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雪が降る。 しんしんと、雪が舞い落ちる。 音もなく、総てを真っ白に塗り込めて。 何も見えぬ。 ただ、白い雪が、窓を覆い。 鏡のように、中を映すだけ。 映る人影は、二つ。 ゆらゆらと、揺らめく焔。 それだけが、二人を照らす光。 遠くに映るのは、長い髪を後ろで束ねて。 優しい微笑を、浮かべて。 何も見えぬ外を眺めている人を、見ている。 窓に近き方は、短く肩で切られた髪を持ち。 穏やかな笑みを、浮かべて。 外を見るような素振りで、己を見ている人を見て。 他に何もない。 何もいらない、真っ白な帳の中。 二人だけの、閉じられた世界。 二人寄り添い。 片時も離れず、片時も放さず。 死すら、二人を別つことなく。 祝福の接吻を。 共に在れる事の喜びを。 ただ、胸の内の暖かさに変えて。 夢に眠る。 至福の腕(かいな)に、抱(いだ)かれて。 これが、奇跡。 |
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