密猟 8


「お前は誰かに愛されたことがあるのかい?」
騎士の一人が言う。
他の騎士は戸惑っている。

僕も戸惑う。

それは言ってはいけないこと。
だから僕はどう返事をしたものか戸惑ったんだ。

けれどもその戸惑いは、おかしいくらいに僕の表情に表れていたのだろう。
あの『神父様との事』を、僕が何も言わなかったのに兄さんが見抜いたように、騎士たちは僕が『愛されている』ことを見抜いたようだった。

「俺たちもお前を愛してやるよ、可愛いククール。」
「やだ!」

汗ばんだ手が、僕の細い、修道着から覗いた手首をつかむ。

こわかった。

『かわいいククール、そんなに思いつめることはありません。』
『畏れることはありません。君をたくさん愛してあげましょう。』

あの神父様の声が、よみがえる。

ああ、また兄さんに殴られてしまう。
今度こそ完璧に嫌われてしまう。

逃げなきゃ、逃げなきゃ。


「おい、こいつ顔が真っ青だぜ?」
「バーカ、お前がイヤラシイ目でじろじろ眺め回すからだよ。なあ、お嬢ちゃん?」
「おとなしくしていれば優しく可愛がってやるぜ?お前は愛されるのがスキだろう?」

げらげらと数人の騎士が僕のことを『お嬢ちゃん』と呼んで笑う。

いつまでたっても『女の子みたい』と言われ続けた僕は、その騎士たちが笑いながら吐いた『お嬢ちゃん』という言葉に初めて自分がバカにされていたんだということに気がつく。

僕は女の子じゃない。
僕は男だ。

僕は暴れて、騎士が掴んでいた手首を振りほどいてその腹を思い切り蹴った。
それはたいしたダメージになるわけではなかったけれども、騎士たちは一瞬ひるんで、そして次の瞬間その表情は怒りに満ちていた。

そして僕は、彼らに輪姦された。
そのころは『輪姦』という概念が僕にはなかった。

だから僕は随分乱暴に、沢山の人間に『愛されている』としか思わなかった。
僕が、彼らの、好意からの『愛してやろう』という申し出を拒んだから、彼らが怒った、という風にしか思わなかった。

兄さんがあの時そうしたように、神父様がそうしたように、僕がどんなに泣いてもわめいても、騎士たちはなかなか解放してくれなかった。
しかも同時に何人からも『愛される』なんて、僕には初めてのことだったから、休む暇もなく突っ込まれ、揺すぶられる事にめまいがした。
口にも突っ込まれ、僕は苦しくて吐いた。

涙を溢れさせる僕に、数人は興ざめしたように眺めまわすだけにして、それでも数人は何回も僕を『愛した』

「こいつ、本当に男にしておくの勿体ねえよな。」
「なあに、あと2年もすればゴツゴツの男になるんだよ。」
「やっぁ・・・!」
「まだ泣き喚く元気があるみたいだぜ?足りないんじゃないか?他のやつも呼んでこいよ。」

そうして数人が加わってきた。
僕はとても恐ろしくなって、もうほとんど自由にならないのに体をばたつかせようとした。
けれども力が入らない。

兄さん、助けて
どうして?どうして?


僕の意識は遠のいた・・・





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