈。
近所のスーパーで買い物をすると、地元の方に声を掛けられる。
「袖萩祭文よかったわよ」と言う方と「おじいさんの扇雀時代から見てる」と言う方に同時に話しかけられた。
「(袖萩祭文の)おばあさん役、誰だったかしら?」
「嫌ねぇ。この方のおばあさんは扇千景さんじゃない」
と言われたが、おばあさんの浜タは片岡千壽さんです。
初めて出演した時は18歳で、16年前。当時小さかったお子さんがボランティアに参加してくださったりしている。
今日来ている高校生の皆さんも大人になったら戻ってきて、ぜひ参加してください。
永楽館歌舞伎を続けていくには、来ていただくだけでなく買っていただかなくてはいけません。
(コーちゃんのぬいぐるみと永楽館ストラップを取り出す。)
一家に1羽連れて帰ってください。コーちゃんが大きいという方には小さいストラップもあります。
九團次丈。
奥州安達原ではおじいさんを演じていたが、今は若ぶっている。
この後の高坏でもおじいさんを演じる。
趣味の話。
コロナの間大変で、スパイスなどを作っていた。
そこ(場外の売店)には売っていないので、「九團次 スパイス」で検索してください。
パッケージの絵(隈取みたいなの)は自分で描きました。
(突如、↓のやり取りが始まったが、なんでこんな流れになったのか記憶にない。)
九團次丈「あの頃は」 観客「ハッ!」
(中略)
九團次丈「マイケル・ジャクソンは」 観客「フォー!」
九團次丈「志村けんは」 観客「アイーン」
おあとがよろしいようで。
最後、愛之助丈が「長々とお聞きくださりありがとうございました」「隅から隅までずずずいーと…」で幕。
高坏
見終わった後の正直な感想は、「コレ、原作の小説はすごく面白いんだろうなぁ…」。
なんというか、玄宗皇帝と楊貴妃が出てくるスケールの大きな話なんだけど、あらすじを追ってるうちに終わっちゃう感じ。
大名(九團次丈)が太郎冠者(歌之助丈)、次郎冠者(愛之助丈)を連れて花見にやってくる。
次郎冠者が大名に酒を注ごうとすると、「高坏がなければ飲まない。高坏を買ってこい」と言われる。
大名と太郎冠者が花見に行ってしまうと、高足売(壱太郎丈)が花道から登場。
あれ? 松羽目物(実際は松羽目物風のオリジナルらしい)なのに花道を使うの珍しい…と思ったけど、よく考えたら勧進帳では花道を引っ込むな。
次郎冠者が上手側の通路を歩き、客席(桝席を仕切っている板の上)を通って花道にやってくる。
次郎冠者は高下駄を高坏と言いくるめられて買ってしまい、持ってきた酒を飲み酔っぱらう。
戻ってきた大名と太郎冠者に叱られるが、次郎冠者が高下駄でタップダンスを踊りだす。
そういえば、昔フラメンコ踊ってたなーと思いながら見てた。
舞踊だけどわかりやすくて楽しい演目だった。
今年も永楽館は楽しかった。
ずっと続けてほしい。
おまけ
↑↑開演前に食べた「山下」さんの皿蕎麦。
↑いろいろ買ったお土産。(城崎温泉で買った分も含む)。