歴史は気まぐれにも救世主を生む。
この不運な少年も後の歴史を大きく動かした英雄であった。
けれども天より与えられし歴史的役割を終えた直後、渇いた大地の土となって消えた。

砂漠の中の泉が枯渇して消えるように、人々から忘れ去られれば英雄は滅ぶ。
後世出版されたリチャード大統領の回想録に、たった数行だけミーシャに関すると思われる記述が登場する。

「ある市民を助けた月夜の晩、余の命を救ってくれた男の子がいた。
 余はそれより前にも後にも、あれほど美しい人間を見たことはなかった」と。

大空に散らばる星の数ほどもいる、忘れ去られた勇者たち。その一人の一瞬のきらめきであった。







2009年10月


Nomark





この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・事件等すべて架空の物です。





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