流行り?!



なんか近頃、妙な空気が流行ってるんだよなぁ。
えっ、何が流行ってるかだって?
う〜ん、あんたは部外者だから、逆に言ってもいいか。
身内にはなかなか言い辛いことだし。
実はな、隊内に男色が流行ってるんだよ。
そう、男同士のあれ、だよ。
まぁ、戦国からの武士の習いとはいえ、なんでそんなもんが、って思うだろう?
そりゃ、新撰組は男所帯だけどな、一歩外に出れば、京のあちこちには花街があるんだぜ。
給金は多いとはいえないが、遊びに出るだけの金には、不自由しないはずなんだ。
ちゃんと隊で、三食付いてるんだしな。
それほど大袈裟な遊びをしさえしなければ、偶には隊での遊興もあるし。
だから、なにも隊内で男に手を出さなくてもよさそうなもんだと、思わないか?
佐々木愛次郎を筆頭に、馬越三郎、馬詰柳太郎、山野八十八、楠小十郎なんて、原田が美男五人衆と名づける若衆も居たとはいえ、あいつらもれっきとした男だぜ。
付いてるもんも付いてらぁ。それを。
いや、ただこれが流行ってる一つに、もしかしたら? と思うことがあってな。
それが、悩みの種なんだ。
何か、って?
いや、それは……。
ここまで言ったら、最後まで言え?
まぁ、いいか、言っても。
それは、な。歳と総司、なんだよ。
二人がどうかしたかって?
いや、特別どうもしやしないさ。
あいつらは、京へ来て人を斬っても、試衛館の頃のまんまだ。
何も変わっちゃいねぇ。
あいつらの仲の良さも、試衛館以前より、そのまんまだ。
けど、俺を始めとして試衛館の連中は、それを良く知ってるが、そうでない連中にしたら、あいつらの仲の良さは、どうも目の毒になってるようなんだよな。
俺たちだって、あんまりの仲睦まじさに、目のやり場に困ることも、度々だし。
なにしろ、歳が病気の宗次郎に、口移しで粥を食べさせていると知ったときの、驚きったらなかった。
普通、そんなことしないだろう? 親ならともかく。
いやぁ、何度も見るうちに慣れたけどな。さすがに、今はしてないようだが。
慣れてなけりゃ、それこそ腰を抜かすわな。そんな場面を見せられりゃ。
でも、今でも時々、どきりとすることを、平気で目の前ですることもあるんだぜ、歳は。
それに、こんなことを言ったら怒るから口に出しては言わないが、歳の奴は色も白くて、どっちかというと女顔だろ。
総司は総司で、子供の頃と違い上背もあるし、剣の腕も立つし、餓鬼臭さが抜けてきて、いい男っぷりだ。
それぞれ、隊士から付文を貰って、どうしろってんだ? と笑っていた。
だから、あいつらがその元凶だと思ってるわけじゃねぇ。
けど、あいつら二人の醸し出す雰囲気が、なんとも言えないんだよ。こう、独特で。
あいつらと付き合いの長い俺でさえ、そうなんだから、他の奴らには堪まんねぇんだろうなぁ。
仲違いをしろとは言えないが、もうちょっと何とかならんものだろうか?
ああ、頭が痛いなぁ。ついでに、胃も。




え〜、近藤さんは、土方さんと総司の関係は、全く知りません。仲がすっごくいいんだなぁ、と思っている程度です。天然?
でも、井上さんはばっちり知ってます。総司の協力者です。原田も同様。こちらは総司の相談役でもあります。
この二人が知ってるおかげで、試衛館でもし放題な二人です(笑)。
ちなみに他の面々はどうかと言うと。永倉は、そうだろうと思ってます。斎藤は二人の間には入れないと諦めてます。山南さんと藤堂は、そういう関係もありだと思っています。



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