613様作■「もしもハルヒが○○の嫁だったら…」 // 鏡夜


 ハニー先輩 >>


 抜けるような青空を背に、鏡夜が微笑んでいる。
 眼鏡の奥の目はあくまでも優しく、口元には微かな笑みがある。


 (本当の、鏡夜先輩の顔だ…)


 ハルヒは少しだけ頬を赤らめて見上げた。
 ふっと鏡夜の姿が消える。
 少し後ずさると、鏡夜は中世の騎士のように跪いていた。


 「あ…」


 驚くハルヒの手をとってそっとくちづける。


 「あなたを、一生お守りします」


 「きょうや…せんぱ…」


 さっと見上げた黒い瞳は自信に満ちあふれていた。


 「藤岡ハルヒさん、結婚して下さい」




 【もしもハルヒが鏡夜の嫁だったら…】


 夜半過ぎ。
 仕事から帰ったハルヒは世話を焼くメイドに休むように告げ、
 音をたてないように廊下を夫婦の寝室に向かった。
 寝ているであろう夫を起こさないように細心の注意を払ってドアを開ける。
 部屋の灯は落ちていた。


 ハルヒはそっと部屋に入り、バスルームに滑り込んだ。
 一度寝たらなかなか起きないとはいえ、同居人には気を使う。
 遠慮がちにシャワーを使うと、置いてあった部屋着に着替える。
 淡色に赤いバラが少し描かれた、着心地の良いワンピースだった。


 バスルームから出ると、聞き慣れた低い声がした。


 「遅かったな」


 「あ…」


 夫婦の寝室に入ると、ベッドサイドの椅子に鏡夜が腰掛けていた。
 間接照明の灯でなにやらメモしている。


 「まだ、起きていたんですね」


 「ああ」


 「あの、今日は…」


 「パーティーを途中で退席したことは気にするな。
  仕事なら仕方がない。俺も周囲もわかっている」


 「はあ…」


 「お前は弁護士として自分の夢を果たせ。それが俺の望みでもある」


 「あ、ありがとうございます」


 鏡夜はメモを閉じて顔を上げた。
 月光が眼鏡に反射して表情は読めない。


 「どうした」


 立ち上がってハルヒに歩み寄る。


 「じぶ…わたしを、待っててくれたんですか?」


 鏡夜は少し微笑むと、ハルヒを抱き上げてベッドに乗せた。
 そのまま上に覆いかぶさるようにする。
 そして、まっすぐ見つめる大きな瞳に苦笑すると


 「ハルヒ、目を閉じろ」


 そう言って長いくちづけをした。


 今夜は鳳家主催の大掛かりなパーティーがあった。
 大学卒業と同時にいくつか会社を任された鏡夜にとっては、
 外に人脈を広げ、内には信頼を築く絶好にして貴重な機会。
 当然ながら夫人であるハルヒの役割も大きいはずだったが
 パーティーが始まって間もなく事務所から呼び出しが入り
 挨拶もそこそこにハルヒは退席してしまった。


 尤も、ハルヒは弁護士の資格を得ると同時に鏡夜が経営する会社全ての顧問弁護士に就任しており、
 今夜の仕事も夫の会社のためとあって、顰蹙を買うような事態には至らなかったのだが。


 「ん…」


 (眼鏡が邪魔だなあ)などと不埒なことを考えていると、
 ハルヒはたった今着たばかりの部屋着をたくしあげられた。
 目を開ける間もなく、舌で胸を攻められる。


 「あ…」


 空いた手はパンティーにかかり、その下に潜り込む。


 「んあっ」


 ハルヒは脚を、より深く愛され易いように少し開く。
 その動きを受けて鏡夜は中指を胎内に侵入させる。
 ハルヒの愛液がたてる音が部屋に満ち、やがて彼女が小さく震えた。


 「あっ…、はぁ…、はぁ…、はぁ…」


 中指一本で達してしまう愛らしい妻を、鏡夜は見下ろした。
 彼女を守るためならなんでもできる。


 彼女の夢を邪魔しない。
 彼女に肩身の狭い思いはさせない。


 彼女を自分の足枷にしない。
 彼女の足枷にならない。


 すべてを実現してみせる。彼女のために。


 鏡夜は脱力しているハルヒから衣服を取り去り、自分もガウンを脱いだ。
 月明かりに、ハルヒの美貌と白い肌が眩しい。


 まっすぐ自分を見つめている妻のひざに手をかけ、月光の元で開く。


 それが俺の愛しかただ。


 ゆっくりと挿入すると、彼の愛する人は甘い声を上げた。


 パーティーを仕切ることに関しては、鏡夜はお手のものだ。
 兄弟の誰よりもきめ細かにホスト役をこなす自信がある。
 一族の厳しい目線の中でハルヒが気詰まりな思いをすることも、
 庶民のハルヒがうっかり恥をかくことも必要がないことだ。
 仕事で不在であれば有能な妻への賛辞はそこここで囁かれ、ハルヒの体面も保たれる。それでいい。


 俺がどんなにお前を愛しているか、多分お前は知らない。


 感情の波に飲まれるように鏡夜は動きを速める。
 ハルヒの細い脚が宙で揺れる。
 何度か声を上げ、背中を反らすとハルヒは再び達したようだった。
 そのハルヒを抱きしめて、鏡夜も欲望を吐き出す。


 すっかり息の上がったハルヒは、大きな目をパッチリ開いて夫を見つめた。


 「きょうや…せんぱい…」


 「どうした?」


 声を出して、鏡夜も自分の息が上がっているのに気付く。
 ハルヒは鏡夜とつながったままむくっと起きると、手を伸ばして眼鏡を取った。


 「何のマネだ」


 ハルヒはまっすぐな視線を向けたまま言った。


 「わたしの前では、本当の顔を見せてください」


 「?」


 「わたしは、先輩が思ってるより、たぶん強いです」


 「何を言っている」


 「わたしの負担になりそうなイベントがあるとき、
  顧問弁護士の仕事が入るように手配する必要はありません」


 鏡夜は眼鏡の位置を直すしぐさをしたが、眼鏡はハルヒの手の中にあった。


 「それに、わたしだってホスト部で鍛えられてますし」


 ふふっと笑ったが、鏡夜の表情は変わらない。
 ハルヒは真顔に戻り、空いた手で鏡夜の手をとった。


 「先輩は一人じゃありません」


 鏡夜は微動だにしない。その瞳が揺れるのをハルヒは見た。


 「愛しています。心から」


 その手にくちづける。
 伝わりますように、と祈りながら。


 ややあって、鏡夜は言った。


 「眼鏡を返してくれ、ハルヒ」


 「先輩…」


 「いまのお前をよく見ておきたい。
  …その言葉も、一生忘れないように」


 鏡夜は眼鏡をかけた。
 ハルヒは横たわって体を晒した。
 月光が反射して眼鏡の奥は見えない。
 だが、鏡夜が再び覆いかぶさってくる瞬間、ハルヒは月影の狭間で優しく温かい瞳が光るのを見た。




ED


 ハルヒの腕をとってバージンロードを送る男前な殿


 義兄として参列し、泣く光とその肩を抱いて微笑む馨


 モリ先輩に肩車して笑顔で米を撒くハニ−先輩


ラストのカット
 教会の前、悪魔のように古靴を投げる双子、止める殿、笑う三年ズ、
 古靴をしこたま食らって不機嫌な顔でハルヒの手を引っ張る鏡夜、
 ハイヒールのせいですっころびそうなハルヒ。という記念写真風。




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