TOP > データベース > 映画 > 『宮城野』フィレンツェ凱旋上映


『宮城野』フィレンツェ凱旋上映

名古屋シネマテーク


感想

客席数40の小さな映画館で、客の数は15人くらいだったかな。
私は大きな映画館でぎゅうぎゅうになって映画を見るより、こういう映画館(の一番後ろの列)で見る方が好きだ。
残念なことにパンフレットはなくて、フィレンツェ版ガイドブック(300円)しか売ってなかった。

※ネタバレ注意※

黒衣、ツケ、三味線&義太夫、立版古、紙みたいなセット等が出てきたり、突然見得をしたり、だんまりが始まったり… なんとも不思議な映画だった。
内容はダークで、後味が悪くって、救いがなさそうで、フランス映画によくあるような、見終わった後に消化不良になりそうな感じ。
でも、だからこそ、あれやこれやと考える楽しみもあるかな。私はこういう終わり方は嫌いじゃない。(むしろ、無理矢理ハッピーエンドに持っていく方がイヤだ。)
役者さんは皆素晴らしかった。

さて。
この物語の最後には、どんでん返しがある。
『すし屋』で梶原が惟盛を逃がしてやるつもりだった、と分かった時のような、衝撃のどんでん返し。{救いは、権太と違って、宮城野(毬谷友子さん)はそれを知らないこと。}
さらに、過去に戻って「実はこうだった」と種明かしする場面があるので、ラストを見てから「じゃあ、あの場面は矢太郎(愛之助丈)の作り話…?」とワケがわからなくなったりもした。(←アホ)
ワケがわからなくなりつつも、あやふやな記憶を元にいろいろと考えてみた。

まず、黒幕。
写楽(國村隼さん)の孫娘・おかよ(佐津川愛美さん)が黒幕で、おかよが矢太郎をそそのかしたんじゃないかなぁ。
一見、純情可憐なお嬢さんに見えるが、腹に一物ありそうな、「あー、こういう女がしれっとした顔で周りを蹴落として、男をだまくらかすんだよね〜」というタイプ。
宮城野に対して本性を垣間見せる場面は、「ああ、やっぱりね」という感じ。

そして、謎。
矢太郎は本当におかよが好きだったのか?(あまり、惚れているようには見えなかった。)
少なくとも、宮城野の絵を描いている時点では、宮城野のことを好きだったように思える。
また、「お前の裸を描かせてくれ」と言う場面では、まだ宮城野への心が残っているように思えた。
矢太郎はなぜ宮城野に嘘をついたのか?(嘘をつく必要があったのか?)
それとも、宮城野が身代わりに死ぬところまで想定していたのか?

宮城野は真実を知らずに死んだのか?
それとも、全て分かった上で死んでいったのか?
裏切られても捨てられても、死んでもいいほど矢太郎が好きだったのか?
惚れた男のことを考えながら死んでいったのだから、それはそれで幸せだったのかもしれない。

矢太郎が「これ(宮城野@役者絵)以上のものは描けないだろう」と言われる場面。
まさしく、悪魔に魂(=絵)を売ったんだなぁ、と思った。

それにしても。
あのラストからすると、写楽の死体は見つからなかったはずだが、それでも宮城野は死刑になるのか…?
どんでん返しのインパクトは強いけど、なんかこー、釈然としない。
何でもかんでもひっくり返せばいいってものでもないよなぁ…

エンドロールに「口上 坂東薪車」の文字を発見。
いつ口上なんかあったんだ!? 気付かなかった。
家に帰って調べてみたら、「声の出演」ということらしい。
言われて見れば、どこかで聞いたことがある声が聞こえてきた気がしなくもないが…

少し遅いランチは、ハロッズのスコーンセット。
『宮城野』についてあれやこれやと考えながら、美味しいスコーンと紅茶を味わった。(クロテッドクリームが美味しいのだ!)
うーん… もう1回観るべきか…?
原作も読んでみたいなぁ。
そうそう、愛之助丈初の(女性との)ラブシーンは、そんなにたいしたことなかったな(笑)。