エド×アル(の、つもり)です。疑似自慰行為で兄さんがちょっと下品です(え?いつもの事だって?)。
原作17巻あたりの、牢屋暮らしの時のお話です。

「ふああ……うう、今日もさみぃ……」
エドワードが硬い板張りのベッドの上で目を覚ますのは、これで3日目だった。
北部国境にあるブリッグズ砦へと赴き、故あって砦の女主人たるアームストロング少将に捕縛されて以来、彼とその弟であるアルフォンスの身柄は彼女の手に委ねられ、そして彼ら兄弟に降り掛かった密偵の疑いが晴れるまではブリッグズ砦内にある拘置所に置かれる事となったのだが、数日を牢屋の中で過ごすうちにエドワードはある困った問題に直面していた。
この日の朝もエドワードは目を覚ましてうすっぺらな毛布の下でもぞもぞと身体を動かしていたのだが、錬金術の発動を封じる為に拘束された両腕が衣服の下のある部位に触れ、その感触に思わずため息を漏らさざるを得なかったのだ。
(ヤバい……カッチカチだぜ……)
その部位を刺激しないように手枷ごと両腕を持ち上げ、首を捻って弟のアルフォンスの方に視線を遣った。アルフォンスはこのブリッグズ砦で働く者が差し入れてくれた2日前の新聞を呼んでいたのだが、エドワードの様子にすぐさま反応を示し、鋼鉄で出来た鎧の巨体をエドワードの寝ているベッドの方へと寄せて来てどうしたのかと囁いた。
「おはよう。よく眠れた?」
「ん……まあ、な……それより、ちょっと困った事になった」
「え?どうかしたの?」
両手で毛布を持ち上げたまま、渋い表情でそう言う兄に、アルフォンスは更に鎧の頭部を寄せて尋ねる。すると、兄はうーんと唸り声を上げ、しばらくの後にその困った状況を説明し始めたのだった。
「……ここ何日間か抜いてなかったから、もう我慢ならねえ感じになっちまった……悪いけど、便所の前に立って奴らから見えないようにしていてくれねえかな?」
「……え……それって……」
兄の言葉が一瞬理解出来なかったかのようなアルフォンスは口ごもりながらエドワードの顔を見る。そんなエドワードは困惑こそしているようだったが、決してふざけているのではないと訴えるかのように口を真一文字に結んでアルフォンスを見つめていた。
「それって……ここでするって事?」
「そうだ。このまま出さなかったら、今日は何とかなっても明日の朝は絶対ヤバい。寝返り打っただけで出る。どばっと出るな。間違いない」
「えええっ!」
兄が一体何を訴えているのかを知り、アルフォンスは思わず素っ頓狂な高い声をあげてしまう。するとその声に見張りの軍人が兄弟の様子を見に近くに寄って来てしまった。
「ん?何かあったのか?」
「いっ、いいえっ!何でもないです!」
ストーブの傍で暖をとっていたせいで顔が赤らんでいる軍人に大慌てで返事をしたアルフォンスはその軍人がまたストーブの傍に戻って行ったのを見届けてからエドワードへまた顔を寄せて話し掛けた。
「……我慢出来ないの?直接見えなくたって見張りの軍人さんもいるんだよ?」
しかし、エドワードはそんな弟の言葉に首を横に振って応じようとはしないばかりか、逆に自分がどんなに切羽詰まった状況にあるかを語り出したのだった。
「あのなあ、その前に抜いたのは4日前だぞ?この俺が未だかつて3日間以上抜かずにいた事があったか?」
「毎日しているのは知っているけど、我慢出来ないとか、そんなの知ったこっちゃないよ」
「知ったこっちゃないって……冷たいぞ弟よ!この弾けるような若い肉体が何日も欲望を発散させずにいるなんて、どう考えても異常じゃねえか!いいか、このまま抜かずにいたらどうなるか……明日の朝には俺のパンツの中は大変な事になっちまうんだぞ。そのまま乾いてぱりぱりになってくれればいいが、発射した量が多過ぎて外にまで漏れ出してみろ、お前はお漏らし国家錬金術師の弟だと言う汚名を着せられて皆の笑い者になっちまうんだ!」
「その前に兄さんが笑い者になるんじゃない?」
「どうでもいいから協力しろ!」
要するに、エドワードは数日間の拘禁で溜まった性欲を人目も憚らず発散させる為、その手伝いをアルフォンスにさせようとしていたのだった。
男兄弟で年も1つしか違わない彼らは元々なんでも明け透けに様々な事を話す間柄だった。
特にここ数年の間はエドワードの身体が大人の男性としての成長を遂げつつあったので、その様子に興味を持ったアルフォンスがエドワードへどんな風に身体が変化するのかを教えてくれとせがむようになっていた。
最初は恥ずかしがって誤魔化しながら訥々と話をするだけだったエドワードだが、本来の陽気で勝ち気な性格が災いしてか、いつしか行為そのものを見せる事はなくとも、どんな風に触れれば性器がどのように反応するのか、そしてどんな心地よさがあるのかをアルフォンスへ話して聞かせるようになっていたのだった。
そんな具合で、最近はエドワードのその手の話にはすっかり慣れてしまったアルフォンスだったのだが、この日の兄の言動には流石に呆れてしまった。
エドワード達が収監されている部屋には二人のベッドと、そしてその一番奥には便所と簡単な手洗い場があるのだが、便所は板一枚で便器の部分が表側から見えないように遮られているだけだった。なので、用足しといったどうしても必要な事はともかく、性欲を発散させる為の自慰行為など、そんな周囲から丸見えの場所で行おうとしている兄の気持ちがまるきり理解出来なかったのだ。
ベッドから起き上がったエドワードは両手を拘束されたまま部屋の奥に向かうと、板で仕切られたその先の便器の前に立った。
「うわー……ズボンを突き破りそうな勢いだぜ!おい、アル、見てみろって!」
エドワードの声に渋々傍に近寄って来たアルフォンスはその部分に目をやる。すると兄の言う通りにズボンの前開きの部分が張り裂けそうな勢いで持ち上がっていた。
「っ……このっ、手が自由に動かせねーし、おっ立ってるしで出てこねえ……うおっと……よし!」
手枷をはめたままの不自由な指先でもぞもぞと股間をまさぐるエドワードと、嫌々ながらその姿を見つめていたアルフォンスだったが、苦心して引っ張り出されたエドワードの性器がぶるりと左右に揺れる様を目にした途端、アルフォンスもついその光景に目を奪われてしまった。
「ふひー、きつかったなー。じゃあアル、その辺に立って表側から見えないようにしていてくれ!」
「う、うん……早く済ませてね……」
アルフォンスは鉄格子の向こう側に注意を向けながらエドワードへ生返事をするが、内心では兄がどうやって自慰を行うのかをじっくりと観察したい気持ちが大きく膨らんでいた。つい先刻までは明け透け過ぎる兄に呆れていたのに、まるで別の生き物のように揺れ動く兄の性器を目にした途端、どうにも興味が止まらなくなってしまったのだ。
人体錬成の禁忌を犯し、その代償として自らの肉体を失ったアルフォンスは第二次性徴によってもたらされる自身の身体の変化を知らない。眠りを必要としない鋼鉄の身体である事を利用して様々な分野の本を読みあさり、知識だけは身につけていたものの、自分の肉体がないが故にこうした生身の肉体の反応を目にする機会は貴重だった。
しばらくはもそもそと身体を揺らしている兄を横目でちらちらと気にしていたアルフォンスだったが、そのうち兄が小声で自分を呼ぶのを耳にした。
「……おい、ちょっと……こっち向け」
「な、なに?」
アルフォンスが慌ててエドワードの方に向き直りその股間に視線を向けると、依然としてエドワードの性器は天を突き勢いを失ってはいなかった。しかし手枷の先に突き出た生身の指先と機械鎧の指先はぷらぷらと中をむなしく揺れ動いているのみだったのだ。
「ゆゆしき事態だ、弟よ!手枷が邪魔でシコれない!」
手枷を手首につけられていたエドワードは指先を使って自慰行為を行おうと試みたのだが、勃起している性器の角度やら立った姿勢やら様々な要因が重なって行為に及べない状況になってしまっていたのだ。
「肘が自由に動かねえ……かーっ、イライラするっ!!」
行為に及べないいら立ちを露にするエドワードに向かってアルフォンスが小声で尋ねた。
「なんとかできないの?」
「出来ねえこともないけど……時間が掛かる。いつもと同じように握れねえと調子が狂うんだよな。ほら、俺ってデリケートだから」
「人前でこんな事をするような人をデリケートとは呼ばないよ、兄さん」
エドワードの性器を二人で見つめながらあれやこれやと言い合ったが、やがてエドワードが言った言葉にアルフォンスは飛び上がらんばかりに驚く事となったのだった。
「よし!こうなったらお前が俺のナニをシコれ!」
「ひいいーっ!ぼ、ボクがっ?」
巨体をよじりその場から逃げようとする素振りを見せたアルフォンスに、エドワードがじろりと睨みを利かせながら話し始めた。
「ガチガチにおっ立ったままじゃションベンも出せねえんだ。けど、実はさっきからションベンも出したくて仕方がない……もし、お前が協力してくれなかったら、俺はションベンが出せなくて病気になっちまうかもしれねえが、お前はそれでもいいのか?」
実のところ、勃起したままでも小用は足せるし(苦労はするが)、勃起自体もアルフォンスの冷えきった鎧に性器をぴたりとつければすぐにその熱を奪い取って萎えてしまうのだが、エドワードはアルフォンスがその事に気がつかない事を利用してなんとか自慰を済ませてしまおうと画策しているのだ。
アルフォンスがエドワードの性器に興味を示したように、エドワードもまた自分以外の人の手での刺激がどういったものであるかに興味が芽生えていたのだ。
「さあ、早いとこ済ましちまおうぜ」
手枷をはめられた両手を頭の上にまで持ち上げたエドワードは腰を前方に突き出すようにしながらアルフォンスに向かって言った。
「頼むから、早くこいつをすっきりさせてくれ!」
「ええええ……でも、そんな……」
(2につづく)

 


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