613様作■「もしもハルヒが○○の嫁だったら…」 // ハニー先輩


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 「ハールちゃん☆」


 ハニー先輩が満面の笑みで飛びついてくる。
 ハルヒがあわてて両手で受け止めると、メリーゴーラウンドのようにくるっと回った。


 「ハルちゃん、ぼく、ハルちゃんのこと、だーい好きだよ☆」
 「それは…光栄です」


 ハルヒはハニー先輩の、日本人にしては色素の薄い瞳に微笑んだ。
 が、その瞳はうつむいて、栗色の髪に隠れた。


 「だから、ずーっと、一緒にいようね」


 時折ハニー先輩が見せる、穏やかな素顔。
 次の瞬間、パッと笑ってたたみかけた。


 「ね☆ハルちゃん、結婚しよっ☆」




 【もしもハルヒがハニー先輩の嫁だったら…】


 ハルヒはふと仕事の手を休め、窓の外を見た。
 新居の2階にしつらえた法律事務所から、抜けるような青い空が見える。
 あの空のどこかに、夫はいるだろうか。
 ハルヒはファイルを閉じて立ち上がると、バルコニーに出た。


 頭ではわかっていた。
 夫が教える人達は、学生やスポーツ選手ではない。
 日々命を張って仕事をしているのだということを。


 ハルヒはいま、武術家の妻の気持ちを、
 武道ではなく武術を生業にする男を愛する意味を、肌で感じていた。
 光邦が武術指導に訪れた国で内戦が勃発したと、今朝義弟に知らされたのだ。


 (どうか、無事で)
 ツタのからまるバルコニーにたたずみ、白いワンピースの胸元を握りしめる。


 「ハールちゃん☆」


 いきなり目隠しされる。


 「だーれだ?」


 「え?え?ハニー先輩?」


 「わぁい、あったりー」


 「ど、ど、ど、」


 光邦はうさちゃんを抱えてニッコニコ笑っている。


 「どっから出てきたんですか!」


 「こーやって登ったんだよ☆」


 と言うと、ハルヒを横抱きにしてツタを握った。


 「あーああー☆」
 「ギャー!」


 叫ぶハルヒを抱いたまま隣室の庇、次いで3階のバルコニーに跳んだ。


 「お部屋いこーうね☆」


 ハルヒは夢中で光邦の首にしがみつく。
 そのとき、光邦の頬に一筋の新しい傷を見た。


 二人の寝室は、埴ノ塚家敷地内に新設した洋館の最上階にある。
 新居は全体的に光邦の趣味で統一されていた。
 その部屋で夫に紅茶とケーキを勧めながら、ハルヒはめまいを起こしていた。


 光邦の帰りが思いのほか早かったのは、USアーミーが軍用機を
 「かしてくれたのー☆」
 だそうだ。


 うそだ、うそに決まってる。脅して奪ったにちがいない。
 ハルヒがブツブツ言っていると光邦が胸に飛び込んできた。


 「会いたかったあ、ハルちゃん☆」


 「そういえば、先輩、時差ぼけは?」


 「飛行機の中でずっと寝てたから平気ぃぃ」


 飛行機じゃないだろ戦闘機だろ。


 「だからねーぇ、元気だよ☆」


 首にかじりついてキスをする。


 それから耳元で


 「しよ☆」


 とささやいた。


 光邦がハルヒの耳にふっと息を吹き込む。
 (一芸に秀でる者は多芸に通じるなんて言葉があったっけ?)
 この道における光邦の技巧は、妻にとっては脅威であった。
 ハルヒは耳、唇、首、胸を散々になぶられた挙句、
 シックスナインになって1分もしないうちにイカされてしまい
 光邦のブラックうさちゃんを吐き出して咳き込んでしまう。


 「ハルちゃんよくがんばったねえ。えらいえらい」


 「ケホッ、すみませ…」


 まだ日が高い午後の寝室で、ハルヒは仰向けに倒れ込んだ。


 「うー、ぼくのブラックうさちゃんかわいくないいぃー
  でもこうやってハルちゃんの中に隠しちゃえば平気だねえ」


 「あぅぅ」


 ハルヒは光邦以外の男を知らなかったが、これは絶対規格外だと思う。
 あの華奢なシルエットのどこにこんなものを隠しているのか。反則だ。
 ハルヒより少し小柄な光邦は、挿入時に顔がちょうど胸にくる。
 これも反則だ。
 両方を巧みに攻められては、あっというまに昇りつめてしまう。


 「せんぱ…また…いっちゃ…ます…」


 なのに光邦はまだ元気だ。ずるい。


 「今度はハルちゃんの好きなかたちぃ」


 うつぶせにされ、左腕だけ後ろから引っ張られる。


 「うわっ、やめっ…」


 涙があふれ、足がガクガクする。
 この体勢でブラックうさちゃんに5回も突かれると…気絶しかねない。


 結局光邦は新しい体位を2つも試し、都合5回ハルヒをイカせてから悠々と射精した。
 この人の妻として、自分はランニングの距離を倍にすべきではないか。
 シーツにぐったりへばりついたハルヒは、光邦の熱い放出を感じながら、真剣に悩んでいた。
 それほど夫婦の基礎体力に差がある。


 「わぁい、あかちゃんできるかなぁ☆」


 自分の上で光邦が無邪気に笑う。その頬に傷がある。
 ハルヒはさっき間近で見たその傷が新しかったことを思い出した。


 「先輩、その傷…」


 「あ、これ?なんでもない。すぐ治るもん」


 「ハニー先輩」


 めっ、という顔で見ると、光邦は怒られた子供のようにうつむいて、話した。
 今回の仕事では予定外のことがあって、すこしばかり危ない目にあったこと。
 全部ちゃーんとよけたんだけど、ひとつだけほっぺをかすっちゃったこと。
 そんなことをしたわるいこはもちろんくぁswでfrgthyふじこ


 もちろん、この人が強いのは知っている。
 最終兵器並みだったり、国連の査察が入るぐらいだったりするのも知っている。
 でも、強いことはときによっては、弱いことより危ないのだ。


 ハルヒは光邦にしがみついた。


 「無事に…帰ってくれて、ありがとうございます…」


 光邦はその髪をそっとなでる。


 「あのねえハルちゃん、ぼくは大丈夫だよ」


 デモ…


 そっとハルヒを押し倒し、固さをとりもどしたうさちゃんを挿入する。


 「んあっ…」


 「ねえハルちゃん、ハルちゃんにあかちゃんができるといいねえ」


 ハルヒの頬を両手で挟んで、まっすぐ瞳を見つめ、
 素の声で、ささやくように、祈るようにつぶやく。


 「ハルちゃんととぼくのあかちゃん、きっと、うーんとかわいいよ。
  ぼく、たくさんたくさんほしいなあ。早く出来るといいねえ」


 イツカ ボクガイナクナッテモ キミガ サビシク ナイヨウニ


 ハルヒは喘ぎながらも、大きな瞳で光邦をまっすぐ見た。


 「わたしも…ほしいです…。先輩みたいな…強くて…やさしくて…
  きれいなこころのこどもなら…たくさん…ほしいです…。でも…」


 「ハルちゃん…」


 「でも…、わたしは…何があっても先輩を待ち続けます。
  だから、必ずここに…わたしのところに帰って来て下さい。
  どんな状況になっても…どんな姿になっても…帰ってくると…約束して…」


 開け放した窓から一陣の風が入って、光邦の髪を乱した。
 傾きかけた日の、暖かみのある光を背中にうけて、ふっと微笑む。


 「…わかった。約束するよ」


 そして、花が開くように笑った。


 「ハルちゃん、だーい好き☆」




ED


 殿はやはり花嫁の父としてバージンンロードを男前に見送り。


 顔に縦線でいまだにマジ?と現実を疑う双子


 感慨深げなモリ先輩、の肩に手をかけつつ眼鏡を直す鏡夜先輩。


ラストカット
 祭壇の前。
 うさちゃんをぎゅっと抱いてまぶたを閉じ、背伸びするハニー先輩と
 ウエディングドレスに身を包み、少しかがんだハルヒのかわいらしい誓いのキス。
 そこに日がさんさんとふりそそぐ。




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