心もよう初七日 気持ちが通じあってから七日が経つ。 歳三と宗次が、互いの距離を測り合い、密かな戦さをしていたのもそんな頃で。 「宗次、俺の事どう思ってる」 「・・どう思ってると思う」 最近歳三の機嫌がすこぶる悪い。 こんな会話が始まるのも、おかしなことではなかった。 好きだと七日前に言ったじゃないか、と宗次は思うのだが、 歳三にすれば、やたら飄々としている宗次の真意が掴みきれないでやきもきしていた。 「どう思っていると思う・・って、なんで問いに問いで返すんだよ。なんだよそれ」 「なんだよも何も。そんくらい・・」 聞かなくても、 (分からないもんか?) 宗次は宗次でやきもきしている。 分からないから、というより不安になっているから歳三は聞いているのだが、 好きだと。 本当に好きな相手に、 (そんなに何度も告白できるほど、あんたと違って場数踏んでないんだよ) 宗次は内心で溜息をついた。 宗次にとっては、歳三が初恋であり。 いくら昔から歳三に連れられて女と散々に遊んでいようが、恋そのものに関してはまったくの初心者だった。 (どうしろっていうんだよ) 「宗次!」 いくら待っても、はっきり返事をしようとしない宗次に、歳三のほうは最悪の機嫌になってゆく。 そうなると宗次も、ますます、好きだなどとあっけらかんに言える状態ではなくなってゆくのだが、 本気の恋を数度はしてきて愛の交し合いに慣れている歳三にとっては、そんな宗次の初こころが理解できるはずもなく。 「おまえ・・俺のことも、本当は好きでもなんでもなしに・・ただの、」 (一時の同情か何か、かよ?!) 「歳さん・・!」 そして声にならない悲鳴を心に叫び、駆け出した歳三を、宗次の声がむなしく追った。 最初に告白したのは歳三のほうだ。 言ってしまったまま不安気に宗次を見上げる歳三の前、 すぐに嬉しそうにその浅黒い顔をくしゃくしゃにして自分も歳三を好きだったと宗次は返してくれた、だから、想い合ってるのだと。歳三は信じていた。 だが、好きだと言ってくれたのはその時だけで。 今までと大して変わらない接し方にも、口付けひとつしてこようとしない消極的な態度にも、「好き」が表れているようには到底感じられず。 歳三は段々と、不機嫌になっていった。 そして今日。 (俺のことどう思ってると聞いても、答えてもこなかった・・!) 歳三は息を切らせて、土手に倒れ込んだ。 走ってきた体を仰向けに、歳三は深く息を吐きながら、拳を草に叩き付けていた。 「くそ・・っ」 (今までおめえが女にならいくらでも甘い言葉かけてたのを、俺が知らないとでも思ってんのかよ!) どうして俺には、そういう言葉の欠片さえ言ってこない。 どうして好きのひとことも言わない、態度もそっけない、 どうしてだ。どうして・・ 気づけば、歳三は泣き出していた。 己の頬に湿りを感じ、歳三は乱暴に滴を手の甲で払いのけた。 「宗次の馬鹿野郎・・・!!」 さらに拳を叩きつけ。 「おまえなんか大嫌いだ、大馬鹿野郎!!」 歳三の叫んだ声に木霊するように、さわさわと土手を駆け抜けた風が。つと歳三の湿った頬を撫でた。 「大嫌いだ・・・!」 両手の甲を顔の上に交差し、歳三は頬を伝う涙を今一度払い。 「大好きだ・・」 ばかやろう。 小さく、呟いた。 「・・歳さん」 ふと重なるように歳三の頬を撫でた手に、 歳三は驚いて飛び起きようとした。が、その手に肩をそっと押し留められ、 「・・宗次」 せめて顔をもたげた歳三の視線の先に、 いつのまにか宗次が。歳三の隣へ片膝をついて歳三を見下ろしていた。 「おまえ、いつから」 「宗次の馬鹿野郎、のあたりから追いついた」 全部聞いてたんじゃねえか、と歳三が紅くなるのへ、宗次が困ったように今一度歳三の頬を撫でた。 「ごめん。・・好きだよ、歳さん」 好きだと、言えないくらい好きだ。 「・・え」 腰を浮かせた歳三に、宗次が制するように静かに覆い被さった。 「宗・・んっ」 啄ばむ様に、 「この七日間、俺どう接したらいいか分からなくなってた。おかげで、こんなこともできなかったなんて信じる?」 歳三の唇を攫った宗次の。 首もとへと、 歳三の伸ばした手が下から絡んで。 「・・信じてやる。」 宗次を引き寄せた歳三の、 唇を。宗次は今一度こんどは深く、攫った。 |
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葵さまコメント: ぎゃ〜お〜!! ありえないほど初々しき二人を書いてしまった(><;)赤 拍手リクとして、江戸で付き合ってる二人。イケズで意地悪な総司に、時々優しくされてメロメロな歳さんvで頂きました。 じゃ・・・・なぁにかが違う(T_T)ごごごめんなさい〜っ、そして素敵なリクエストを有難うございました!!(逃マス〜 管理人コメント: 予想外に初々しい二人にメロメロですv こんな時もあったのね、二人には♪ 本当に素敵なお話ありがとうございました! |
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