「異形装甲 兜童子」前編



東京都心からローカル線で一時間ほどの地方都市、T市。

この街には昔から、災いをもたらす悪魔が棲むと言われている。
何度滅ぼされても蘇る、半ば不死身の生命体。
その化身は獣人であったり、また蛸のような触手を無数に持つ化け物であったりと、
出現する時々によって異なるとされる。

悪魔が現れるたびに、「鬼の腕輪」に選ばれし男の子が、
正義の使者として悪魔に立ち向かい封印する。
そして何年か後に、また悪魔が復活し災いをもたらす・・・。
そんな歴史が延々と繰り返され続けている。

悪魔が復活する周期に規則性があるわけではない。
100年以上現れなかったこともあるし、最後に封印されてからわずか数年で復活したこともある。

そもそも悪魔とは、平安時代末期の頃、悪意ある陰陽師が異世界から召還したのが始まりと言われている。
また正義の使者とは、悪魔と戦う戦士であり、全身を異形の甲冑で固めた男子のことだ。
文献に記録として残っている中で古いものとしては、室町時代末期、ある戦国大名が悪魔の存在を知り、
征伐を試みた際に、背に羽根の生えた甲冑と、二本のツノのある兜を身にまとった少年が現れたという記述がある。
また江戸時代には、この地域を治めていた藩主の子が戦ったらしいという記録も残っている。

T市街の北西、最も高い山の奥には、昔から街の守り神として、銀色に輝く「鬼の腕輪」が祭られている。
緑色に輝く小さな宝玉が埋め込まれており、サイズ・形状的には腕輪というよりむしろ、
手首に引っかけるリストバンドと呼んだほうがいいかもしれない。
悪魔現れ災いもたらすとき、腕輪自らがその主を選び、悪魔と戦う戦士に生まれ変わらせると言われている。
腕輪の由来については諸説あり、
インドで発掘され、中国、朝鮮を経て日本に渡ってきたという渡来説、
UFOで飛来した親切な異星人がくれたという宇宙人説、
平賀源内の祖先にあたる人物が開発したという眉つば物の発明説など・・・
確かなことは分かっていない。

人々は、悪魔と戦うために腕輪に選ばれた子供のことを「兜童子」と呼んだ。





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