ネクタイをすべり落とした。

「ヤるぞ」
「?どした、サンジ」
「ヤるったらヤる」
「や、やるって何を?」
そのおどおどとした調子に・・・切れた。
「セックス!交尾!愛の交歓!カラダとカラダのコミュニケーション!」
「ええええっ」

ふん、今日という今日はそんな乙女リアクションになんか負けねェかんな。
ジャケットを脱ぎ捨て、シャツを脱ぎ捨て
いやんいやんとツナギを握り締めるあいつの腰帯に手を伸ばした。

「さっ・・・サンジ君は」
「何だよ、命乞いか?」

「おれのカラダ目当てだったのかぁああああ」


・・・それ、初めて言われたぞ。
相手にそう思ったことはあるが。


「アホか、もう何ヶ月経ってると思ってんだよ!」
ぶんぶんと揺れるハナをぎゅーっと握り締めてやる。
「いひゃいのへ、ひゃなしてくらひゃい」
「やだね。大体お前な、胃薬飲む前に押し倒しちまおうとか思わなかったのかよ」
ひょい、一応答えを聞くために手を離す。

「だってだって、あの段階でやっちまったら絶対"付き合えたー!"って大喜びだっただろうし、
 そこでサンジに

 "いや、やっただけ"

 とか言われたらおれもう立ち直れねェもん」
「いや、流石におれでもそこまでひどくは・・・」

・・・絶対にそんな事ない、とは言い切れないのが、ヤリまくり人生の辛いところではあるんだが。

「とにかくおれは決めたんだ、一年はサンジとセックスしない!ゾロにもそう誓ってる!」
「は??!!」

何じゃその誓いは。

「サンジが信じる価値のある男になるまで、おれはしないって。」
だから、ほんとにおれがサンジに頼ってもらえるいい男になれたら、そのときご褒美にって思って(ごにょごにょ)

と、どんどん小さくなる語尾に、思わずぽかーんとした。


そうか。
こいつなりの覚悟があって、こいつはそれほどおれを大事にしたくて。
今こうやって安心できる時間が、スッゲェ幸せなんだろうなと。
その男気に、感心してしまった。


・・・ただ。


残念なことにこちとら40人とヤリ倒してきた男@19歳。
やっと出会えた恋人に、毎日会って、引っ付いてるわけだ。
それこそ目と鼻の先で、もうひょこひょこ向きが変わるだけで愛しいハナやら
オーバーオールからちらちらと日々成長し誘惑する筋肉が美味そうにちらつくわけだ。


・・・我慢できるわけがないだろが。



「ホレ、ヤるぞ」
「え、ええっ、サンジ君おれの話聞いてた?!」(乙女リアクション再び)
「大体、何で誓う相手がゾロなんだ」(嫉妬)
「え、や、優しいし、何か、兄ちゃんみたいだからつい宣言を」(バカ正直)
「・・・今度からおれ一人にしとけ」(物凄い嫉妬)
「あ、ああ、うん、そうする・・・って、うわぁ、どこ触って」(童貞の乙女リアクション)
「いいからヤるぞ、こんだけ毎日引っ付いてんだ、もういいだろ」(手練モード)
「で、でもまだ早いよぉ」(乙女の戸惑い)
「大丈夫、これからもちゃんとウソップのこと大事にするから」(口説きモード)

お口に手をあてたウソップ(しかも手はグー)への説得が延々と続き。

「ああもう、男だろ、覚悟決めろ」
「あーれー」

最終的には申し訳ないが力で納得していただいた。


そうしておれは、初めて恋したレディをエスコートするかのように
正直美形とは言いがたいはずの、年中オーバーオールでハナタレ放題のナガッパナを誘い
自ら足を開いたわけだ。


結果は、だって?






まあ控えめに言うなら。
過去最高でした。というところ。



2回終わって。
おれの上でぜーはーぜーはー恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑うウソップを見て、
おれはきっとこいつから離れないだろうと心から思った。
きっとこれからどんなレディに会っても、どんなヤツに誘われても
それこそ、ずっと好きだったジジィに会ったとしても。
きっとおれは、ウソップのそばにいることだけは、迷わないんだろうと、思った。

・・・内容も、結構濃かったので。余計に。


ま、もともと器用なヤツだからな。
憶えりゃすぐだったらしい。

セックスは、愛の交歓なのだと実感した。
以上。




さて格納庫。今日もおれたちはごろごろと引っ付いている。

「サンジ」
「ん?」
「髪の毛触っても嫌じゃない?」
「いいぜ」
さわさわ。触れる硬い指先が心地いい。
きゅ、と背中にやってくる体温。
「こうやって引っ付いてても、嫌じゃない?」
「やじゃねェよ」


「うおおおお!」
「(びくっ)な、何だよ」
「これが幸せかー!」
「・・・はい?」
「サンジ君、おれは今、猛烈に感動しているー!」


そう言って引っ付いてくる淋しがり屋のウソップを、淋しがり屋のおれはぽんぽんと撫でてやった。
「わかったわかった、禿げるまで触ってていいからな、ウソップ」




じゃれあって、ゲラゲラ笑って、時々はセックスもして。
のんびりと転がりながら、平坦じゃない道を歩いていこう。


道に何があったとしても、おれはお前を離さないと誓うから。





6.徒花