風はどこまでも、からだを失ったチョッパーのたましいを運んでゆきます。

"おれはこれからどこへ行くの?"

もう声にならない言葉。
けれど伝わったのか、風は答えてくれました。


おまえのところへいくんだよ、トナカイ。

"おれのところ?"

そう。




北へ、北へ、北へ。
暗い海を越え、空を越え、街の灯を越えて
白い風は、寒い寒い国へとまっしぐらに向かってゆきます。

いつしか、大きくそびえ立つ岩山が、白い風の目の前にやってきました。



それにつれ。
チョッパーの意識は、少しずつ閉じてゆきました。




そうだよ。

だっておまえは、今夜生まれてくるのだから。









白い風は、冬の国のおくのおく。
小さな岩穴に飛び込みました。



さあ、間に合ったよ。
行っておいで、幼い子よ。
もういちど。
うまれてくるんだ。



大嫌いな青い鼻で、大好きなともだちを忘れて

何故か?

また知るからだ。
世界はやはりあたたかいことを。

また見つけるからだ。
やはり優しい仲間を。


いつか知るだろうか
お前が仲間に愛されていたことを?




白い風はふわり、岩穴を抜け出し、そのまま空へ消えてゆきました。






1224
おまえという魂が生まれた証

今宵 
おまえに 仲間に すべての命に 

そして世界に

どうかひとしずく ほほえみが そそぐように














小さなトナカイが、初めてきゅうと嘶きました。












vi-9目次