「異形装甲 兜童子」後編



都築綾太より1歳下の弟、都築新斗がサッカーを始めたのは小3の頃である。
1993年のJリーグ開幕まで「プロスポーツ=野球」を意味した当時の日本では、サッカーは野球ほどポピュラーではなかったものの、
週刊少年ジャンプに連載された漫画の影響でサッカーに目覚めた少年も多いという。
新斗もその一人だが、最初はキング・カズへの憧れよりは、自分の健康のために始めたという側面が強かった。

ママさんバレーで活躍する母譲りなのか、兄の綾太も運動神経は良いほうだが、
兄に増して筋肉質な身体を持つ新斗に素質がないはずはなく、地元で名門のサッカー少年団ですぐに頭角を現した。
ちょうどそれは綾太のタレントデビューと期を同じくした。
綾太は地元ローカル局の番組のほか、広告、TVコマーシャルなどを通して知名度が上昇し、
1年足らずの間に隣県も含め、その顔を見たことのない人がいないまでになってしまった。

新斗にとって煩わしいのは、生まれつき兄と同じ顔を持っているだけに、ことあるたびに兄と比較されてしまうことだ。

「あれ、都築綾太の弟だよ」と。

「綾太が病気のときは新斗が代わりにテレビに出演している」などという、
根も葉もない影武者説が出るほどに顔が似ているのだから、宿命的に仕方ないとも言えるが、
逆に「しょせん弟でしょ?」という冷めた視線も感じていた。

このように周囲の多様な視線が新斗の心理に及ぼす影響は複雑なものだった。
兄の顔に泥を塗るわけにはいかない一方で、兄に負けたくない、という対抗心も湧き上がってきたのだ。
いつか兄より有名になってやる、と。

サッカーだけではない。
多忙なタレント生活にもかかわらず、学校の成績も高水準をキープしている兄。
「綾太は賢いけど弟はバカだ」なんて言われたくないから、サッカーで疲れた後も勉強を頑張ってきた。

都築綾太の弟の新斗、なのではない。
都築新斗の兄が綾太、と言われるようになりたかった。

なのに、自分では意識していないのに最近よく言われる。

「顔だけでなく、しぐさや物言いにいたるまで兄そっくりだ」と。

周囲は明らかに、新斗の中に綾太を見ていた。
新斗もまた、そういう視線を意識してかどうかは分からないが、兄を演じていたのかも知れぬ。
むしろ心の深層では、兄になりたかったのではないだろうか?
新斗の心の中には、いつも綾太が立ちはだかっていた。

綾太と新斗を平等に見てくれたのは両親だけだった。
母は仕事に向かう綾太を、まるで塾へでも行くかのように淡々と送り出したし、
父は綾太のいたずらを遠慮なく叱りつけた。
綾太も、自分が有名になったからと言って新斗に接する態度を変えるような事はなかった。
多忙な生活のせいで少し一緒にいる時間が減ったけれど、家にいるときは、
おかげで自分の家族が人気タレントだと意識したことはあまりない。





サッカーを通し、決して楽しいことばかりだったわけではない。

小4の頃。
小6の先輩数人に「入団1年で選抜チームのレギュラーなんて生意気だぞ」と難癖をつけられた。
練習後、体育倉庫の裏に呼び出された新斗。

「兄がちょっと有名だからっていい気になりやがって」

縄で縛られ、腹を何度も蹴られた。

「はっ!あんっ・・・!うあ!」

美しい顔をしかめて、高くハスキーな声で喘ぐ新斗。
小6のならず者どもは新斗の頬を掴むと、澄んだ二重瞼を覗き込んだ。

「こうして見ると、女みたいにかわいいじゃねえか」

「・・・本当は女なんじゃねえの?」

ばん!と、靴の爪先でおち◎ちんを蹴られた。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!」

股間を押さえ、声の出ない新斗のハーフパンツを脱がせる。

「ふぅん、これが都築綾太のヌードか」

シャツから覗くへそ。細い腰に、小麦色の肌が汗で光ってる。
前を押さえているからおち○ちんは見えないが、日焼けしていない締まった尻が露わになる。
細く高い鼻から鼻水を垂らしながら泣き叫ぶ新斗は美少女だ。

「くそっ、勃ってきちゃったぜ・・・おい!少し静かにしろ!」

ならず者の指が新斗の尻に突っ込まれた。あまりにスムーズに入ってしまったため、ズボッと深く刺さってしまった。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ痛い〜〜〜〜痛い〜〜〜〜〜!!!」

新斗の悲鳴を聞いた監督が駆けつけたから場は収まったものの、菊門から血が出て病院に運ばれる騒ぎになった。
幸いすぐに血は止まり何ともなかったが、精神的に克服するまでの数週間はグラウンドに立てなかった。



また、小5のある日。
元社会人サッカー選手をコーチとして招き、指導に来た日のこと。

「新斗君と言ったっけ?君はなかなかいいものを持っているね」

新斗だけ居残り練習をさせられることになった。
新斗の身体を舐め回すように見つめるコーチは、新斗を薄暗い体育用具倉庫の中に招き、言った。

「筋肉の動きをじかに見たいんだけど、ちょっと裸になってくれないか」

「今ですか?」

「そうだ」

理不尽な要求に納得がいかないながらも、ユニフォームとハーフパンツを脱ぐ新斗。
埃臭い体育倉庫の中に、少年のきれいな肌から揮発したいい匂いが充満する。
発育途上の締まった肉体に、コーチの眼光が一層鋭くなる。

「こ・・・これが、都築綾太の弟か!そっくりだな!・・・ハァハァ、うまそうな肉だ」

屈強で毛むくじゃらの腕が、新斗の細い胴に絡みつき、捉える。

「やっ・・・何するの?やめてくださいよ」

「おじさんがマッサージしてあげよう・・・筋肉をほぐすんだ」

新斗の汗の滴る若い胸肉を、腹筋を、ざらついた舌が舐め回す。

「ピチャッピチュッ・・・ん・・・しょっぱい」

コーチの怒り立った下半身が足に当たってる。

このおじさん、変だ!
たすけて・・・!

両手で尻肉をフトモモを揉みほぐしながら、舌はだんだん腰を這って下降し、
包茎おち◎ちんの先を吸うようにキスした後、
かわいいた○たまをころころ舌で転がすように弄ぶ。ちゅぱちゅぱ・・・くちゅっ。

「騒ぐんじゃないぞ? 騒いだら・・・おち◎ちん、噛んじゃうぞ?」

おっさんの押し殺した声。
何か逃げる方法は?

その時、1年前に先輩部員に蹴られた、あの痛みを思い出した。
・・・そうだ!

新斗は膝でコーチの脂ぎった顔面を蹴り上げた。

「ぐへっ・・・痛あぁぁぁあい・・・」

ヒゲがちくちくと肌を刺す感触。
新斗のおち◎ちんの香りと玉袋の味を楽しんでいたコーチは鼻血を出して倒れこむ。
間髪入れずに、今度はコーチの股間ゴール目がけシュートをぶちかました。
泡を吐いて倒れるコーチを尻目に、急いで逃げ出す新斗。走りながらパンツを履く。

「このままで済むと思うな! また何度でも捕まえてやる! 」

ドスのきいた台詞を背後に聞きながら、一目散に家に逃げ帰った。

その後はただ怖くて、眠れぬ夜が続いた。
学校に行くときも、学校の中でも、家でも・・・、コーチに監視されているような気がした。
けど、すぐに心配は消えた。
数日後、そのコーチは別の未成年者に淫らな行為をした罪で逮捕されたのである。
あれ以来、コーチは二度とこの町には現れなかった。






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