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宴の喧騒も止んだ夜半、歳三が神々しく輝く月の光を背に現れた。 「待たせたな」 「歳ざん」 布団の上にまんじりともせず座っていた総司は、現れた歳三に嬉しそうに顔をあげた。 それを見て満足そうに微笑むと、片手に酒器を持った歳三は、もう片方で後ろ手にぴしゃりと障子を閉めた。 あたかも外界とを隔てるように。 酒器をそっと置き、傍らに膝を折った歳三を、総司は掻き抱かんばかりにして、歳三が苦しくなるほど抱き締めた。 「おい……」 歳三が抗議の声を上げ引き離そうと手を掛けて、総司の躯ががたがたと震えているの気付いた。 「総司?」 「…………」 無言のままの総司の顔を見ようと頬に手を添えたが、総司は嫌々と頭を振って歳三に縋りついたままで、仕方がなく歳三は総司が満足するまでじっと我慢をした。 「ごめん。来てくれないかもしれないって、思っていたから……」 ようやく顔を上げた総司は、にっこりと晴れ晴れしい笑みを見せた。 歳三が総司の元へ今宵来るなら、それは想いを受け止めたと言うこと。 だが、もしも来なければ、すっぱり諦めようと総司は思っていた。 それでも歳三への想いは、消えることはないだろうけど、それ以上自分が強請ることは、歳三を苦しめることになるだろうから。 そう思いながらも、歳三が来ると信じて待っていた時間は、永遠に感じられるほどに長かったのだ。 来てくれた喜びが、躯を震わすほどに。 「来てくれて、嬉しい」 今度は逆に総司は歳三の頬に手を添えて、恭しいぐらいにそっと唇に触れた。 「本当に、いいの?」 唇が離れると、この期に及んでそんなことを聞く総司に、歳三は苦笑って。 「良くなきゃ、来ねぇよ。こんなものまで持ってな」 歳三が持ってきた酒器は、契りを交わすための道具であることに、総司はやっと気付いた。 総司から身を離し、持ってきたたった一つの盃に酒を注いで、歳三は先に一口飲み、まだ酒の入っている盃を総司に手渡した。 受け取りながらも総司は、手の中の盃と歳三を代わる代わる見比べて、 「いい、の?」 と、総司は震える声で小さく囁いた。 「ああ、いいんだ。覚悟を決めた。お前から離れるなんて、そんな芸当は出来ないしな」 慈しむような微笑を浮かべて、歳三は総司を安心させてやった。 総司はほっとしたように躯の強張りを解いて、安堵の笑みを満面に浮かべた。 ただ、それでも歳三は、 「けどな、総司。それを飲んだら、本当に引き返せねぇぞ。俺はお前を何があっても手放せねぇ。それでもいいんだな?」 と、戒めるように念押しをせずにはいられなかった。 「うん」 総司は大きく頷いて、居住まいを正してきちんと正座をし、恭しく両手で酒を押し戴いた。 酒を飲み干す総司のまだ幼さの残る喉の隆起を、歳三も居を正して見ていた。 静かに盃を置いた総司に、どちらからともなく手が差し出されて、初めて明確な意思を持って二人の唇が合わされた。 まずは啄ばむように、次は唇を開き舌を差込み、次第に深く絡めあい。それこそ、息も継げぬほどに深く。 そうしながら、二人の手は互いの躯を這い弄りあって、互いを隔てるものを取り去ろうと、帯に手を掛けた。 けれど口付けを交わしたままの慣れぬ体勢では、なかなか容易に帯は解けず、それはじれったくなるほどだった。 ようよう帯を解き終え傍らに放り、着物を肌蹴て開いた前から直にその肌に触れ、滑らかな感触を覚え込むように撫でた。 総司が撫でていた手が、歳三の胸の飾りに何気なく触れたとき、歳三の躯がぴくりと跳ねて、それに釣られるように総司は歳三を布団の上に押し倒した。 上から覆い被さりながら、隈なく歳三の躯に手を這わしてゆく。 その度にくすぐったいのか、ぴくりぴくりと跳ねる歳三が愛しくて、総司は堪らない。 歳三は手を総司の背に回したままだったが、その手のひらに伝わる感触が総司を男だと認識させていた。 滑らかな肌だが手を拒むような張りのある弾力は、決して女の柔らかさはない。 総司が触れる自分の肌も同じだろうと歳三は思ったが、それでも総司は良いのだろうかと頭の片隅にそんな考えがふと浮かんだ。 歳三の上半身をさ迷っていた総司の手が、下へ下へと降りていき、そこに触れるか触れないかその寸前でぴたりと止まった。 やっと唇を離した総司が顔を覗き込むのを、歳三は真っ直ぐ見詰め返した。 「どうした?」 「…………」 無言のまま見詰めている総司に、促すように歳三はもう一度聞いた。 「ん? どうしたんだ、いったい」 穏やかな歳三の笑みに勇気付けられたかのように、それでも恐る恐る総司は問い掛けた。 「ねぇ? このままだと、俺が歳さんを抱いてしまうよ? いいの?」 「いやか? おめぇ」 「ううん。いやじゃない。いやじゃないよ」 ぷるぷると総司は首を振って、歳三の言葉を否定した。 「けど、歳さんは? 歳さんは俺を抱きたくない?」 しかし、それが一番の懸念事だと、総司は問う。 男ならば抱かれるより、抱きたいと思うのが自然ではないかと。愛しい、欲しい、と思うならば。 「…………」 「ねぇ?」 答えを返さない歳三に、総司は重ねて訳を聞く。 「馬鹿。そんなわけあるか」 「じゃあ、どうして?」 何より歳三は、総司より年上だ。年上ならば、今と立場が逆であるのが、普通だということぐらい総司にもわかる。 だから、唯々諾々と従おうとしていることに、総司は不思議に思ったのだ。 歳三が望むならば、総司にはどっちでもいいことだった。 ただ、歳三より総司の方が積極的だったから、押し倒してしまっただけだ。 「けじめだ」 「けじめ? なんの?」 「…………」 訳を言おうか言うまいか、逡巡する歳三を総司は促した。 「ねぇ? 歳さん」 「お前は武士だろう」 そして、出た歳三の言葉の意図が見えずとも、総司は頷いた。 「俺は百姓だ。剣術を少々齧っていたってな」 何か言いかけた総司の口を手で抑えて、歳三は続けた。 「俺が武士だったら、きっともっと早くお前を手に入れていた」 そう、武士だったならば、殿様が小姓を侍らすように、歳三は総司を手に入れていたはずだ。 驚きと喜びに目を見開く総司を、歳三はしっかりと見据えて。 「そう。きっともっと早く、お前が幼い頃から俺しか見ないように、抱いてただろう」 最初に出会った頃から、他の誰とも違う接し方をしていたのは、自分でも気づかぬうちに総司に惹かれていたからだ。 もちろん、最初はそんな対象ではなかった。 ただ、臆することなく纏わりつく総司を、可愛がっていたつもりだった。 けれど、いつしかその想いは、総司が長じるに連れて、形や色を変えた。 愛しい、と言う名の下に。 「でも、俺は百姓で、ごく潰しの四男坊だ」 だが現実は、武士と百姓という、階級差が厳然と横たわっていた。 だから、歳三は自分の感情に目を瞑り、総司の言葉にならぬ声に耳を塞いできたのだ。 「そんな身で、お前を手に入れられるわけがねぇ」 総司が歳三を好きだと言うたびに、自分の総司への感情とは違うのだと、言い聞かせねばならなかった。 いや、自分の感情を摩り替え、偽らねばならなかった。 「今でもそれは変わらねぇ。その百姓のごく潰しの俺が、お前を抱くわけにはいかねぇ」 総司が大きくなるにつれて、その慕われ方が辛く、女に逃避したりした。 そのくせ、そんな歳三を見る総司の視線が、また痛かった。 それほどに愛しい存在であり、だからこそ幾度となく諦めようと思ったことか。 昂ぶった躯が密着したままの体勢での話しは、その快楽をたとえ女とのものだとしても知っているだけに、歳三には随分と自戒が必要だった。 だが、言わずに済ませられぬと、歳三は総司に言い聞かすように話した。 「そんなの……」 「お前が気にすることはねぇ。これが俺なりのけじめのつけ方だ」 「でもっ」 声を荒げようとする総司を、歳三は静かに制した。 「その代わり、俺はお前を手放さねぇ。たとえ、誰に知られて詰られようとも、だ」 その覚悟がなければ、総司と契りを交わしたりはしない。 総司に先に覚悟を決めさせた後ろめたさはあっても、歳三はそれ以外の後悔をしたくなかった。 「お前は俺に、全部くれるんだろう? 俺もお前に全部やるから、持っていけ」 総司の頭の後ろに手をまわし、ぐいっと引き寄せて、歳三は思いの丈を知らしめるように唇を貪った。 いったん唇を離せば、二人の間には銀線が一筋糸を引き消えて行った。 互いの手は、それぞれの肌の上を確かめるようにさ迷って。 今まで幾度となく互いの躯にも触れていたが、今夜は意味が違う。 それだけに肌が、熱く燃え立つようだ。 総司の唇が、手が這った後を辿ってゆく。 時折り、気紛れのように吸い付き、歳三の白い肌に鬱血の痕を残していた。 女とは経験が豊富とはいえ、自分が愛撫を施される立場になれば、歳三の戸惑いも大きい。 くすぐったいような、じれったいような動きに、自然と躯が揺れてしまう。 そんな歳三の動きを推し量るように、総司は愛撫の手を止めては歳三を見上げる。 それを見返しながら、歳三は総司の頭に手を添えて、嫌がっていないのだと促してやった。 勇気付けられたように総司は愛撫を再開して、歳三の胸の飾りに吸い付いて口に含んだ。 「んっ……」 舌先で飴を転がすように舐めていくと、柔らかだったそれが硬くしこってきて総司を嬉しがらせた。 「う、んぅ……」 片手は歳三のその艶やかに色付きだした肌を這いまわり、もう片方はいつしかしっかりと歳三の手と握り合わされていて、それが互いの隠しきれぬ想いを伝えていた。 総司の手は歳三の屹立しているものへと、次第に大胆に絡まっていき、その形をいとおしむように、表面を撫でてさらに熱く脈打たせていった。 壊れ物を扱うように優しく触れたり、歳三に声を出させるほどに激しくも扱いたりと、緩急をつけて歳三を煽っていく。 「あっ、あ……ぁ……」 先端をぐりっと押さえつけるように指で撫ぜれば、歳三の躯がぴくりと跳ねて、総司の頭に添えられていた手にぐっと力が入った。 唯一纏う宝玉のように歳三の胸元を紅く色付けをしてから、総司の唇はようやく離れて手が辿ったのとは違う腹から臍を通り過ぎ、歳三の震え勃つ下肢へと降りていった。 歳三の足の間に躯を割り込ませ、手の中で天に聳えるそれにじっと目を向けている総司に、 「総司……」 どうしたのかと、歳三が上から見下ろせば、 「うん。歳さんのこういう姿、初めて見たから」 だから、魅入っていたと、総司は嬉しそうに笑って。 「馬鹿。当たり前だろう」 いくらなんでも、歳三が総司にこういう姿を見せたことがあるはずがない。 たとえ裸は飽きるほどに見せていたとしてもだ。 「うん。だから、ね」 と、総司はこんな時でも屈託なく笑うのだ。 返す言葉もなく黙った歳三にもう一度笑いかけ、総司はそれの裏側を舐めあげた。 「うっ……」 口にすっぽりと含むと、どくどくと熱く脈打っているのが、より総司に伝わってきて、嬉しがらせた。 女にも幾度となくさせた行為だったが、愛しいと想う相手との行為はこれほど違うのかと、歳三を戸惑わせた。 口に含まれて程ないというのに、快感が押し寄せてきて、とてもそれほど持ちそうにない。 だというのに、ちろちろと先端を舐められては、堪ったものではなかった。 「そう……じ、離せ」 と、歳三が言えば、総司は嫌々と歳三を咥えたまま首を振って、それすら歳三には耐え難い刺激になった。 双玉を揉みし抱きつつ、口を窄めてきつく吸えば、耐え切れなくなった歳三は、総司の口腔に勢いよく精を放ってしまった。 「っ、は……ぁっ」 荒く息を継がざる得ない歳三の耳に、ごくりと喉の鳴る音が聞こえて。 見遣れば総司は歳三の精を嚥下していて、慌てた歳三が総司を引き剥がそうとするが、総司は歳三が放ち終わるまで放さなかった。 ようやく顔を上げた総司に、 「馬鹿っ。吐き出せっ」 歳三は怒鳴ったが、総司はふるふると首を振って、出せと差し出された歳三の手を避けた。 そして、あろうことか躯をずらして、歳三の足の間にさらに潜り込み、両足を抱え上げた。 そこまでされれば、歳三とて女との経験は豊富だ。 総司が何をしようとしてるか、瞬時に悟った。 歳三が晒したそこへ総司は躊躇の素振りも見せず口をつけて、まだ口に含んだままの歳三の精を注ぎ込みだした。 「うっ」 その生暖かい感触に、歳三の躯が慄いた。 抗うことを忘れていた歳三だったが、総司の舌が差し込まれるに至って、ようやっと歳三は身を捩った。 「よせっ」 さして強くもなかった拘束は容易くほどけて、歳三は躯の自由を取り戻した。 不可思議そうに総司は歳三を見詰めていた。 「歳さん?」 「そんなことを、するな」 そっぽを向きたい己を叱咤しつつ、歳三は総司に向き直って言い聞かせようとした。 「そんなこと?」 歳三の言わんとすることが分からなかったのか、総司は首を傾げたが、ふと先ほどの行為のことだと思い至り聞き返した。 「いや?」 聞き返されて、逆に歳三は言葉に詰まったが、 「おめぇは、嫌じゃないのか?」 と言えば、総司は思っても見なかったと、言うように首を傾げた。 「どうして?」 「…………」 風呂に入ったとはいえ汚いとは思わないのか、とは歳三にも流石に問えなかったが、総司は何かを察したらしく、 「歳さんの躯だったら、全部触れたい。例えそれが何処でも、全部」 総司の、この言葉に偽りはない。 子供の頃から、歳三が好きで好きで大好きで、自分でも可笑しいと思うほどに歳三が好きで、ずっと恋焦がれていたのだ。 そんな歳三に今までとは全く違う意味で触れれることが嬉しく思いこそすれ、歳三が懸念するような思いを抱くわけがない。 それに本当だったら、ふのりとか歳三の躯の負担にならぬよう、ちゃんと用意を整えて置くのだろうが、それを総司の若さはしたくなかったのだ。 そこまで、用意周到に準備を調えたくはなかった。 だから、歳三の躯をほぐす為の行為に、総司が躊躇することなど有り得なかった。 自分の施す愛撫で歳三の躯が蕩けてくれるなら容易いことで、それどころか悦びだった。 しかし、歳三が抵抗を示したのには、当然ながら総司とは違う思いがある。 男に身を投げ出すに等しい先ほどの体勢が、あれほどの羞恥を感じるものだとは、当たり前だが歳三は今まで思ったこともなかった。 それが歳三の抗いの原因の一つだった。 だが、総司にほんの少し拗ねるように、 「それに、さっき全部くれるって言った」 と言われてしまえば、歳三には反論のしようがなくなってしまった。 「歳さん」 促すように名を呼ばれて、 「お前がしたいんなら、好きにしろ」 歳三は諦めたように躯を投げ出した。 「うん、したい」 素直に総司は言って、再び歳三の足を抱え上げて、そこに顔を埋めた。 舌で突付き、唾液を送り込み、先ほど濡らした歳三の精と一緒にさらに奥へと。 そうしながら、手は一度果てた歳三のものへと這わし、再び追い上げていった。 唾液と精で存分に濡れたその淵を、総司はゆるゆると指で撫でて、今まで感じたことのない感覚に、歳三の躯が慄く。 鳥肌が立つ感覚とでも言うのだろうか。 それに気付きながらも、総司は指をつぷりと歳三の中へ挿しいれた。 「うっ」 挿しいれながらも、総司は歳三の気を少しでも逸らすべく、屹立し始めている歳三を咥え込んだ。 一本の指が馴染むように、ゆっくりと動かすのだが、違和感があるのだろう、歳三の眉間には皺が寄ったままで、到底快感を感じている表情ではなかった。 当然と言えば当然だ。こういう行為に使う器官ではないのだから。 だが、二人が一つになるには、女と違って此処しかない。 そして、最早止められぬところまで追い詰められているのは、歳三ではなくて総司の方だった。 若い総司の性は、歳三の中に早く埋め込みたくて堪らなくなっていた。 ただそれでも、傷つけたくなくて、一心に奉仕していた。 根気良く繰り返すうち、次第に馴染んできたのを見計らい、指を増やしてさらに抜き差しを繰り返す。 「あっ、あ……あぁ……」 歳三が前をしゃぶり回され、いつしか指が三本にまで増えているのにも気付かず、背を仰け反らせ始めた頃、総司は顔を上げた。 「歳さん、いい?」 堅く瞑っていた目を開けて、歳三は覗きこむ総司に頷いた。 すると程なく、先ほどまでとは及びもつかない質量が、歳三の中へと分け入ってきて、歳三の躯は思わず逃げをうった。 「う、あっ」 だが、総司はそれを許さず、肩をがっしりと押さえて、歳三の中へと埋め込んでいく。 「あっ、あぁ……、んぁっ」 それでも、性急にならずにゆっくりと埋め込まれていく感覚に、なにか塗り替えられる心地が歳三にはした。 総司の全てを呑み込まされて、ようやく歳三は荒い息を一息ついた。 そのままじっとしていると、総司の楔から熱い脈動が伝わってきて、とうとう一つに契っているのだと、実感されて歳三を居た堪れなくさせた。 「歳さん」 名を呼ばれて、ん? とようよう目を開けて総司を見上げれば、 「歳さんの中って、熱い」 と囁かれて、歳三の背をぞくりと快感が駆け抜けて、それに呼応するように総司を呑み込んだ箇所が、きゅっとすぼまった。 その歳三の反応に、総司はびっくりしたように眼を丸くして、次に蕩けるような笑みを見せた。 その笑みを見た歳三は居た堪れなさに、顔を背けたが、 「動くよ?」 我慢できないと総司は言って、おもむろに総司は動き出した。 「う、ぁっ……」 始めはゆっくりとした動きだが、それでも慣れぬ歳三には異物感が凄まじく、思わず空いた片方の手を総司の肩を押しのけるように突っ張った。 しかし、逃れるように動く歳三の腰をしっかりと捕らえ、総司の動きは段々と荒々しいものへと変化していった。 「ひっ、……あ、ぁぁっ……」 中を激しくかき回され突き上げられ、歳三の息は絶え絶えになっていく。 歳三のものも密着した二人の躯に挟まれ擦られて、先ほど口でしゃぶられていた時より更に質感を増し、この行為が歳三に苦痛だけを齎しているのではないことを、如実に示していた。 しかも、ある一箇所を衝かれると、比較にならぬほどの衝撃を感じる部分がある。 歳三が女とのまぐわいでは得たことのないほどのそれは、確かに快感だろうとは思うが、その脳天をも貫く衝撃はそんなことにすら思いを及ぼさないほどで。 逃げようと仰け反る上半身とは裏腹に、あられもなく広げられた歳三の足は、逞しい総司の腰に絡まり離れる様子もなく。 狼藉を働く男にしか縋りつけぬ歳三は、いつしか総司の広い背中に手を回して縋りついていた。 「歳さん、好き。一等好きだよ」 総司は突き上げながらも、そう囁いて。 「あっ、あぁっ……。おれ……も、だ」 喘ぎながら歳三はそう答えて、総司を更に引き寄せて口を吸った。 歯列を割り舌を絡ませ、深く深く一つに融けあおうとするが如く。 そして、二人の両の手は一方は腰を引き寄せ、一方は肩を抱き寄せ、残る片手同士は堅く指を絡ませあって離すことなく。 蔦が蔓を絡ませあって伸びてゆくように、互いに絡み合いながら生きてゆきたい。 それが二人の想いだった。 |
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二人の初夜は、こんな風になりました。 土方さんが受身になった理由と、ある一文を書きたくて書いた話です。 それと、タイトルどおり、ある意味このサイトの原点です。 |
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