とまあ、ここまでならなかなか美しい物語なわけだ。
だからおれもウキウキとジジイに手紙なんか書いたりしたんだ。
もう大丈夫だぜ、って言ってやりたくて。

だが。


まず次の日の夜。
晩飯後、明日の仕込みが終わってからは二人で過ごした。
その夜は、くだらない話にゲラゲラ笑って、ロマンスの欠片も見せず。
それでもウソップは、真剣で。

「やっぱりおれ、サンジといっしょにいたい」


隠された必死さに、おれは約束を突きつけた。

「絶対、おれから逃げるな。離れんな。」
「うん」

「おれ女々しいから、昔のこととか思い出して取り乱して、迷惑かけるかも知れねェけど。それでも」
「・・・おれ今までウソつきのへなちょこで、頼りにされたことなんかなかったから、
サンジに頼ってもらえんの、嬉しいよ」
「・・・変なヤツ。」
「はは、やっぱり?」
「おれでいいのかよ」
「サンジじゃないとダメ」


そこで、キス。


「あー、信じらんねェ・・・夢みたいだ」
「おお、これは夢だウソップ、テメェの妄想が見せてる夢だ」
「・・・サンジ君のイジワル」
へへ、と笑って。

キスキスキスキス。
ちゅーちゅちゅちゅちゅうぅぅぅぅ(息継ぎさせろや)


そして抱っこ。
それで終わり。



・・・アレ?

つ づ き は ? ?



そうして付き合うことになって。

「ふひー」
「おおウソップ、風呂気持ちよかったか」
「今日は暑かったからな」
「だろうな。気が出てるよ」
「おお、出てるか!そのうち服も破れるようになるぞ!」
「「あひゃひゃひゃ」」
「なあウソップ、髪、拭いてやろっか」
「まじで?頼む頼む」

がしがしがし。
「お前の癖毛スゲェなぁ。ちゃんと乾かさないともつれるだろ」
「へへ、そうなんだよな」
「嬉しそうだな」
「嬉しいよ」
もちろんウソップは、おれがでんと置いたビールをぐびぐび飲んでいる。
「いよし、これでいいだろ」
「ありがとな、サンジ」


ちゅ、とほっぺたにキス。
へへ、と笑う顔が愛おしいなあ、と思ったりして。
頬にある節くれだった手が、タオルから見える実は結構逞しい肩が、好きだなあなんて思ったりして。

「おやすみ、サンジv」
「は?」

ぱたん。




・・・あの、髪を触るのは性的関係がどうのとか言うセオリーは一体・・・



とてもお世話になったナミさんに、感謝をこめてお酒を注いでいる夜も。

「いいなぁーウソップ、大好きなサンジ君と付き合えて幸せいっぱいでしょ」
「アホか!不安で死にそうだってんだ」

「「は?」」

そうしたら、酔っ払った口からでるわ出るわ。

「だってさぁ、サンジ君は美人だしおれサンジのことマユゲまで大好きだけど、それこそ今までモテまくってきたわけでさ。
今はなかよしだけど、今後ひょいっとラグジュアリーな年上お姉さんやハイソサイエティーな海軍将校とか
あらわれようものなら離れて行っちゃうかも知れないなんて
あーもう考えるだけで不安が噴き出してどうにもこうにも仕方ない!どうしてくれよう!」

うーがーと泣き伏す姿。

「ら、ラグジュアリー、かぁ・・・」
「ハイソサイエティーて・・・」

まあ、多分に酒が入ってるからこんな情けないこと言ってんだろうけど。
それにしてもテメェ。
「大好きなあの人といっしょにいるのに、不安で不安でたまらないの」なんて。
・・・どこの乙女だよ。

「心配すんなよ、もうお前しか見ねぇんだから」
「だって、よかったわね」
「うう・・・ごめん・・・ありがど」
よしよし、撫でてやったら。

「ふう、すっきりした。ありがとな。」
おやすみ、二人とも。



ぱたん。


・・・え、終わり?




これが、おれとウソップの愛の日々だ。

ああもう。
こんな状態でかれこれ・・・もう何ヶ月だ?
おれたちはずーっと夜引っ付いていて。
そして別々に眠る。
どちらかが見張りの夜なんかは、どっちが見張り番でもウソップはおれにぴとっと引っ付いて、眠る



・・・・・
長い夜。



「引っ付いてるだけで幸せ・・・」なんて、随分可愛らしいことをいう17歳のウソップ。
そのうちくーくー寝入ってしまう男。
おれに突っ込むはずの男。
たちの悪いことに、時々きゅっとうしろからおれを抱き締めながら、眠る、男。



・・・・・
もんもんもんもんもんもん。



おれは突っ込まれる方じゃなきゃ満足できないのは、もうコイツに話してある。
だからこいつがやる気になってくれればそりゃもう、あれよあれよなわけなんだが。

っつーかお前アレか、胃薬飲んで耐えていたほどの性欲はどこへ消えたんだ。
ぺたーっと引っ付いていて昇華されるのか??ああ!
冗談じゃねェ。


ということで。
「あっためて欲しいのはカラダじゃない、ココロなの」という、こっ恥ずかしくも可憐なおれさまの事情。
ココロがぬくぬくに(寧ろムラムラに)あったまった今、何を求めんかだ。
ここまで来て可憐もクソもあるか!


一念発起。


これまではまあ十中八九、向こうの男からやらせろって言ってきて。
まれにそうじゃない時も、膝少し開いて視線ひとつくれてやればほいほいやれたおれは。
ひっさしぶりに-というか、ジジィの時以来初めて-自分から誘うことにした。






5.徒花7.