『美少年救世主伝説・ミーシャ』


【プロローグ】

西暦204X年。世界は15年にわたる戦乱の直中から抜け出せずにいた。
経済崩壊、環境破壊、世界戦争、異常気象による干ばつ、資源の枯渇、内戦、飢餓…
あらゆる天災・人災が一度に押し寄せたような状況下、かつての大国の権威は失墜。
富と繁栄を誇った都市は荒廃し、生き残りし人類も、ニヒルな廃頽に蝕まれた多くの者は、
暴力、麻薬、セックス・・・に明け暮れた。
法の秩序は著しく弱体化し、無政府状態となった街は野蛮、
そして先の見通せない絶望が支配していた。

しかし乱世にあって、時に歴史は救世主を生み落とす。
民衆の叫びにこたえた必然なのか、あるいは単に天の気まぐれなのかは分からぬ。
今わたしのすぐ前を歩く少年もそんな、大いなる希望の一途に思えた。

年齢は中学生なりたてぐらい。
埃と泥に汚れてはいるが、セミショートのブロンド髪を風に靡かせ、なめらかで透き通るような白い肌を持っている。
その顔は高く細い鼻、青く深く澄み通った瞳、切れ長の中にどこかしら憂いを宿しているような二重瞼、
顎の尖った、かなりの美少年だ。
ただ、最初ロボットかと思ったくらい表情に乏しい。

ぱっと見は細身だが、発育途上の筋肉を宿した肩と胸、腿、うっすら割れた腹筋。
普段はぼろぼろのマントに身を包んでいたが、カーキ色の布を一枚めくれば、
綺麗なみずみずしい素肌が露出し、全身にはあたかもSM拘束具と見紛うコスチュームを身につけていた。

チェーンの垂れ下がった黒い革製の首輪。手首には手枷。
胸にはつるぺたの乳首を覆う小さなブラジャーのように巻きついた、鋲の埋め込まれたラバーバンド。
腕、腿にはM字開脚枷のような幅広の革の輪が食い込み、両手はラバーグローブをつけている。
へその下、女性用貞操帯の如く細い腰をカバーし、性器を守る革のT型プロテクターパンツ。
そこを根元に伸びる細長い腿。脛から下を覆うエナメルのブーツ。
ただ、肉体の自由を奪うための金具はなく、かわりにナイフ、棒状手裏剣などの小型武器が引っ掛けられている。
白い肌と妖しく黒光りする革、そして銀色に輝く鋲・金具の3色のコントラストが、攻撃的な艶かしさを見せつけている。

「おれから離れずついてきてよ、おっさん」

下がりかけの澄んだボーイアルトが物静かな口調で言う。
チャラチャラと金属のこすれる音を立て、革の食い込んだ肉付きの小さな、 きゅっと締まった尻を振って歩く男の子。
わたしを助けてくれて以来、行動を共にしていた。





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